2016年06月12日

読書は「アウトプット」が99% 週末起業の藤井孝一さんの読書活用術



リスクをミニマイズした「週末起業」で有名になった起業コンサルタント藤井孝一さんの読書活用術。

週末起業 (ちくま新書)
藤井 孝一
筑摩書房
2003-08-06



この本の要旨を簡単に紹介すると次の通りだ。筆者も、すべての論点に賛成である。

藤井さんのいう「アウトプット」とは「話す」、「書く」、「行動する」の3つだ。

「アウトプット」することによって、本がもっと役立ち、付加価値のあるものに変わる。つまり、「人に伝える」ことで、知識が知恵に変わるのだ。

できる人は例外なく「要約力」を備えている。

本を読んで、アウトプットすることで、要約力のトレーニングにもなる。筆者は大学一年の時のゼミで、自分の要約力の無さに気が付き、それ以来、要約力をつけるトレーニングをしてきた。このブログもその現れだ、

本で身につく「全体を俯瞰する力」。

筆者はネット企業の代表取締役副社長として会社を経営していたことがある。いまから思えば、ネット広告業界で生き抜くためには何が欠けているのか、会社の弱みをはっきり認識せず経営していた。全く汗顔の至りだ。

藤井さんは、「全体像を俯瞰する力は読書で養える」と語っている。その通りだと思う。

筆者がこのブログを書いているのは、ブログを「外部記憶媒体」として使っているからだ。藤井さんのいう「アウトプット」の一例だ。

筆者は大体週に3〜5冊程度本を読む。次から次へと新しい本を読むので、読んだという記憶があるが、内容が思い出せないことがよくある。その場合、ブログを「外部記録媒体」として使って、キーワードなどで検索して、あらすじを読み返すのだ。

この本で藤井さんが勧めている本のなかでは、次の本のあらすじをこのブログで紹介している。

「バビロンの大富豪」




「日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル」人気ビジネス作家橘玲(たちばな・あきら)さんの本は、この本以外も10冊ほどあらすじを紹介している。




この本では「もしドラ」が、ドラッカー関連書として取り上げられている。

「もし高校野球のマネージャーがドラッカーを読んだら」ちなみに「もしドラ」は昨年文庫本となっている。




このブログでは、ユニクロの柳井さんの「わがドラッカー流経営論」のあらすじも紹介している。




「年収1500万円以上の人の愛読書」の中では、次のあらすじを紹介している。

「コトラーの戦略的マーケティング」




「イノベーションのジレンマ」




以前あらすじを紹介した本田直之さんの「レバレッジ・リーディング」と同じ路線だ。




簡単に読めるし、推薦図書のリストも参考になる。書店で見かけたら、一度手に取ってみることをお勧めする。


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2016年05月08日

本読む幸せ 資生堂名誉会長の福原義春さんが勧める103冊

本よむ幸せ
福原 義春
求龍堂
2013-02


資生堂の創業者一族の出身で、名誉会長の福原義春さんが勧める本103冊。

本の帯に福原さんの言葉が紹介されている。

私は本で育ちました。
毎日ご飯を食べるのと同じです。
暇はなくとも本は読みます。
雨でも晴れでも読みますし、明日は明日の本を読むのです。


福原さんは財界きっての読書家として知られ、様々な文化・メセナ活動を支援している。2010年に福原さんが六本木のアカデミーヒルズで講演した時の福原さんの紹介を引用すると次のようになる。ちょっと古い経歴だが、福原さんの幅広い活動がわかると思う。

1931年東京生まれ。1953年慶応義塾大学経済学部卒業と同時に株式会社資生堂入社。1987年代表取締役社長、1997年代表取締役会長を歴任。2001年、名誉会長に就任。

東京都写真美術館長、(財)かながわ国際交流財団理事長、(社)企業メセナ協議会会長、東京芸術文化評議会会長、文字・活字文化推進機構会長、経営倫理実践研究センター理事長、全日本蘭協会名誉会長、日仏経済人クラブ日本側議長、パリ日本文化会館支援協会会長、経済人同人誌「ほほづゑ」代表世話人(故・鈴木治雄さん、故・住吉弘人さんらと一緒に同人誌を出したもの)、ほか公職多数。

主な著書に「部下がついてくる人・体験で語るリーダーシップ」(日本経済新聞社)、「会社人間、社会に生きる」(中央公論新社)、「文化資本の経営」(ダイヤモンド社)、「100の蘭」「101の蘭」(文化出版局)、「猫と小石とディアギレフ」(集英社)「『自分らしい仕事』があなたを変える!」(青春出版社)、「ぼくの複線人生」(岩波書店)、「変化の時代と人間の力 福原義春講演集」(ウェッジ文庫)、「だから人は本を読む」(東洋経済新報社)、「福原義春の言葉 私は変わった 変わるように 努力したのだ」(求龍堂)等。趣味は洋らんの栽培、写真。

平成10年、イタリア共和国・功績勲章グランデ・ウフィチアーレ章。
平成13年、北京市栄誉市民。
平成14年、フランス共和国・レジオンドヌール勲章グラン・トフィシエ章。
平成16年、旭日重光章。
平成20年、東京都中央区名誉区民
平成21年、神奈川文化賞

この本の最後に「松岡正剛 千夜千冊」を書いた松岡正剛さんによる書評が載っている。

松岡正剛千夜千冊
松岡 正剛
求龍堂
2006-10



この本は次の6部に分かれている。それぞれの章のタイトルと、紹介されている本のなかで、筆者が特に気になったものを、紹介する。筆者がこれから読む本(一部はこのブログで紹介した本)のセレクションである。

103冊は、絵本(!)から中国古典、欧米の古典、美術本まで幅広いセレクションで、到底、以下のリストで伝えられるものではないが、福原さんの読書のバラエティが感じられると思う。

ちなみに、松岡正剛さんはそのうちの第5章「負への探求」と第6章「かけがえのないもの」が格別だったと記している。

第1章 視点をすえる

1.ファーブル昆虫記 たぶん教科書にも出てきて、フンコロガシの話などは誰でも一度は読んだことがあると思う。



24.パレオマニア 大英博物館からの13の旅 大英博物館の所蔵物のオリジンをたどる




第2章 物語の醍醐味

25.剪燈新話 中国の怪談集




33.さまよえる湖 中国西域ロブノール湖を求めて 学生時代に井上靖の「楼蘭」と一緒に読んだ。

さまよえる湖 (中公文庫BIBLIO)
スヴェン ヘディン
中央公論新社
2001-10



楼蘭 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社
1968-01-29



36.チャリングクロス街84番地 英国の書店員と米国の女性顧客のウィットのきいたやりとり 映画にもなった






37.鷲は舞い降りた 第2次世界大戦中にチャーチル暗殺をたくらむナチ空てい部隊 映画化された

鷲は舞い降りた (ハヤカワ文庫NV)
ジャック ヒギンズ
早川書房
1997-04





38.
薔薇の名前〈上〉
ウンベルト エーコ
東京創元社
1990-02

薔薇の名前 14世紀イタリアを舞台とするサスペンス小説 映画化された



39.世界の測量 福原さんのイチオシ小説 「年を取ってから読んだ本の中で、こんなにも興奮した一冊はなかった」 今読んでいる。

世界の測量 ガウスとフンボルトの物語
ダニエル・ケールマン
三修社
2008-05-23



41.生物と無生物のあいだ このブログで紹介している




第3章 英知を耕す

42.ロビンソン・クルーソー はずかしながらまだ読んだことがない。今度読んでみる。

完訳ロビンソン・クルーソー (中公文庫)
ダニエル デフォー
中央公論新社
2010-10-23



45.石橋を叩けば渡れない 昭和30年代の南極越冬隊の隊長 西堀栄三郎さんの本 今読んでいる。

石橋を叩けば渡れない
西堀 栄三郎
生産性出版
1999-04



55.ガリア戦記 大学生の時読んだが、ほとんど覚えていない。また読まなきゃ。

<新訳>ガリア戦記
ユリウス・カエサル
PHP研究所
2008-02-14



第4章 時の狭間をのぞく

61.月と6ペンス まだ読んだことがない。この章はこの本だけ。

月と六ペンス (新潮文庫)
サマセット モーム
新潮社
2014-03-28



第5章 負への探求

70.山椒魚戦争 このブログで紹介している。

山椒魚戦争 (岩波文庫)
カレル チャペック
岩波書店
2003-06-13



82.インタヴューズ これから読んでみる。マルクス、レーニン、ヒトラーなどのインタヴュー。




第6章 かけがえのないもの

95.木を植えた人 資生堂120周年記念に配った本。

木を植えた人
ジャン ジオノ
こぐま社
1989-10



97.ご冗談でしょう、ファインマンさん ブログで紹介していないがなんといっても面白い。

ご冗談でしょう、ファインマンさん〈上〉 (岩波現代文庫)
リチャード P. ファインマン
岩波書店
2000-01-14



読んだら順次あらすじを紹介していく。


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2012年04月24日

本当に考える力がつく多読術 実践!多読術 結局、拾い読みじゃん

本当に考える力がつく多読術本当に考える力がつく多読術
著者:園 善博
三笠書房(2010-04-03)
販売元:Amazon.co.jp
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実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)
著者:成毛 眞
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-07-10)
販売元:Amazon.co.jp
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多読術の本を2冊ほど読んでみた。

推薦本の紹介以外は、あまり得たところはないので、詳しくは紹介しない。いずれも多読=速読=拾い読みである。つまりスキップして読んでいるから速読=多読できるのだ。

筆者はほぼ一日1冊のペースで本を読んでいるが、必ず通読する。ところが、「本当に考える力がつく多読術」という本を書いている園善博さんは、逆に通読は勧めないという。

いわば「合目的読書法」という感じで、まず目次を最初から最後まで読んで、どんな情報が得られるか想像する。その情報を得るメリットを書き出し、本を読み終えた自分がどうなっているのかイメージして書き出し、そのうえで本を読むのだという。

いわゆる「カラーバス効果」のような考え方だ。

筆者も、目次からある程度内容を予測して本を読んでいるが、このように得られる情報のメリットを予測し、それがどう自分に生かせるのかまでイメージして本を読んでいるわけではない。

筆者は通読して印象に残ったところにポストイットを貼って、あとであらすじにまとめてブログに書いている。通読と拾い読みの差はあるが、結果的には同じことをやっているのかもしれない。今度は園さんの方法も参考にして、得られるものをはっきり意識して読んでみる。

もっとも、読書は量が問題ではない。質、つまり本を読んで、本からどれだけのものを得られるかが重要であって、多読しても、それが右から左に流れて、すぐに本の内容を忘れるようであれば意味がない。

実は筆者は大学生の時に一日一冊をノルマにして本を年に300冊ほど読んだことがあるが、書いてある文字を目で追っているだけで、ほとんど本の内容を理解しないままで終わってしまった。

カフカの「変身」やカミュの「異邦人」など、読んだという記憶があるだけで、内容は出だしの部分しか覚えていない。

変身 (新潮文庫)変身 (新潮文庫)
著者:フランツ カフカ
新潮社(1952-07-30)
販売元:Amazon.co.jp
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異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)
著者:カミュ
新潮社(1954-09)
販売元:Amazon.co.jp
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サルトルの「実存主義とは何か」などは、単に字面を目で追っただけで、全く内容を覚えていない。

実存主義とは何か実存主義とは何か
著者:J‐P・サルトル
人文書院(1996-02)
販売元:Amazon.co.jp
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この時の反省があるから、通読+ブログ備忘録にこだわるのだ。また、通読すれば、著者は次は何を書くのだろうというわくわく感を維持しながら本を読み切ることができる。

最初から当たりをつけて、拾い読みしては、このわくわく感=期待感が、フルに味わえないと思う。

成毛さん、園さん、松岡正剛さんのような多読本の著者のように、金をもらって本の書評を書いているわけではないので、一般読者はやはり本を読んで知識と感動を得るというのが、正攻法だと思う。

閑話休題。

ちなみに、園さんもカーネギーのことを書いている。「人を動かす」は今出版されている自己啓発本と内容がほとんど変わらない古典なので、園さんはカーネギーの原典しか読まないという。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
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成毛さんは、買ったり貰ったりで、月に100〜200冊の本を手に取り、最後まで読み通すのはそのうち10〜15%だという。

成毛さんも、本に書き込むをするのではなく、参考になった個所にポストイットを貼っておくという筆者と同じ読み方をしている。

ただお金持ちの成毛さんならともかく、今度紹介する松岡正剛さんの「多読術」も含めて、多読本の著者は図書館の利用について一言も触れていないことが気になった。

多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)
著者:松岡 正剛
筑摩書房(2009-04-08)
販売元:Amazon.co.jp
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図書館を利用しないで、一日数冊という多読が可能な人はよっぽど金持ちか、本に埋もれて生活しているような人だろう。著者として自分の本を売らなければならない立場にあり、出版業界や本の流通業界に気兼ねしているのだろうが、図書館利用について何も書かないのは片手落ちのように思える。

成毛さんの「実践、多読術」の1/3は推薦書の紹介で、様々なジャンルの本が紹介されているので、知的好奇心を刺激される。たとえば次のような本だ。

図説 科学で読むイスラム文化図説 科学で読むイスラム文化
著者:ハワード・R. ターナー
青土社(2000-12)
販売元:Amazon.co.jp
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チョコレートの真実 [DIPシリーズ]チョコレートの真実 [DIPシリーズ]
著者:キャロル・オフ
英治出版(2007-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)
著者:青木 冨貴子
新潮社(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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ノアの洪水ノアの洪水
著者:ウォルター・ピットマン
集英社(2003-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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そのほかにも面白そうな本がいくつも紹介されていて参考になる。


多読家の流儀ではないかもしれないが、自分は通読を続けて行こうという気持ちになる「多読」本だった。



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2011年05月01日

すごい読書! 超多作ライター 中島孝志さんの読書アウトプット法

仕事力・マネー力・運気力がアップする すごい読書!仕事力・マネー力・運気力がアップする すごい読書!
著者:中島 孝志
マガジンハウス(2009-07-23)
販売元:Amazon.co.jp
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著書は200冊を超え、年間3,000冊の本を読むという超多作ライター中島孝志さんの本。

中島さんはPHP研究所に居たことがあるが、松下幸之助さんは「きみ、本読みになったらあかんで」と言われていたという。

本を読んでそれを仕事や人生に生かす、あるいは人生を豊かにするのが目的なのであって、単に本読みの物知りになるなという警鐘である。

筆者も常に心にとめておかねばならない言葉だ。

この本ではアウトプットに役立つ読書というコンセプトで、仕事に役立つ読書、お金が儲かる読書、ひとまわり人間が大きくなる読書という切り口で推薦書を提案している。

この本を読んで中島さんも筆者と同じような考えを持って、実践していることがわかった。

たとえば図書館の利用だ。中島さんの仕事場の5メートル先?が図書館だという。本は読んでナンボなので、買うのではなく図書館を使えばよいのだと。

中島さんは常にポストイットをもっており、考えが浮かんだらメモして、本を使って自分自身と対話しているという。「一人ブレスト」だと。

中島さんは年間3,000冊読むというが、だいたいまえがきと目次を読むとどんなレベルなのかは一目瞭然だと語る。

3,000冊のうち、20%は見込み違い、20%がいい意味で期待を裏切っている本。しかしその20%の本でも、本当に役立つのはさらに少なくその20%、つまり120冊程度ではないかと。

筆者はあらすじを書いているので、中島さんとは読むメッシュがたぶん違うと思う。あらすじを書いた本は基本的に最初から最後まで読んでいる。

中島さんのような書評を書くというのが目的で、ピンとひらめいた文が一行か2行あれば良いという読み方であれば、たぶん上記のような歩留まり4%ということになるのだろう。

筆者は本の選択にも十分時間を掛けているので、歩留まりはもっと高い。全部あらすじとしてアウトプットできていないが、年間300冊読むうち、150冊くらいはあらすじで紹介しているペースだ。

その意味では歩留まり5割というところか。

以前紹介した「本は絶対、一人で読むな」は、ずいぶん参考になる本が多かったが、この本で紹介されている本は、山本周五郎の作品など筆者が既に読んだ本も多く、残念ながらあまり興味を惹かれなかった。

本は絶対、1人で読むな!本は絶対、1人で読むな!
著者:中島 孝志
潮出版社(2010-11)
販売元:Amazon.co.jp
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中島さんはスティーブン・コヴィーの「7つの習慣」は読んだことがないし、これからも読まないだろうと語る。食わず嫌いというか、成功哲学好き?の筆者は違和感を覚えるコメントだ。

中島さんも、やはり図書館派でポストイット派というのがわかったのが収穫だった。


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2010年12月19日

一生モノの勉強法 京大人気教授の知的ノウハウ

2010年12月19日追記:

書店に行ったら「週刊東洋経済」で鎌田教授が書いていた「一生モノの古典」が、単行本になって出版されているのに気がついた。

座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる座右の古典 ―賢者の言葉に人生が変わる
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2010-11-12)
販売元:Amazon.co.jp
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アマゾンのカスタマーレビューで全部の題名を紹介しているものがあったので、それを引用させてもらうと、次のようになる。

1章
『論語』孔子,『幸福論』ヒルティ,『時間と自由』ベルクソン,『荘子』荘周,
『自助論』スマイルズ,『生きがいについて』神谷美恵子
2章
『ソクラテスの弁明』プラトン,『ホモ・ルーデンス』ホイジンガ,『人間性の心理学』マズロー,
『ミケランジェロの生涯』ロマン・ロラン,『神曲』ダンテ,『大衆の反逆』オルテガ,
3章
『風姿花伝』世阿弥,『知的生活』ハマトン,『春宵十話』岡潔,『職業としての学問』マックス・ウェーバー,
『学問のすすめ』福沢諭吉,『民主主義と教育』デューイ,『学問芸術論』ルソー
4章
『方法序説』デカルト,『野生の思考』レヴィ=ストロース,『サイバネティックス』ウィーナー,
『陰翳礼賛』谷崎潤一郎,『プラグマティズム』ウィリアム・ジェイムズ,『からだの知恵』キャノン,『風邪の効用』野口晴哉
5章
『ゲーテとの対話』エッカーマン,『人生の意味の心理学』アドラー,『フランクリン自伝』フランクリン,
『「いき」の構造』九鬼周造,『幸福論』バートランド・ラッセル,『メディア論』マクルーハン
6章
『新科学対話』ガリレイ,『コモン・センス』トーマス・ペイン,『コロンブス航海誌』コロンブス,
『古代への情熱』シュリーマン,『自省録』マルクス・アウレリウス,『バガヴァット・ギーター』ヒンドゥー教聖典,『人生論』トルストイ
第7章
『第二次大戦回顧録 抄』チャーチル,『孫子』孫武,『藁のハンドル』ヘンリー・フォード,
『ローマ帝国衰亡史』ギボン,『君主論』マキアヴェリ,『ジュリアス・シーザー』シェイクスピア,『韓非子』韓非
8章
『啓蒙とは何か』カント,『イタリア・ルネッサンスの文化』プルクハルト,
『森の生活』ソロー,『読書について』ショウペンハウエル

読んだ本が数点あるが、それ以外は読んでない本ばかりで、改めて鎌田教授の教養の広さに感心する。

筆者は「本は読んでから買う」のを通例としているが、この本はひさしぶりの「読む前に買った本」だ。鎌田教授の本を参考にして、紹介されている本も読んでみようと思う。

世の中には自分の読んでいない本ばかりだということを、思いしらされる本である。


2010年12月16日初掲:

一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2009-04-03)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

真っ赤な革ジャンと真っ赤なズボンなどといったドハデな服装で登場する京大の火山学の鎌田浩毅教授の勉強法。

はじめに鎌田教授のドハデ戦略について説明している。専門の火山の話を聞いて貰うにあたり、まず鎌田浩毅という人間に注目して貰うためにファッションに気を配っているという。

鎌田教授は「週刊東洋経済」で以前は「一生モノの古典」、現在は「ビジネスパーソンのための地球科学入門」という2ページもののコーナーを書いている。「一生モノの古典」のまとめかたには感服した。

たとえばシュリーマンの「古代への情熱」を紹介した2010年7月10日号では、音読、作文、毎日1時間というシュリーマンの語学勉強法を紹介するとともに、ビジネスパーソンに役立つ教訓3ヶ条として次を挙げている。

1.大きな目標を立て、完遂するまで忘れない
2.勉強は目的を明確にして始めるべきだ
3.発掘継続のためにおこなった情報開示と広告戦略を学べ

先見の明のある考古学者として、また自意識過剰な俗人として毀誉褒貶(きよほうへん)の多いシュリーマンだが、学問的な高い評価はゆらぐことがないと語る。人に限らず書物も、良い点を見て学べばよいと結んでいる。

非常にコンパクトに要点をまとめた書評で、筆者にも大変参考になった。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ぜひ目次を見てほしい。

昼休みの活用法や通勤電車を英語塾として活用する方法など、実際的なアドバイスが並んでいることがわかると思う。


この本の構成

この本は次のような構成となっている。

第1章 面白くてためになる「戦略的」な勉強法とは

第2章 勉強の時間を作り出すテクニック

第3章 効率的に勉強するための情報整理術

第4章 すべての基本「読む力」をつける方法

第5章 理系的私見突破の技術

第6章 人から上手に教わると学びが加速する


それぞれの章が10前後の節から構成されているので、全部で55の節があり、それぞれが実践的なアドバイスだ。


勉強法のポイント

この本で鎌田教授の伝えたい肝心の点は次の2つに絞れると思う。

1.勉強するときは集中し、ONとOFFをはっきりさせる。集中するためには弛緩(しかん)する時間も不可欠だ。

2.勉強は場当たり的にするものではない。目標とそれに到達する工程をあらかじめ決め、締め切り時間を決めて「戦略的」に取り組む。


磨くべきスキル

勉強は単に知識を増やすだけではない、音楽や古典などの教養の両方が必要である。スキルとしては次の3つの能力を磨く必要がある。

1.コンテンツ能力 必要な知識を身につける

2.ノウハウ能力 仕事のやり方についての具体的なテクニック

3.ロジカルシンキング能力 データを論理的に組み立てて説得力ある結論を導く能力


もっとも困難なのは「努力すること」そのもの

鎌田教授は勉強でも仕事でも、最も困難なのは「努力すること」そのものだと語る。これには筆者も100%同感だ。

「努力すること」がきちんとできるようになれば、たいていのことは成就する。だから「努力が継続するシステム」の構築が重要だ。

たとえばイチローは「先に満足している」からヒットを打てるのだと。「一試合終わって良いヒットが打てたらそれで満足する」という。

小さな満足を得ることで、努力がおっくうではなくなり、もっと大きな努力を呼ぶ。もっと大きな満足をもたらすという好循環がでてきているのだ。

以前紹介した松井秀喜の「不動心」に「努力できることが才能だ」という言葉が紹介されていた。筆者はこの言葉は、まさに金言と思っている。

たとえば昼休みの食事の後の30分を毎日勉強に充てれば、積み重ねれば相当な時間になる。ビジネスランチでも良い。昼休みの活用の努力が、他人との差別化につながるのだ。


理系的試験突破の技術

なにせ入学試験の出題者であり採点者でもある大学教授だけに「理系的試験突破の技術」という章は大変参考になる。

「試験勉強は相手の意図を探ることから始める」というのは、まさに出題者ならではアドバイスだ。

大学入試のいわゆる「赤本」で、多くの高校生は最初の「傾向と対策」の部分を省いて過去問を解こうとする(そう言われてみれば筆者もそうだった)。しかし、実はこの解説のページに試験突破の重要な手掛かりが書かれているのだ。

この部分は予備校の教科主任のような立場の人が、過去20年間の過去問を研究して解説を書いているので、試験官が要求するポイントをとらえており、問題の傾向をつかんでいる。

大人の勉強に完璧主義は不要であり、「ドライに行こう」と。満点でもすれすれでも資格としては同じであり、効率主義で良いのだ。

テキストは最初から最後まで覚えず、ヤマを張る。模擬試験を利用してヤマの的中率を上げる。テキストで重要な点はどこか、重要なポイントを外さない判断力をいかに養うかが勝負なのだと。

情報は3段階で記憶する(1.熟読、2.音読、3.書いて覚える)とか、試験問題は第1問から解いてはいけない(解ける問題から解く。難問に取り組むより、見直しで5点、10点稼ぐ)とか、入試だけでなく、どんな試験の受験生にも役立つ実践的なアドバイスが満載だ。


鎌田教授もカーネギー信者

「第4章 すべての基本『読む力』をつける方法」の章では、次の写真が使われている。

一生モノの勉強法













出典:本書111ページ

なんと中心にカーネギーの「道は開ける」を置いている。

道は開ける 新装版道は開ける 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10)
販売元:Amazon.co.jp
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この本のなかでもカーネギーの「人を動かす」の「人に好かれる6原則」をそのまま紹介している。

1.誠実な関心を寄せる
2.笑顔を忘れない
3.名前を覚える
4.聞き手にまわる
5.関心のありかを見抜く
6.心からほめる

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

鎌田教授もカーネギー信者だったんだ。

天才マーケッターの西川りゅうじんさんも、カーネギーの本は擦り切れるほど読んだと言っていた。「自己啓発はヘンなのも多いけど、やはりカーネギーに始まり、カーネギーに終わる」。その通りだと思う。


大変参考になった本だが、詳しく紹介していると長くなりすぎるので、その他参考になった点をいくつか紹介しておく。

★「締め切り効果」で時間の流れを制御する
たとえばインターネット検索なら、あらかじめ15分と締め切りを決めて実行する。トリンプの吉越前社長の「デッドライン仕事術」のように効率をアップさせるのだ。締め切りを決めないと、漫然と1時間以上も検索に費やすというようなことになりがちだ。

デッドライン仕事術 (祥伝社新書)デッドライン仕事術 (祥伝社新書)
著者:吉越 浩一郎
祥伝社(2007-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


★大学の講義法も「3分間スピーチ」から学んだ
鎌田教授は「冠婚葬祭のスピーチは3分でまとめろ」という解説書を参考にして、講義も3分ごとの話を積み上げるようにした。これによって聞く方の興味が持続するのだと。

筆者もセミナーなどで講演することがある。さっそくこの「3分間スピーチ」術を実行してみる。

★入門書は最低3冊買う(そのうち一冊は新書)

★不得意な分野は児童書を見よ
鎌田教授は「ジュニア新書」はもっとも高度な表現が求められると語る。文系の人には、理系の「プリマー新書(ちくま書房)」や「ジュニア新書(岩波)」が良いという。

実は筆者も図書館で借りて児童書の世界偉人自伝全集で、チャーチルの自伝を読んでいる。

チャーチル (昭和41年) (世界偉人自伝全集〈1〉)
著者:チャーチル
小峰書店(1966)
販売元:Amazon.co.jp
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チャーチルの伝記は新書でも出ているので、こちらも図書館で借りた。

チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)チャーチル―イギリス現代史を転換させた一人の政治家 増補版  (中公新書)
著者:河合 秀和
中央公論社(1998-01-25)
販売元:Amazon.co.jp
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まだ読み始めていないが、児童書の方が写真や図も多くて新書より情報量が多い。鎌田教授が児童書をすすめる理由が納得できる。

★鎌田教授の推薦するテレビ教養番組
次が鎌田教授の推薦するテレビ番組だ。
・「世界一受けたい授業」日テレ 鎌田教授も火山の話で登場したという
・「プロフェッショナル 仕事の流儀」NHK
・「爆笑問題のニッポンの教養」NHK
・「課外授業~ようこそ先輩」NHK
・「美の壺」NHK教育

その他、本の書き込み法(これは筆者は絶対にやらない)、書店を利用するメリット、文房具について、クリアファイルについてなど、知的生産の道具の説明も参考になる。

鎌田教授は、一瞬「2ちゃんねるか?」と思わせるような構成のホームページをつくっているが、ブログとかインターネット利用法は一切出てこないところが、最近の本にしては珍しい気がする。

読者の役に立つようにという熱い思いと気遣いが感じられる。面白く読めて、かつ著者の親切心が伝わってくる良著だ。


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2010年04月24日

東大読書法 理III出身のカリスマ家庭教師の3部作 今度は読書法

東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.0
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最難関の東大理III(医学部進学コース)出身で、アルバイトで家庭教師や塾講師をやった後、アルバイトが本業となり、結局受験生を教えることを職業にしてしまった吉永賢一さんの本。吉永さんは偏差値93だったという。

このブログでも紹介した東大家庭教師3部作の読書法。他に「勉強法」「記憶法」がある。


「頭が良くなる読書法」として、選ぶ、読む、活かすの3ステップのノウハウを明かしている。ちなみに「頭が良い人」は、現実対処能力の高い人のことだと定義している。

吉永さんは「記憶法」でも小学校3-4年のときにトニー・ブザンの「頭が良くなる本」を読んだと書いているが、この「読書法」でも小学校3−4年のときにベン・スゥートランドの「信念をつらぬくー私はやる」と「自己を生かすー私はできる」を読んで大きな影響を受けたと書いている。ずいぶん早熟な人だ。

信念をつらぬく―私はやる (HD双書 (14))
著者:B.スイートランド
販売元:創元社
発売日:1971-12
おすすめ度:5.0
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自己を生かす―私はできる自己を生かす―私はできる
著者:B. スイートランド
販売元:創元社
発売日:2003-07
おすすめ度:4.5
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そしてその「自己を生かすー私はできる」の本の中の広告で、興味を惹かれて読んだのがデール・カーネギーの「人を動かす」だ。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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中学生のときに読んで、この本の各章の最後に書いてあるまとめ(ナットシェル)をすべて手帳に書いて何度も読み返して「メンタル・トレーニング」を実施していたという。

筆者も読書法については一家言があるが、この本では吉永さんのこだわりの読書法を紹介している。

あまり詳しく説明すると本を読んだときに興ざめなので、参考になったいくつかを紹介しておく。

1.頭が良くなる本の選び方
★吉永さんは本屋に行ったら、すべてのフロアに立ち寄って目に付いた本を手にとっているという。これは子供のときからの習慣だそうだが、ネット書店に対するリアル書店のメリットで、本屋の陳列の一覧性を生かしたやりかただ。

★立ち読みのコツは飛ばし読みでも最後まで目を通すことだと。本との相性がわかるという。

★吉永さんは本は買ったほうが頭が良くなると言う。自分で買えばいつでも読めて、書き込みができ、お金を払った分内容が頭に入りやすい。まとめ買いも勧めている。

筆者は「買った本は読まない」傾向があるので、「読んだ本しか買わない」図書館利用派だが、吉永さんのようなやり方もあると思う。

ちなみに筆者の図書館利用法はこのブログに多く紹介しているので、参照してほしい。

2.頭が良くなる読み方
★必須知識とアーカイブ知識(将来使うかもしれない知識)を切り分け、必須知識だけじっくり読み、アーカイブ的知識は軽く読む。

★面白い本は一気に読まない。面白かった本ほど記憶に残らないという。だから面白い本は盛り上がったところで一旦休み、それまでの内容を思い返して、それから読み続けるのだと。

★書き込みや付箋を活用する。この本では吉永さんの流儀の書き込み方や付箋の貼り方も紹介されていて、参考になる。

筆者は図書館派なので、本の書き込みは当然やらず、付箋愛好派だから吉永さんの付箋の貼り方は参考にあった。

その他、名著をコマ切れ時間を使って読むなど、目的別の頭が良くなる本の読み方が紹介されているのでアマゾンのなか見、検索を使って、この本の目次を参照してほしい。

3.頭が良くなる本の活かし方
★いつまでに何をやるという期限入りのTo doリストをつくる。吉永さんはGoogle Docsのスプレッドシートを使っているが、まずは手書きでTo doリストをつくることを勧めている。

★1000回音読する。吉永さんは本によっては1000回音読するという。たとえば斉藤一人さんの本や、ジョン・マクドナルドの「マスターの教え」などだという。

マスターの教えマスターの教え
著者:ジョン マクドナルド
販売元:飛鳥新社
発売日:2001-06-22
おすすめ度:4.5
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★読書ノートをつけたり、ブログに書いたり、他人に話したりというアウトプット法も紹介されている。


本を読んでよかったこと

エピローグに吉永さんは、本を読んで良かったこととして次を挙げている。

1.たましいが震える
2.窮地を救われる
3.この世界のことがわかる

表現はともかく筆者も全く同感である。本は知識の宝庫だと常々思っている。


(蛇足ながら)図書館派の弁明

最後に筆者は図書館派で、吉永さんの「本は買って読む」派とは異なるので、蛇足ながらその理由を一言書いておく。

それは残念ながら世の中には読んでがっかりする本が、10冊のうち5冊以上あるということだ。筆者は年間250冊くらい本を読むが、「読んでから買う主義」なので、買う本は年間20冊程度だ。つまり結構本を選んだつもりでも、読んでから手許に置いておきたいと思う本は1割以下というのが現実である。

吉永さんは著者として本を売る立場なので、図書館利用より本を買うことを当然勧めているし、読書術も本を買う前提で書いているが、「スカ」をつかんだ失望感とダメージは結構大きい。

大体その時々のベストセラーは「スカ」が多いという皮肉を言う人も多く、当たっているケースも結構あると思う。

はっきり言って書評はあまりあてにならない。このブログで紹介した「読んでない本について堂々と語る本」が言っているように、書評は本を読まなくても書けるからだ。(あらすじは読まないと書けない)

読んでいない本について堂々と語る方法読んでいない本について堂々と語る方法
著者:ピエール・バイヤール
販売元:筑摩書房
発売日:2008-11-27
おすすめ度:5.0
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筆者がなぜ図書館を利用するかというと筆者は積読(つんどく)派で、本を買うと安心してしまい「買った本は読まない」からなので、えらそうなことはいえないが、図書館の利用と本を買うのと、うまくバランス取って知識を吸収することをお勧めする。


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2009年01月01日

読んでいない本について堂々と語る方法 書評ってなんだろう?

年頭の辞:

このあらすじブログで2009年の1月1日に紹介する本として不適当なタイトルではあるが、「本を読む」ということ、「書評」ということはどういうものなのか考えさせられる本である。

この本が説くように「書評」は本を読まなくても書ける。しかし「あらすじ」は本を読まないと書けない。

もともと読んだ本の内容を整理して、自分には備忘録、読者には「時短読書」として供しているこのブログである。

「書評」はいくら読んでもその本を読んだ様な気にはならない。逆説的ではあるが、これからも「書評」でなく「あらすじ」ブログを続けていこうと思う。そんなことを考えさせられた本である。

読んでいない本について堂々と語る方法読んでいない本について堂々と語る方法
著者:ピエール・バイヤール
販売元:筑摩書房
発売日:2008-11-27
おすすめ度:5.0
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「無税入門」同様気になるタイトルなので読んでみた。

パリ第8大学教授で精神分析家のバイヤール氏の作品だ。フランス本国では2007年1月の発刊、日本では2008年11月25日に発売されたばかりだ。

バイヤール氏はこの本の前に「失敗作をいかに改良するか」という本を2000年に出しており、気になるタイトルの本を続けて世に出している。

本の帯に”欧米で話題沸騰”とか”創造的読書への誘い(いざない)”とか書いてある。

結論から言うと、一見けしからん内容の本にも思えるが、次の3点から案外真実を含んでいる本ではないかと感じた。

1.実際は本を読んでもいないのに読んだような顔をしてコメントしたり書評を書いたりする批評家に対する痛烈なブラックジョーク。

2.”一冊の本を読むのに適した時間は10分である”とオスカー・ワイルドが語った(?)ことを引き合いに出し、本を読んで語るのは自分自身のことだという詭弁の様にも思えるが半面真理を含んだ指摘。

3.本筋とは関係ない部分を引用することにより、その本の印象を全く変えることができることを、漱石の作品からの引用で示している。本の引用とはどういうものなのか考えさせられる。


この本の目次

目次は次の通りだ。

I 未読の諸段階 

1.全然読んだことがない本 
2.ざっと読んだ(流し読みをした)ことがある本
3.人から聞いたことがある本
4.読んだことはあるが忘れてしまった本

II どんな状況でコメントするか

1.大勢の人の前で
2.教師の面前で
3.作家を前にして
4.愛する人の前で

III 心がまえ

1.気後れしない
2.自分の考えを押しつける
3.本をでっち上げる
4.自分自身について語る

それぞれの項目に対して具体例は1件だけの場合が多く、全く説得力がないが、これも筆者が意図してこういう構成をとっているのだと思う。


「愛する人の前で」とはいかにもフランスらしい

どんな状況でコメントするかの場面の一つに「愛する人の前で」というのがあるのが、いかにもフランスらしい。

ちなみにこの「愛する人の前で」という項では、ビル・マーレー主演の映画"Ground Hog Day"(邦題「恋はデジャヴ」)を取り上げている。

恋はデジャ・ブ [DVD]恋はデジャ・ブ [DVD]
出演:アンディ・マクドウェル
販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日:2008-09-24
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Ground Hog Dayとは、ペンシルベニアのパンクスタウニー(Punxsutawney)という町で毎年2月2日にGround Hogというプレーリードッグのような動物が、冬眠から覚めるかどうかで、冬がさらにどれだけ続くのか占うイベントである。

テレビ局の取材で来たビル・マーレーが、毎日2月2日を繰り返す不思議な現象に陥ってしまう物語だが、この中でビル・マーレーが愛する人の前で、読んでいないにもかかわらずその人の愛読書の19世紀のイタリア文学の話で誘惑する場面があるのだ。


「共有図書館」を用いる方法

ムージルの小説「特性のない男2」に登場する目録さえ見れば個別の本を読む必要はないと主張する図書館司書を例に出している。

流し読みは詳細に迷い込まず本質を理解するのに効果的であると主張するポール・ヴァレリーの例を挙げて、書物の位置関係=全体の見晴し=「共有図書館」を把握することが、読んでいない本について語ることの決め手となると語る。

特性のない男 2特性のない男 2
著者:R. ムージル
販売元:松籟社
発売日:1992-12
おすすめ度:4.0
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ヴァレリーはプルーストの本をかろうじて1冊読んだだけだが、そのことは作家を正確に理解したり長々と意見を述べることの妨げにならないと主張する。


スクリーンとしての本

「スクリーンとしての本」とは、わかりにくい言い方だが、本の重要性は本そのものよりも、読んだ人がどういう理解をするかであるとバイヤール氏は語る。本は他人の評価を反映するスクリーンなのであると。

だから流し読みでも、他の本の評価を参考にしても、極端な場合読まずに評価しても、評価は評価だ。

我々が相手にするのは、現実の本でなく、これらの他人の言説や意見なのである。現実の本は遠くに追いやられ、永遠に仮定的なものになるのだと。


本筋とは関係ない部分の引用

1冊の本は何百ページもある。普通は本題と関係のある部分をその本の主題として引用するが、本題とは関係ない部分も特定の意図で引用される場合がある。

例としてなんと漱石の「我輩は猫である」と「草枕」が引用されている。

漱石の「我輩は猫である」からは、美学者迷亭が、ある席で自分が読んでいない本を話題に出して名文だと評したら、同席者がやはり名文だと同調したという話が取り上げられている。

「草枕」からは、山奥の旅館にこもる画家の主人公が旅館の娘に、本を適当に開いて目に入ったところを読むのだと説明している場面が取り上げられている。

青空文庫から「草枕」のその部分を引用すると次の通りだ。

「御勉強ですか」と女が云う。部屋に帰った余は、三脚几(さんきゃくき)に縛(しば)りつけた、書物の一冊を抽(ぬ)いて読んでいた。
「御這入(おはい)りなさい。ちっとも構いません」
 女は遠慮する景色(けしき)もなく、つかつかと這入る。くすんだ半襟(はんえり)の中から、恰好(かっこう)のいい頸(くび)の色が、あざやかに、抽(ぬ)き出ている。女が余の前に坐った時、この頸とこの半襟の対照が第一番に眼についた。
「西洋の本ですか、むずかしい事が書いてあるでしょうね」
「なあに」
「じゃ何が書いてあるんです」
「そうですね。実はわたしにも、よく分らないんです」
「ホホホホ。それで御勉強なの」
「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開(あ)けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」
「それで面白いんですか」
「それが面白いんです」
「なぜ?」
「なぜって、小説なんか、そうして読む方が面白いです」
「よっぽど変っていらっしゃるのね」
「ええ、ちっと変ってます」
「初から読んじゃ、どうして悪るいでしょう」
「初から読まなけりゃならないとすると、しまいまで読まなけりゃならない訳になりましょう」
「妙な理窟(りくつ)だ事。しまいまで読んだっていいじゃありませんか」

このように本題とはあまり関係ない部分でも、引用されたらその本の主題を代表する様に受け止められるという例だ。


読んでいない本について語ることは自分自身について語ること

そして、読んでない本について1.勇気を持って気後れせず、2.自分の考えを押しつけ、3.本をでっち上げ、4.自分自身について語れば良いのだと結論付ける。

書評は誰かが公式解釈をするわけでもないので、本をきちんと読まずに、流し読みだとか、他人の書評を参考にするとかで、勝手に本の内容を創作してして語っても良いのだと。これがバイヤールの言う、自分自身について語ることだ。

この本の翻訳者は、「本が読まないでも語れる」なら、「本は読まないでも翻訳できる」のではないかと考えたとジョークを飛ばしているが、翻訳者もある程度は「自分自身について語る」のだという。

突き詰めて言えば、「読まない方が書ける」のだと。

筆者の大学のときの日本近代法史(?)の石井紫郎教授の試験を思い出す。

1−2回しか石井教授の授業に出席せず、試験だけ受けて、自分の勝手な見解を長々と書いて自分ではよくできたと思っていたが、何のことはない石井教授が半年間掛けて説明していたことに全く触れていなかったので、「可」をくらった。

石井教授も答案を採点していて頭にきていたと思う。筆者の大学時代の唯一の「可」である。全く汗顔の至りである。


冒頭で書いたとおり、書評の危うさをブラックジョークを交えて指摘した本である。フランスでベストセラーになるだけの理由はあると思う。一度手にとってみることをおすすめする。


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2008年05月05日

効率が10倍アップする新・知的生産術 勝間和代さんの10倍シリーズ本

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法


昨年から”10倍アップ”シリーズでベストセラーを連発している公認会計士で経済評論家の勝間和代さんの知的生産効率アップ術。

次回あらすじを紹介する勝間さんのベストセラー「お金は銀行に預けるな」に書いてあったが、勝間さんのライフワークは、(1)現代の日本に生きる多くの人がワークライフバランスをもっと上手に整えられるよう、労働時間短縮に向けたしくみ作りを手伝うことと、(2)金融・経済・会計の知識を社会に還元するために、わかりやすく伝えていくことの2つだそうだ。

この本は他の”10倍アップ”シリーズ同様(1)の路線だ。

すべての本の帯に自分の写真を載せ、この手の本に比較的縁遠かった主婦やOLなどの女性読者もターゲットにしていることがうかがえる。

この本にも書いてある通り「本を出すと人生のステージが変わる」ので、勝間さん自身を世の中に売り込みことも目的とした”10倍アップ”シリーズである。

現代は「情報はお金より大事」であり、この本では情報処理での「トヨタ生産方式」を目指して生産性を上げる様々なやり方(グーグル化)を紹介していくと語っている。


情報収集

基礎となる情報収集では、ツールとしてブラウザのFirefox, RSS,有料の日経テレコン21,GMail(メールを常にGMailに転送)、Google Desktop, Google Calenderなど様々な機能を使った効率的な情報収集策を紹介している。


情報処理

こうして集めた膨大な情報の中から、本当に価値のある1%の情報を見極める方法として、勝間さんは次の6つの技術を紹介している。

(1)フレームワーク力をつける

フレームワーク力というのはマッキンゼーに入社したときに仕込まれたもので、必要な情報と不必要な情報の区別、情報の因数分解などの整理のために、或るフレームワーク(思考の引き出し)に割り当てるという思考方法だ。

マッキンゼーには200くらいの基本パターンをまとめたフレームワークのマニュアルがあり、勝間さんはマッキンゼーに入社して毎日そのマニュアルを見続けたという。数学でいうと「解法」というところか。

(2)ディープスマート力をつける
ディープスマート力とは、聞き慣れない言葉だが、経験を重ねると長年の勘で情報の価値がわかるようになる。その熟練した洞察力をディープスマート力と呼んでいる。辞書にも見あたらないので、決して一般的な言葉ではないが、この言葉を使った本を紹介している。

「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)
「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)



(3)失敗力をつける
失敗力とは、失敗から学ぶことだ。

(4)ベスト・プラクティスの共有で学びを分けてもらう

(5)自分の価値を見いだせないところはバッサリ切り捨てる

(6)本代をケチらず良書を読む
ここで勝間さんの本領が発揮される。勝間さんは月100冊、月間10〜15万円を読書に使っているという。

本は多くの企画から厳選された良質なコンテンツであり、筆者が採算度外視で自己実現のために書いている場合が多いので安価で、一覧性に優れており、携帯性もあるという様々なメリットがある。

たった2時間の労働(読書)だけで、筆者が何年も、何十年もかけて培った情報と交換させてくれるので、本ほど効率的で安価なものはないと勝間さんは語る。

勝間さんの場合、本当の良書に巡り会う確率は数冊から10冊に1冊くらいだという。だからすき間時間を中心にどんどん読んで、不要な本は売るなり捨てるなりするのだと。

筆者は「積ん読」の傾向があり、買った本は買うだけで満足してしまい、読まないことが多いので、本は読んでから気に入った本だけ買うことをポリシーにしている。

勝間さんはとりあえず買っておいて読み、頭の中にしまって、保管は10分の1にしておくと言っている。アプローチは違うが、同じ結果だと思う。

筆者のおすすめのモーティマー・アドラーの「本を読む本」や本田直之さんの「レバレッジ・リーディング」も推薦書として紹介されている。

この本の文末に推薦図書やオーディオブックのリストがあり、116冊の本と33のオーディオブックが推薦されている。参考にはなるが、必読書としてカーネギーや松下幸之助の本が入っていないことが気になる。

年収10倍アップにも紹介されていたが、オーディオブックのダウンロードサイトとして、次が紹介されている。

FeBe(日本語)

audible(英語)


勝間流インプット力を高める6つの技術

次にインプット力を高める技術が6つ紹介されている。

(1)ノートパソコンを自分の補助脳として使い倒す

(2)フォトリーディング、親指シフト、マインドマップなど 
勝間さんは米国での4日間のフォトリーディングのセミナーに参加したという。親指シフトなども、もはや名人の域に達していると。

(3)アナログ入力とデジタル入力をバランスよく使い分ける

(4)マスメディア情報を減らし、実体験、他社体験、良書を3大情報源とする

(5)目以外の感覚器、特に耳をもっと活用する

(6)睡眠は投資、よく運動して、よく寝る


勝間流アウトプット力を高める6つの技術は、次の6つだ。

(1)自分独自のアウトプットをつくって、インプット情報を確かめてみる
たとえばインターネットビジネスを評価するなら、自分でサイトを立ち上げてみるとかだ。

(2)自分の学びを言葉で表現してみる

(3)自分の学びを数字に置き換えるクセをつける

(4)自分の学びから情報を絞り込み、軸を発見する

(5)自分の学びをブログに表現してみる

(6)自分の学びを本として出版する


集中力=体力なので、体力をつけるトレーニングとか食生活など、5つの生活習慣の技術を紹介している。集中力=体力というのは筆者も全く同感である。試験などもまさに体力勝負である。

人脈作りは、Giveの5乗でGive & Give & Give & Give & Giveなりと。決してGive & Takeではないところがミソだ。

最後に今日の行動から明日が変わるとして、成果は「知識」 x 「実行割合」 x 「定着率」で決まるので、実行を促している。

様々な方法が紹介されて、ごった煮状態なので、多くを試すよりは、まず自分がやれる1−2のことから行動に移すのが良いだろう。

簡単に読めるので、まずは書店でパラパラっと立ち読みすることをおすすめする。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


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2007年11月21日

レバレッジ・リーディング 本は先達の知恵の宝庫で格安の投資

レバレッジ・リーディング


レバレッジ○○○シリーズでベストセラーを連発しているレバレッジコンサルティング社社長、本田直之さんの読書法。

本田さんは本を年400冊以上読むそうだが、この本は「はじめに」のところや第一章の出だしに、エッセンスが集約されており、わかりやすい。

立ち読みして「はじめに」を読むか、アマゾンのなか見!検索で「抜粋」をチラッと読めば内容は大体わかると思う。

さすが多読を標榜する本田さんらしい、読者に親切にできた本だ。

本田さんは明治大学を卒業後、外資系企業に3年間勤めた後、インターナショナルなMBA育成でナンバーワンのアメリカの国際経営大学院サンダーバード校でMBAを取得する。

MBA留学中には、多くのケーススタディのために、毎日分厚い本を短期間で読むことを強いられた。

このビジネススクールでの2年間の経験から、問題解決のヒントを探すという目的意志があれば、余計なところを読まず、ポイントを速く拾える多読術、すなわちレバレッジ・リーディング術を身につけたのだという。


毎日1〜4冊の読書

本田さんはコンサルティング会社を経営し、日米約10社のビジネスに資本・経営参加しながら、毎日新しい本を1〜4冊読んでおり、毎年読む本は400冊を下らない。

本田さんにとって、読書は投資活動そのものであると。

本には他人の経験や知恵が詰まっているので、平均1,500円のビジネス書で100倍以上のリターンが得られる、非常に安価な投資であると本田さんは語る。

ビジネスパーソンにとっての読書は、スポーツ選手にとっての練習と同じだと。


本探しは投資物件選び

本田さんは、まず目的を持って本を選べと語る。そして同じジャンル・カテゴリーの本を何冊も徹底的に読み、セカンドオピニオンの様に、たくさんの意見から自分に最も役立つものを選ぶのだという。

本のスクリーニングのためには、友人の口コミ、無料書評メルマガ、日経新聞、朝日新聞、日経ビジネスなど新聞雑誌の書評や、有料の要約サービスなどの利用をすすめている。

挙げられている無料書評メルマガを一部紹介すると:

毎日3分読書革命!元アマゾンのカリスマバイヤー土井さんのメルマガ。土井さんは年間1,000冊の本を読むという。

ビジネス選書&サマリー★プロ厳選 30秒で読んだフリ このブログでも紹介している「週末起業」で知られる藤井孝一さんのビジネス書書評メルマガ。

英語の本だと、"Fast Company"や筆者も多くのオーディオブックを持っているナイチンゲール・コナン社が出している"AdvantEdge"メルマガなどが参考になるという。

有料の書評サービスでは、Top Pointを紹介している。

ネット書店と一覧性に優れるリアル書店の使い分けも推奨している。ネット書店では、やはり「なか見!検索」ができるアマゾンがいい。


本田さんの本の読み方

本田さんが推奨するレバレッジ・リーディングの最大の特徴は、目的を持って本を読むことだ。

その効果の一つとして、「カラーバス効果」を挙げている。Color bath効果とは、日常生活で、たとえば赤など、ある色を意識すると、やたらとそればかり目に入るという効果だ。車でボルボが多いなと思うと、やたらとボルボばかり目に付く様になるのも同じだ。

本を読む時も、あるイメージ・目的を持って読むと、速く読んでも目的のところに目がとまる効果があり、結果として緩急を付けて、効率よく本が読めるのだと。

こう書くと特別の読書術の様に聞こえるが、実はだれでも新聞を読む時は、同じことをやっているのではないかと筆者には思える。

読む環境も重要で、本田さんは毎朝5時に起きて、バスタブの中で1時間程度読書しているという。筆者は風呂の中で読もうという気にはならないが、筆者の家内は時々風呂で本を読んでいる。そういう人もいるものだ。

レバレッジ・リーディングのもう一つの必須条件が、制限時間を設定して本を読むことだ。本田さんは、大体1〜2時間で、どんな本でも読むと決めているそうだ。

1〜2時間では全部に目を通すわけにはいかないが、全部をすみずみまで読んで、なにも実践しないことより、重要な20%の部分を頭にたたき込んで実践に移した方が投資リターンが多いのだと。パレートの80:20の法則だ。


本をボロボロになるまで使い倒せ

筆者も週3〜5冊、年間200冊程度の本を読んでいるが、このブログでたびたびコメントしている様に、筆者は新刊書でも図書館でリクエストして借りてまず読んで、気に入った本だけ買う主義だ。

こういうと聞こえは良いが、実は筆者は「積ん読」のクセがあり、本を買うと、それで安心してしまい、結局読まないということがしばしばある。また本に線を引いたり、書き込みをすることは好きではない。

だから確実に期限(通常2週間)までに読まなければならない図書館の本のほうが、筆者には向いているのだ。

反対に本田さんは、自腹で買って、(風呂でも読むので)ボロボロになるまで、折り曲げ、線を引き、頭に浮かんだことをどんどん書き込んで本を使い倒せと言う。

単なる本を収益を上げる資産に変えるのだという。

筆者とはアプローチは借りるのと買うのと全く違うが、本を読んで徹底的に頭にたたき込むという目的は同じだ。


最も重要な読書後のフォロー

本田さんは、読んだだけではだめで、せっかく投資した時間とコストを回収するためには、読書後のフォローが絶対必要だと語る。

これには筆者も大賛成だ。

「ウェブ進化論」で梅田望夫さんが、ブログを「究極の知的生産の道具」と呼んで、「どこでもメモ」、ウェブ備忘録の様な使い方を紹介しているが、筆者にとっては、このあらすじブログが、まさにウェブ備忘録なのだ。

本田さんは、「究極の本」をつくるのだという。

それは「レバレッジメモ」と呼ぶもので、本の大事な部分を抜き書きしたメモを自分でつくる。それをA4サイズにプリントして持ち歩き、ちょっとした時間に読み返すのだと。

大体1週間に一回このメモの入力作業を行い、メモがたまったらテーマごとに分類し、何度も読み返して自分の資産とし、実践に活用するのだという。


本田さんもカーネギーの信奉者

このブログで紹介しているサイバーエージェントの藤田晋さん角川春樹さん、ビジネスコンサルタントの新将命さんの共通点は、カーネギーから強い影響を受けたことだが、本田さんもカーネギーの信奉者だ。

普通の本は読み返さないが、カーネギーの「道は開ける」など名著中の名著は、何度も何度も読み返しているという。そのたびごとに線を引く場所が異なり、自分の成長がわかると本田さんは語る。

道は開ける 新装版


最後に本田さんの、「ベストビジネス書」からいくつか抜粋して紹介する。

原理原則の10冊は次の通りだ:

デール・カーネギー 「人を動かす」、「道は開ける」
リチャード・コッチ 「人生を変える80対20の法則」
ジム・コリンズ他 「ビジョナリーカンパニー」
ドラッカー 「プロフェッショナルの条件」
ブライアン・トレーシー 「フォーカル・ポイント」
ナポレオン・ヒル 「思考は現実化する(Think and Grow Rich;リンクはオーディオブックだ)」
藤本義一 「よみがえる商人道」
ブリストル 「信念の魔術」
ジョージ・レナード 「達人のサイエンス」

その他「ウェブ進化論」とか、「即戦力の磨き方」などが入っている2006年のベスト、読んでおくべきビジネス書20が挙げられている。


本田さんの本を読んで、本の活用に対する考え方といい、カーネギーなど名著をいつまでも愛読することといい、筆者と同類の人を見つけた思いだ。


まずは、レバレッジ・リーディングアマゾンのなか見!検索で目次と抜粋を見て興味のほどを確認して頂きたい。


参考になれば次をクリックお願いします。


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2006年04月23日

もう一度読みたかった本 柳田邦男の再読のすすめ 

もう一度読みたかった本


今回紹介する柳田邦男の『もう一度読みたかった本』は柳田邦男氏の個人的なセレクションの解説とあらすじ集なので、そのまたあらすじを紹介することはしないが、筆者には意外な感じのセレクションだった。

平凡社の『月刊百科』という雑誌に、柳田邦男氏が毎月『もう一度読みたかった本』という題で紹介した24冊の名作にまつわる柳田邦男氏自身の思い出、エピソードと、あらすじを集めた本だ。

柳田邦男氏は古希(70歳)になったということだが、この本も団塊世代前後の人が、かつて青春時代に読んだ本を『もう一度読みたい本』として挙げると思われる、いわゆる『青春時代の必読書』を予想していたのだ。

しかし筆者が必読書と思っていた本はあまり含まれておらず、同じ作家の違う本がセレクションに加えられているケースばかりだった。

青春時代の必読書』とか漠然と言っても、人ごとにセレクションは異なるだろうし、また年代毎に異なるとは思うが、それにしても柳田さんの年代なら、この作家のこれははずせないだろうという本が含まれていない。

なぜだかよくわからないが、柳田さんはあえて、その作家の有名になりすぎた不朽の名作はあえて避けたのか、あるいは本当に個人的に思いこみがある作品を集めたのか、どちらかなのだろう。

その人ごとに『もう一度読みたかった本』が、これほど異なるとは新しい発見だった。

たとえば最初の井上靖の『あすなろ物語』だ。


あすなろ物語


『蒼き狼』とか、『天平の甍』とか、『敦煌』『楼蘭』の西域もの、あるいは繰り返しドラマ化されている『氷壁』などが、筆者なら必ず挙げる井上靖セレクションだが、柳田さんのセレクションは異なる。


蒼き狼



天平の甍



敦煌


もともと柳田さんが個人的に思い入れが強い本の選集なので、一般的ではないのが当たり前なのだろうが、やや違和感を感じた。

同様にヘルマン・ヘッセは『車輪の下』ではなく、その前身・姉妹編とも言える『ペーター・カーメンチント』。


車輪の下


トーマス・マンは代表作の『魔の山』ではなく初期の作品の『トニオ・クレエゲル』。


魔の山〈上〉


太宰治は超有名な代表作『人間失格』ではなく初期の『ダス・ゲマイネ』という風だ。


人間失格


今回柳田さんが挙げている24冊のうち、筆者が読んだことがあるのは4冊しかなかった。

筆者は井上靖なら『蒼き狼』か『天平の甍』をもう一度読みたい。

この本に紹介されているからといって『あすなろ物語』を初めて読む気にはあまりならない。

筆者は中学・高校時代はあまり本を読まなかったものだから、大学時代は1日1冊をいわばノルマとして、4年間で1,000冊以上の本を読み、社会人となってからも読書を続けているので、幅広いジャンルの本をかなり読んだつもりになっていた。

しかし、この本を読んで4勝20敗という結果を突きつけられると、いかに自分の読書が偏った分野で、まだまだ読んでいない名作がたくさんあることを思い知らされた。

いずれリタイアした後は図書館にでも通って、いままで読んだことがなかった名作の読書三昧で過ごそうと漠然と考えている人も多いと思うが、そんな時にはたぶん柳田さんのセレクションが役立つだろう。

筆者の様にこのセレクションが心に響かなかった人もいれば、柳田さんのセレクションがピーンとくる人もいるだろう。

いずれにせよ、それぞれが『もう一度読みたかった本』を読んではどうか、というのが柳田さんの提案なのだと思う。

ある意味刺激を受けた本だった。ご興味のある方、特に団塊前後の世代の方は一度手にとって、セレクションに目を通されることをおすすめする。


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Posted by yaori at 22:27Comments(0)TrackBack(0)

2006年03月12日

成功読書術 元アマゾンのカリスマバイヤーが名著30冊を紹介 やはり最初はカーネギーだ

成功読書術 ビジネスに生かす名著の読み方


元アマゾンのバイヤーで、メルマガでビジネス・ブック・マラソンを発行している土井英司さんの30冊の名著の紹介。

アマゾン・ジャパンで立ち上げの1ヶ月前に入社し、4年間仕事をしてきた土井さんは、アマゾンでは一般に言われている専門書が売れる他、古典的名著もよく売れることに気が付いたと。

今注目されているロングテールマーケティングである。

土井さんは出版業界ではビジネス書フリークと呼ばれているそうだ。土井さん自身は『ビジネス書バカ』と卑下しているが、この30冊のセレクションと簡潔な紹介は、さすがと思わせるものがある。

やはり土井さんもカーネギーの『人を動かす』から始めている。


人を動かす 新装版


構成は次の通りだ:

1.人間探求の書

2.勝負師たちに学ぶ極意

3.教えを実践した経営者たち

4.自らを高め、人生に成功する

最後にスティーブン・コヴィーの『7つの習慣』、エリヤフ・ゴールドラットの『ゴール』と続き、トロイ遺跡を発掘したシュリーマンの『古代への情熱』で締めくくっている。


古代への情熱―シュリーマン自伝


学生の時、岩波文庫で『古代への情熱』を読んで感動したことを思い出す。

同じ原書の異なった翻訳本が岩波文庫、新潮文庫、小学館、角川文庫から出ているという本も珍しいのではないか。

それほど時代を通じて多くの人に感動を与えているということだろう。

30冊の中には筆者も読んだことがない本も多い。

筆者の好きなビジネスの達人の新将命さんは、メンターとも言うべき影響を受けた人物としてカーネギー、安岡正篤、ドラッカーを挙げている。

筆者はドラッカーは、最新書も含めて何冊も読んでいるが、どうも頭に入ってこない。

土井さんはドラッカーの1966年発刊の古典的名著『経営者の条件』を選んでいる。この本から、またドラッカーを読み直そうと思う。


新訳 経営者の条件


ケミストリーが合う土井さんの推薦する30冊。すこしずつ読破して行こうと思う。

良い本に会えたと感じる一冊でした。


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Posted by yaori at 11:24Comments(0)TrackBack(0)