2016年11月06日

何者 朝井リョウの直木賞受賞作が映画化された

朝井リョウの「何者」が映画化されたので、あらすじ(小説はネタバレを防ぐため、ごく簡単なあらすじだが)を再掲する。



ウェブサイトも非常に凝っていて、楽しめる。

何者サイト





















一度映画も見ようと思う。

何者何者 [単行本]
著者:朝井 リョウ
出版:新潮社
(2012-11-30)

このブログで「桐島、部活やめるってよ」を紹介した朝井リョウの直木賞受賞作。



桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)桐島、部活やめるってよ (集英社文庫) [文庫]
著者:朝井 リョウ
出版:集英社
(2012-04-20)

朝井リョウは、1989年生まれ。早稲田大学文化構想学部を卒業し、現在はたしか出版社に勤める兼業作家だ。

池井戸潤さんの「オレたち花のバブル組」のあらすじを紹介したが、朝井さんは「バブル期就職組」ではなく、なんと「バブル期誕生組」である。平成元年生まれだから、筆者の長男と同じ年齢だ。

オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫) [文庫]
著者:池井戸 潤
出版:文藝春秋
(2010-12-03)

「何者」には専用サイトが開設されている。

バイト先で一緒になったり、演劇などの活動で一緒になった御山大学の6人の男女就活生(留学や就職浪人などでみんな5年生)が、様々な人間関係を描く。

時折ツイッターのメッセージを挟んで、”今風”のテイストを出している。

主人公たちの会話を軸に話が展開する「どうってことないストーリー」ではあるが、大沢在昌の「売れる作家の全技術」で紹介されていた”小説のトゲ”(読み終えたあと、読者の心の中にさざ波を起こすような何か)がそこかしこに仕込んである。

小説講座 売れる作家の全技術  デビューだけで満足してはいけない小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない [単行本]
著者:大沢 在昌
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
(2012-08-01)


「プライベートのメールアドレスがわかれば、それでアカウントが検索できたりするから。」

ツイッターの話だ。

「何者」という言葉も、いろいろな形であらわれる。

「桐島、部活辞めるってよ」で、新鮮な驚きを与えていたオノマトペの使い方も見事だ。

「ヴ、ヴ、ヴ、ヴ」

携帯電話のバイブの音だ。

広告会社のクリエイティブ試験のところがいかにもありそうで、リアルだ。

一番の歌詞が書いてあり、「二番の歌詞を考えろ」という問題と、物語の冒頭のみが書いてあり、「これは起承転結の起です。承、転、結それぞれを書いてください」という問題が出たという。

朝井さん自身の経験に基づく就活の分析もなるほどと思う。

「ESや筆記試験で落ちるのと、面接で落ちるのではダメージの種類が違う。決定的な理由があるはずなのに、それが何なのかわからないのだ。」

「就職活動において怖いのは、そこだと思う。(中略)自分がいま、集団の中でどれくらいの位置にいるかがわからない。…」

おっさんの筆者は、高校生の話である「桐島、部活やめるってよ」では全然感情移入できなかったが、「何者」では感情移入できる部分もあった。

就活の毎日を描いた作品なので、ストーリーの変化があまりないが、「売れる作家の全技術」を読んだ後に読んでみると、朝井さんのいろいろな工夫がわかる。

上記で紹介したYouTubeのインタビューでも、朝井さんは、じっくり構想を練って、話の構造を決めてから書くタイプだと語っている。


筆者のような「就活したのは、はるか昔」の人も楽しめる作品である。


参考になったら、投票ボタンをクリック願いたい。



  
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2016年02月13日

武道館 朝井リョウの新作 今度はアイドル路線

武道館
朝井 リョウ
文藝春秋
2015-04-24


筆者が注目している若手作家の朝井リョウさんの新作。

デビュー作は映画にもなった「桐島、部活やめるってよ」だ。






今度は「NEXT YOU」という10代のアイドル少女グループが主人公だ。

本の帯のつんく♂の推薦文がすばらしい。

「アイドルって作るものでなく、楽しむものである方が良いに決まってる。

なのに、著者はこうやってアイドルを生み出す側にチャレンジした。

それも文学の世界で……。

なんたる野望。

なんたるマニアック。

なんたる妄想力。」

筆者は小説は感情移入できるものが好きなので、正直この本はツラかった。

ただ、アイドルビジネスの2つの問題点、つまりメンバーの独立とスキャンダル(恋愛禁止からの逸脱)にフォーカスして掘り下げているので、よく取材しているなあと感心する。

物語は最初は6人でスタートした「NEXT YOU」というアイドルグループの一人が、1年もたたずに「卒業」するところから始まる。「みんなで武道館に行こう」と約束していたメンバーの一人が脱落してしまったのだ。

主人公の愛子は、高校に通いながらアイドルの仕事を続けている。同じマンションの上の階に住む大地とは幼馴染(おさななじみ)だ。

大地と愛子は子供の時から仲良しだ、しかしアイドルは恋愛禁止。たとえ幼馴染でも。

アイドルグループは愛子たち1期生の次は2期生、3期生とどんどん増殖していく。NEXT YOUもいったん5人になった後、どんどん人数が増えていく。

「ファン裏切り親密デート」、「破廉恥スキャンダル」などというマスコミの報道。

握手会や投票権付CD商法。

そしてメンバーの「卒業」。

目標にしていた武道館でのコンサートが決まったのに、なんで今「卒業」なの?…。

というようなストーリーだ。

つんく♂の「なんたる妄想力。」という表現がぴったりだ。

朝井さんは出版社社員との兼業はどうやら2015年でやめて、現在は作家に専業しているようだ。

それで出版ペースも上がっているのだと思う。

才能ある作家だけに、どんどん新しいジャンルに挑戦していってほしいものだ。


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2012年10月06日

桐島、部活やめるってよ 小説すばる新人賞を受賞した朝井リョウのデビュー作

桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)桐島、部活やめるってよ (集英社文庫)
著者:朝井 リョウ
集英社(2012-04-20)
販売元:Amazon.co.jp
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小説すばる新人賞を2009年に受賞した朝井リョウのデビュー作。

朝井リョウさんは、1989年=平成元年生まれ。早稲田大学の文化構想学部を卒業したての新進作家だ。

今度紹介する大澤在昌さんの「売れる作家の全技術」の”偏差値の高い新人賞”として小説すばる新人賞が挙げられ、過去の受賞作としてこの本が紹介されていたので、読んでみた。

同じ小説すばる新人賞の過去の受賞作として、三崎亜記さんの「となり町戦争」も紹介されている。こちらも今度読んでみる。

となり町戦争 (集英社文庫)となり町戦争 (集英社文庫)
著者:三崎 亜記
集英社(2006-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
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ところで、「桐島、部活やめるってよ」を紹介していた大澤在昌さんの「売れる作家の全技術」は大変面白く、参考になる本だった。今年、筆者が読んでから買った数少ない本の一つだ。

小説講座 売れる作家の全技術  デビューだけで満足してはいけない小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
著者:大沢 在昌
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-08-01)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

近々あらすじを紹介する。大澤在昌さんは作家がある程度売れてくると「名前は知っているけど、読まないと決めた作家」という壁にぶち当たるという。

だから糸井重里のほぼ日で、無料で小説を連載したりして、「大澤在昌は知っているけど、読まないと決めた」人たちに、少しでも大澤作品を読ませようと努力しているという。

この「売れる作家の全技術」もまさにそんな「マーケットの底辺を拡大する」努力の一つだと思う。

現に筆者は、警察小説には興味はなく「大澤在昌という名前は知っているが、読まないと決めた」一人だったが、「売れる作家の全技術」を読んで興味をひかれたので、今度、大澤在昌さんの人気シリーズ「新宿鮫」を読んでみる。

新宿鮫 (光文社文庫)新宿鮫 (光文社文庫)
著者:大沢 在昌
光文社(1997-08)
販売元:Amazon.co.jp
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話が逸れたが、「桐島、部活やめるってよ」は今年映画化されたばかりだ



NHKの朝ドラの「どんと晴れ」に出ていた、神木隆之介君が主演をしている。

予告編を見る限り、映画と小説は別物のようだ。

小説の「桐島、部活やめるってよ」の目次はたったこれだけだ。

菊池宏樹(野球部の助っ人)         ………   7ページ
小泉風助(バレー部リベロ。桐島のサブだった)………  13ページ
沢島亜矢(ブラバン部長)          ………  47ページ
前田涼也(映画部)             ………  77ページ
宮部実果(ソフト部)            ……… 121ページ
菊池宏樹(前出)              ……… 167ページ

(カッコ内は役柄)

この小説の出だしは斬新で、タイトルの「桐島、部活やめるってよ」が最初の言葉となって(本文には出てこないが)、冒頭の菊池宏樹の「え、ガチで?」につながっている。

また表現も斬新だ。特に擬態語や擬声語(あわせてオノマトペと呼ぶ)に特徴がある。

たとえば小泉風助の章の出だしは。

「悲しそうな、残念そうな顔をしろ。耳元で俺が俺に囁(ささや)いた。
水色のTシャツと自分の肌の間を、薄く形を変えた風が、す、と通り過ぎていく。…」

それとか、
「風助!」、「肩に入っていた力がふ、と抜けて、すとんと地上に落とされた気がした。…」

「あ、
コートのど真ん中にゆっくりとボールが落ちる。」

というような感じだ。

小説のあらすじは、いつも通り詳しく紹介しない。上記の目次の男女数名の17歳の高校2年生が、バレー部のキャプテンの桐島が辞めたことで、すこしづつ歯車が狂うというストーリーを、登場人物の独白という形でオムニバス形式で綴っている。

小説では桐島本人は最後まで登場しないが、映画では桐島が出てくるような予感がする。

正直、おっさんの筆者には感情移入ができなかった。

筆者は高校2年まではサッカー部にいた。足首を捻挫したり、膝が痛くなり、それとボールセンスがなく周りを見回し、的確なパスを出すというようなことができず(要はヘタなので)、2年末で辞めて学業に専念したが、桐島のように「部活やめた」経験がある。

誰でも昔は高校生だったわけだし、体育祭や部活動の話なら、誰でも感情移入できるはずだが、この本の斬新なスタイルがそれを阻んでいるような気がする。

それと、あえて注文をつければ、作者の朝井リョウさんの写真は載せるべきではなかったと思う。

男言葉、女言葉がミックスしている小説なので、写真を出さず、あえて男とも女ともわからないようなミステリー作者にしておいた方が、良かったのではないか?

なにはともあれ、20歳で小説すばる新人賞を取るような抜群の文章力がある作家であることは間違いない。「桐島、部活やめるってよ」という作品では、感情移入は難しかったが、今後の活躍を期待したい。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 01:47Comments(0)TrackBack(0)