2020年3月15日再掲:
東野圭吾の「プラチナデータ」を再度読んでみた。最近のテレビのバラエティ番組で、米国のDNA比較サイトに登録されていたDNAデータを使って、犯人を割り出して、迷宮入りしていた事件を解決したことが紹介されていたので、まさにこの小説の予見していた状況が現実となりつつある。
犯人割り出しに使われたサイトはGEDmatchというサイトだ。無料サービスで、DNA分析サービスはやっておらず、他社で得たDNAデータをアップロードして、他の登録者の登録情報と比較できる
ニュースで報道されていた迷宮入りしかけたゴールデンステートキラーと呼ばれていた事件を解決したあと、DNA情報を警察が使用することの適法性が議論となり、現在は警察に提供することに事前に同意を得る「オプトイン」という形になっている。
130万人の登録者がいるが、そのうち「オプトイン」しているのは、20万人弱だという。
移民の国である米国は、系図づくりビジネスが盛んで、DNAを解析して祖先がどこから来たかを教えてくれるサイトも多い。
こういった系図づくりサイトの比較ブログもある。
系図サイトの一つのGeni.comは、1億4千万人の登録者がいるという。
日本でもDNA検査が比較的簡単にできるようになってきた。1万円程度で検査ができる
いまさら自分でやってみようという気にはならないが、興味のある人はやってみると面白いかもしれない。
2016年3月14日初掲:
東野圭吾の近未来警察小説。
嵐の二宮和也主演で映画化されている。
この小説の中には年号は一切出てこない。
近未来の日本。
DNA検査が犯人特定に使われるようになる。「ビッグデータ」の犯罪捜査への活用だ。
映画の予告編では、日本国民すべてDNAデータを国が管理するとのキャプションが出ているが、話はそう簡単ではない。
日本の居住者全員からDNAを集めるのは不可能なので、近親者のDNAからも犯人を割り出せるシステムが天才数学者の手によって開発された。
DNAを肉親や親戚が登録したら、自分まで芋づる式に調べられる可能性が出てきたのだ。
これなら犯罪抑制の効果も期待できる。
というのは、もし親類や兄弟がDNAを登録していたら、悪いことをするとすぐに自分が割り出される恐れがあるからだ。
手法は異なるが、スピルバーグの映画「マイノリティレポート」の犯罪未然察知システムを想起させる。
「マイノリティレポート」は「未知との遭遇」と並んで筆者の最も好きなスピルバーグ映画だ。特に、ショッピングモールの虹彩を読んで個人を特定して、その人にあった広告を表示するショッピングモールの場面は興味深いので、よく話題にしている。
話が横道にそれたが、DNA検査の捜査利用は順調なスタートを切った。
採取した毛や体液などの分泌物のDNAを調べて、日本国民の膨大なデータとマッチングすれば、容疑者の身長、体重、身体的特徴、そしてモンタージュ写真まで作ることができるのだ。
まずは逮捕第一号。簡単なものだ。
「朝飯前」だ。
これなら刑事も多数リストラできる。
しかし、そのシステムには致命的な欠陥が……。
突然、なぜか警察庁が本腰を入れて乗り出してくる。
というようなストーリーだ。
今や邪魔者扱いされた豊川悦司が演じる警視庁の捜査一課刑事と、検査結果を解析する二宮和也演じる警察庁特殊解析研究所の主任解析員が主人公だ。
大変面白い。単行本だと430ページもの作品だが、時間を忘れて一気に読めてしまう。
是非一読をおすすめする。
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