2016年12月25日

韓流経営 LINE LINEの世界展開を推し進めた中心人物とは

韓流経営 LINE (扶桑社新書)
NewsPicks取材班
扶桑社
2016-07-02


日本発のSNS、LINE株式会社の成功の裏側をNewsPicksに移籍した「週刊ダイヤモンド」の4人の記者が取材した本。

NewsPicksとは、経済情報に特化したニュースサイトだ。

LINEは日本企業だが、親会社は韓国最大のIT企業ネイバーだ。ネイバーは韓国での検索サービスNO.1で、韓国ではGoogleを寄せ付けない73%という圧倒的なシェアを誇っている。

この本では、次の3つの疑問を記者が追いかけている。

1.誰が本当の経営者なのか?

2.どこが本当の本社なのか?

3.LINEはどのように開発されてきたのか?


ネタバレ的に事実を示すと、LINEのストックオプションのランキング(本書238ページ)で、この答えが大体わかる(数字は丸めている)。

1位 シン・ジョンホ(LINE取締役 CGO 最高グローバル責任者 10.3百万株(想定売却益 152億円)

2位 イ・ヘジン(ネイバー会長) 5.6百万株(82億円)

3位 イ・ジュンホ 1.6百万株(24億円)

4位 パク・イビン 11万株(1億6千万円)

5位 出澤 剛  9万7千株(1億4千万円)

6位 舛田 淳  9万5千株(1億4千万円)

14位 森川 亮 5万3千株(8千万円)

想定売却益は、取得株価を1,320円、公募価格の2,800円で計算したものだ。

上記のストックオプションのランキングは本書238ページに掲載されているが、元々の情報はIPOの時に公開されているLINEの有価証券届出書(新規公開時)の最後の「株主の状況」に記載されている。

これを見るとネイバーの二人が圧倒的な貢献度であることがわかる。LINEは、もともと東日本大震災の際に、電話が機能しなかったことを見たイ・ヘジンが、新たにインターネットを使ったコミュニケーション手法として日本に来て短期間に開発したものだ

LINEの世界展開は目覚ましいものがあると感じていたが、実は韓国にあるLINE+(プラス)が世界展開の中心となっており、初期段階で各国に送り込まれたのは韓国のLINE+の人材だった。

日本のLINEの社員がかかわることは、ほとんどなかったという。

LINEの開発や、世界展開では日本のLINEがかかわることは少なかったが、LINEのマネタイズ(収益アップ)には2010年に買収したライブドアの人材がおおいに貢献した。

スタンプを広告商品として開発したのだ。この本では、その初期のヒットが「 アメイジング・スパイダーマン」の映画キャンペーンの一つとして導入されたスパイダーマンのスタンプだ。



LINEのスタンプのおかげで、スパイダーマンの情報を受け取るフォロワーは113万人に達したという。

LINEは2016年7月にニューヨークと東京で同時上場した。東証のルールは上場会社の35%以上の株式がオープンな市場で取引されなければならないというものだが、同時上場の場合は、このルールは免除される。だから韓国ネイバーが株の80%強を保有したままLINEは東京市場で上場できたのだ。

筆者もLINEを使っており、家族間のコミュニケーションは、昔はメールだったが、今はほとんどLINEだ。非常に便利なLINEは、実は日本の会社というよりは、韓国の会社だったわけだが、そんなことはLINEの価値には関係ない。

世界にはFacebookが買収したWhatsAppという手ごわい競合がおり、LINEはアジア、WhatsAppは欧米というテリトリーわけができている。

上場で資金を得たLINEが、今後どのように世界展開を拡大していくのか。興味のあるところである。

上記のシン・ジョンホさんと、イ・ヘジンさんのリンク先の日経ビジネスの記事を見ただけでも、かなりの情報がわかるが、この本もわかりやすく、よくまとまっている。

お勧めの一冊である。


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2013年07月20日

インデックス倒産 インデックス落合会長の「当てるコンテンツ外すコンテンツ」再々掲

2013年7月20日再掲:

インデックスが倒産した。正確には民事再生法を申請し、行き詰った。松永真理さんや、夏野剛さんが率いてiモードで世界の最先端を行っていたドコモの携帯電話に、「恋愛の神様」などのゲームコンテンツを供給していたのがインデックスだ。

最近のドコモの凋落とソフトバンクの躍進は、まさに時代の変化を象徴している。インデックスの倒産も、ケータイゲームやスマートフォンの流れについていけなかった会社の末路というところだろう。

いわばインデックスのはなむけのために、東京IT新聞の記事を紹介しておく。東京IT新聞とは、宅配で配達されるIT業界やケータイ業界のコンテンツが詰まった密度の濃い新聞だ。

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出典:東京IT新聞

法人名で無料購読できるので、興味のある人は申し込むことをおすすめする。バックナンバーはPDFにしてネットで公開されている。最後のページにある、花くまゆうさくの「iTの汁」マンガも面白い。

ITの汁 第1・2・3巻合冊版  〜ITが分かった気になる脱力4コマ (impress QuickBooks)ITの汁 第1・2・3巻合冊版  〜ITが分かった気になる脱力4コマ (impress QuickBooks)
著者:花くまゆうさく
インプレスコミュニケーションズ/東京IT新聞(2012-05-18)
販売元:Amazon.co.jp


2013年6月12日再掲:

インデックスが粉飾決算の疑いで、証券等取引監視委員会の強制捜査を受けた

一時はIT業界の紳士として、テレビ局や商社などと積極的に業務提携し、勢いがあったインデックスだが、やはり時代の荒波を乗り越えるのは大変だったようだ。

循環取引による売上高水増しという嫌疑がかけられているが、もし粉飾決算が本当だとすると、前回あらすじを紹介した池井戸潤さんの「ロスジェネの逆襲」と同じストーリーになる。

ロスジェネの逆襲ロスジェネの逆襲 [単行本(ソフトカバー)]
著者:池井戸 潤
出版:ダイヤモンド社
(2012-06-29)

昔、ビジネスの関係があったインデックスの人は、現在までにほとんど退社していると思うが、落合さん、小川さんのご夫婦は経営者として残っている。

落合さんは、次のあらすじでもわかる通り、これまで大変な苦労をしている経営者だ。なんとか今回も立ち直ってほしいものだ。

そんな思いを込めて落合さんの「当てるコンテンツ外すコンテンツ」のあらすじを再掲する。


2005年10月1日初掲:

当てるコンテンツ外すコンテンツ―iモード「恋愛の神様」大ヒットの裏側当てるコンテンツ外すコンテンツ―iモード「恋愛の神様」大ヒットの裏側
著者:落合 正美
東洋経済新報社(2001-04)
販売元:Amazon.co.jp


今回のあらすじは長いです。

急成長して話題のケータイコンテンツ会社インデックスの落合正美会長が書いた唯一の本。渡辺専務との共著で2001年5月発刊だ。小川社長は執筆者に名前は連ねていないが、全編にわたり助けていると。

インデックスの株主構成は次の通りだ。現在の時価総額は3,000億円。落合さん、小川さん、渡辺さんは個人でも大株主で、凄い資産家である。

落合正美 101,840株(24.73%)
三菱商事株式会社 30,188株(7.33%)
小川善美 26,762株(6.49%)
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 25,912株(6.29%)
三菱信託銀行株式会社(信託口) 15,301株(3.71%)
株式会社フジテレビジョン 8,160株(1.98%)
渡辺和俊 7,912株(1.92%)
株式会社テレビ朝日 6,480株(1.57%)

インデックスは落合さんが入社した1997年が実質的な創業年だが、この本を出版したのはジャスダックに上場した直後の2001年5月で、2000年8月期の売上高は12億円、経常利益は4億円、社員70名だった。

それが現在は2005年8月期予想で売上820億円、経常利益85億円の規模にまで拡大している。すごい成長だ。

そんな話題の企業インデックスの原点を知るために4年前のこの本を読んでみた。

驚くことばかりだ。

このブログではホリエモンや三木谷さん藤田さん野尻さん、など、様々なベンチャー企業の社長の本を取り上げてきたが、これまで紹介したベンチャー企業の社長の誰とも異なる。

むしろこちらの方が日本の中小企業の苦闘の代表例なのかもしれない。

サラリーマンの筆者にとっては、落合さんの経歴の方が、身近な気がして、元気が出た。かといって、近い存在という意味ではない。やはりサラリーマンと本当のベンチャーとは天と地くらい異なる。落合さんは両方を経験し、修羅場をくぐった経営者である。


落合正美氏の経歴 日商岩井時代まで

落合正美氏は1959年生まれ。1983年に慶応大学を卒業して、日商岩井に入社。

落合さんは慶応ボーイだが、いわゆるお坊ちゃんでは全然ない。埼玉県の川口市のブルーカラーの貧しい家庭に生まれ、高校時代は新聞配達をし、大学は奨学金で進学した。家族旅行もできなかったし、子供時代を振り返るとみじめな想い出ばかりだと。

しかし「その体験があったからこそ落合さんは苦境を乗り切れたのではないか」とある人に言われ、つらい時代が原体験として生きていることを感じたと。

なるほどと思う。

日商岩井では外国為替や営業を経て、経営企画部に配属となり、1992年に日商岩井の社内報トレードピアを制作していたハウスエージェンシーに出向した。

営業時代は金属チタンを売っていたと。筆者もチタン原料を取り扱っていたので、なにか親しみを感じた。

社名を日商岩井色をなくすためPOV(ポイント・オブ・ビュー)に変更し、イベント企画やNIFTYのオンラインショッピング企画などで、2期連続赤字会社を1年で黒字化して頭角を現す。小川さんも渡辺さんもPOV時代の同僚だ。

赤字会社を1年で黒字化した商社マン、社内ベンチャーの成功例としてマスコミにも取り上げられたが、日商岩井の社長交代を期に経営陣と対立し、追いつめられたあげく1997年3月に37歳で日商岩井を退職した。その時の退職金は200万円だったと。


インデックスの誕生

知り合いを頼って、旅行代理店の子会社のノザークBNSの社長となるが、この会社は1億円の負債を抱え、将来に不安を抱いた社員は次々と辞めていった。社長就任後5ヶ月で社名をインデックスに変更。インデックスの健康保険組合は旅行業の組合と聞いているが、それはこんな背景があったのだ。

インデックスという社名は、フレッド・ホープというディズニーランドのテーマパークとかサンリオピューロランドをデザインしたアメリカ人の友人につけて貰った由。

当初は会社をつぶさないためにすぐに入金される足の早い仕事を取って、外国ミュージシャンのイベントプロデュースとかできることは何でもやった。

資金繰りの為に個人的に消費者金融から金を借りて食いつなぐこともしばしばで、車も抵当に入れたこともあった。


コンテンツ事業に進出

なにか仕事が欲しいと日商岩井時代の知人である当時NIFTYの山川常務に会いに行ったところ、「落合くん、これからはコンテンツだよ」とアドバイスされた。

そんなときにPOVで一緒だった渡辺氏が入社、映画館の空席情報をアルバイトを集めて電話で聞き、ニフティに提供する事業を始めるが、赤字だったので3ヶ月で終了。

しかしながらコンテンツがお金になることを知った

さらに1998年1月に同じくPOVで一緒だった小川さんが入社、3人でコンテンツをやることを決意。渡辺氏がポケベル向けコミュニケーションコンテンツ「四次婆」(よじばばあ)を発案、小川さんが企画書にまとめ、ビジネスにおとし、当時のポケベルの最大手東京テレメッセージに売り込み、コンテンツビジネスをスタートさせた。

四次婆は四次元の住人で、どこからともなく現れ、時にメッセージを送ってくるという中高生に大ヒットしたキャラクターだ。PHSのDDIポケットにも採用されるが、DDIポケットの専用端末が必要なこともあり、当初は儲かる商売ではなかった。

このころは落合さんはコンテンツ事業は「儲からないからやめてしまえ」と言っていたと。


ピンチはチャンス

1998年2月に親会社の旅行代理店が倒産、1億円の負債を抱えるが、破産管財人と借金の8割引きで合意する。しかし公私ともに資金が底をつき、落合氏自身が自己破産に追い込まれそうな危機を迎えた時期もあった。

危機を乗り越えられたのは当時の第一勧業銀行四谷支店の融資だ。超軽量ビデオテープを開発した米社とライセンス契約し、売掛債権を担保に合計2〜3億円を調達し、なんとか切り抜けた。

これによって親会社から株を取得することができたし、銀行との交渉術も身につけた。バックボーンのないベンチャー企業経営がいかに厳しいかをスタート時に学ぶことができた。ピンチはチャンスとはよく言ったものだと落合氏は語る。

辛酸をなめた落合氏はベンチャーこそ黒字経営をと説く。ベンチャーキャピタルが鵜の目鷹の目で投資案件を物色し、将来大きく黒字にすれば良いとちやほやしても、それには乗らず、黒字経営は必須であると。社員にコスト意識を植え付け、コンテンツの広告費や、買い取り、運営費などの様々な赤字にしないための知恵を出して資金繰りをつけたのだ。


メディア事業での成功

メディア事業を成功させるには、2つの要件があると落合氏は語る。

一つはトップに闘う姿勢があること、
もう一つは既存のものより個性的なコンテンツ。

そういう意味でこれはベンチャーに向いている事業なのだと。

iモード事件 (角川文庫)iモード事件 (角川文庫) [文庫]
著者:松永 真理
出版:角川書店
(2001-07)

コンテンツの営業では小川さんが先頭にたち、飛び込みで営業した。当時のドコモの窓口はiモードの仕掛け人となったゲートウェイビジネス部企画室長の松永真理さんだった。

ケータイでインターネットに接続できるiモードはユーザーにとっても、制作側にとってもオープンなネットワークで、必ずヒットすると確信していたと。

しかし1998年10月に、占いの『恋愛の神様』をドコモで開始したが、サービス開始から1ヶ月後でもユーザーは1日20名程度で、ドコモからの最初の月の入金は4,000円のみだった。

強気の小川さんも、さすがに心配になり、松永さんのところに行くと、「大丈夫よ」と勇気づけられたという逸話がある。

1999年2月にiモードがスタートして、5ヶ月でiモードユーザーが100万人を突破。後はサクセスストーリーだ。『恋愛の神様』はiモードの占いコンテンツでトップとなり、2001年3月で登録者は35万人を突破した。

『恋愛の神様』ではテーマを占いの中でも恋愛占いに絞り、タロットや四柱推命、ホロスコープなど様々な方法を選べる様にして飽きない様にした。結果として恋愛なしでは生きられない若い女性にターゲットをあわせたことが大成功の秘訣だ。


売れるコンテンツと売れるしくみ

モバイルコンテンツでヒットするのは占い、ゲーム、メール、着メロの四種類で、プリミティブでシンプルなものと渡辺氏は語る。面白いコンテンツは面白い人間がつくると。「仕事、仕事でやってきたクリエーターは信用しない」と。「純文学を読め、人間を知れ」と。

インデックスの成長のもう一つの鍵が、コンテンツ料金が通話料に上乗せで請求できるiモードの課金システムである。ドコモの手数料は9%。ユーザー一人あたり月せいぜい数百円の少額コンテンツプロバイダーには回収リスクがなく、願ってもないビジネスモデルだ。

コンテンツを自前で制作していることもインデックスの強みだ。地道な努力、小さな努力の積み重ねで現在のインデックスはあると。


インデックスの躍進の基盤

2000年3月にはインデックス、現ライブドア、オープンループ等で、モバイルベンチャークラブを設立、2000年5月にはオープンループとインデックス、ドワンゴで、JAVAをつかったケータイコンテンツ開発でコネクトという合弁会社を設立した。JAVAを使うことでiアプリの幅が広がり、動画などもストレスなくケータイで表示できるようになった。

2000年春頃からアジア企業からのアプローチが相次ぎ、小川さんが一人で出張し講演すると、数百人の聴衆が集まり、アジア諸国のコンテンツに対する関心の高さがわかった。

LGテレコムとの提携、台湾インデックス設立などを小川さんが中心にまとめ上げる。社名は台湾インデックスだが、インデックスはマイナー出資で、現地資本がマジョリティ。決して無理をしていない。

海外展開やコンテンツ確保の為、2000年8月に三菱商事、フジテレビ、PCCW(香港)、タカラ、全国朝日放送など13社に第三者割り当て増資で11億円を調達し、将来の基盤をつくった。

渡辺氏は「エンターテインメント系で最も完成されたコンテンツがテレビである」と語る。インデックスは2000年からフジテレビ、全国朝日放送を株主にまねき、テレビとケータイのつながりビジネスを研究してきた第一人者だ。

渡辺氏はじめインデックスのスタッフたちは寝食忘れてコンテンツづくりに夢中になることがある。その楽しさ、奥深さは一度体験したらやめられなくなると。


インデックスの成功の理由

落合氏は最後に語る。きびしいけれど、一度やったらやめられないのが、ベンチャービジネスなのだと。

インデックスは売上高820億円ながら、従業員数は180名のみ。新規事業会社には片道キップで転籍し、背水の陣で臨むのである

ベンチャーの基本、コンテンツビジネスの基本。それをきっちり押さえた身の丈経営。それがインデックスの凄さだ。


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2013年02月27日

MAKERS メイカーズ 「フリー」の著者・クリス・アンダーソンの近著

MAKERS―21世紀の産業革命が始まるMAKERS―21世紀の産業革命が始まる
著者:クリス・アンダーソン
NHK出版(2012-10-23)
販売元:Amazon.co.jp

前作「フリー」を大ヒットさせた米国「ワイアード(Wired)」誌編集長、クリス・アンダーソンの近著。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp

Wired [US] March 2013 (単号)Wired [US] March 2013 (単号)
Conde Nast Publications(2013-02-22)
販売元:Amazon.co.jp

「MAKERS」というタイトルでもわかる通り、今度は製造業だ。

いま世界中におよそ1,000か所以上の工作スペースがあり、その数は増えている。キンコーズのような誰でも使える工作スペースを展開しているのがTechShopだ。

手作り品の職人のためのウェブ市場、Etsyでは、2011年に100万人の売り手が、5億ドルを超える取引を行った。サンマテオはじめ、各地で開催されるメイカーフェアは、どこも盛況だという。

オバマ政権は、2012年から4年間で、全国の1,000か所の学校に3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備した「工作室」を開くことを決定した。

オンラインを、現実の製造の世界にも持ち込めることになってきたのだ。

何千という中小のメイカーが、キックスターター(Kickstarter)をはじめとするクラウドファンディングでプロジェクト資金を調達している。

いままではオンライン・スタートアップ企業はオンラインのみのサービスが多かったが、いまやリアル世界の製造業スタートアップ企業が増えているのだ。

特に少量の小口生産品などは、企業がつくると多額の費用が掛かるが、個人で金型などを作って、製造すればむしろ企業より個人の方が競争力がある。

それを可能としたのは、3Dプリンターや、3Dスキャナーなどの情報機器と、小口でも部品の注文に応じることができるインターネット企業だ。誰でもアイデアさえあれば、製造業を始められる時代になったのだ。

立体造形できる積層式3Dプリンター 良蔵 (よいぞう)
立体造形できる積層式3Dプリンター 良蔵 (よいぞう)

3D Printer Printrbot LC キット3D Printer Printrbot LC キット
Printrbot LC
販売元:Amazon.co.jp

この本では、具体的な例として次のようなものをあげている。

★娘たちのドールハウスの家具
種類が少ない上に、高価なドールハウスの家具も、自分で3Dプリンターでつくれば、思い通りのデザインとサイズのものができる。

デザインは3Dデザイン共有サイトのThingivereseで手に入れ、3Dプリンターをつないで、「作成」をクリックすると、20分後にはドールハウス用の家具が完成したという。

ちなみにThingivereseは3DプリンターのMakerBotと提携している。

3D Printer MakerBot Replicato singletype3D Printer MakerBot Replicato singletype
MakerBot
販売元:Amazon.co.jp


★歯科矯正用のマウスピース
すこしずつ形を変えたマウスピースを2−3週間ずつ装着し、数か月かけて歯の位置を調整することができる。

専用ソフトウェアを使えば、すこしずつ形を変えて最終的な理想形まで到達するまでの中間的なマウスピースを簡単に制作できる。

★3Dプリンターでチョコレートなどを押し出してカップケーキの装飾をつくる

★バイオプリンターで幹細胞(ES細胞)の層を積み重ねて臓器をつくる
まだ実験段階だが、将来は、iPS細胞が使えるようになるだろう。

ローカルモーターズという自動車会社は、自分たちで自動車をつくりたいという2,000人がアイデア、知識を持ち寄って、一部は既存の車の部品を活用することでラリーファイターという車をつくりあげた。

次のビデオがローカル・モーターズの製造現場を紹介している。



★ローカルモーターズは国防総省のクラウドデザインによる次期戦闘用車両(XC2V)のコンテストにも優勝している。次のビデオがデザインを基にモデルを実際に手作りで仕上げている様子を紹介している。



★ブリックアームズは、レゴの正規品にはないAK−47などの現代的な武器をレゴ用につくっている。まずはCADソフトでデザインしてデスクトップの工作機械で試作品を作る。それが良ければ金型をつくって、米国国内の工場で射出成型して販売している。レゴ本社では、現代的な武器はご法度なので、こういった傍流レゴを容認している。

★BtoBでは、2000年前後に、はやったe-steelやメタルサイトなどのBtoBサイトや逆オークションなどは、ITバブルにまぎれて衰退した。残ったのはMFGドットコムという、特注品の見積もりを取るサイトだ。見積もり比較の機能はなく、入札もないが、これで十分だったという。

逆オークションについては、筆者も一時注目して、これが筆者が鉄鋼原料からIT業界に移るきっかけとなった。

CADの図面を送って、見積もりを取るだけという単機能でよかったと言われると、その通りかもしれないと思うが、こういった工業用の資材には品質の問題がある。

サプライヤーの品質が信頼できるのかどうかわからない。

それがこのブログでも紹介した中国発のBtoBサイト、アリババの問題でもある。

ちなみに、アリババの創業者・ジャック・マーは、著者のクリス・アンダーソンが初めて会った時は体重35キロくらいで、英語が抜群にうまかったという。

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦
著者:張 剛
東洋経済新報社(2010-07-09)
販売元:Amazon.co.jp

結局はBtoBの工業用資材には簡単な調達法はないのだ。

アマゾンのジェフ・ベゾスがMFGドットコムに注目し、大株主となった。いまでは、20万人以上の会員がいて、これまでに1150億ドルの取引が行われ、ひと月の取引額は20〜40億ドルに上るという。

どんな会社でもCADファイルをアップロードすれば、見積もりを取ることができる。これは同じファイル形式を使っているから、情報伝達のロスがなくなり、取引コストが下がったからだ。

この他にも最新の事例が紹介されている。いつもながら、刺激に富む本である。


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2012年11月18日

Steve Jobs Special スティーブ・ジョブスと11人の証言

Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言Steve Jobs Special ジョブズと11人の証言
著者:NHKスペシャル取材班
講談社(2012-09-27)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ステーィブ・ジョブスを特集した「NHKスペシャル」の取材班が、スティーブ・ジョブスを取り巻く11人の知人にインタビューした内容を公開した本。テレビ番組だと時間の都合でカットせざるを得なかった部分を公開している。

最初に国谷キャスターのスティーブ・ジョブスへのインタビューが掲載されており、そのあとに次の11人のインタビュー内容が紹介されている。

1.スティーブ・ウォズニアック(アップルの共同創業者)

2.ダニエル・コトケ(リード・カレッジの同級生でアップル創成期の社員。スティーブとインドを4か月間一緒に旅行)

3.ビル・フェルナンデス(アップル創成期のエンジニア。ユーザーインターフェースアーキテクト。ウォズとスティーブを引き合わせる)

4.ラリー・テスラー(元ゼロックスパロアルト研究所所員でスティーブにGUIを見せる。アップルに転職)

5.リッチ・ペイジ(初期のアップル・フェローの一人。モトローラのマイクロプロセッサーを搭載した開発にかかわり、スティーブと一緒にNeXTへ転職)

6.ジョン・スカリー(スティーブを追い出した元アップルCEO。ペプシコCEOの時に、スティーブから「一生砂糖水を売り続けたいのか?それとも、私と一緒に来て世界を変えたくはないか?」と口説かれた)

7.福田尚久(アップル日本と本社に勤務した)
8・前刀禎明(さきとうよしあき)ライブドア創業者。元アップルジャパン社長

9.ダグ・キットラウス(アップルに買収された音声認識ソフトのSiri共同創設者)

10.ウォルター・アイザックソン(「Steve Jobs」伝記作家)

11.孫正義


現実歪曲フィールド

ウォズニアックは、「現実歪曲フィールド」とは、「どんな無理なことでも、現実を曲げてでも実現させてしまう」というスティーブの性格を表したもので、スティーブが言いだすと、全く現実的でない彼の意見に賛同してしまったり、実際に彼の言った通りになってしまうことだという。

スティーブがビジョンを説得力を持ってプレゼンすると、不思議に実現できそうに思えてくる。これが「現実歪曲フィールド」の力だ。

実際に、起動システムの担当者に「10秒早めてほしい」と伝え、担当者が無理だと言い張ると、「もし君の努力で、人の命が救えるとしたらどうだい?」(数百万人が10秒ずつ短縮できれば、一生分以上の時間が短縮できる)と呼びかけ、わずか数週間で20秒短縮できたという。


スティーブの尊敬していた人

スティーブの尊敬していた人は、ボブ・ディランガンジーアインシュタインエジソンだった。それゆえ、IBM PCに対抗するアップルのThink Different」の広告ができたのだ。



ゼロックスの種をアップルが木に変えた

ゼロックスのパロアルト研究所がGUIやマウスを開発し、それを見たスティーブが衝撃を受けて、アップルが製品として開発した。

アップルはゼロックスのアイデアの「種」を様々な機能を加えることで使いやすくして、「木」に変えたのだと。


戻ってきたスティーブは優秀な経営者に成長

スティーブはいったん、アップルから追い出されるが、アップルがNeXTを買収したので、アップルに戻ってきた。

アップルに戻ったスティーブは、去った時とは全く違う優秀な経営者になっていたという。


今回インタビューにも登場するウォルター・アイザックソンが書いたスティーブの公式伝記はだいぶ前に読んだが、まだあらすじをアップしていない。

スティーブ・ジョブズ Iスティーブ・ジョブズ I
著者:ウォルター・アイザックソン
講談社(2011-10-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

スティーブ・ジョブズ IIスティーブ・ジョブズ II
著者:ウォルター・アイザックソン
講談社(2011-11-02)
販売元:Amazon.co.jp
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大変興味深い本だった。時間を見つけて、こちらのあらすじもいずれアップする。


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2012年07月18日

サイバーテロ 漂流少女 情報セキュリティの専門家が書いた小説

サイバーテロ 漂流少女サイバーテロ 漂流少女
著者:一田和樹
原書房(2012-02-16)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

情報セキュリティの専門家で、情報セキュリティ専門サイトScanNetSecurity「工藤伸次のセキュリティ事件簿」という連載を書いている一田和樹さんの小説。

一田さんは、バンクーバー在住の作家で、サイバーセキュリティコンサルタントをやっており、ブログを開設している

筆者も情報セキュリティの専門家なので、楽しく読めた。日本の情報セキュリティの専門会社(株)ラック(株)ネットセキュリティ総合研究所の専門家たちが、査読をしたそうなので、小説とはいえ実際に起こりうるリスクを取り上げていて参考になる。

読んだときに興ざめなので、小説のあらすじは詳しくは紹介しない。

最初に街頭に立つ少女が、パソコンを操ってBluetooth通信で、主人公の乗るタクシーを制御不能に追い込んで事故を起こさせるシーンが出てくる。

日本では半信半疑に思う人が多いかもしれないが、米国に駐在していた筆者はエンジンが止まってハンドルがロックされた経験があるので、これはありうると感じた。

日本では聞かないが、これは「ストーリング」といって、20年ほど前までは米国車では非常に多いトラブルだった。

自動車はパワーステアリング、パワーブレーキが多いので、エンジンが急に止まるとハンドルがロックされ、ブレーキも効かず、運転不能に陥る。急いでシフトをニュートラルに戻し、再度エンジンをかけなる必要がある。

筆者が最初の米国駐在の時にかったGMのビュイック・センチュリーは、調子の悪いときは、会社に行くほんの30分の間に何度もエンジンが止まったことがある。それが夕方帰宅するときは、一度もエンジンが止まらず、全く問題ないという不思議な現象だった。

安全性に問題があり、修理してもまた同じ問題が発生したので、結局本田(アキュラ)レジェンドに変えたら、問題がなくなった。

最近の自動車はECUという電子制御ユニットが搭載されており、マイコンで様々なコントロールを行っている。各パーツ同士の通信は無線化されているのだという。

米国のワシントン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校は、共同研究でフォード車を使って、時速45キロで走行中の車をハッキングできることを実演したという。電波の届く範囲は40メートルだった。

この小説では、単なるウェブサイトの不正アクセスや改ざんなどではなく、産業システムに組み込まれた工場や発電・送電等プログラムへの攻撃や、金融システムの混乱を誘引するサイバーテロを描いている。

ひそかに入手した個人情報と最新のアンチウィルスソフトを偽装したスパイウェアを用いて、何百万人ものオンラインバンキング口座から金を引き出すことなど、日本社会全体がマルファンクション(誤操作)に追い込まれる危険性を描いている。

主人公が日本のNISC(内閣官房情報セキュリティセンター)にも一目置かれているフリーランスの情報セキュリティ専門家で、ストーリーも日本のセキュリティ専門家たちの子供たちがからんでくるという、ちょっとありえないような設定ではあるが、サイバーテロの描写や手口は真に迫っており、楽しく読める。

ベストセラーになるような小説ではないが、情報セキュリティに関心のある人には参考になり、楽しく読めると思う。


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2012年07月15日

Galaxy S III パーフェクトマニュアル スマホにはマニュアルは必須だと思う

GALAXY S III Perfect ManualGALAXY S III Perfect Manual
著者:福田 和宏
ソーテック社(2012-06-30)
販売元:Amazon.co.jp
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10日ほどまえに、携帯電話を長年使っていたドコモP905iから、サムスンのGalaxy S IIIに代えた。

スマートフォンがおさいふケータイに対応するのを待っていたところ、Galaxy S IIIが対応したので、それで機種変更の決断がついた。

さっそくiDと、モバイルスイカ、ナナコモバイルを入れた。

CIMG3189






これらの電子マネーを移行するためには、いったん前の機種で残高をサーバーに預ける処理をして、パスワードを受け取り、今度は新しい端末でアクセスして、そのパスワードを使って残高を移行するという手続きが必要となる。

スイカ、iD、ナナコは問題なくでき、あとはヤマダ電機のケイタイdeポイントを移行するのみだ。

おさいふケータイは問題なく操作できたが、問題はその他の操作だ。電話もメールもインターネットも勝手が違って、非常に使いづらい。大体、インターネットを見た後、どうやって終わるのかよくわからない。

iModeはインターネット接続を切る操作がわかりやすかったが、Galaxyではいまだにどうやったらネット接続を切れるのかわからない。それがマニュアルを買った理由でもある。

iPhoneも同じらしいが、スマホは電池消費は激しく、短くて2日長くても3日で電池を使い切ってしまうので、充電器は欠かせない。

付属しているマニュアルはエコなのかもしれないが、豆本みたいなもので見づらく、使いづらい。やむなく買ったのが、このパーフェクトマニュアルだ。マニュアルを読んで使い方をもっと研究してみる。


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2012年05月28日

理系の人々3 セキュリティの話題が増えてるね!

理系の人々 3理系の人々 3
著者:よしたに
中経出版(2012-04-07)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで紹介した「理系の人々」の最新作。

理系の人々理系の人々
著者:よしたに
中経出版(2008-09-27)
販売元:Amazon.co.jp
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「理系の人々2」も紹介している

理系の人々 2理系の人々 2
著者:よしたに
中経出版(2010-03-26)
販売元:Amazon.co.jp
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今度はセキュリティ関係の話題が目立つ。たとえばこんな場面だ

scanner357











データセンターや客先で作業する時は、USBメモリーの使用を厳禁されているマンガが2場面もある。

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客先ではCDしか認められていないようだ

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そして会社からメールを打つときは、メール添付にしてパスワードを掛けるのが必須だ。

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自分のPCを兄弟や親戚にあげる場合でも、データを残すことは情報漏洩の恐れがあるので、絶対に避けるべきだ。実際に親類にあげたPCから個人情報が漏洩して、悪意ある第三者がShareやWinnyに再流出させた事件も起こっている

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個人情報保護、情報セキュリティ確保のために、エンジニアにも厳しいルールが適用されていることがわかる。

もちろんいつもの理系クンシリーズのネタも多い。

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奥さんとの会話のネタも面白い。

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「好きな女の子のタイプは?」と聞かれて、機能で答えるというのも、いかにも理系らしい洞察だ。ちなみによしたにさんは33歳で独身。

scanner355












今回はJAXAの筑波宇宙センターを見学に行った話も載っている。



気軽に楽しめるSEマンガである。興味がある人はよしたにさんの「Tech総研」での連載をチェックして欲しい。


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2012年02月15日

入社1年目の教科書 ライフネット生命保険会社の岩瀬大輔さんの本

入社1年目の教科書入社1年目の教科書
著者:岩瀬 大輔
ダイヤモンド社(2011-05-20)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログでも「超凡思考」を以前紹介したライフネット生命保険の副社長・岩瀬大輔さんの仕事のやり方指南本。

岩瀬さんの「ハーバードMBA留学記」を読んで以来、岩瀬さんの本は大体読んでいる。注目している若手経営者・オピニオンリーダーの一人だ。

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)
著者:岩瀬 大輔
文藝春秋(2009-05-08)
販売元:Amazon.co.jp
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岩瀬さんは会社(リップルウッド)をやめて自費でハーバードMBAに留学した。留学時代のブログをまとめた本が「ハーバードMBA留学記」だ。もともとそのつもりだったのかどうかわからないが、本の印税で留学の経費は賄え、今は文庫にもなっているので、会社をやめて留学するという思い切った決断だが、十分リターンはあったのだろう。

もちろん留学して得た知識や人脈は財産となっており、ダボス会議の「ヤング・グローバル・リーダーズ2010」にも選出されている。

この本は、今年就職する長男に参考になるのではないかと思って読んでみた。岩瀬さんの「ハーバードMBA留学記」は既に渡してある。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見てほしい。「何があっても遅刻するな」や「宴会芸は死ぬ気でやれ」とか、実践的な内容であることがわかると思う。

合計50のタイトルで説明しており、最初に仕事において大切な3つの原則として次を挙げている。

原則1 頼まれたことは、必ずやりきる

原則2 50点で構わないから早く出せ

原則3 つまらない仕事はない


社会人になると「信頼できるかどうか」が重要な判断基準となる。職場の仲間でも、取引先でも同じことだ。岩瀬さんの上記の3原則は、新人が「頼れる人」と見なされる上で重要なポイントだと思う。

特に原則3の「つまらない仕事はない」は、楽天の三木谷さんも「成功の法則92ケ条」に、当時の東京銀行に入行して配属されたルーティン業務の代表格の外国為替部門でも、クサらず積極的に取り組んで成果を出したことを書いている。

成功の法則92ヶ条成功の法則92ヶ条
著者:三木谷 浩史
幻冬舎(2009-06)
販売元:Amazon.co.jp
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外国為替業務といっても、多くの人にはピンと来ないだろう。筆者も商社マンなので、昔は貿易実務を担当していた。

主に原料の輸入をやっていたが、輸出もやったことがある。輸入の場合にはL/C(Letter of Credit)という信用状を銀行に開いてもらって、輸出者が銀行に要求された船積書類を持ち込むと、銀行がチェックして問題なければ、輸出者に輸出代金が支払われる仕組みだ。

三木谷さんの言っているのは、そのような信用状関連の業務だと思う。筆者も大手町の旧・日本興業銀行本店に行ったことがある。

三木谷さんの本では、銀行の外為業務はルーティンでつまらない業務と見なされていたようだが、商社マン、特に若手担当者にとっては銀行経由送られてくる船積書類が要求通り作成されているかどうかをチェックするのが重要な役目だった。

というのはもし輸出者が要求通り船積書類を作成していないと、再作成を要求でき、支払いを延ばすことができるのだ。当時のドル金利は10%を超えており、金額が数百万ドルと大きいので、1週間でも支払いを延ばせればかなりのコストセーブになる。

それこそ目を皿のようにして、船積書類をチェックした。その時代から書類チェックは筆者の好きな業務で、全然ルーティンだなんて思っていなかった。同じ外為業務でも支払い手段を提供している銀行の人と、実際に貿易をしている商社マンとは違うのだと思う。

脱線したが、どんな仕事でもつまらない仕事はない。文字通り「一所懸命」ということだと思う。

「なか見!検索」で目次を見れば、大体の論点は分かると思うので、ここでは参考になった点を紹介しておこう。


★「岩瀬さんは、いい意味でコンサルタントっぽいよね。」

岩瀬さんは、他の業界の人にこういわれたという。

ある業界の市場規模、現在のシェア、シェアの推移、各社の収益率の差異、商品ごとのポートフォリオ、それぞれの収益性、将来の展望、海外との比較、規制や技術革新の状況…。

岩瀬さんが最初に就職したのは、ボストン・コンサルティング・グループだったので、コンサルとしてトレーニングする中で、上記のようなポイントで、常に業界がどのように動いているかというマクロの視点でものを見る習慣がついているのだと。

営業マンは明日のことを考え、部長は1か月先のことと考え、本部長は1年後のことを考え、社長は5年後のことを考えている。

だから経営者と話すときは、時間軸が違うことを念頭に入れておく必要がある。全体像を見る視点を持った人と付き合うことが重要だと語る。


★ライフネット生命の顧客開拓は大学生から

このブログでも紹介した和田浩子さんの「P&G式世界が欲しがる人材の育て方」を読んで、小学5年生から生理用ナプキンを配るという話を知り、岩瀬さんは感心したという。

P&G式 世界が欲しがる人材の育て方 日本人初のヴァイスプレジデ<br>
ントはこうして生まれたP&G式 世界が欲しがる人材の育て方 日本人初のヴァイスプレジデ
ントはこうして生まれた

著者:和田浩子
ダイヤモンド社(2008-08-22)
販売元:Amazon.co.jp
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そこでライフネット生命保険は大学生に向けた宣伝活動を開始した。大学生は生命保険は買わないが、数年後は生命保険を買うようになる。だから「ライフネット生命お薦めの10冊」といった広告を出したのだ。


★趣味を伸ばすこと、本を読むこと、体のコンディショニングなどは、仕事が終わってからの空き時間で済ますような重要度の低いものではない。

岩瀬さんも当初はわからなかったが、だんだんに趣味、読書、健康の重要性に気がついてきたという。少なくとも飲みに行って遊んでいるヒマがあったら、成長するための自己投資に時間を使うべきだと。

筆者は今でこそ、週5冊以上、年間300冊程度本を読んでいるが、20代は月に1冊本を読めばよいほうだった。それがだんだん読書量が増えてきたのは、本好きの家内と結婚したことが大きな要因だと思う。

子どもが生まれる前も一緒に図書館に行っていたが、子供が絵本を読むようになったら、毎週のように図書館に通うようになって、筆者の読書量も増え始めた。通勤時間の2〜3時間はみっちり本を読むようになってきた。

アメリカ駐在の時は、車で通勤していたので本は読めないため、オーディオブックで本を読んで(聞いて)いた。最初はカセットブックだった。日本の電車通勤は時間的に長いが、筆者は日本の通勤の方が好きだ。本が読めるからだ。

筆者の場合、昔は図書館をほとんど利用せず、もっぱら本は買っていたが、本を買うとそれで安心してしまい、「積ん読」になってしまうパターンが多かった。その点で、図書館を利用して2週間以内に必ず読んで返すというパターンは筆者にぴったりだった。だから読書量が増えたのだ。

そうはいっても、筆者は読書量を誇るつもりはない。本を読むだけだったら、たぶん年間500冊だって読めるだろう。問題は本から何を得て、自分の身につけられるかどうかだ。

その意味では、このブログは筆者の「外部記憶媒体」として、大変役立っている。たぶんブログがなかったら、筆者の読書も単に量だけのものだったろう。

ブログの一番のメリットは、本の内容を忘れていても、ブログトップの検索窓でキーワード検索すれば、その記事が出てきて、それを読めば記憶がよみがえることだ。年間300冊位読む本の内容はいちいち覚えきれない。そんな時にこのあらすじブログが役立つ。

2006年にベストセラーとなった「ウェブ進化論」の梅田望夫さんは、「ブログは究極の知的生産の道具」と言っていたが、その通りだと思う。

既にこのブログのエントリー数は750を超えている。紹介した本は全部で1,000冊以上だろう。ぜひ筆者の例を参考にして、自分の「外部記録媒体」としてブログやSNSを活用してほしい。

ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる (ちくま新書)
著者:梅田 望夫
筑摩書房(2006-02-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

閑話休題。


★苦手な人には「惚れ力」を発揮

以前ブライダル関係の人に講演を依頼した時に、「なかなか結婚できない人は、惚れ力を磨け」と言っていたという。

条件に固執して、結婚相手のあら探しばかりしてはいけない。相手のどこか良いところを探して、そこに惚れる。それが「惚れ力」なのだと。

人間関係でも付き合いにくい人がいたら、それを克服するのが「惚れ力」だ。つまり相手の良いところを見て、悪いところばかりみないということだ。

ポジティブシンキングの人間関係版というところだろう。


★いきなりテレビのワイドショーに呼ばれたら

岩瀬さんは消費税や国家財政についてのワイドショーでゲストに呼ばれたという。そのためにまずは10冊ほど関連する本を大人買いした。

次にしばらく会っていなかった財務省の友人に電話して、昼食を取りながら相談したら、財務省の課長クラスの人が2人でレクチャーしてくれることになったという。

次に外資系投資会社の友人に連絡してチーフエコノミストに紹介してもらい、財務官僚とは逆の立場からの意見を聞く機会をつくった。そのチーフエコノミストとは2時間も昼食を一緒にしながら、いままで調べたことで疑問に思ったことを質問したという。

これだけの準備をしてテレビの収録に臨んだので、聞かれても気の利いたことがいえる結果となったという。

参考になる対応だと思う。


新入社員や若手社員を念頭に書かれた本だが、ビジネスの基本を押さえており、参考になる。冒頭で紹介した三木谷さんの体育会系の「成功の法則」とあわせて読むと良いと思う。

お薦めの本12冊に自分の本2冊とライフネット生命の社長の出口さんの本が1冊出てくるのは、やや興ざめだが、もともとライフネット生命保険がターゲットとしている若手社員向けの本だから、自社の宣伝が目につくのはやむを得ないところだろう。

まずは「なか見!検索」で目次を見てみることをお勧めする。


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2012年01月20日

Yahoo!創業者 Jerry Yang Yahoo!退社 Yahoo!創業時の様子

Yahoo!の創業者Jerry YangがYahoo!から退社した。

最近は"Chief Yahoo!"というタイトルだったJerryだが、Yahoo!をめぐる買収の話が高まるにつけ、現経営陣との意見の調整がつかなかったようだ。

Yahoo!創業時の様子を、筆者の友人の米国のアナリスト・ベンチャー投資家のSteve Harmonが自身のウェブサイトで公開しているので、紹介しておく。

Yahoo!創業時の様子を伝えるSteveのサイト:

SteveHarmon







初期のYahoo!の画面:

First Yahoo!







出典:いずれもsteveharmon.com

ビル・ゲイツは慈善活動に専念。今度伝記を紹介するスティーブ・ジョッブスは亡くなり、現役でバリバリはアマゾンのジェフ・ベソスくらいか。

一つの時代が終わったという感じだ。


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2011年11月15日

全貌 ウィキリークス メディアのアナーキズム登場

全貌ウィキリークス全貌ウィキリークス
著者:マルセル・ローゼンバッハ
早川書房(2011-02-10)
販売元:Amazon.co.jp
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日本のメディアにはほとんど登場しないので、最近あまり話題になっていない機密情報暴露サイトのウィキリークスについて独・シュピーゲル誌の記者が書いた本。

シュピーゲル誌は、2010年6月に米・ニューヨークタイムズ紙、英・ガーディアン紙と一緒に、ウィキリークスが9万件ものアフガニスタン戦争の戦争日誌を公開する前に、既存メディアとして情報の分析に協力するとともに、確認できた情報を自己判断でニュースとして流すことに合意した。

ウィキリークスがこれだけ広く認知された過程では、既存メディアの協力もあった。

この3誌合同のプロジェクトはKabul Recoveryというコードネームで呼ばれ、英国ガーディアン紙の本社オフィスに拠点が置かれた。ウィキリークス創設者のジュリアン・アサンジと各紙の記者は4週間にわたり共同作業を続けたという。

著者のシュピーゲルの記者たちがジュリアン・アサンジに最初にあった時は、共同プロジェクトの最中で、アサンジはひげもそらず青白い顔色で数日前から着続けている服を着て、靴を履かずに靴下だけであらわれたという。


創始者ジュリアン・アサンジの経歴

ウィキリークスの創始者で唯一の決定権者のジュリアン・アサンジはオーストラリア生まれ。ヒッピーで売れない絵描きのシングルマザーに育てられた。

母親はジュリアンを育てながら、いろいろなパートナーと同棲と結婚を繰り返し、一時はカルト教団の信徒に付きまとわれたこともある。

アサンジはきちんとした教育は受けたことがなく、通った学校は37校にものぼる。しかしアサンジの知能指数は147−180だという。

アサンジは最初にコモドール64というホームコンピューターのとりことなり、あっというまにプログラミング言語をマスターし、13歳でシステムのセキュリティを破るクラッキング専門のハッカーとなった。自らを「マッド・プロフェッサー」というコードネームで呼んでいたという。

当時は電話線で回線をつなぎ、音響カップラーで通信していたという。

音響カプラ





出典:Wikipedia

音響カップラーをご存じの人は少ないと思うが、筆者は最初の米国駐在の時に(1986年〜1991年)重さ10キロくらいの携帯用のテレックスマシンを持っていた。米国内の出張のときはそれを持参して、ホテルや公衆電話からテレックスを送っていた。

当時の電話機はモジュラージャックがついていない機種もあり、そのときはこの音響カップラーを受話器にむすびつけて、受話器経由で信号を送っていたのだ。ちょうどファックス送信の時の音のような感じだ。

駐在の最後の1991年ころになるとパソコン通信が始まったが、1986年当時はまだeメールはなく、テレックスの時代だったのだ。

閑話休題。

アサンジはハッカーとしての活動について語らないが、仲間と一緒にNASAのシステムに侵入したりしていたらしい。彼らは自らを「ハックティビスト」と呼び、権力に抵抗していた。

アサンジ自身の最後の学歴はメルボルン大学数学科だ。メルボルン大学は米国陸軍から砂漠での自走車両走行の最適化のプロジェクトを受託していたという。アサンジは「殺人機械の最適化」に嫌気がさし、退学した。

その後アサンジは友人を通じ、オーストラリアの反戦運動家で現国会議員のアンドリュー・ウィルキーや、ベトナム戦争の機密文書を7,000ページを「ペンタゴン・ペーパーズ」としてリークしたダニエル・エルズバーグなどと知り合いになった。

ダニエル・エルズバーグはランド研究所員として米国国務省の依頼でベトナム戦争の分析に携わり、「ペンタゴン・ペーパーズ」の執筆者の一人でいながら、情報をリークするというまさにウィキリークスの先達となる存在だ。この「ペンタゴン・ペーパーズ」は今は情報公開法に基づき、一部が公開されている。


ウィキではない

ちなみにウィキペディアの創設者のジミー・ウェールズは、ウィキリークスを非難して、次のように語っている。

「私はウィキリークスを敬遠し、本当は彼らがこの名称を使わないようにと望んでいるほどです。『ウィキ』ですらないのですから。」

たしかに「ウィキ」(不特定多数が寄ってたかって作り上げる)ではない。筆はジミー・ウェールズの意見に賛成だ。


「コラテラル・マーダー」ビデオの公開

ウィキリークスを一躍有名にしたのは、米軍のアパッチヘリコプターが、テロリストと間違えてロイターのカメラマンと運転手を含むイラクの民間人を攻撃した事件の一切が映っているビデオだ。

コラテラルとは付随的という意味で、「コラテラル・マーダー」とは、シュワルツネッガーの「コラテラル・ダメージ」という映画を連想させる題名だ。



事件は2007年7月12日にイラクのニュー・バクダッドで起こった。

ロイターのカメラマンと運転手は小火器を使った戦闘があったというしらせで現場に直行したところ、背中のカメラを米軍のアパッチヘリコプターのパイロットに武器とみなされ、30ミリ砲の攻撃を受けたのだ。

その場にいあわせた12人全員が死亡した。助けようとやってきたミニバンも銃撃され、乗っていた子供も重傷を負った。そのビデオがウィキリークスで公開され、世界中に報道されたのだ。



このビデオは元兵士のブラドレー・マニングが、軍のワークステーションで特別に保護されたネットワークからダウンロードしてCDに焼いて持ち出し、アサンジに送ったのだ。マニングも元ハッカーだった。マニングは米陸軍当局の徹底的な捜査で、情報源として特定され、機密漏えい罪で逮捕された。


次々と公開される秘密書類

次の大スクープとなったのは前述の報道機関3社との共同で検証していた「アフガニスタン文書」だ。9万件もの戦争日誌である。

これは2010年7月に報道機関3社と一緒に公開され、現在もウィキリークスで"wardiary"として公開されている。

「アフガニスタン文書」に続き、2010年10月には39万通にものぼるイラクからの戦争報告も公開された。

戦争日誌では、テロリストから自白を得るためにイラクの警察が拷問していても、米軍は見て見ぬふりをしている事実などが明るみにでた。

そして2010年11月末に米国の外交公電25万件が公開された。1966年12月から2010年2月までの外交公電が含まれており、その中には駐在大使のざっくばらんな現地政府高官や実力者の評価などが含まれていた。

たとえばタイのタイイップ・エイドリアン首相はスイスに8つの隠し口座を持っているのではないのかといった汚職情報や、ロシアとの天然ガスの取引でベルルスコーニ首相が巨額を手にしたとか、メドベージェフ大統領は「見習い」で、プーチンが「群れのボス犬」で、「バットマン」(メドべージェフはロビン)だとかいった情報が数限りなく含まれている。

ヒラリー・クリントン長官名で大使館関係者に、国連と国連の首脳について徹底的な調査を指示しだ2009年7月の極秘扱いの公電も公開された。

あれやこれやでヒラリー・クリントン国務長官は、各国の外務大臣や政府高官に謝罪の電話をかけまくらなければならなかった。


米国政府のウィキリークス封じ込め

米国政府はウィキリークスを壊滅させることを決心した。各国政府によびかけ、様々な妨害活動を開始した。

まずはウィキリークスサイトに大量のDoS攻撃があった。ウィキリークスがアマゾンのEC2クラウドサーバーを利用しはじめると、アマゾンはすぐにサービスを打ち切った。

EveryDNSはDNSサービス提供を解約し、URLでは検索できなくなった。ウィキリークスの英国の銀行口座は閉鎖され、eBayはpaypalサービスの解約を通知、VISA、Mastercardも解約、いずれもウィキリークスへの送金を拒んだ。

これでウィキリークスへの小口献金の道はほとんど閉ざされた。ドイツの財団だけがウィキリークスへの資金援助を続けている。

こういった反ウィキリークスの動きに対して、ウィキリークスのサポーターたちは、大量ミラーリングを呼びかけ、数日のうちに1,200以上のウィキリークスのコンテンツを複製したミラーサーバーがインターネット上に誕生した。


アサンジの逮捕

アサンジにはインターポールから国際指名手配が出された。

女性二人への強姦(コンドームなしのセックス強要)の訴えがあったスウェーデンでは、2010年8月にいったん不起訴処分となっていたが、同じ容疑でインターポールから国際指名手配が出されたのだ。

アサンジはロンドンの警察署に出頭、逮捕されたが、支持者が保釈金を払って釈放された。


哲学的問題

ジャーナリストが書いた本だけに、この本の最後では、次のような哲学的問題が提起されている。

・機密文書の公開は民主主義を脅かす?

・すべての情報を公開すべきか?

・「国境なき危機の時代」における、ウィキリークスとメディアの課題。


内部告発者の末路

最後にこの本ではロバート・レッドフォード主演の「コンドル」という映画を紹介している。

CIAで書籍分析を務めるレッドフォードが演じるターナーは、ある日昼食から戻ったら、職場の同僚6名が殺害されていた。CIAが石油市場を操作するという知ってはならない事実を彼らが文書解析の仕事で洗い出してしまったのだ。

CIAの卑劣な幹部がターナーを部署もろとも抹殺しようとしたのだ。

ターナーは逃げ延びて、ニューヨークタイムズにすべてを告げるために出向く。

ターナーとCIA支局長のヒギンスの会話で終わる。

「彼ら(ニューヨークタイムズ)はすべてを知っている。なんでもやるがいい。彼らに話したんだ」

「ターナー、新聞社が記事にするなんて思っているのか?」

「記事にするさ」

「どうしてそう言える?」



ウィキリークスの概要がわかり、その存在意義について考えさせられる本である。


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2011年06月17日

シェア 所有から利用へ 世界の消費の流れが変わりつつある

シェア 共有からビジネスを生みだす新戦略シェア (共有)からビジネスを生みだす新戦略
著者:レイチェル・ボッツマン
日本放送出版協会(2010-12-16)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

以前紹介した「フリー」に続く独特な表紙のNHK出版協会による最新のインターネット本。

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


大量消費文化の終焉?

最初に太平洋ゴミベルトのことが書いてある。太平洋の真ん中には巨大な漂流ゴミがある。沿岸各国から流れ出たゴミが太平洋の真ん中で漂流しているのだ。

アニー・レオナードは製造・流通システムから送り出されるすべての材料のうち、6ヶ月後に北米で使われているモノはわずか1%だと"The Story of Stuff"という本で指摘している。残りの99%はいずれゴミとなるのだ。

The Story of Stuff: How Our Obsession with Stuff is Trashing the Planet, Our Communities, and Our Health - and a Vision for ChangeThe Story of Stuff: How Our Obsession with Stuff is Trashing the Planet, Our Communities, and Our Health - and a Vision for Change
著者:Anne Leonard
Constable(2010-05-27)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

人々の消費ぐせを象徴するのがクレジットカードだ。

クレジットカードは目の前で現金を渡さないので、モノを買う行為とお金を払う行為が「デカップリング」=分離する。

そうすると人々は要らないモノまで買ってしまう。何を買ったかも思い出せない支払いがたくさんあるのだ。


新しい消費の流れ

大量消費時代から、新しい消費の流れが生まれつつある。新しい流れを象徴するのが、ホワイトハウスの家庭菜園だ。

オバマ大統領はホワイトハウスのサウスローンを家庭菜園に変えた。第2次世界大戦後はじめてホワイトハウスに家庭菜園ができた。「地産地消」の広がりを象徴する動きだ。


オバマの選挙参謀はフェイスブック創始者

オバマのネット選挙参謀を務めたのが、以前あらすじを紹介したフェイスブックのなかでも紹介されている創始者の一人のクリス・ヒューズだ。

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
著者:デビッド・カークパトリック
日経BP社(2011-01-13)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

MyBarackObama.com(今はbarackobama.comとなっている)とVote for Changeという2つのサイトを立ち上げた。

オバマの選挙活動に協力するとポイントがもらえるシステムで、オバマへの個人献金を過去最高レベルにまで集めた。

この話の「クリーム=最もおいしい話」は、若い世代の投票率を過去最高に上げたことだ。


新しい消費の3パターン

この本では新しい消費の流れの3パターンを多くの例を使って説明している。

1.プロダクト=サービス・システム

「所有より利用」だ。車を買うよりカーシェアする動きがカリフォルニア州はじめ、各地で広がっている。

カーシェアリングのZipCarは入会金75ドルと1時間あたり8ドルの利用料をとる。2009年は自動車販売は40%落ち込んだが、ZipCarの売り上げは1億3千万ドルに増えた。

マツダはフォードとの合弁会社の生産工場から撤退することを発表した。北米の車販売が落ち込んでいるようだ。カーシェアの動きが大都市中心に広まれば、米国の車販売は減っていく一方になるかもしれない。


2.再配分市場

要らなくなった赤ちゃん用品を別のものに交換する。

引っ越しに使う段ボールはほとんどが一度しか使われない。ユーズドカードボックス.comは使用済み段ボールを販売している。段ボールのマッチングサービルも行っている。Free Cardboard boxes.com

3.コラボ的ライフスタイル

モントリオールの自転車シェアbixi(バイクとタクシーの造語)は、市内に多くのbixiステーションをつくって、自転車の乗り捨てができるシステムをつくった。それぞれの自転車にはGPSとRFIDチップがついていて、どこにあるかトレースできる。

ホテルのタオルの再利用も仲間意識を強調して効果を上げている。「お客様の75%はタオルを2度以上お使いになっています」とメッセージを添えるだけで、再利用率は大幅にアップした。

マイケル・デルの弟のアダム・デルは、シェアードアースを立ち上げた。土地とタネと器具を提供するから、耕してくれる人を募集したところ、大きな運動=ムーブメントとなったのだ。

もちろんアンドリュー・カーネギーこのブログで頻繁に紹介しているデール・カーネギーではなく、こちらがカーネギー・ホールのカーネギー)が全米に建設した図書館もシェアの先駆者だ。カーネギーは米国を中心に世界で2、500以上の図書館を建設したという

個人同士のお金の貸し借りを仲介するzopa.comもある。

CouchSurfingは素人同士の自宅に泊まらせるホスピタリティサービスだ。

bartarcard.comなどの物々交換サービスもある。

とても全部紹介できないくらい新しい消費の形が盛りだくさんで、消化不良になりそうなくらいに紹介されている。

フリーのように目からウロコという新しい発想ではないが、まさに日本語の「もったいない」という考えが世界に広がっているのではないかと感じる。


最新の世界の動きを知る上で参考になる本である。


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2011年05月21日

グーグル Chromeの翻訳機能はスゴイ!

+++今回のあらすじはできればグーグルChromeブラウザーでご覧ください+++

タオバオの本を紹介したあらすじの中で、日本人の経営する赤ちゃん用品販売サイトを紹介したので、ブラウザーをグーグルChromeに変えて、このサイトを見てみた。

グーグルChromeだと、中国語の翻訳をするかどうか画面トップで聞いてくる。

Chrome1





「翻訳する」を選択すると、数秒で翻訳が完成し、次のような画面となる。

Chrome2





もちろん不完全な日本語ではあるが、何が売られているのかは十分わかる。

ためしにスペイン語やポルトガル語のサイトでも調べてみた。

次がブラジルのパルメイラスというサッカーチームのサイトだ。

Chrome4





これで「翻訳」を選択すると次のように表示される。

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スペイン語ではFCバルセロナのサイトで試してみたら、やはり「翻訳」ボタンが表示される。もっともバルセロナのサイト自体が英語、日本語、中国語、アラビア語に対応している。

スペイン語もなんとCatala(カターラ)とCastellano(カステジャーノ)の2種類ある。Catalaとはカタロニア語で、スペイン語とイタリア語の中間のような感じだ。Castellanoがカステリャ語、世界で普及しているスペイン語だ。筆者がアルゼンチンで習ったのもCastellanoで、今回初めて現代スペイン語に2種類あることがわかった。

Chrome




筆者はアルゼンチンに2年間、研修生として住んでいたので、アルゼンチン最大のスポーツクラブ、リーベル・プレートの会員になっていた。リーベル・プレートとは英語のRiver Plate(ラプラタ河)のスペイン語読みだ。(リバーだけリーベルとスペイン語読みになっている)

リーベルのサイトはスペイン語翻訳機能は表示されない。どうやらサイトのつくりによって翻訳機能が表示されるサイト・ページがあるようだ。

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筆者はスペイン語を覚えるために、2年間アルゼンチンのブエノスアイレスに駐在した。研修生として会社で働くかたわら、仕事時間以外に語学研修を社費で受けるという制度だった。

賄い付き(平日は朝食と夕食、土曜日は朝食と昼食、日曜日は朝食だけ。平日はほとんど毎日ステーキだ)でほかに3人アルゼンチン人の下宿人がいたので、土日は彼らと映画に行ったりし旅行したりして、100%スペイン語の環境に置いていた。

そのうえで、1年間は毎日会社に行く前に2単元(1時間半程度)ベルリッツ・スクールでスペイン語の授業を受け、2年目はスペイン語教師にオフィスに来てもらい、週3回1時間半くらい個人教授を受けていた。

普通は半年でかなりスペイン語を話せるようになるので、他の研修生は1年間で語学研修をやめてしまうパターンが多い。

筆者の場合にはベルリッツ・スクールは辞めたが、個人教授を1年間受けたので、2年目で相当スペイン語力がアップした。その結果、帰国して受験した社内のスペイン語検定で、研修生あがりとしては初めて(?)の1級に認定される結果となった。

このように語学をマスターするには、その語学が話されている国に住んで、その語学のいわばシャワーを浴びながら、最低2年間はみっちり勉強する必要がある。

それがボタンを押して数秒で、正確ではないにしろ意味が推定できる程度まで翻訳できるとは全く驚きである。

便利な時代になったものである。


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2011年05月09日

フェイスブック 若き天才の野望 いわばフェイスブックの公認記録

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)
著者:デビッド・カークパトリック
日経BP社(2011-01-13)
販売元:Amazon.co.jp
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読書家の上司から借りて映画「ソーシャル・ネットワーク」で話題のフェイスブックについての本を読んでみた。

ソーシャル・ネットワーク 【デラックス・コレクターズ・エディション】(2枚組) [Blu-ray]ソーシャル・ネットワーク 【デラックス・コレクターズ・エディション】(2枚組) [Blu-ray]
出演:ジェシー・アイゼンバーグ
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント(2011-05-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る



著者のデイビッド・カーパトリック氏はフォーチュン誌のインターネット・テクノロジー担当のライターだったが、訳者あとがきによると、この本を書くために独立してフリーのライターになったそうだ。

CEOのマーク・ザッカーバーグと社用機でダボス会議に参加したり、いわばフェイスブック公認のお抱えライターとなっている様だ。

この本はザッカーバーグはじめ多くの関係者に直接インタビューして書いているので、フェイスブックの歴史について大変詳しく紹介している。きっちりした仕事ぶりは、このブログで紹介した「フラット化する世界」の著者でピューリッツアー賞を3回受賞しているジャーナリスト、トム・フリードマン氏の作風を思わせる。

この本に書かれているフェイスブックの歴史を一々紹介するとあらすじが長くなりすぎるので、創業当時の感じがわかるように、この本の冒頭に載っている写真を紹介しておく。

この写真に写っているのが、クリス・ヒューズを除くフェイスブックの主要創業メンバーで、彼らがハーバード大学のカークランド学生寮で2004年2月に始めたソーシャル・ネットワークがフェイスブックだ。こんな若い連中が学生寮でネットワーキングビジネスを始めたら、めちゃくちゃなノリになることは容易に想像できると思う。

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あまり読む気にならなかった本

正直この本はあまり読む気にならなかった。

以前紹介したキャリアコンサルタントの海老原嗣生さんの「課長になったらクビにはならない」に、リクルート創業者の江副さんの「10代、20代で名を残す名アーティスト、名選手は多い。しかし、10代、20代で名を馳せた経営者はいない」という言葉が紹介されている。

課長になったらクビにはならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣課長になったらクビにはならない 日本型雇用におけるキャリア成功の秘訣
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2010-05-20)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

筆者は江副さんの言葉は正しいと思う。フェイスブックの26歳のCEO・マーク・ザッカーバーグは、お山の大将、あるいはタイラント(専制君主)としてなんだか好きになれないでいた。

あんなチャラチャラしたヤツについての本を500ページも読むのかと思うと、とても読む気がしなかったが、食わず嫌いは筆者の主義に反するので、ともかく読んでみたところ、フェイスブックの本当の価値がわかった。まさに目からウロコだ。

この本の最初の350ページくらいは、フェイスブックの始まりや、綱渡りで大学を一つ一つつなげていった苦労話、創立メンバーがみんな辞め、あるものはザッカーバーグをアイデア盗用として訴え、結局マーク・ザッカーバーグ一人と2008年にグーグルから雇い入れたCFOシェリル・サンドバーグだけになった経緯などについての話だ。

結果的に成功したが元々ザッカーバーグのリーダーシップや着想が際立っていたというストーリーではない。その意味でこの本のタイトルの「若き天才」というのには違和感がある。

特にベンチャーキャピタルの老舗で最高峰のセコイア・キャピタルとのミーティングにTシャツにパジャマ姿でわざと遅刻して登場し、「投資してはいけない理由トップ10」のプレゼンを行ったというふざけた話のところでは、もう読むのはやめようかとまで思った。


フェイスブックの爆発的拡大と若きCEOマーク・ザッカーバーグ

フェイスブックはハーバードの学生名簿(フェイスブック)として2004年2月にスタートし、すぐにアイビーリーグの大学に広まった。ある大学でサービスをスタートすると、数日のうちにほとんどの学生が登録し、その後も80%以上の学生が毎日使い続けるというStickyな(やみつきになる)ネットワークだった。

後述するように出会い系サイト的な要素もあったが、特に好評だった機能は、ユーザーが講義をクリックすると、その講義を受けているほかの受講者名が表示されるものだった。誰がどういう講義を受けているかは、勉強会づくりや学生の講義選択に大変役立ち、そのためにフェイスブックは講義選択のタイミングにサービス開始を合わせて2004年2月にスタートした。

2004年6月からマーク・ザッカーバーグ他の創業メンバーはサンフランシスコ郊外のパロアルトに移り、それ以降シリコンバレーのベンチャーキャピタルの支援を受けて、順調に事業を拡大し、当初大学関係者のみ(メアドは.eduのみ)だったのを、高校生、そして一般まで拡大した。

サービススタート10ヶ月めで百万人、7年目の現在では世界で5億人のユーザーを誇る世界最大のソーシャル・ネットワークに成長した。

CEOのマーク・ザッカーバーグは、ハーバード大学のコンピューター科学専攻のコンピューターオタク(Geek)で、両親は歯科医と精神科医でマンハッタンのベッドタウン、ニューヨーク州ウェストチェスター郡の裕福な家庭の出身だ。

余談となるが、この本を読むまでコンピューターオタクで"Geek"と"Nerd"の違いがわからなかった。ザッカーバーグは"Geek"とされているので、明るいオタク、"Nerd"は内向的なオタクという差があるようだ。


この本の本当の価値は第13章(金を稼ぐ)にある

マーク・ザッカーバーグは依然として好きになれないが、第13章を読めばフェイスブックの本当の価値はなにかがわかる。最初から読むことが我慢できない場合には、13章から読み始めることをお薦めする。

フェイスブックの最大の特長は実名登録で、これが先行するMySpaceとの最大の違いだ。個人のアイデンティティは一つに限られるので、フェイスブックの会員となり、相手の名前さえ知っていれば、メアドや連絡先を知らなくともコンタクトができるのだ。

万が一同姓同名だったとしても生年月日、出身大学、出身高校、勤務先などでソーティングできる。

全世界で5億人を超えるユーザーが登録しているので、昔の仕事仲間とか、知人とか連絡先が分からない人でも探し出すことができる。

実際筆者も米国駐在時代の知人からフェースブック経由で連絡を貰って、共通の友人(フェイスブックで検索してみたが、この人は登録されていなかった)が4年前に亡くなったことを教えて貰った。


広告としてのフェイスブックの価値はグーグルとは大きく異なる

グーグルの検索連動型広告の場合、本人が「デジカメ」と入力しないとデジカメの広告は表示されないが、フェイスブックなら、「カリフォルニア州在住+小さな子どもがいる+これまで一度も写真をアップロードしていない+既婚男性」という具合に絞り込んで、ターゲット向けにデジカメの広告が打てるのだ。

グーグルがあれだけ成功していても、その事業のほぼすべてが、広告業界では比較的小さな領域で展開されている。世界の広告宣伝費6,000億ドル/年のうち、最大でも20%しか「すでに何が欲しいかわかっている人たち向けの広告」に費やされていない。

広告費の残りの80%がユーザーに欲しいという欲求をよびおこす「要求生成型」広告に使われており、フェイスブックのユーザーの滞在時間の長さと、正確なユーザー情報に基づいてターゲティング広告を打つ能力は、フェイスブックを広告のナンバーワンにするポテンシャルがあるのだ。

フェイスブックのCFOのシェリル・サンドバーグは「われわれはどこよりも質の高い情報を持っている。性別も年齢も場所も知っている。しかもこれは本物のデータであって、誰かが推論したものではない」と語っている。

広告調査会社のACニールセンの代表は、「フェイスブックはグーグルが望んでも得られないチャンスを持っている。超一流ブランド広告主に信頼できる企画を提案する能力だ」と語っている。

「今では、スティーブ・バルマーの150億ドルという評価額がそれほどバカバカしくは見えない。私は将来フェイスブックが根本的にマーケティングを変える怪物企業になると信じている」

これは筆者の思いつきだが、たとえばレクサスのハイブリッド車を売ろうと思ったら、ベンツやBMW,アメリカであればキャディラックに乗っている環境コンシャスな発言をしている人に試乗券を贈るというようなマーケティングをしたら、かなりの確率で売れるのではないかと思う。

同様な発想は、ファッションや宝飾品などの一流ブランドの売り込みに活用できるだろう。

他にはライバル会社から人を引き抜こうとしている会社は、指定した日に指定した都市の、某社の社員だけに広告を表示させることができるという例を挙げている。


フェイスブックの「エンゲージメント広告」

フェイスブックの主要な収入源は「エンゲージメント広告」だ。たとえばマツダは、2018年型モデルのデザインに協力してくれるように呼びかけたところ、全世界のデザーナー志望の学生からアイデアが集まった。ベン・アンド・ジェリーズは次回のアイスクリームのフレーバーは何がいいか会社に提案できるようにした。

この広告に応じて誰かがアイスクリームのフレーバーを提案すると、それが友達のニュースフィードに表示され、さらに友達の輪が広がっていく。ベン・アンド・ジェリーズのファンは6週間で30万人から100万人に増えたという。

高機能版エンゲージメント広告だと、たとえばオムツについて語っている人+あるアーティストの曲を聴いている人、というようなターゲティングもできる。

著者のカーパトリックさんはベビーブーマーで、好きなミュージシャンをたくさんのプロフィールに載せているので、USB接続の古いレコードをデジタル録音するレコードプレーヤーの広告がよく表示されるという。

フェイスブックに載せたエンゲージメント広告のファンがどういう音楽を聴いているのか、広告をクリックした人の性別・年齢別の正確なデータも提供されるので、市場調査にも役立てられる。


フェイスブックの最大の課題はプライバシーの保護

もちろんこれだけの個人情報や趣味・趣向情報を持っているフェイスブックの最大の課題は個人情報・プライバシーの保護だ。ソニーのプレステサイトの個人情報漏えいの合計約1億件というのも過去最大規模だが、保有する個人情報の種類が限られているので、電話番号とクレジットカード情報以外は、漏えいしてもあまり本人にはダメージがないだろう。

しかしフェイスブックは持っている個人情報の種類が他とは全く異なる。クレジットカード情報はあまり多く持っていないと思うが、プライバシーにあたる情報の蓄積が大きい。

2009年のアメリカの経営者への調査では、35%の会社がソーシャル・ネットワークで見つけた情報を理由に休職者を不採用にしているという。オバマ大統領はバージニア州の高校生達に向かって、「フェイスブックに何かを載せる時には注意して貰いたい」と注意したという。

写真にタグも付けられるので、友達と一緒に撮った写真に友達の名前をいれておくと、その人の名前で検索した場合、別の人が撮った写真まで表示される。

これがトラブルの元になった例がある。アングロ・アイリシュ銀行の社員が会社をズル休みして、パーティに出たら、会社の上司を含むオフィスの全員にウソがバレてしまったというのだ。

筆者も最近驚いたことがある。フェイスブックに登録はしているが、あまり使いこんでいなかったので、プロフィールを追加しようとして、「恋愛対象」欄を、自分の「性別」欄だと思って「男性」にしていたのだ。

友人から指摘を受けて、あわてて修正したが、もし恋愛対象を「同性」としている情報が間違って公開され続けていたら、変なカミングアウト攻勢にさらされるところだった。ちなみにその友人も同じく間違って「同性」にしていたが、変なことにはならなかったとのことだった。

このあたりの情報はフェイスブックの生い立ちによるところが大きい。フェイスブックは当初大学キャンパスの出会いサイトとして利用されたので、恋愛対象で男性・女性を選べるのだ(この本では”若い男女の性的関心をめぐるもの”という言い方をしているが、要は出会いサイトだと思う)。創立メンバーの一人のクリス・ヒューズがゲイだったことも、この「恋愛対象」欄があることに関係あるのかもしれない。

当初は「特定の相手とつきあっている/いない」という選択肢のほかに、「求めている出会いの種類」という項目もあり、「デート相手」、「深い関係」、「行きずりのプレイ」、「そのいずれでもよい」から選択するようになっており、「行きずりプレイ」が最も選択されたという。


フェイスブックの国際化

この本で紹介されている2009年末頃の各国でのフェイスブック普及率は次の通りだ。いずれも国民の何パーセントがフェイスブックの会員になっているかの数字だ。

アイスランド 53%
ノルウェー  46%
カナダ    42%
香港     40.5%
英国     40%
チリ     35%
イスラエル  32.5%
カタール   32%
バハマ    30.5%

2010年初めの時点で、フェイスブックは75の言語に対応していた。フェイスブックの国際化は、2008年に提供を開始した「クラウド翻訳」という翻訳ツールによるところが大きい。

このやり方は、まずフェイスブックのソフトウェアがユーザーに向けて翻訳すべき単語のリストを提示して、ユーザーが自発的に翻訳に取り組む。フェイスブックはその結果を集計して、その言語を話す人に一番適した訳語に投票するように依頼して辞書を作っていくのだ。

この方法でまず2008年1月に1,500人のユーザーが4週間掛けてスペイン語版フェイスブックが生まれた。ドイツ語版は2,000人で2週間、フランス語版は4,000人で2日というように、フェイスブックの費用負担なしに各国版が誕生した。

フェイスブック特有の言葉である"poke"も各国語に訳された。


フェイスブックのこれから

過去Yahoo!やグーグルがフェイスブック買収に興味を示した。2007年末にマイクロソフトが会社評価額150億ドルとして、1.6%を2億4千万ドルで取得、フェイスブックの広告販売権を獲得した。同じタイミングで香港の李嘉誠は0.4%に対して6千万ドル出資した。

ザッカーバーグが株式の24%を保有しており、10%はベンチャーキャピタルのアクセル、ロシアのデジタル・スカイ・テクノロジーズが2009年に5%を取得した。残りは創業者たちや社員、ほかのベンチャーキャピタルが保有している。

フェイスブックはいずれ株式公開し、その時は過去最大規模のIPOとなるだろう。

取締役会の定員は5名で、ザッカーバーグは自分のほかに2名の取締役を指名する権利を持っており、フェイスブックの経営権を握っている。2009年からはワシントンポストのドン・グレアムとインターネットブラウザーの元祖MOSAICの発明者でありネットスケープ共同創業者のマーク・アンドリーセンが取締役会に加わった。

ザッカーバーグは、「こんなことを言うと心配するかもしれないが、僕は仕事を通じて学んでいるのだ」と社員に語ったという。ザッカーバーグはまだ26歳、ワシントンポストCEOのドン・グレアム、マーク・アンドリーセン、最近ではアップルのスティーブ・ジョッブスを崇拝しているという。

上記に紹介したリクルート創業者の江副さんの言葉通り「10代、20代で名を残す名アーティスト、名選手は多い。しかし、10代、20代で名を馳せた経営者はいない」。CEOのマーク・ザッカーバーグも、フェイスブックが5億人あるいはそれ以上のネットワークになると確信して経営をしてきたわけではなく、広告のビジネスモデルも将来を予見してつくりあげたものではない。

しかしそうは言っても創業から2年目の2006年にYahoo!が10億ドルの買収提案を出してきたときに、提案を蹴ったのはザッカーバーグであり、その翌年マイクロソフトが会社を総額150億ドルで評価して、ザッカーバーグの先見性が証明される結果となった。

株式公開による資金調達をせずに5億人の会員を集められたのは、すごいことである。

この本ではフェイスブックの将来のビジネスモデルについて具体的には何も示唆していないが、筆者の勝手な想像では多分アマゾンと提携するか、あるいは他の専門サイトと提携して購買情報まで進出していくのではないかと思う。

フェイスブックの持つ個人情報と属性・趣向情報と、アマゾンの持つ購買情報が合体すれば、最強のデータベースマーケティングができるだろう。

世界で最高のCRM、データベースマーケティングは、英国の半分の家庭に普及しているClub Cardを持つ英国のスーパーマーケットのTESCOと言われている。同じ英国のスーパーマーケットチェーンのSainsburyが加盟するNectarも、TESCOと同様の最先端のデータベースマーケティングを行っている。

これらはスーパーのPOS購買情報と会員カードの顧客個人情報を一緒に管理することで、誰が何を買ったかという過去のデータを元に、個人の購買パターンにあわせた商品を提案している。

そういった過去のデータ分析に加えて、もしフェイスブックでの言動やツイッターのつぶやきをデータとして取り込み、近未来の購買予測を元にリコメンドできたら、最強の販促手段ができると思う。

フェイスブックのマーク・ザッカーバーグがそんなことを考えているかどうかわからないが、この本の第13章で説明されているように、せっかく広告の80%を占める「要求生成型」広告ビジネスに属しているのであれば、ぜひ高度なCRMを実現して欲しいと思う。

内容もさることながら、翻訳も良い。頭にスッと入る翻訳である。500ページの大作ではあるが、得るところの多い本だった。


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2011年04月12日

モノ言う中国人 中国のネットメディアの現状がよくわかる

モノ言う中国人 (集英社新書)モノ言う中国人 (集英社新書)
著者:西本 紫乃
集英社(2011-02-17)
販売元:Amazon.co.jp
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駐中国日本大使館で外務省専門調査員としてネットメディアを研究した西本紫乃さんの本。西本さんは中国在住歴が10年で、現在は広島大学大学院博士課程に在籍中だ。

先日会社で前駐中国日本全権大使の宮本大使の講演を聞く機会があった。講演の冒頭で宮本大使が西本さんの研究を本にして出版するように勧めたという話をされていた。

宮本大使ご自身も「これから中国とどう付き合うか」という本を出されている。

これから、中国とどう付き合うかこれから、中国とどう付き合うか
著者:宮本 雄二
日本経済新聞出版社(2011-01-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


モノ申す中国大衆

西本さんは最初に、中国では「話語権」という言葉を新聞やインターネットで目にすることが増えたと語る。

話語権とは単なる発言権でなく、世論に影響を与えるほどの影響力があることを意味している。「モノ申したい人」が増えており、中国の大衆が「モノ申す場」がインターネットなのだ。

中国のメディアは次の図のように完璧に国家によってコントロールされている。

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出典:本書54−55ページ

これに対してインターネット情報の監視システムは次の通りだ。

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出典:本書 83ページ

「インターネット管理室」が監視し、好ましくない記事にはサイト管理者に電話連絡して、「15分以内に削除しないと罰金3万元=39万円」が課せられるという。

このほかに「五毛党」という世論を体制側に有利なように誘導するため1件当たり五毛=8円の報酬を貰って書き込みをするインターネット評議員がいる。


最近の事例紹介

この本ではインターネット関連で問題になり、役人などの関係者が処分されたり、「人肉捜索」(いわゆる”さらし(晒し)”、ネット上でプライバシーや言動などをよってたかって暴くこと)になった例が紹介されている。


★「あなたはどこの単位の人間?」
国家水泳スポーツ管理センターの副主任の周継紅が、インターネット上の飛び込み競技の八百長について質問した記者に対して言った言葉だ。

国体の飛び込み競技の12個の金メダルは事前に受賞者が決まっているという八百長疑惑に対して、記者を見下した周継紅の発言が2009年の流行語にもなったという。


★蘭州の悲劇
2010年1月に甘粛省蘭州の省共産党の宣伝部長が不用意に650名から成るインターネット評議員のチームを編成したことを発表した。エース級50名、ハイレベル要員100名、ライター500名で構成され、エース級の人員を中心に、チームは緊密に連携を取りながらインターネットの掲示板などに活発に「正しい」意見を書き込むのだと。

甘粛省で650人もの評議員がいるということは、全国では10万人を超える評議員がいるのだろうから、仮に評議員の年収が五万元(65万円)だとすると、年間50億元(650億円)もの費用が評議員に充てられている。

それほどの予算があれば、四川省地震の時にロシアから借りたヘリコプターが90機買えるので、何が大事なのか考えるべきだという非難が盛り上がったという。

ちなみに甘粛省は中国の西域の省で、水力発電による安価な電力が有名な省だ。


★南丹錫鉱事故
広西チワン族自治区の南丹市の錫鉱山で2001年に浸水事故が発生し、81名の労働者が死亡したが、南丹県の幹部と鉱山主が結託して、事故の隠蔽を行ったことが、クチコミで広がった。

取材に行った記者は暴力で追い返されたが、インターネットで匿名の情報が掲載されてから、大きな問題になった。

「人民網」や「強国論壇」でもスレッドがつくられ、数万件の非難が寄せられ、南丹県の書記は死刑、錫鉱山オーナーは懲役20年の判決を言い渡された。中国でインターネットが世論を動かした初めての事件と言われている。


★孫志剛事件
2003年に広州で、身分証明書をもっていなかったため警察に拘束され、むかったために暴行されて死んだ孫志剛の死因が「心臓発作」と処理された事件。

両親が広州の都市報の「南方都市報」に事件を告発し、インターネットでも非難の声が広まった。大学教授などの法律専門家が、政府に対して法律の見直しを求めた結果、「収容送還の規則」が廃止された。

収容した農民たちから金を巻き上げて私腹を肥やしていた収容所職員の汚職も明るみに出たという。


★山西省闇レンガ工場事件
河南省に住む両親が行方不明となった我が子を探すために全国を探し歩き、山西省の違法闇レンガ工場で奴隷のような労働をさせられている息子を捜し当てたという事件。

河南省のテレビ局の記者が、行方不明の子どもを捜している親がいるという情報をもとに、闇レンガ工場に潜入し、最後に親子の再会の場面を映像におさめて放送するとともに、インターネットでも公開した。

インターネットでの書き込みは一週間で一万件を超え、政府を非難する声も高まったので、胡錦涛、恩家宝他の指導者が徹底的に調査するよう指示した。

監督不行届で山西省の省長が謝罪し、95名の党員や公務員が処分を受けた。ネットユーザーのパワーとインターネット世論の恐ろしさを中国の指導者が痛感した事件だった。

中国では農村と都市との年収格差が問題になっているが、農村でもインターネット人口は2007年以降急速に拡大している。


★許霆(きょてい)ATM事件
2006年広州市でたまたまATMの誤作動で、大金を引き出した許霆が、無期懲役に処せられた。刑が厳しすぎるとネットの声がひろまり、再審で懲役五年に大幅に減刑された事件。


★深圳市の女児わいせつ未遂事件
2008年に深圳市の海鮮レストランで、女児がトイレに連れ込まれそうになった事件で、犯人が「北京の交通部から派遣された市長と同格の高級官僚だ。何が悪い」と居直った事件。

レストランの監視カメラが女児が連れ込まれそうになった現場の映像を捉えており、両親とのやりとりも録音されていて、それがネットに公開された。公務員の横暴に非難の声が高まり、人肉捜索が行われ、犯人は広州市の党書記ということがわかり免職となった。


★インターネットの社会風刺が流行語に
2008年貴州省で、中学生が強姦され川に投げ捨てられるという事件が発生した。容疑者三人のうち二人が地元警察署長と親戚だったことで、真相隠しが行われ、容疑者が深夜の橋の上で、「腕立て伏せ」をしている最中に、女子中学生が自殺したという警察の発表が行われた。

2009年には雲南省の刑務所で入所四日めの囚人が頭部損傷で死亡した。刑務所側は「鬼ごっこ」をしていた時に壁に頭を打ち付けたという発表をした。

「腕立て伏せ」、「鬼ごっこ」という体制側の荒唐無稽な言い訳が、都合の良い言い逃れに対する冷ややかな批判をこめて、インターネット上の流行語になったという。

さらに2004年から胡錦涛主席の掲げる「和諧=ホーシェ社会」=ハーモニーの取れた社会、を皮肉って「河蟹=ホーシェ」がインターネットによく登場し、「河蟹される」というのは、管理者から発言を削除されるという意味で使われているという。


★愛国教育の世代
中国のインターネット人口は4億人を超え、年齢構成は若く、「80後」という1980年以降生まれの20代、「90後」といわれる10代が7割弱を占める。

次が日中のインターネット人口の年代別構成だ。30歳以下の年代が中国では7割を占め、日中間では大きな差があることがわかる。

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出典:本書161ページ

インターネットの普及により、以前であればデモ行動は簡単に抑圧できたのが、インターネットで抗議が広まると中国政府もコントールしがたくなっている。

この本では1999年のベオグラード中国大使館誤爆デモ、2005年の小泉靖国神社参拝反対デモ、2008年のカルフールボイコット騒動を比較し、インターネットで抗議が一般の民間人にまで広がっていることが比較説明されている。


尖閣漁船衝突事件
2010年9月に発生した尖閣列島沖での漁船と巡視船の衝突事件は、中国のインターネット人口が愛国教育を受けている若いユーザーが多いことから、燃え上がる可能性があった。

しかし北京や上海などの大都市では目立った抗議行動は発生せず、西安や武漢といった地方都市でのみ反日デモが発生した。もちろん中国政府の必要以上に事を荒立てないという方針もあったのだろうが、西本さんはこの現象は大衆の価値観の「ポストモダン化」が影響しているからだと説明している。

つまり大都市ではイデオロギーや国益といった大きな問題よりも、就職とか物価、あるいは海外旅行や車の購入といった個人的なことに関心を持つ人が増えているからだという。

西本さんはさらに中国理解のキーワードトは「非主流」だと語る。

経済の自由化によって中国では大衆社会というパンドラの箱があいた。メディアが国によってコントロールされていた頃は、海外の人は知る由もなかった「非主流」の情報が流れ出したのだと語る。

テレビ番組などの「三俗」(庸俗=下品、低俗=暴力的、媚俗=他人に迎合)の問題が指摘され、匿名性があり敷居の低いインターネットの普及により、大衆がインターネット上で様々な意見を述べるようになった。

胡錦涛や恩家宝もオンラインでインターネットユーザーと直接対話を行い、広州市では広州市の都市報の「南方都市報」傘下の「奥一網」でインターネットの対話コーナーを設けている。

米国の有名なチャイナ・ウォッチャーのスーザン・シャークは「中国・危うい超大国」という本で、中国のシンクタンク研究員の「私たちは、自分たちが行ってきたプロパガンダの虜囚となってしまったのです」という発言を紹介している。

中国危うい超大国中国危うい超大国
著者:スーザン L.シャーク
日本放送出版協会(2008-03-30)
販売元:Amazon.co.jp
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いままで愛国教育として「共産党よくやった史観」をマスメディア、博物館、映画、演劇などあらゆる機会で国民に植え付けてきた。そのため若い世代の多くは中国は優れた国、強い国と信じ、「西側の悪意に満ちた報道で不当な批判にさらされている」と思いこみがちだという。


2011年2月22日に出版された本で、中国のインターネットを中心とする世論の成り立ちがよくわかる。尖閣漁船衝突事件など最新の話題も含まれており、興味深く読める本である。


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2011年02月16日

速報! Google検索でトップになった 

最近「あらすじ」で検索して当ブログを訪問される人が増えているので、調べてみたらGoogleの「あらすじ」検索で当ブログがトップになっていた。

Google検索





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2010年12月10日

米国発ブログ革命 新聞よさようならマイクロメディアよこんにちは

米国発ブログ革命 ルポ (集英社新書)米国発ブログ革命 ルポ (集英社新書)
著者:池尾 伸一
販売元:集英社
発売日:2009-06-17
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

中日新聞の記者でコロンビア大学東アジア研究所所員やニューヨーク駐在員を経験した池尾伸一さんの本。

新聞・TVなどの既存メディアが弱体化し、地方新聞は廃刊する一方、記者達は自分たちが情報発信するブログなどで高品質のニュースを配信して生き抜こうとしている米国の現状をレポートする。

2008年の大統領選挙の際に、オバマ大統領のネット献金による資金調達が話題になった。選挙期間を通じて集めた資金は5億ドル、My.BarakObama.comの登録者は1300万人にものぼった。大統領に当選した後は、Organizing for Americaという組織に衣替えした。


多様な意見を流すネットメディア

ネットの選挙への影響力は資金集めだけではない、ネットメディアも新聞・TVなどのマスコミに代わって、アメリカの良さである多様性を反映する意見を一般大衆に流している。

この本ではそれらの代表例を紹介している。


dailykos

まずは中南米系移民家庭に育った元会社員マルコスの始めたdailykos。野党もまともな報道機関もなくなったと嘆くマルコスは自分のサイトでリベラルな意見を発表している。そのサイトdailykosは2009年には月間の訪問者が2千万人を超え、支持者が拡大している。

誰でも自分の意見を書くことが出来るダイアリーというコーナーを設けていることがこのサイトが人気を博している理由の一つだ。

2007年8月のオフ会にはバラク・オバマ、ヒラリー・クリントンなど民主党の大統領候補が勢揃いしたという。

「誰もがトーマス・ペインになれる」と、"What Would Google Do?"の著者でニューヨーク大学準教授のジェフ・ジャービスは語る。
What Would Google Do?What Would Google Do?
著者:Jeff Jarvis
HarperBusiness(2009-02-01)
販売元:Amazon.co.jp
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トーマス・ペインはアメリカ独立戦争の時、建国の精神的支えとなった「コモンセンス」の著者だ。

コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)コモン・センス 他三篇 (岩波文庫 白 106-1)
著者:トーマス ペイン
岩波書店(2005-03-16)
販売元:Amazon.co.jp
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マルコスは最近"American Taliban"という、共和党右派をタリバンと同じと糾弾する本を出したばかりだ。

American Taliban: How War, Sex, Sin, and Power Bind Jihadists and the Radical RightAmerican Taliban: How War, Sex, Sin, and Power Bind Jihadists and the Radical Right
著者:Markos Moulitsas
Polipoint Press(2010-09)
販売元:Amazon.co.jp
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talkingpointsmemo

政治関係の調査報道ではブログ形式のインターネットニュースサイトtalkingpointsmemo.com=TPMを紹介している。TPMは月間訪問者75万人、ゴンザレス司法長官を辞任に追い込むスクープ記事を載せたことで有名だ。

ブログ読者から自分の地域の検事が解任されているという情報が重なり、捜査つぶしの権力の横暴が起こっている疑いがあるとTMPの記者が気づいたからだ。

司法省が600ページにものぼる報告書を出してきたときは、TPMは全体を10のパートに分け、常連の読者に分析を頼むというWikipediaの手法を取っている。

TPMはフリーランスジャーナリスト、マーシャルの始めたブログが原型で、次第に読者が増えたので、規模を拡大した。広告収入では賄えないので、読者に資金協力を頼むという方法で運営している。


huffingtonpost

huffingtonpost.comはリベラル系インターネット新聞で、月間400万人がアクセスするという。ニューヨーク大学ジャーナリスト講座とのジョイントベンチャーが"off the bus"で、大統領選挙中は大統領の遊説バスに同行する既存メディア(=on the bus)の向こうを張って市民メディアをつくろうというものだ。

「ペンシルベニアの田舎町の人々は失業に苦しみ、社会を恨み、銃や宗教におぼれている」という大統領選挙中のオバマのペンシルベニア州での失言も、主婦の視聴者が投稿してはじめて明らかになったものだ。


中国関係のフリープレスサイト

今年のノーベル平和賞をめぐって中国の報道規制があからさまになり、各国のメディアから非難を浴びている。中国の抱える矛盾と腐敗のニュースを英語と中国語で流しているのが博訊(ボシュン)boxum.us/news/publishだ。

中国出身のソフトウェアエンジニアのワトソン・メンが2000年から運営しているという。

中国の真実の姿を国民や外国に伝えたいとワトソンは言うが、数万人ともいわれるサイバーポリスを擁する中国政府との戦いは熾烈だ。

これまで記事を送ってきた市民は数千人、訪問者は毎日20万人を超すという。

このサイトでは多くの警察の横暴や腐敗事件などを報道している。貴州省の中学生レイプ殺人事件で警察が動かなかったので、中学生が暴動を起こしている事件や、四川省大地震の救援物資が被災者に届かず、官僚が地元商人に横流ししている腐敗事件などだ。

中国政府は数万人のサイバーポリスを使って、DoS攻撃や、中国にいる報道記者の逮捕など様々な妨害をしているという。南京の女性ブロガーも軟禁されているという。

中国のYahoo!はYahoo!メールを使った人権運動家の個人情報を当局に流し、人権運動家が逮捕されることに繋がったという。

筆者も9月に上海に出張したが、中国ではTwitterもFacebookも使えないことにびっくりした。中国当局がSNSサイトをブロックしているのだ。

日本にいるとわからないが、中国には自由主義諸国のような報道の自由はない。たとえば対日デモに参加している学生なども、中国政府の一方的な報道に踊らされている一面がある。


特徴あるサイトが紹介されている

http://newhavenindependent.orgは、ハイバーローカルメディアだという。元々は人口12万人のコネチカットの町NewHavenでNew Haven Advocateという新聞の記者をやっていたポール・バスが立ち上げたローカルメディアサイトだ。

記者は4人、決まったオフィスもない。地元記事中心だ。米国のメディア業界はコンログマリット化が進んでいる。収益を上げ、株価を上げるために、メディアの買収と統合、合理化が相次ぎ、経費のかかる取材部門は切りつめが進んでいる。

New Haven Advocateもトリビューン社に買収され、取材費や人員が大幅にカットされ、まともな取材ができなくなっていたという。

結局NPO形式で税額控除できる寄付を得てNew Haven Independentサイトを立ち上げた。

http://aliveinbaghdad.org/はイラクの一般人が記者となってニュースを投稿するというサイトだ。イラクの治安は悪いので、CNNや大手放送局の記者たちは米軍キャンプを離れられない状況だ。

プロの記者に代わってイラク人5人を雇って、ビデオカメラを持たせて、イラクから報道させている。イラク人の給料は月4-6万円程度だという。イラク人が撮影する映像は生々しいものが多く、一人のイラク人記者はマシンガンで惨殺されたという。

ウィスコンシン州のマディソンにあるhttp://storybridge.tvはローカルテレビ局でキャスターをやっていたケイティが独立してカメラマンと2人でやっているインターネットテレビ局だ。

ローカルテレビ局も新聞同様コスト削減のため制作費が削られており、それに不満をもったケイティが飛び出して設立した会社だ。YouTubeにも専用チャンネルを持っている。

個人発のニュースや投稿は良いことばかりではない。だましやニセ情報も投稿される場合があるので、情報の真偽のほどの確認が難しいという問題がある。


米国の新聞社の苦境

米国の新聞社の苦境もひどい。著者の池尾さんは「のたうつ恐竜」と評している。

「LAタイムズ」はトリビューン社に買収され、1200人いた記者を800人にして、18ある海外支局を半減する方針を打ち出し、記者の反発を招いている。新しい経営陣に反対した編集長はクビになり、残る記者達はバッチをつけて無言の抵抗をしているという。

トリビューン社は結局LAタイムズをシカゴの不動産王サミュエル・ゼルに売却し、記者のさらなる削減に繋がった。

米国の新聞発行部数は1990年の6300万部から、2006年は5300万部まで落ち込み、広告収入は2000年の467億ドルから2007年には422億ドルになった。

「ウォールストリートジャーナル」はメディア王マードック氏に売却された。2008年9月のリーマンショックは新聞業界にも影響を与え、伝統あるクリスチャン・サイエンス・モニターはオンライン配信に変え、紙は週末のみとした。

1970年は23万人いた会員が、5万5千人にまで減った。キリスト教団体の支援も限界があるので、記者や支局の数は減らさないで、ウェブ版のみにしてコストを下げ、クオリティを維持する方針だという。

廃刊に追い込まれたローカル紙は続出している。フィラデルフィアのフィラデルフィアインカラー、デンバーのロッキーマウンテン・ニューズなど。

ニューヨークタイムズはウェブ版と紙版の編集部を統合し、ウェブ広告の拡大で事業継続を目ざしている。

最後に米国メディアの「ネットワークト・ジャーナリズム」というコンセプトを紹介している。ネットワークトという意味はプロの記者と一般読者、フリージャーナリストなど、報道機関で働く者全部と視聴者との共同作業でメディアをつくろうという考えだ。

これからも個人メディアでインフルエンサーが増えてくると、プロのライターとの役割分担という手法もたしかに出てくると思う。

具体例が多く、いずれ日本の新聞・TV業界も同じような動きになると思うので、その意味で参考になった。


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2010年10月21日

電子書籍の衝撃 いつも参考になる情報が多い佐々木俊尚さんの近著

電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2010-04-15
おすすめ度:3.5
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主にIT関係の本を年に何冊も出しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著。2010年4月に出た本だが、筆者の読んだものはすでに第8刷だった。よく売れているようだ。

佐々木俊尚さんの本はこのブログでいくつか紹介しているが、いつも新鮮な情報があり有益だ。

この本でも電子書籍ビジネスをめぐる動きを、iPodを中心とする音楽配信業界の動きと比較しながらまとめていて参考になる。


セルフパブリッシングの時代

この本で一番参考になったことは、電子書籍(紙でも可能)の出版方法を「セルフパブリッシングの時代へ」ということで、Amazon Digital Text Publishing (Amazon DTP)とよばれるアマゾンでのセルフパブリッシング方法を詳しく紹介していることだ。

筆者もいずれはあらすじをまとめた本を出したいと思っており、それには注釈代わりにリンクが織り込める電子書籍が最適と思っていたが、今やAmazon DTPを使えば、紙媒体さえ必要なければ初期費用なしで自分の本が出版できるのだ。

セルフパブリッシングは自費出版とは根本的に異なる。自費出版は最低2,000部とかの買い取り保証や諸費用等で、最低でも数十万円掛かる。ところがセルフパブリッシングは、売れればアマゾンが手数料を取るだけなので、紙媒体を出さなければ、基本的に出版費用はかからない。

本の国際標準コードであるISBNコードを日本図書コード管理センターに申請するのに、10冊分で1万7千円くらいかかるが)、これは本を検索するときに必要なので、必要経費と言えるだろう。

アマゾンDTPはまだ日本語対応画面がなく、英語、フランス語、ドイツ語にしか対応していないが、いずれキンドルを日本語対応化すれば、日本語での手続きも始まるだろう。

英語のアマゾンのサイトに行くと”Publish on Amazon Kindle with the Digital Text Platform”という電子書籍出版ハウツー本のキンドルバージョンが無料で読めるようになっている。

紙の本で出すなら、クリエイトスペースというアマゾンの子会社で申し込む。これで売れたらオンデマンド印刷で本が出版できる。

あとは自分のブログとかでプロモーションすることだ。


音楽のセルフディストリビューション

すでに音楽では、自宅で録音してネット配信したりCDで売ったりしているアーティストがいて、たとえばつぎのまつきあゆむさんなどが代表例だ。

自宅録音自宅録音
アーティスト:まつきあゆむ
販売元:UK.PROJECT
発売日:2005-05-11
おすすめ度:5.0
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まつきさんは、自分の音楽活動を支えるための「M.A.F.」というファンドもつくっており、だれでも出資して音楽販売のプロフィットシェアリングに参加でき、まつきさんのお金の使い方も知ることができる。

その他参考になった例を箇条書きで紹介しておく。


参考になった事例

★「7つの習慣」の著者、自己啓発本のベストセラー作家、スティーブン・コヴィーは、過去の本の電子ブック発売権を大手出版社のサイモン&シュースターからアマゾンに移した。

7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)7つの習慣―成功には原則があった! (CD付)
著者:スティーブン R.コヴィー
販売元:キングベアー
発売日:2009-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「7つの習慣」は筆者も好きな本の一つで、全世界で1,000万部以上売れているという。筆者はオーディオブックと日本語訳の本と両方持っている。このブログではその「7つの習慣」の発展編の「第8の習慣」のあらすじを紹介した。

大手出版社のネット販売での作者の手取りは25%程度だが、アマゾンのディールでは50%以上がコヴィーさんの手取りになるという。

★アマゾンはキンドルがスタートしたばかりの頃は65%のマージンを取っていたが、iPadが参入してきたので、一挙にマージンをアップルに対抗して30%に下げた。

★ボブ・ディランはYouTubeに新作プロモーションビデオをアップして、SNSのマイスペースに自分のページを設けて情報発信したので、「ウォールフラワーズのリーダーのジェイコブ・ディランのオヤジはなんだかスゴイらしい」ということでクチコミが広まり、往年の名曲までが売れるようになったという。

MySpace Bob Dylan









★若者は活字を読まなくなったわけではない。日本の出版業界が劣化しているのだ。本の売り上げは8億冊程度で変わらないが、新刊の点数は1980年代の年間3万点から、8万点に増えている。駄作の乱発で、一冊当たりの売り上げが減っている。

★発行部数が減らない理由は、「本のニセ金化」にあるという。本は欧米では買い取り制だが、日本では再販制度があるので、出版社から取次に卸すと、本来委託販売にもかかわらず、代金は100%支払われる。売れずに返品されると、出版社は返金資金を工面しなければならず、あわてて別の本を取次に売って、その支払いで前の本の返品代を支払うという自転車操業をしている。これが佐々木さんの言う「ニセ金化」だ。

★ケータイ小説は読んだことがないが、この本でその一節が紹介されている。

「ん?? 元気元気♪ ヤマト酔いすぎだし〜!!」「俺酔ってねぇって〜なぁ〜酔ってねぇから〜」「お〜同じバイトだよ〜。ってか〜二人は付き合ってんのぉ?」「えっ、美嘉とヤマトが??まっさかぁ〜ないない!!」「俺たちマブダチだもんなあ〜美嘉ちん〜」

出典:本書210ページ 原典:「恋空」美嘉 

ケータイ小説とはどんなものか初めて知った。引用するのも疲れる。本もよく売れているようだ。

恋空〈上〉―切ナイ恋物語恋空〈上〉―切ナイ恋物語
著者:美嘉
販売元:スターツ出版
発売日:2006-10
おすすめ度:2.0
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★もはや「出版文化」は幻想で、志の高い編集者は「はぐれ者」扱いされているという。だから「新しい革袋には新しい酒を」ということなのだと。

★グーグル検索で全文検索できても、本の売れ行きには影響しない。「全文検索できると本が売れなくなる」などという話の証拠はどこにもない。ケータイ小説など、ウェブで全文配信されているにもかかわらず、売れまくっているものもある。

★ソーシャルメディが生み出すマイクロインフルエンサーの活用が、これからの本や電子書籍の売り方だ。


電子書籍の総括

最後に佐々木さんは電子書籍を次のように総括している。

1.キンドルやiPadのような電子ブックを購読するのにふさわしいタブレット
2.これらのタブレット上で本を購入し、読むためのプラットフォーム
3.電子ブックプラットフォームの確立が促すセルフパブリッシングと本のフラット化
4.そしてコンテキストを介して、本と読者が織りなす新しいマッチングの世界

これが電子ブックの新しい生態系だという。

筆者も海外の友人の持っているキンドルを見たことがあるが、その画面の鮮明さに驚いた。また読み上げ機能もあり、速度や男性女性の声を選べるという点も気に入ったが、日本語版がないのでまだ買っていない。

iPadになるかキンドルになるかわからないが、いずれ日本語版のタブレットデバイスと、本の配信プラットフォームが確立してきたら是非購入したいと思っている。


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2010年10月03日

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるのか IT担当役員小説

ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険ビジネスリーダーにITがマネジメントできるか -あるITリーダーの冒険
著者:Robert D. Austin
販売元:日経BP出版センター
発売日:2010-03-18
おすすめ度:5.0
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この本はハーバード・ビジネススクールのロバート・オースティン教授、リチャード・ノーラン名誉教授他の書いたハーバード・ビジネススクールなどで使われる教科書兼小説である。

オースティン教授はハーバード・ビジネススクールの教授になる前は、某国際企業でITマネージャーをした経験があるという。

500ページ強の本だが、内容は比較的簡単だ。

ある中堅のファイナンシャルサービス企業IVK社は急成長を遂げていたが、この数年は成長が止まっている。その立て直しのために外部から雇われた新しいCEOカール・ウィリアムがいままでローン部門の責任者だった30代の主人公バートンをCIOに起用する。

バートンは今までIT部門には余計な投資をするなと釘を刺し、実際にいくつかのIT投資を断念させた経緯があり、この異動に驚くとともに、自分が適任なのか真剣に悩む。

幸い彼のガールフレンドのマギーは経営コンサルタントの仕事をしているので、彼女のアドバイスも受けながら、バートンは慣れないCIOの仕事に乗り出す。

彼の前任のデイビスは既に解雇されていたので、前任者からの引き継ぎはなかった。デイビスは当初バートンは1年も持たないだろうと冷たくあしらったが、次第にバートンの熱意にほだされ、友達ベースでアドバイスをするようになる。

バートンはバーで正体不明のITオタクのキッドと知り合い「あなたが知らないことがなにかをあなたは知っている」という不思議な言葉を投げかけられる。

バートンの部下はバートンより20歳も年上のテクニカル・サポートグループのルーベン、それから顧客サポートと回収システムのラジ・ジュパニ、ローンオペレーションのタイラ・ゴードン、インフラのポール・フェントンという布陣だ。

最初にバートンはITマネージャーは最新の技術をすべて知り尽くしている訳ではなく、部下の専門家に頼っている実情を知る。たとえばセキュリティは変わり者のジョン・チョーに聞くしかないという具合だ。

バートンはすぐにIT部門は自分の予算を持っておらず、費用は他の部門に付け替える形で運営されていることを知る。責任があいまいなので、プロジェクトがスコープ・クリープ(プロジェクトの範囲が当初のものからずるずると変化すること)を起こし、どのプロジェクトも予定通り完成していないのだ。

バートンは大学時代の授業で使ったプロジェクトマネージメントの本を引っ張り出し、ガントチャート、リソーススケジューリングなどを使って全プロジェクトを見直す。その段階で、バートンはIVK社は、自社ソフトを開発するのではなく、できあいのソフトをカスタマイズして使っているのがほとんどだと知る。

バートンは全体を見直した上で、IVK社の資産がウィンドウズ系なのに、オープンシステムを押しつけようとしている既存のコントラクターを切り、3社の評価の異なるベンダーから最適ベンダーを選定し直す。

バートンは次第に力量を発揮し、社外取締役のカッラーロから見込まれるようになる。そうするとCEOのウィリアムは彼らの結びつきを警戒するようになる。バートンが次期COO候補になっているので、ウィリアムは自らの対抗馬となりうることを警戒しているのだ。

そうこうしているうちに突如システムがダウンし、DoS攻撃による侵入が疑われる事態が発生する。事態を発表するものと全員が考えていると、CEOのウィリアムは独断で発表はしないことを決断する。これはCEOが決めることだとして、反対する法務担当役員とローン担当役員をその場でクビ切る。

結局侵入はあったのかなかったのか不明なままに終わった。ウィリアムの判断が結果的には正しかったのだ。

その他、社員の自分のブログによる内部情報リークなども、WEB2.0時代のリスクとして紹介されている。

最後はいかにもアメリカ風の終わり方だが、小説のあらすじは詳しく紹介しない主義なので、あえて触れないでおこう。


筆者は文系ながら、某インターネット企業のシステム責任者=CIOのポジションにいたので、自らの体験を追体験したような気がする。

この本で取り上げられている話は、現実にあることばかりだ。

文系出身者がシステム責任者になると、元からいるエンジニア達は、ジャーゴンや専門用語をことさら使って、話を難しくしてケムにまく傾向がある。

そこで「なにくそっ」と発奮して自分でもIT技術を学び、話が理解できるレベルにまで自分で努力しないと、文系CIOは単にハンコを押すだけの置物になる。

そして部下のシステム部長などのいいなりになって、結果的に過剰な設備投資をしてしまうのがオチだ。

この本のバートンの努力がよくわかる。筆者も発奮して勉強したので、理系大学生や高専卒レベルの初級シスアド資格が取れるまでになった。

一時は会社の会員DBを、自分でSQLをたたいてCRM分析していたものだ。

この本のようにシステムダウンもあったし、外部アタックのリスクは常にあり、ハード面、ソフト面でのセキュリティ対策は欠かせない。システム発注とエンジニアのマネージメントは本当に難しいと今でも感じている。


小説なので楽しく実際のCIOの仕事内容が理解できる。システム関係の仕事に興味がある人にはおすすめの本である。


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2010年09月14日

タオバオの正体 中国のEコマースがわかる

中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)中国巨大ECサイト タオバオの正体 (ワニブックスPLUS新書)
著者:山本 達郎
販売元:ワニブックス
発売日:2010-06-08
おすすめ度:5.0
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「アリババ帝国」に続いて、中国のEコマースの本を読んでみた。

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦
著者:張 剛
販売元:東洋経済新報社
発売日:2010-07-09
おすすめ度:3.5
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タオバオはアリババグループのCtoC,BtoCサイトで、アリババとソフトバンクのジョイントベンチャーとして2003年に誕生した。タオバオとは見つからない宝はないという意味だ。

taobao site






当時中国ではeBayが投資する易趣味が圧倒的シェアーを持っていたが、タオバオは少なくとも3年間は出店料、手数料を無料にすると発表、急速にマーケットシェアを奪っていく。

2003年10月にはアリペイという決済システムがスタート、中国Eコマースで最大の問題だった信用問題を解決した。現在中国Eコマース決済の2/3がアリペイだ。

2003年8月には5万人だったユーザーが、2004年末には350万人、2005年末には1400万人に拡大。2010年には1億8千万人にまで拡大した。中国のネットユーザーは3億人といわれているので、その6割がタオバオユーザーだ。

CtoCビジネスでは2009年のタオバオのシェアーは81.5%を占めている。


タオバオの拡張戦略=大タオバオ戦略

タオバオの拡張戦略はオーソドックスだ。まずは個人向けオークションで、先行するeBayの易趣網を追い抜き、次にタオバオモールでBtoCビジネスに展開した。

2008年9月からタオバオアフィリエイトサービスを開始、またたくまに40万ものサイトがタオバオの商品を飾るショップフトントとなった。

2009年3月からはタオバオモバイルを開始、携帯電話でもタオバオの商品を購入できるようになった。

チャットツールのアリワンワンや、SNSの淘江湖、クチコミの淘心得、タオバオQ&Aサイトという具合に事業を拡大してきた。

変わったところでは女性を中心としたユーザーが、ファッションなどを自ら身につけてネットショップとモデル契約を交わす、いわばモデルのマーケットプレースの淘女郎もある。

mmtaobao






タオバオの売れ筋商品

タオバオには現在250万もの個人ショップが出店しているという。この本では日本からタオバオに出店する場合の手続きを詳しく解説している。

タオバオの売れ筋商品は次の通りだ。

1.化粧品
2.レディースファッション
3.デジタル家電
4.レディースバッグ
5.韓国アクセサリー
6.日用品と家具

タオバオの成功モデルとして、2009年4月に出店したユニクロが取り上げられている。ユニクロの柳井社長は、「ユニクロの目的は世界最大のアパレル販売会社になることであり、その戦略の中でもタオバオは非常に重要な位置を占めている」と語っているという。

IBMのパソコン事業を買収したレノボ、スポーツ用品のKappa、通販のフェリシモなどの企業の成功例が紹介されている。

また成功した個人ECショップも紹介されている。タオバオナンバーワンの個人ECショップは「檸檬緑茶」というサイトだ。このサイトでは化粧品、ファッション、アクセサリー、時計などを販売している。

檸檬緑茶





この本では檸檬緑茶や日本人の経営する粉ミルクショップ「宝貝心願」についても詳しく説明している。

宝貝心願






日本製粉ミルクショップはちょうど中国で粉ミルクにメラミンを混ぜるという悪質な品質詐欺事件があったことから、大ブレイクした。

「宝貝心願」のオーナーの内田さんのコメントも興味深い。内田さんは、中国人には絶対に仕入を任せてはいけないという。すぐに独立して中抜きされたり、私腹を肥やしたりするケースが多いという。

その他タオバオで成功した泥パックのショップ「御泥坊」や、田舎町の産品を売っている「四川味道」など、様々な個人ショップが取り上げられている。

タオバオショップの成功の秘訣は、1.クチコミ、2.ユーザーへの対応/アフターサービス、3.商品説明のわかりやすさ、4.中国市場の研究他だという。

タオバオではニセモノ排斥運動に力を入れており、7日以内であれば理由を問わず返品、交換を保証したり、ニセモノがあった場合、3倍の賠償を保証している。

この本の著者の山本達郎さんの経営している北京ログラスなどの出店・運営代行サービスも紹介している。

これからはEコマースは日本のヤフーの運営するタオバオ購買サービスのYahoo!チャイナモールで中国製品を買ったり、タオバオ販売代行サービスを通じて、中国に日本の製品を売ったりする日中共通ECサービスの時代だという。

Yahoo!





タオバオで成功している店が詳しく紹介されていて参考になる本だった。一度中国製品のEコマースも体験してみようと思う。


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2010年08月13日

アリババ帝国 中国発のインターネット巨人 ジャック・マーの10年

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦
著者:張 剛
販売元:東洋経済新報社
発売日:2010-07-09
おすすめ度:5.0
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中国のインターネット企業を代表するアリババグループCEOの馬雲(ジャック・マー)の1999年から2009年までの10年の軌跡。

馬雲さんは独特の風貌で、ひときわ目立つ。YouTubeにもファイナンシャルタイムズのインタービューが掲載されているので、紹介しておく。馬雲さんの英語のうまさに驚くと思う。



馬雲さんは1964年浙江省杭州生まれ。杭州師範大学の英文科を卒業し、5年間英語教師をやったあと、「自分が成功できるなら80%の人が成功できる。そのことを証明するために起業した」という。


浙江省杭州市は中国で筆者の最も好きな都市

余談になるが、浙江省や杭州は筆者にとって中国で最も愛着がある場所だ。

筆者は1983年に浙江省にフィリピン産鉱石を持ち込んで、ステンレス鋼の原料に加工して日本に持ち込む委託加工(当時は合作と呼んだ)のビジネスを担当していた。その契約相手が浙江省の杭州市にあった浙江省冶金分公司(こんす)だった。

当時は中央集権を見直していた時期で、北京の冶金公司と交渉を始めたが、最終的に契約相手は浙江省冶金分公司になった。

初めて中国を訪問した1983年の夏には、北京、上海、長沙(上海ー長沙は汽車で20時間以上)の工場を歴訪し、最後に上海から電車で杭州に行き、杭州から車で1日掛けて横山という場所にある工場を訪問した。

当時は外国人の中国での旅行は厳しく制限されており、横山や途中の町も非開放地区だったので、杭州を朝出発したが、途中の町の役場に立ち寄っては通行許可証を取っていたので、横山に辿り着いた時は夜になっていた。

その夜歓迎宴を工場の人が開いてくれたが、夏はスッポンが手に入りにくいため数日前に捕まえておいたというスッポン料理で歓待してくれて感激した。

横山工場には遊休となっていたニッケルの生産設備があり、それはアルバニア人技術者が建設したものだと語っていた。中国はソ連と断交した後、同じくソ連と断交していたアルバニアと親しくなり、アルバニアから技術を導入していたのだ。

優秀な品質の製品をつくる工場で、日本でも評判が良かった。

当時はビジネスで出張すると、せっかく来たんだからと先方がわざわざ観光地を案内してくれる習慣があり、北京では万里の長城、故宮、上海では豫園(よえん)、長沙では毛沢東の生家や刺繍工場を見学した。

杭州では西湖をボートで観光し、日本の天台宗の開祖の最澄も学んだ天台山国清寺、龍泉茶で有名な龍泉(泉の水をかき回して波立てても、しばらくするとスーッと波が消えて、鏡のようになる)などを観光した。

鉱石を陸揚げした寧波にも行って一泊した。当時は中国にはエアコンなどなく、水浴びをしてなんとかしのいだ。夜になると多くの市民が夕涼みのために散歩していて、大変な混雑だった。

杭州市ではできたばかりの花園飯店というホテルに泊まり、宴会の後に若い従業員も加わって、みんなで歌った。千昌男の「北国の春」が中国でもヒットしていたことを思い出す。

毎日おかゆには飽きたので、朝食にパンを頼んだら、カステラみたいにボロボロくずれるパンが出てきたことには閉口した。当時はまともなパンは北京と上海の一流ホテルでしか食べられなかった。

杭州の最初の宴会では、山西省出身の人民解放軍上がりの総経理に汾酒(アルコール度53度でセメダインみたいなにおいがする)で乾杯させられ、死ぬほど飲まされたので、翌日の楼外楼での答礼宴では、ブランデーで乾杯し、コカコーラを用意して、乾杯するたびにコーラを飲んで薄めていた。

汾酒・フェンチュウ(ふんしゅ) 500ml【中国酒】
汾酒・フェンチュウ(ふんしゅ) 500ml【中国酒】


楼外楼は日本にも支店がある杭州の老舗レストランだが、当時はそんなきれいな店ではなく、一般庶民も多く利用していた。名物の乞食鳥を初めて楼外楼で食べた。乞食鳥という名前を奇異に感じたものだ。

閑話休題


1999年にアリババ起業

馬雲さんは「中国黄頁」(中国版イエローページ)など何件か起業した後に、中国国際電子商務中心の情報部総経理(部長)となり「国富通」、「中国商品交易市場」などのサイトを立ち上げる。これらのサイトはすぐに黒字となり、合計300万元(40万ドル)の黒字となった。

馬雲さんはこの成功でインターネットの可能性を感じ、1999年に仲間とBtoBサイトのアリババを立ち上げる。


アリババというサイト

アリババは日本語サイトも立ち上げている。もっぱら企業向けなので訪問したことがない人が多いと思うが、BtoB(企業間取引)向けのサプライヤーとバイヤーのマッチングサイトだ。

alibaba





筆者は10年ほど前にインターネット逆オークションを使った電子調達ビジネスを研究していたので、アリババのサイトも10年ほど前から知っている。

自分の興味ある商品を登録しておくと、メルマガなどでサプライヤーのリストを送ってくれるが、そのサプライヤーの品質がどうか、信頼できそうな相手なのかは自分で調べなければならず、結局使わなかった。

今はアリババの登録ユーザーは4000万人で、中国が8割。登録店舗数は5百万件にまで成長してきたので、それなりの信用や品質情報などもあるのだと思うが、当時は企業版のYellow Pageをインターネットに載せたようなものだった。


アリババ起業の十八羅漢

このときの起業メンバーが馬雲さんも入れて「十八羅漢」と呼ばれる面々で、現在でもアリババやタオバオの幹部を占めている。ちなみに仏教では普通十六羅漢と呼ばれるが、十六でも十八でも大きな差はない。

十八羅漢の中でも、1999年10月の蔡崇信(現アリババCFO)の入社で、アリババは資金確保に悩まされることはなくなった。

蔡崇信は、スウェーデンのインベスターABグループの副総裁だったが、アリババと投資交渉をしていて、急に気が変わり、アリババに入社することを決意、70万ドルの年俸を捨ててわずか500元(60ドル)の月給でアリババに入社した。

蔡崇信が入社してすぐにゴールドマンサックスなどが500万ドルを投資した。


ソフトバンクの孫さんが二千万ドル投資

そのすぐ後に馬雲さんと会ったのがソフトバンクの孫正義さんだ。1999年9月のビジネスウィークにはebiz25というインターネット起業家特集があり、孫さんは日本人として唯一ebiz25に入っていた。

次が1999年9月のBusiness Weekの表紙だ。当時筆者は米国に駐在しており、IPO投資した電子調達会社の社長もebiz25に入っていたので、この表紙をスキャンして保存していたものだ。

BWeek19990927cover










出典: Business Week

この記事はBusinessweek.comで読めるので、参照して欲しい。

孫さんは5−6分馬雲の説明を聞いただけでビジネスモデルを理解し、「我々はアリババを第2のヤフーに育て上げる」と語り、30%の株式を2,000万ドルで取得し、アリババの顧問にもなった。

孫さんの目標は「情報革命で人々を幸せにする」ことで、馬雲さんも「インターネットを通じて、社会を豊かにする」との夢を共有する同志であるという。

ソフトバンクの投資は、後に回収するときに70倍以上になってソフトバンクに富をもたらした。

孫さんのヤフー立ち上げ時の1億ドルの投資は有名だが、それに負けずとも劣らないのが、アリババへのこの2,000万ドルの投資である。

1999年はインターネットバブルのピークで、中国の初期のポータルサイト新浪(sina.com)に、シリコンバレーのベンチャーキャピタルが数千万ドル投資し、クライナー・パーキンス、住友商事の子会社のPresidio Venture Capitalなどもsina.comに投資している。


アリババの目標

馬雲さんの打ち出した目標は次の3つだ。

(1)80年持つ企業になる。この80年は後に102年となり、1999年から2101年まで3世紀にわたって存続する企業を目ざすと若干変わった。

(2)世界のインターネットビジネスで10位内に入る。

(3)ビジネスマンなら誰でもアリババが必要となるようにする。

2000年のネットバブルの崩壊直前にアリババは必要十分な資金を調達したので、順調に拡大を続けたが、好事魔多し、アリババにダメージを与えたのは2003年に広まったSARSだった。SARSのためにアリババのオフィスは12日間隔離された。


タオバオとイーベイの覇権をめぐる争い

2003年5月にアリババのCtoCサイト、タオバオが誕生した。タオバオはイーべイが支援する易趣網に対抗して作られたBtoC、CtoCサイトだ。

taobao site






イーベイはヤフージャパンのオークション無料化戦略で2002年に日本から追い出されたが、中国では1999年スタートのCtoCサイト最大手易趣網に2,000万ドル投資し、33%の株を取得して中国でのシェアを90%以上にまで押し上げていた。

アリババはイーベイの小口送金サービスペイパルに対抗し、アリペイを2003年10月に立ち上げた。

2004年初めのタオバオのシェアは9%だったが、ヤフージャパンと同じく手数料無料戦略をとったので、急速にイーベイ易趣網からシェアーを奪い、2004年末には9%から41%にシェアを上げた。イーベイ易趣網は90%から53%にまで落ちた。

それには2004年2月のソフトバンクの6,000万ドルを核とする8,200万ドルの追加投資が役に立った。日本からイーべイを追い出したヤフージャパンの代理戦争がタオバオでも始まっていたのだ。


2005年に決着

2005年は中国企業が大躍進を遂げた年だ。レノボがIBMのPC部門を買収、中国海洋石油総公司がユノカル買収を発表(結局米国政府が認可しなかった)、他にも英国ローバーを南汽が買収した。

2005年でタオバオとイーベー易趣網の戦いはタオバオの勝利に終わり、タオバオ57%、イーベイ34%という結果となった。さらにタオバオはシェア−7%で3位の一拍網も傘下に収めた。

アリババは順調に成長し、2006年に国際貿易の会員数は3百万人を超え、2006年の取り扱い高は260億ドルと、2005年の200億ドルを3割上回った。国内取引でも会員社数は1,600万社を超えた。

タオバオはさらに急成長を遂げ、2006年には取引額は169億元で、2005年のほぼ倍、2006年一年間で220万台の携帯電話、2000万の携帯電話カード、4000万の化粧品、230万のインナーウェア、60万台のデジタルカメラを売っていた。


アリババの株式を公開

2007年はアリババが株式を上場して、飛躍を遂げた年だ、2007年11月アリババは香港市場で株式を公開し、IPO当時の時価総額は260億ドルとなった。

2007年には米国ではサブプライム問題、中国では不動産バブルが発生しており、馬雲さんは、当初の予定の2009年上場を早める必要があると考え、2007年中に香港市場で上場したのだ。

アリババ株の33.5%を持っていたヤフーのジェリー・ヤンは多額の資金を得たが、それでも米国Yahoo!の経営は立て直せず、失意のうちに経営を退いた。

第二位株主のソフトバンクの持ち株の時価総額は45億ドルとなった。投資資金が七十倍のリターンをもたらしたのだ。

アリババ社員は26%持っており、一挙に約5千人の富豪サラリーマンが誕生した。このうち7名の幹部社員が13%を持っていた。馬雲の持ち分は7%で、創業社長にしては少なかったが、馬雲は社員が裕福になったことを喜んだという。

アリババ上場後、香港株は下がった。このブログでも紹介しているバイクライダー投資家のジム・ロジャースは香港株は高すぎるが、アリババ株は例外だと語ったという。


株式上場後、すぐに非常事態宣言

株式公開後すぐの2007年末に馬雲さんは非常事態宣言を出し、タオバオの総裁、アリババグループのCTO,VPが交代すると発表した。

2008年9月には中国の検索で70%以上のシェアを持つ百度ヨウアというECサービスを始め、タオバオと直接競合するようになった。百度からはタオバオに行けないようにしたので、タオバオは報復としてタオバオからも百度に行けないようにした。

リーマンショックの影響が大きかったので、馬雲はアリババの登録費用を6万元から、2万元弱に引き下げて、5万社の中国企業を支援すると発表した。

2009年にはタオバオは利益はまだ出していないが、1.2億のユーザー、アリペイは1.8億人のユーザーを持っているという。アリババの登録ユーザーは4、000万人で、中国が8割。登録店舗数は5百万件だ。

中国のインターネット人口は、1999年末の630万人から、2009年には4.4億人に急拡大しており、中国のほとんどのECサイトに急激なトラフィック増加をもたらした。


顧客第一、社員第二

馬雲さんは、顧客第一、社員第二、株主第三だと語る。

馬雲さんは、本を書くなら「アリババと1001の過ち」という本を書きたいと語っている。アリババの過ちを公開することで、多くの人にヒントを与えるからだと。

最後に馬雲さんの2009年6月の北京大学国際MBA卒業式のスピーチを紹介している。結びの言葉は、なんと映画フォレストガンプの有名な言葉だ。さすが元英語教師の馬雲さんらしい。

"Life is like a box of chocolates, you never know what you're gonna get"だから"Enjoy the life"だと。



著者のジャーナリストの張剛さんは、公開されている資料中心に、そつなく十年間の軌跡をまとめているが、たとえば何故タオバオのトップを総入れ替えしたのかなど、馬雲さんの考えがわからない。

馬雲さんのインタビューを中心に本を書けばもっと良かったと思う。


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Cto  
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2010年07月31日

重ねてご支援ありがとう!Google「あらすじ」検索でトップ!

2010年7月31日追記:

なんとGoogle検索でトップになった!

今まで「大前研一」+「あらすじ」とかのキーワード2つだと、大体トップになっていたが、「あらすじ」だけで検索トップは初めてだ。

「あらすじ」というキーワードでGoogle検索すると、当ブログがトップに表示される。

重ねてご支援ありがとう!

いつまでも検索トップというわけにはいかないだろうが、ひきつづき参考になりそうな本のあらすじを紹介していくので、ご支援よろしくお願いしたい。


2010年7月30日初掲:

「あらすじ」というキーワードでGoogle検索すると、当ブログがトップ10位か11位くらいに表示される。

7月27日は10位で、検索結果のトップページに表示されていたが、現在は11位で2ページめのトップに表示されている。

このブログを書き始めて五年半になるが、当初は「あらすじ」という検索ワードだと、テレビドラマなどのあらすじがトップグループに表示されて、このブログはまったくランクインしていなかった。

最近は500人前後の人がこのブログを訪問される。

livedoorブログには「ログミン」という機能があり、アバターで訪問者の訪問歴とか検索キーワードが表示されるが、携帯電話からのアクセスや初めて訪問する人も多いことがわかる。

ログミン






これからもみんなの参考になるように、できるだけ頻繁に新しいあらすじを載せるつもりだ。

尚、別ブログで「時短読書のすすめ」というブログも開設しているので、こちらもチェックして頂ければ幸甚。

時短読書






ご支援どうもありがとう!


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2010年07月26日

ソフトバンク「常識外」の成功法則

ソフトバンク「常識外」の成功法則ソフトバンク「常識外」の成功法則
著者:三木 雄信
販売元:東洋経済新報社
発売日:2006-11
おすすめ度:5.0
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「A4一枚」シリーズの本を読んだので、同じ著者の本を読んでみた。

「A4一枚」仕事術「A4一枚」仕事術
著者:三木 雄信
販売元:東洋経済新報社
発売日:2007-10-26
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


著者の三木雄信さんはジャパン・フラッグシップ・プロジェクト社長で、元ソフトバンク社長室長で、孫正義さんに密着して仕事をした経験を本にしている。

本筋からそれるが、この本では誤字がいかに本の価値を損ねるかを実感した。

孫正義さんは、「有言実行」でなく、「有言=実行」なのだと。有言=実行とは、口に出すこと自体が実行のプロセスに含まれていることだ。

ここで「有限=実行」という誤字が続けて出てくる。およそ本の信憑性を失わせる誤字である。筆者も他山の石としなければならない。

ともあれ、いくつか参考になった点を紹介しておく。


アリババへの投資

☆孫さんの最大の投資成功例はもちろんYahoo!だが、2000年に中国のBtoBのアリババ・ドットコムの創業時の2,000万ドルの投資も大きく当たったという。

アリババは世界中で事業展開しており、世界最大級のBtoBプラットフォームカンパニーとなり、傘下のタオバオはアジア最大のBtoC Eコマースに成長している。

現在「アリババ帝国」という本を読んでいるので、こちらもあらすじを近々紹介する。

アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦アリババ帝国 ネットで世界を制するジャック・マーの挑戦
著者:張 剛
販売元:東洋経済新報社
発売日:2010-07-09
クチコミを見る



孫さんの300年計画

孫さんの300年計画はプリントアウトすると5メートほどの屏風になったという。


eBayが撤退するまで手数料無料

BtoCオークションでは世界的にはeBayが最大手だが、日本では成功しなかった。

孫さんは、Yahoo!Japanのオークションの料金を、「eBayが撤退するまで無料にする」という戦略を打ち出した。圧倒的なシェアを握ってから、有料化していったのだ。

以前紹介した「フリー」の考え方にも共通するところがある。


Yahoo!オークションビジネスの教訓

これの教訓は次の3点だ。

1,マッチングビジネスでは、シェアを確保することが何よりも重要。

2.新しいサービスをユーザーに広めるには、心理的障壁を少しでも低くすることが重要。

3.短期的な赤字を乗り越えて、長期的な視点で競争をしていくことが重要。


孫さんの事業選択の基準

Yahoo! Japanが最もわかりやすい例だが、孫さんの事業選択の基準は次の通りだという。

1.ビジョンに沿った事業
ソフトバンクのビジョンは、「デジタル革命を通じて、人々が知恵と知識を共有することを推進し、人類と社会に貢献する」ことである。

アリババのマーさんっも、孫さんとは理念を共有していると語っている。


2.プラットフォームになる事業
プラットフォーム事業でナンバーワンになると、「自己増殖する事業」となるという。

3.成功が証明された事業
Yahoo!JapanはYahoo! USとのJ/Vで、Yahoo!BBは、韓国で急成長したADSLを使ったブロードバンドを日本に導入したものだ。


孫さんの経営手法は、「タイムマシン経営」と呼ばれていたが、それはこの3点に注目して評されていたものだ。

日本のベンチャーでもネットからスタートして、リアルに進出し、大成功した例はソフトバンク以外にはないのではないか。

孫さんの300年計画では、孫さん自身は60歳で引退することになっていたと思うが、もう数年でそれが来る。

今のソフトバンクグループを見ると、iPhone獲得でも、孫さんが直接交渉したからこそ、販売権を得られたのだと思う。

カリスマ経営者の孫さんが引退した後のソフトバンクがどうなるのか。注目されるところだ。


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2010年07月06日

グーグル秘録 グーグル礼賛本にあらず 時系列的な多角分析が優れている

+++今回のあらすじは長いです+++

グーグル秘録グーグル秘録
著者:ケン・オーレッタ
販売元:文藝春秋
発売日:2010-05-14
おすすめ度:3.5
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雑誌「ニューヨーカー」記者で、IT・メディア業界に強いジャーナリスト ケン・オーレッタの力作。

アメリカ屈指のジャーナリズムスクールを擁するコロンビア大学の「コロンビア・ジャーナリズム・レビュー」ではオーレッタ氏を「アメリカ最高のメディア論者」と評しているという。

原著のタイトルは"Googled"、つまり「ググった」だ。

やや距離を置いたタイトルからもわかる通り、この本はグーグル礼賛本ではない。あくまでグーグルの過去とこれからを冷静に分析した本である。

Googled: The End of the World as We Know ItGoogled: The End of the World as We Know It
著者:Ken Auletta
販売元:Virgin Books
発売日:2010-02-25
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


翻訳がすばらしい

筆者は頭にスッと入らない翻訳本よりは、英語の原著(あるいはオーディオブック)の方を好むが、この本の翻訳はよくできていると思う。

英語の原著と比べた訳ではないが、頭にスッと入る翻訳で読みやすい。

どうやったらこんな訳になるのかというような絶妙の訳もある。たとえば新聞など伝統的なメディアとグーグルの関係について書いた部分で、こんなのがある。

「シリコンバレーのある重鎮は、グーグルについて何が不満かといえば、新聞社に同情的な姿勢を見せるなど、かまととぶっていることだという」

かまとと」なんて言葉、本では初めて見た。英語でなんというのか興味があるところだ。"pretend to be naive"あたりか?

このように当意即妙な訳なので、500ページの大作ながら、頭にスッと入る本だ。


グーグルの成長の系譜

この本ではグーグルの誕生から現在までを時系列的に述べ、あわせて同時代の他社の動向や、インターネットと既存マスメディアの力関係、広告業界の変化などを取り上げている。

特にグーグルが収集する個人のサイト閲覧履歴や、携帯電話のGPSによる行動履歴などのマーケティングのための利用が、個人情報保護に反するおそれがあるので、様々な見地から検証している。個人情報の有効活用は、筆者がまさに研究している点なので、大変参考になった。

このブログでは「ザ・サーチ」、「ウェブ進化論」、佐々木俊尚さんの「グーグル」、「検索エンジン戦争」などをグーグルについて紹介した。現在最も注目すべき企業の筆頭格であることは間違いない。


グーグルをあらわすキーワード

この本では、グーグルの本質をあらわすいくつかのキーワードでグーグルのコーポレートカルチャーを説明している。

「別の惑星」、「邪悪になってはいけない」、「我々の目標は世界を変えることだ」

「君たちは魔法をぶち壊しにしているんだ!」というのはバイアコム社長が、グーグルがうまみのあるマス広告ビジネスを危うくさせていることから、思わず叫んだ言葉だ。


ビル・ゲイツの予言

この本は150回におよぶグーグル社員への取材、メディア嫌いの創業者2人への数回のインタビュー、CEOのエリック・シュミットとの11回にもおよぶインタビューを経て書かれたものだ。

その他にも多くの識者、ネット業界とメディア・広告業界関係者に直接取材しており、その情報の質はベストセラーの「フラット化する世界」を書いたピューリツァー賞受賞のトム・フリードマンにも匹敵するものがある。
著者のオーレッタ氏はマイクロソフトのビル・ゲイツにも直接インタビューしている。

グーグルが誕生した1998年にビル・ゲイツは、「最も恐れている挑戦者は、どこかのガレージで、まったく新しい何かを生み出している連中だ」と語っていたという。

ビル・ゲイツの予言は正しかった。


グーグルの創業者

グーグルの創業者のセルゲイ・ブリンラリー・ペイジはともに1973年生まれのエンジニア。父親はともに大学教授で、母親も科学関係の仕事についていた。セルゲイ・ブリンはロシアからの移民だ。

セルゲイ・ブリン

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ラリー・ペイジ

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出典:Wikipedia

ともにモンテソーリ式の小学校に通い、好きなことを自由に学ぶことを許されたという。筆者の次男もピッツバーグでモンテソーリの幼稚園に行っていた。自由な雰囲気でこどもは楽しんでいたものだ。

ラリー・ペイジは偉大な発明をしながら、極貧の中で一生を終えたニコラ・テスラの伝記をこどものときに読んで、「世界で最も偉大な発明をしても、単に発明しただけでは何もならないことを学んだ」と語っていたという。

「何かを発明するだけでは、まったく意味がない。社会に影響を与えるには、それを世に送り出し、人々に使ってもらうことが何より重要だ」と。

ちなみにテスラは磁気密度の単位に名を残しており、トヨタが出資したことでも有名な電気自動車メーカーテスラモーターズもテスラの名前にちなんだものだ。




グーグル誕生

ラリーとセルゲイは1998年1月に、当初「バックラブ」と呼ばれていた検索の基本となるペイジランクを支えるアルゴリズムを博士論文に書いて公表した。10の百乗を意味する"googol"にちなんで、検索エンジンは"Google"という名前にした。"googol"は既にドメインが登録されていたという。

うっかりアイデアを他人に漏らしてしまったために、発明の成果を奪われたテスラの教訓から、ラリーはペイジランクをそれまでずっと秘密にしていたという。

グーグル設立は1998年9月だ。

最初の出資者は25万ドルずつ4人だった。ネットスケープで財を成したインド人のエンジェル投資家ラム・シュリラム、サン・マイクロシステムズの共同創業者のアンディ・ベクトルシェイム、スタンフォードのデビッド・チェリトン教授、そして余り知られていないがシュリラムの紹介があったアマゾンのジェフ・ベゾスだった。ベゾスはグーグル検索のデモを見てほれ込んだという。

インターネットバブルのピークの1999年6月にはシリコンバレーの超有名ベンチャーキャピタルのクライナー・パーキンスとセコイアから2,500万ドルずつ出資を受けた。同時にクライナーのジョン・ドーア、セコイアのマイケル・モリッツがグーグルの取締役会のメンバーに就任した。

Googleは当初ポルノ情報が検索に引っかからないようにアルゴリズム設定に苦労したという。当時のトラフィックの1/4がポルノ検索だった。

1999年のインターネットバブルの時に名声を極めたモルガン・スタンレーのアナリストで”インターネットの女王”と呼ばれていたメアリー・ミーカーの話が出てきてなつかしい。

また2001年に副大統領を辞めたアル・ゴアに「バーチャル取締役」になってもらった話などが、時代を反映している。


創業当初のグーグル

毎週金曜日午後に社員みんなが集まるTGIF("Thank God It's Friday")ミーティングが開かれ、世界中の支社の社員がビデオ会議システムを通じて参加していたという。

2000年にはネットバブルが崩壊し、巨大な時価総額を売り物にしていたネット企業は大打撃を受ける。しかしグーグルは2000年6月にYahoo!の検索エンジンに採用されたり、2000年10月にアドワーズをスタートさせるなど基盤が着々とできている。

ベンチャーキャピタリストからプロの経営者を雇い入れるよう強く求められ、2001年には元ノベルCEOのエリック・シュミットをCEOとして雇い、ラリーは製品部門担当社長、セルゲイは技術部門担当社長になった。

エリック・シュミットは1955年生まれで、コンピューター・サイエンスの博士号を持っており、サンマイクロシステムズのCTOからノベルCEOに転じた。採用面接ではラリーとセルゲイからケンカをふっかけられ、1時間半も議論してテストに合格したという。

ちなみにシュミットも父親が大学教授、母親が科学者という家庭で、ネバダ砂漠で行われる儀式バーニングマンの常連だという。バーニングマンの常連がまともな企業人であるはずがないというのが採用理由の一つだったという。

グーグルのいわばメンターとしてシリコンバレーのいくつかの企業のCEOやアップルの取締役を経験したビル・キャンベルがコーチするようになったのは、2001年秋からだ。

ビル・キャンベルはエリックと創業者2人の間をよく取り持ち、内部崩壊からグーグルを救った立役者だ。


グーグルロケット点火

グーグルは2001年に黒字に転換し、2002年には個人ブログなどに広告を載せるアドセンスをスタートさせ、収入の半分以上を稼ぎ出した。「グーグルロケット」に点火されたのだ。

ネット業界でグーグルは広告代理店をお払い箱にしただけでなく、コンテンツ企業の広告営業部門も不要にした。

シュミットの言葉によると2002年はグーグルが「自らが広告業であると気づいた年」だったという。

グーグルは思い切った条件でAOLの検索エンジンを受注するかわりに、"Powered by Google"と毎回表示させることで、知名度という大きなメリットを得た。

2004年には創業者が一般株主の10倍の議決権を持つデュアルストック制度を導入してIPOを実施し、公開会社となった。売り出し価格は85ドルだった。グーグルの株価はすぐに急上昇し、これで社内にはビリオネア、ミリオネアが続出した。

IPOで得た資金を使ってサーバーを100万台以上使って、世界数十ヶ所にデータセンターを建設した。エリック・シュミットがサン・マイクロシステムズ時代から20年以上も研究してきたテーマがクラウド・コンピューティングだったという。

この頃、グーグルとアマゾンを想起させる「グーグルゾン」という巨大企業が、2014年に世界を独占するという「EPIC 2014」というビデオがユーチューブで掲載され、話題となっている。




グーグルのダブルクリック買収がネット広告会社買収合戦を誘発

2005年にはメディア王ルパート・マードックがSNSのマイスペースを5億8千ドルで買収した。グーグルはマードックやヤフーなどを相手に回して、YouTubeを16億5千万ドルで買収した。

YouTubeに対抗してニューズコーポレーションとNBCはhulu.comを始め、CBSはYouTubeに配信を始めた。

広告業界の懸念が恐怖に変わったのは、2007年にグーグルがマイクロソフトとヤフーに競り勝ってダブルクリックを31億ドルで買収したからだ。

テキスト広告中心のグーグルとバナー、動画広告などディスプレー広告に強いダブルクリックはシナジーがあり、ネット上のあらゆる広告インフラになるチャンスだと競争相手は恐れた。

その後ネット広告会社の買収合戦が起こり、数ヶ月のうちにヤフー、AOL、世界最大の広告代理店WPP、マイクロソフトがそれぞれネット広告会社を買収した。

この本ではグーグル関係者やダブルクリックのCEOの話を聞くとともに、グーグルを「フレネミー」(friendとenemy両方を兼ねるという意味)と呼ぶ世界最大の広告代理店WPPのCEOや、WPP傘下のメディアバイング会社グループMのCEOの話も紹介しており、話を立体的に構成している。

ちなみにWPPという会社名は、およそ広告代理店らしからぬWire and Plastic Productsという社名の略だ。

すでに終了したサービスも多いが、Google Print Ad, Google Audio Ad, Google TV Adなどのインターネットで直接広告主が広告を作成できるツールも提供した。広告代理店が脅威と思うのは当然だろう。

現在ではグーグル・アド・プランナーという、広告主がターゲットとする視聴者がよく訪問するサイトを特定できるツールも無料で提供開始している。


グーグルと個人情報の取り扱い

ダブルクリックを買収することで、ダブルクリックとグーグルの検索履歴やクリック履歴などのデータを統合すると巨大な消費者行動のデータができる。さらにダブルクリックの100万社以上にも上る広告主ネットワークを手に入れたので、ネット広告のワンストップショッピングが可能となった。

携帯電話会社が取得する検索履歴や位置情報まで個人情報として統合できるようになると、たとえば訪問した場所の近辺のレストランやショップの情報など、消費者に便利なサービスが提供できる。広告とサービスは表裏一体となるのだ。

グーグルが収集する検索履歴やクリック履歴など、クッキーを使って収集する個人情報が悪用されるというのは、映画の中の話だとグーグルの創業者は否定する。

アメリカではポイント制度が発達していないので、グーグルで唯一個人を特定できる情報を集めているのはグーグルチェックアウトという支払いサービスだ。それ以外は個人を特定できる情報は集めていない。


IPアドレスから個人を特定する

この本では、電話会社やインターネット・プロバイダーと連携して、匿名性は守りつつ、消費者一人ひとりの行動を記録しようとするフォルム社という会社が紹介されている。

フォルム社は2007年末までに英国企業3社と契約して、英国内でインターネットのブロードバンド回線を利用している家庭の2/3を追跡できるようになったという。

フォルム社の活動は、WWWの発明者ティム・バーナーズ・リーを激怒させたという。検索履歴などの情報はプロバイダーのものではなく個人のもので、使いたければ個人の同意が必要だと語る。EUの役人も規制すべきか調査しているという。

アメリカでは9.11以降、"Patriot Act"により、大統領府は個人のeメール、検索内容、読んだ資料、通話内容、YouTubeやFacebookで見たもの、ネットで購入したものを調べることができるようになった。まるでジョージ・オーウェルの「1984」のビッグブラザーのような監視社会が現実のものになっている。

日本でもプロバイダー責任制限法があり、公権力の強制捜査令状があれば、プロバイダーは個人情報を犯罪捜査に提出しなければならない。

2年ほど前に、神奈川県の高校生の個人情報がIBMの下請け社員の私物パソコンからWinnyに流出した事件で、警察は故意にShareに再放流していた人物をプロバイダー責任制限法を使って割り出し、逮捕したという例がある。

普通インターネットに接続する場合にはプロバイダーを経由するので、IPアドレスはDHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)といって空いているIPアドレスを自動的に振り分けるので、IPアドレスからは個人は特定できないが、国家権力を使ってプロバイダーまでさかのぼれば、過去のセッション情報を調べることによって個人を特定できるのだ。


国の検閲とグーグル

中国政府の検閲の方針に一旦は従ったグーグルだが、結局香港での検閲のない検索結果を中国からの検索にもフィードするという形で、中国政府の検閲を拒否した。

グーグルが中国政府の検閲に反対して、中国での検索サービスから撤退したことは、訳者あとがきに記されている。

しかし実は中国政府だけが検閲者ではない。ドイツでもナチスに関する情報を流布させないというドイツの法律に従って検索結果をコントロールしているという。


グーグル経営陣の混乱

頂点を極めたグーグルでも、2008年頃になると不協和音が出てくる。勤務時間の20%を自由な開発に使ってよいという20%ルールのおかげで、150もの製品・サービスが生み出されたが、それらをどうするかという問題が発生してきた。

エリック・シュミットでさえも本当の決定権を持っていないことがはっきりした。

さらにエンジニアがキングである企業文化を誇るグーグルでも、重要なエンジニアの流出が始まった。

最たる例がアドワーズを開発したシェリル・サンドバーグがフェースブックのCOOに転出したことだ。シェリルはアドワーズとアドセンスの2大商品を統括しており、グーグルの収益の98%を生み出していた。


旧メディアの衰退と通信社の隆盛

旧メディアの衰退もこの本の大きなテーマだ。iPodにやられたソニー、CDからダウンロード販売に変わった音楽業界、雑誌業界、主要紙が大幅な業容縮小、人員削減をはじめた新聞業界、書籍出版業界、ラジオ業界の窮状が紹介されている。

新聞でネット購買の有料課金に成功したのは、ファイナンシャルタイムズとウォールストリートジャーナルだけだ。たぶん、これに続くのが日経新聞だろう。

大手メディアでも通信社は例外で、AP(1,500社の新聞社が株主)、ロイター、ブルームバーグの3社は業績は好調だ。新聞社が縮小して、通信社にアウトソースするようになり、ニュース供給の需要は増えたからだという。また、ブルームバーグとロイターは世界中の主要企業にばらまいている専用端末という大金脈を持っている。

新聞社と情報サービスの差は、買収金額でも明らかだ。2007年にルパート・マードックがダウ・ジョーンズを買収した時は50億ドルだったが、2008年にメリルリンチがブルームバーグの20%の権益を売却したときは、220億ドルという値段がついた。時期の違いはあるが、会社全体の時価からするとブルームバーグはダウジョーンズの20倍の価値を認められたわけだ。

旧メディアについてエリック・シュミットの発言を紹介している。「ポケットベルを惜しむ奴はいるか?」と。


ネット広告の急成長

広告の成果が測れるネット広告が急成長し、透明性が増し、広告代理店業界は「わくわく感」を高く売りつける能力を失った。

モルガン・スタンレーのメアリー・ミーカーの2008年12月のレポートでは、消費者が新聞を読む時間は7%だが、広告支出の20%が新聞に使われている。一方インターネットに消費者が使う時間は25%だが、広告支出は8%に過ぎない。これからも広告は伝統メディアから、おそらく劇的に離れていくだろうと予想している。

2008年9月にグーグルは創立10周年を迎えた。グーグルの活動はさらに進化している。世界最大規模の広告主P&Gと社員の相互派遣をはじめたり、GEとは電力供給ネットワーク効率化技術のスマートグリットで提携した。


世界同時不況後のグーグル

2008年末からの世界同時不況はシリコンバレーも例外ではなかった。ジョン・ドーアは、ベンチャーキャピタルの資金は2007年の370億ドルから、2009年には50ー100億ドルに減少するだろうと予測している。

セコイア・キャピタルの支援者会合でも、最初のスライドは「さらば、良き時代よ」だったという。

モルガン・スタンレーのメアリー・ミーカーは相変わらず楽観的な見通しを出しているが、インテルやシスコは減収を発表し、マイクロソフトは5千人の削減、グーグルも採用を絞り、派遣労働者を削減した。買収したダブルクリックでは人員整理を行った。

グーグルの成長の伸びが止まったと認識されるようになり、グーグル創業以来はじめてコストを気にするようになったという。無料軽食メニューは100種類から50種類となり、自宅への持ち帰りは禁止、営業時間も短縮された。

しかし研究投資やデータセンターへの投資は削減せず、社員に対するストックオプションの行使価格も引き下げ、太っ腹なところを見せた。

2009年度の売上は31%減少する見込みだが、利益は4%増える見通しで、グーグルはうまく軟着陸したといえる。

グーグルの最近の動きで注目すべきことは、エリック・シュミットが2008年の最も重要な製品と位置づける自前のブラザー、クロームと携帯電話のOSアンドロイドだ。


マスメディアの生きる道

以前このブログで紹介した「フリー」の論点が紹介されている。

「フリー」の著者のクリス・アンダーソンはかつては「無料こそ完璧なモデルだ」と主張していたが、「フリー」に最終章を加えて、かつての主張を変更し、「今では無料だけでは十分ではない。有料サービスと組み合わせることが必要だと考えるようになった」と結んでいる。

オーレッタ氏は、新聞などの旧メディアは小額決済に活路があるのではないかと記している。

アマゾンのキンドルなどの電子端末も急速に普及している。ジェフ・ベゾスによると、キンドルで分厚い本が楽に読めるようになると、消費者はもっと長編作品を読むようになるだろうと語っている。常に本を持ち運ぶようになると読書量も増えるだろうと。

ケーブルテレビ業界は安定している。毎月の使用料と広告収入があるためだ。デジタル回線ならビデオオンデマンドの販売も見込める。しかしケーブルテレビ運営会社をバイパスする無線通信技術も登場しているので油断はできない。

セズミ・コーポレーションが開発した無線装置だとケーブルや衛星通信の回線が不要となるのだ。


第17章 これからどうなるのか

最後の第17章の「これからどうなるのか?」が締めくくりとなっている。この本はなか見、検索に対応しているので">、是非目次をチェックして欲しい。この章のサブタイトルを読むと論点がつかめるので、紹介しておく。

・磐石に見えるが

・二心を抱きつつキスを投げ合う関係

・グーグルも新たなサービスに置き換えられる?(SNSはグーグルの検索を脅かす?)

・グーグルになくてツイッターにあるもの(群集の叡智?)

・専門家によるサーチにも一定数支持がある

・「検索に従ってばかりいると視野が狭くなる」

・内容の真偽を見分ける力が必要

・書籍のデジタル化独占阻止

・共通の価値観は世界に存在しない

・聞く耳を持たぬグーグル

・内容の質と検索結果の不一致

・経営の焦点がボケはじめている?

・偉大な企業の原則を忘れれば(「イノベーションのジレンマ」の著者のクレイトン・クリステンセンの話)

・一社でメディア業界全域を揺るがした企業

最後の第17章だけでも十分時間をかけて読む価値があると思う。


日本語版で510ページもの大作だが、訳も良いので、スッと頭に入る。グーグルがこれからどうなっていくのかに興味がある人には、最後の第17章の様々な見地からの分析は必読だと思う。

ちなみに筆者はグーグルのアドセンスはブログに載せていない。自分のブログにあまり関連性のない、うっとおしい広告は載せたくないからだ。

検索連動広告は万能ではないし、限界がある。しかし膨大なデータを元にした行動ターゲティングと一緒になったり、あるいはマイクロソフトの”キャシュバック”のように、検索結果にポイントがつくような形にして個人情報と統合すれば、次世代の広告ができると思う。


比較的読むのが速い筆者でも読むのに4日ほどかかった。それだけの価値はあるが、情報が満載なため、メモでも取らないとあまり頭には残らないと思う。

新しいビジネスモデルを検討するにも、この本で詳しく取り上げられているグーグルの例は大変参考になると思う。

このあらすじを参考にして、自分でもメモを適宜取りながら読むことをお勧めする。


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2010年06月14日

マスコミは、もはや政治を語れない ジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著

マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)
著者:佐々木 俊尚
販売元:講談社
発売日:2010-02-26
おすすめ度:4.0
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ネット関係の著作を量産しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの2010年2月の最新刊。

タイトルの「マスコミは、もはや政治を語れない」というのは、昨年の民主党の圧勝は小選挙区という選挙手法によるもので、全得票率では議席数ほどの差がついていないことをマスコミはどこも語らないことを指している。

他にも日本のマスコミ特有の問題として、記者クラブ問題を取り上げている。

そもそも記者クラブは、日本とアフリカのガボンにしかないと言われているそうだ。

民主党公約の記者クラブ開放が結局、外国メディア増加と雑誌記者への開放のみに終わり、フリージャーナリストなども含む開かれた記者クラブとはほど遠くなった。

しかしブログなどのネット論壇が登場し、記者クラブを通して政府が言論をコントロールする時代は終わりつつあると佐々木さんは語る。

しかし全くマスコミにグリップが効かない状態もリスクがあるという。

たとえば既存マスコミが強くなかった韓国では、ネット論壇が世論を形成し、根拠のないデマが流布して、女優のチェ・ジンシルなどが自殺するという事態まで発生している。

「ネットで書かれたことは、瞬時に全国民に伝わる」というのは恐ろしいこともあるのだと。


インターネット大家族

フェースブックは日本ではあまり普及していないが、世界で3億人のユーザーがいる世界最大のSNSだ。

高齢者の間でもフェースブックは浸透しており、最近ではフェースブック上で、祖父母と孫が連絡を取り合い、「インターネット大家族」のようなものができているという。

上記のような話題も含め、マスメディアでは報道されない見方が取り上げられている。印象に残ったものをいくつか紹介する。


★事業仕分けの歴史的意義

事業仕分けを仕切った枝野さんと蓮舫さんがそろって菅内閣の重要ポストに入ったが、事業仕分けの意義は、すべてが公開されたことだという。

いままで密室で決められていた予算折衝が白日の下にさらされる訳だ。


★池上彰さんの仕事

新聞が「ニュースをわかりやすく解説する」という本来の仕事を放棄しているので、池上さんの仕事が成り立っていると池上さんは語る。
 
知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
著者:池上 彰
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2009-11
おすすめ度:4.0
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★亀井徳政令

亀井大臣は辞任したので、あるいは自見徳政令になるのかもしれない。

亀井静香大臣は「東京大学でマルクス経済学を学び、キューバのゲリラ指導者チェ・ゲバラを心から尊敬する極めて危険な社会主義者だから、甘く見ない方が良い」と、「金融日記」という人気ブログの作者の外資系投資銀行勤務の藤沢数希氏は語っているという。

経済学については、少なくとも昭和50年代までは東大のマル経、一橋の近経と言われていたので、元警察官僚の亀井さんがマルクス経済学のゼミを取っていても不思議ではない。

こんな色眼鏡のかけ方をしていると、昭和50年代までの東大経済学部の卒業生の過半数はマル経を取ったと思うので、すべて同じような社会主義者と見られることになるだろう。

日本のネット論壇はまだまだだと思うが、この本では背後からハミング大西宏のマーケティング・エッセンス漂流する身体などが紹介されている。

いずれ「ネット論壇」といえるようなものが日本でも出現するのかもしれないが、アメリカのネットメディア(たとえば"A Bright Fire"など)が影響力を勝ち得ているのに対して、日本ではまだ時間が掛かると思う。

いずれにせよ、情報ソースの拡大という面では意味があると思うので、この本で紹介されているブログのいくつかを時々チェックしてみようと思う。


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2010年06月11日

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 前ドコモ夏野剛さんの近著

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)
著者:夏野 剛
販売元:幻冬舎
発売日:2009-07
おすすめ度:2.5
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前NTTドコモ執行役員でiモードやおサイフケータイの推進者夏野剛さんの近著。

本のタイトルが過激だが、別にグーグルを使うなといっているわけではない。

以前の”Web 2.0”ブームでは、誰もがSNS(Social Networking Service)に走ったが、SNS大手のMixiモバゲータウンも伸び悩んでいる。SNSを取り入れて、いかにビジネスに生かすかが課題なのだ。

今の”クラウド・コンピューティング”ブームで、その代表格のGoogle AppsGメールを導入したり、アマゾンを真似てリコメンドなどを始めても、それだけで成功できる訳ではない。ビジネスが成功できるかどうかは、価値を創造して顧客を創れるかどうかであり、その意味ではリアルもネットも同じだと夏野さんは語る。

さらにiモードの仕掛け人だった夏野さんは、ケータイもパソコンもビジネスモデルに違いはないと言い切る。


ウェブビジネスの未来

この本で一番参考になったのは、第3章ウェブビジネスの未来だ。これは次の3節から成っている。


第1節 ウェブ広告の未来

ウェブ広告の身上は確実な効果測定で、ネット広告はマス広告を確実に超えると予言している。ラジオと雑誌はリスナー、ターゲットが絞られるという意味で、もはやマス広告ではなく、あくまで新聞・テレビとネットの比較だという。

未来の広告として、筆者も好きなスピルバーグの「マイノリティ・レポート」の個人にカスタマイズした広告を紹介している。




また夏野さんも、英国のTESCOのポイントカードを使ったデータベースマーケティングを、個人にカスタマイズされた販売促進の先進的な代表例として紹介している。

「TESC0の顧客ロイヤルティ戦略」に関しては、筆者も非常に興味を持っている。

その中心人物が書いた本を筆者のブログで紹介しているので、興味のある人は参照して欲しい。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略Tesco顧客ロイヤルティ戦略
著者:C. ハンビィ
販売元:海文堂出版
発売日:2007-09
おすすめ度:2.5
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第2節 仮想通貨(電子マネー)がウェブビジネスを加速させる

おサイフケータイと電子マネーは夏野さんがNTTドコモにいたときに、積極的に推進した戦略だ。

夏野さんはドコモ時代に「コンビニやタクシーで電子マネーを使えるようにする」という発想が、思った以上に受け入れられず、社内外の人を説得するのが大変だったと語っている。

「現金決済と電子マネーのどちらに将来の発展可能性があるか」という議論になかなかならず、売り上げアップと支払い手数料の費用対効果とか、店員教育の負担増といった目先のプラス・マイナスの議論となったので、普及は困難を極めたという。

このコメントは筆者には意外だ。

はたから見たら夏野さんが率いるドコモは、カネにあかせて三井住友カードの1/3を買ったり、ローソンなどのコンビニに出資して、おサイフケータイの端末を一気に普及させたりして、強引に推し進めていると思っていた。

いずれにせよ努力が実を結び、2001年11月にスイカとエディがスタートしてから、2008年10月で電子マネーの発行枚数は1億枚を超えて、さらに拡大しつつある。

電子マネーでも会員の個人情報と商品情報が収集できるので、IYグループのnanacoなどで、マーケティングに利用する動きが出ているという。

夏野さんは電子マネーを導入することにより、支払いが簡単になり、「ついで買い」が増え、客単価が上がると説得したという。

いまや多くのコンビニではiDや電子マネーが使えるようになっている。たとえば筆者はローソンではiD、7/11ではナナコモバイルが使えるので、もっぱら使うコンビニはローソンと7/11に限られている。

コンビニで小銭出すのが面倒くさいのだ。

夏野さんの狙った通りの効果が出ていると思う。これから多くの人がケータイで決済できる便利さを知ると、さらに利用は拡大するだろう。


第3節ネットメディアとデジタルコンテンツ

アメリカのNBSとNews CorpのジョイントベンチャーのHuluやYouTube、日本では夏野さんが取締役となっているドワンゴのニコニコ動画などが紹介されている。

マス広告市場の縮小に伴って、テレビ局の収益も悪化しているが、夏野さんはテレビは優良コンテンツを持っており、これをオンデマンドで有料で配信するか、広告付きで無料で配信すれば良いと提案する。

若者離れ、広告減のテレビを救うのはITだと。

ドコモで苦労したからだろう、随所に50代以上の経営者のインターネットリテラシーが低いことを批判している。

最後に夏野さんは「日本の将来は明るい。この明るさを生かして、IT時代を進んでいこう」と檄を飛ばす。

ドコモ時代に推進したiモードやおサイフケータイを使った様々なサービスが出てきている。

「先進的なIT技術に目を奪われて、海外の企業を真似たり、憧れたりするのは意味がない。自分たちのポテンシャルをもっと生かした先に、日本が持つ真の競争力が現れるのだ」と。


簡単に読めて参考になる本だった。


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2010年05月29日

理系の人々 2 SEマンガの続編

理系の人々 2理系の人々 2
著者:よしたに
販売元:中経出版
発売日:2010-03-26
おすすめ度:4.5
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前回紹介した「理系の人々」の続編。本屋に平積みになっていたので読んでみた。

この「理系の人々」はリクナビNEXT Tech総研のブログ「エンジニア★流星群」で連載されている。作者はSE(システムエンジニア)兼マンガ家のよしたにさんだ

理系の人々最新








この「理系の人々 2」に収録されている最新作もRSSでまとめられているので、本を買わなくてもネットで立ち読みできるが、公開されていない書き下ろしのマンガも面白い。

理系の人々RSS








特に読者からのお便りを紹介している「女子からみた理系男子」というマンガが面白い。次のような人が出てくる。

★手でやった方が早いのに、シューマイをつくる型となりそうな猪口を必死にさがす若い夫。「効率重視なの!」

★恋人同士二人で一緒の布団に入って「なんか息苦しいね」と言ったら、「息を吸った後の酸素の濃度は17%」「空気中の酸素の濃度は21%だから、そんなに苦しくないはずだよ」といわれ、一気に冷めた話。

★圧巻は高校の課外授業のバスの中での話。「メダカより小さく、クジラより大きい生き物なーんだ?」と女子高校生が聞いたら、理系男子がすっくと手を上げて「アルミラリア属菌の一種」と答えた。

Armillaria_ostoyae






出典:Wikipedia

「ハイ、不正解」と流そうとすると、男子生徒は正解だと執拗に言い張る。

しょうがないので、「海の生き物で」と付け加えるが、その場はしらけてしまったという。

(正解は「イルカ」=そんなのいるかというジョーク)


結構参考になる話もある

筆者が特に気に入ったのは、ネットでも公開されている次の作品だ。

理系の人々セキュリティ








無線LANのセキュリティで、WEPという暗号化方式は破られているとは聞いていたが、破るツールが結構簡単に手に入るとは知れなかった。このマンガは役に立った。

入社して1年間はデータの入力(エクセルのデータをウェブにコピペするだけの単純作業)しかやらせてもらえず、すっかり腐っていたところを、新任のプロジェクトマネージャーに開発をやらせてもらった話なども紹介されている。

開発の楽しさ、苦しさを経験したという。

「バッチで起動する」というのを、違うと言い張る。「ジョブ・スケジューラーで起動する」のだと

気軽に読めて、気晴らしになる作品だ。


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2010年05月27日

理系の人々 SEとマンガ家を両立させているよしたにさんの作品

理系の人々理系の人々
著者:よしたに
販売元:中経出版
発売日:2008-09-27
おすすめ度:4.0
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次回紹介する「理系の人々2」が本屋に平積みになっていたので、まずは「理系の人々」を読んでみた。

理系の人々 2理系の人々 2
著者:よしたに
販売元:中経出版
発売日:2010-03-26
おすすめ度:4.5
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作者の”よしたに”さんは本業はSE(システムエンジニア)で、兼業漫画家だという。

「ぼく、オタリーマン」シリーズから「理系の人々 2」までの累計で120万部が売れたという。

この「理系の人々」はリクナビNEXT Tech総研のブログ「エンジニア★流星群」で連載されている。

バックナンバーも含めて35セクションもあるので、本を買わなくてもこのブログで”立ち読み”できる。ブログでは無料で公開し、本を売るという、「フリー」のなかで述べられていた無料でも利益を上げる方法のひとつだ。


実は筆者は理系にあこがれていた

筆者は文系ながら、元々天文学科とかに漠然とあこがれていた。

しかし、高一の時に目が悪くなって、眼鏡を買う前の2ー3ヶ月間で黒板が読めなくなり、黒板に細かい字で書く数学教師の授業が全く理解できなくなった。

そのため数Iの成績がガタガタになり、文系志望に切り替えた。

だから理系の人にはあこがれというか、尊敬の意識がある。

インターネット関係の会社に出向したときに、勉強して初級シスアド資格を取ったので、今は理系の大学や高専などを出たばかりの学生並のシステムとかインターネットの知識はある。

しかしプログラムを書いている訳ではないので、シスアド受験当時はSQLをたたけたが、今や完全に忘れている。

初級シスアド資格は更新審査がなく、一旦取ったらそれっきりだが、理系の資格というのは、メインテナンスしないとすぐに役に立たなくなるということを実感する。

その意味でプログラムを組める人は尊敬してしまう。

この本ではプログラマーの上のSEのオタッキー(英語では"Techy"と言うのだと)な人々がマンガで紹介されている。

この本のなかで気に入ったものをリンク付きで紹介しておく。クリックしてよしたにさんのブログでマンガを見てほしい。

★理学と工学
理学部と工学部卒の差がわかるような気がする。

★結婚を後悔する男と結婚していない男
笑えるが、ウーム…。子供が生まれたらまた違うと思うけど。

★ソニーのデジカメの笑顔を撮る機能
たしかに昔はアイワというメーカーがありました。

★盗撮防止シールのセキュリティ
筆者は経験ないが、やはりエンジニアの訪問する場所(研究所とか)はセキュリティが厳しいんだな。

★彼女の誕生日はケータイのアラーム機能で記憶
言わなくても良いのに…。こんな真っ正直な人たしかにいるね。

★燃えるゴミが燃やすゴミに、燃えないゴミが燃やさないゴミに
気が付かなかったけど、この言い方は正確だ。

★人工イクラはひっくり返すと赤(油)が移動する
知らなかった。もっともこれはこの本には載っていない。

★理系の彼女さん
ブログで紹介されていないマンガもこの本には収録されている。よしたにさんは30歳を過ぎて未婚だが、「理系の彼女さん」というマンガも面白い。

彼女の前で実家から電話が掛かってきて、「彼女いない。いない」と言い切ったら、後で彼女から問いつめられ、「私のこと ほんとに好きなの?」と迫られる。

それで言った言葉が「それって 答え一択じゃない? いや もちろん好きだけどさ」。これで彼女が怒らないはずがない。

その他にも「理系が言ったこのひとこと」など、結構面白いマンガがあるが、この程度にしておく。

オタリーマンシリーズも現在読んでいる。同じ傾向のテーマで、登場人物も同じで楽しめる。

ぼく、オタリーマン。ぼく、オタリーマン。
著者:よしたに
販売元:中経出版
発売日:2007-03-15
おすすめ度:3.0
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女性漫画家が「キッパリ」シリーズや「ダーリンは外国人」シリーズとか、「日本人の知らない日本語」シリーズで、ヒットを飛ばしている。

よしたにさんは「ダーリン」とかと同じ様なユーモア派の売れっ子男性マンガ家だ。SEとマンガ家という貴重なキャリアーなので、是非両立させて、これからも面白い作品を書いて欲しい。


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2010年05月25日

evernote 何でもウェブにアップ!

できるポケット+ Evernoteできるポケット+ Evernote
著者:コグレ マサト
販売元:インプレスジャパン
発売日:2010-03-05
おすすめ度:4.0
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佐々木俊尚さんの「仕事するのにオフィスはいらない」で紹介されていたので読んでみた。evernoteの活用術がわかって参考になる。

仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)
著者:佐々木 俊尚
販売元:光文社
発売日:2009-07-16
おすすめ度:4.0
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evernoteは文字メモだけでなく、ビデオ、写真、ウェブサイトのスクリーンショットなど様々な媒体をウェブサイトに収納できるクラウドサービスだ。

evernote top








「脳をバックアップしてくれるツール」と呼ぶ人もいると、佐々木さんの本には紹介されている。

何か思いついたり、気に入ったものがあれば、身近にあるパソコンでも携帯電話でもネットにアクセスできる端末を使って、evernoteに保存するという使い方だ。

evernote使い方








昔のベストセラー野口悠紀雄さんの「超整理法」では、紙の情報が対象だったので、フォルダーを作って時系列で並べて、いつ頃作ったかという記憶を頼りに探し出すというやり方だった。

「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)「超」整理法―情報検索と発想の新システム (中公新書)
著者:野口 悠紀雄
販売元:中央公論社
発売日:1993-11
おすすめ度:4.0
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しかし、インターネットに保存するなら、そもそも整理は不要だ。検索機能を使って、キーワードで見つけ出すことができるからだ。

保存する際や、後で見直した時にタグ(キーワード)をつけると、検索しやすさが格段に上がる。これがevernoteの特徴だ。

紙のメモでは、何かの方法で整理して保管しないと、後から見つけ出すことが難しい。しかしネット上ならば、検索機能を使えば簡単に目当ての情報を見つけることができる。

いままでこういうサービスがなかったのが不思議なくらい、発想はカンタンだが、便利に使えると思う。

早速登録してみた。

evernote登録








登録画面は日本語になっているが、会員規約は英文のものしかない。まだ日本語規約はできていないようだ。

会員登録すると、evernoteからワンタイムログインパスワードが入ったメールがくるので、それを使って正式登録が完了する。

evernoteの操作画面は次のようになっている。

evernote操作画面








まだ何も入れていないので、welcomeメッセージだけが表示されているが、これから徐々にいろいろ放り入れて、使ってみて、使い勝手などを追記する。

たぶん一番簡単なのは、メールのコピーをevernoteに落とすやり方だ。evernoteのトップページの設定ページに、自分専用のメアドが設定されているので、BCCをここに落とせばevernoteに保存される。

mail設定








ブラウザーで表示したページの画像をevernoteにドラッグ&ドロップするというのは、IEでは対応していないので注意を要する。FirefoxやSafariでは対応しているということなので、Firefoxで一度試してみる。

今までGメールをウェブ上のファイルとして同じような用途に使っている人は多いと思う。evernoteも同じ用途だが、メール以外のワード、PDF、画像、映像など様々な様式で保存できる。

使ってみると便利なサービスである。いずれ日本でもブレークするだろう。


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2010年04月12日

フリー 終わりから読んでもいい優れた構成の本

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略
著者:クリス・アンダーソン
販売元:日本放送出版協会
発売日:2009-11-21
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

ユニクロの柳井正さんが「私の最高の教科書」と呼ぶ元ITT社長ハロルド・ジェニーンさんの有名な言葉がある。

本を読む時は、初めから終わりへと読む。
ビジネスの経営はそれとは逆だ。
終わりから始めて、そこへ到達するためにできる限りのことをするのだ。


普通はこの通りだが、この本については終わりから読んでも良いかもしれない。というのは、この本の終わりには付録として、次の3つの簡単な解説と日本語版解説がついているからだ。

先日の朝日新聞日曜版でも出版社のNHK出版の編集者の話が紹介されていたが、人目を惹く本のカバーといい、英語のオーディオブックを無料公開していることといい、斬新なマーケティング手法を自ら取り入れた本である。


10の無料のルール(10のフリーの法則)

1.デジタルのものは遅かれ早かれ無料になる
2.アトム(デジタルに対して)も無料になりたがるが、力強い足取りではない
3.フリーは止まらない
4.フリーからも金儲けはできる
5.市場を再評価する
6.ゼロにする
7.遅かれ早かれフリーと競いあうことになる
8.ムダを受け入れよう
9.フリーは別のものの価値を高める
10.稀少なものではなく、潤沢なものを管理しよう


フリーミアムの戦術

「フリーミアム」とは大多数の利用者は無料として、一部のユーザーだけ有料のプレミアム会員とするやりかたで、著者のクリス・アンダーソンの造語だ。

これがこの本の最大の論点である。このフリーミアムについては、日本語のFreemium.jpという公式解説サイトもある。

そのフリーミアムの様々な手法は次のようなものだ。

1.時間制限
  30日間無料というようなモデル。

2.機能制限
  このLivedoorブログが良い例だ。もっと機能が欲しいと思うと有料のプレミアム版にしなければならない。

3.人数制限
  一定人数の人は無料だが、それ以上は有料。  

4.顧客のタイプによる制限
  小規模で開業間もない企業は無料で、それ以外は有料。マイクロソフトのビズパークがその例だという。

5.適切な移行割は?
  一般的には5−10%の有料会員と言われているが、クラブ・ペンギン(子ども向けオンライン仮想世界)は25%、ハボ(アバターチャット)10%、パズル・パイレーツ(オンラインゲーム)は22%だという。
  
6.無料ユーザーの価値は何か?
  無料ユーザーでも最初の時期の無料ユーザーはサイトを有名にする効果があり、価値が高く、時間が経つに従って価値は下がる。


フリーを利用した50のビジネスモデル

無料ビジネスモデルは経済学では「内部相互補助」という。無料のように見えても結局誰かがコストを負担しているのだ。「この世にタダのランチはない」(There Ain't No Such Thing As A Free Lunch=TANSTAAFL)と言われ、ノーベル賞経済学者のミルトン・フリードマンが有名にした言葉だという。

無料のビジネスモデルには次の3つの類型がある。

1.フリータイプ1(直接的内部相互補助)
  一つ買うと、一つタダというモデル(BOGOF=Buy One Get One Free)や、ケータイ電話を無料でもらえるとか。結局料金設定の一つの形態なのだ。

2.フリータイプ2(三者間市場)
  広告で支えられているテレビ、ラジオ、無料タウン誌などがこれだ。

3.フリータイプ3(前記のフリーミアム)
  普通は無料だが、機能が向上したプレミアム版は有料というモデルだ。たとえばこのLivedoor Blogも筆者は月々300円弱払って、プレミアム版を使っている。強制的に表示される広告がうっとうしいからだ。

それと付録では省かれているが、4番目のモデルの本当の無料モデルとして次がある。

4.非貨幣市場
  ウィキペディアなど、対価を期待せずに人々が貢献するモデル。マズローの欲求段階説による最上位の自己実現欲や、コミュニティの一員としての意識、助け合い精神などの理由だ。


日本語版解説も参考になる

日本語版解説も参考になる。解説者兼監修者の小林弘人さんは日本版「ワイアード」誌編集長だった経歴を持ち、ITメディア分野で活躍している人とのことだが、この解説もさすがと思わせる内容だ。

単にこの本の内容を紹介するだけでなく、著者クリス・アンダーソンの前著「ロングテール」の紹介や、クリス・アンダーソンが編集長を務めるワイヤード誌の紹介、無料で電子版を公開するという前代未聞のこの本の販売方法が紹介されている。

ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)ロングテール(アップデート版)―「売れない商品」を宝の山に変える新戦略 (ハヤカワ新書juice)
著者:クリス アンダーソン
販売元:早川書房
発売日:2009-07
おすすめ度:3.0
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フリーミアムの考え方は、この本の売り方にも取り入れられており、ハードカバーが発売された2009年7月に電子版をKindle向けに無料で配布したり、クリス・アンダーソン自身が朗読しているオーディオブックも無料でiTunesMusicStoreで配布されている。

Free Podcast







筆者も早速iTunesMusicStoreでダウンロードしてみた。16編+プロローグ、付録など21編に分かれており、章によってはダウンロードに時間が掛かるが、ダウンロードが集中しているのかもしれない。

全部聞くと8時間くらい掛かりそうだが、現在聞いている"The Snowball"(ウォーレン・バフェットの伝記。全部聞くのに30時間以上掛かる)が終わったら、聞き始めてみる。

The Snowball: Warren Buffett and the Business of LifeThe Snowball: Warren Buffett and the Business of Life
著者:Alice Schroeder
販売元:Bantam
発売日:2008-09-29
おすすめ度:4.5
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日本語訳もわかりやすい

構成も良くできていると思うが、訳もわかりやすい。頭にスッと入る訳である。

同じような時期に出た「ブラック・スワン」は長時間掛けて読んだにもかかわらず、結局何が言いたいのか理解できず、あらすじ掲載を断念したが、この本は非常にわかりやすい。

ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質ブラック・スワン[上]―不確実性とリスクの本質
著者:ナシーム・ニコラス・タレブ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2009-06-19
おすすめ度:3.5
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いくつか参考になった事例を簡単に紹介しておく。

★モンティ・パイソンはYouTubeの違法映像に業を煮やし、公式高画質映像をYouTubeで無料公開したところ、アマゾンのDVD売り上げでベストセラーとなった。



★フリーの歴史1 ジェロ(Jell-O"、ゼリー)はジェロを使ったデザートレシピの本を無料で各家庭に配ることによって需要をつくりだした。1902年のことだ。

★フリーの歴史2 キング・ジレットは安全カミソリを無料で配った。そして替え刃を売って大きなビジネスとした。

★ペニーギャップ たとえ1セントでも有料とした途端に消費者の手は止まる。「心理的取引コスト」と呼ばれるが、1セントだと買おうかどうしようか考える必要があり、それがブレーキになる。マイクロペイメントのような簡単な支払い方法でも支持は得られないという。

★マイクロソフトは中国での不正コピーを見逃していた。1998年にビル・ゲイツはワシントン大学で、次のように言ったという。「中国では1年に300万台のコンピューターが売れているにもかかわらず、人々は私たちのソフトウェアにお金を払ってくれません。

でも、いつの日か払ってくれるようになるでしょう。だからどうせ盗むならば、わが社の製品を盗んで欲しい。彼らがわが社の製品に夢中になっていれば、次の10年で私たちはお金を集める方法を考え出せるはずです。」

★グーグルでは「これは儲かるか?」という平凡な質問から始めたりはしない。純粋なデジタル世界にいる企業にとっては、そのアプローチは筋が通っているという。

★グーグルはコロンビア川沿いの水力発電所の近くに巨大データセンターを建設し、再生可能エネルギーによるデータセンター運営を進めている。壊れるまでの累積電力料金の方がマザーボードの価格より高いのだと。

★クレイグズリストは13年間でアメリカの新聞社の株価を300億ドルも減らした張本人。

★プリンスは2007年のロンドン公演の前に、「プラネット・アース」という新作アルバムのCDを無料でロンドンの新聞の「デイリーメール」に付けて280万部配った。100万ドルという特別の著作権料でも新聞社は70万ドルの損をしたが、これにより新聞社はブランド力を高めたという。

Planet EarthPlanet Earth
アーティスト:Prince
販売元:Sony
発売日:2007-07-23
おすすめ度:4.0
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プリンスのロンドン公演は全21回分が売り切れで、プリンスは460万ドルの著作権料を諦めることで、2,340万ドルの公演収入を得たのだという。

★UCバークレーの物理学のミューラー教授の授業は、YouTubeのUCBerkeleyの専用チャンネルで公開されている。大学の物理学の講義だが、"Physics for future president"と題されているるだけあって、日常の出来事をわかりやすく解説している。

筆者の一番好きで、最も人気の高い授業は次だ。



最初の隕石が直撃するトヨタのコマーシャルには驚かされる。

これらの有名大学の授業料は年間数万ドルだが、講義内容をYouTubeに公開することによって、優秀な学生を惹きつけたいという考えのようだ。またミュラー教授の本もベストセラーになっている。

Physics for Future Presidents: The Science Behind the HeadlinesPhysics for Future Presidents: The Science Behind the Headlines
著者:Richard A. Muller
販売元:W W Norton & Co Inc
発売日:2009-09-21
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現在この本を読んでいるが、たとえば9.11の犯人がどうやって空港警備をくぐり抜けたかとか、燃料を満載した飛行機がどれだけの破壊力があるか、原子爆弾テロなど、興味を引く話題で物理をわかりやすく説明していて面白い。

★中国のミュージシャンは不正コピーをコストのかからないマーケティング手法と受け止めている。レコード会社にとっては大問題だが、アーティスト自身にとっては、ファンを拡大し、それによりメディアやCMに出演することで収入が得られ、コンサートツアーも成功するからだ。中国では不正コピーが95%を占めるという。

★ブラジルはオープンソースの利用で、世界の先頭にたっている。リナックスによるATMは世界最初で、政府・学校もオープンソースに切り替え中だ。「マイクロソフト・オフィスとウィンドウズのライセンスをひとつ取得するためには、ブラジルは60袋の大豆を輸出しなければならない」と政府の責任者は語ったという。


記憶に残る具体例も満載で、楽しく読める本だ。英語に自信のある人は。iTunesMusicStoreで著者自身が吹き込んでいる無料オーディオブック(Podcast)をダウンロードして聞くのも良いだろう。

大変参考になる本だった。


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Posted by yaori at 13:04Comments(0)TrackBack(0)

2010年01月04日

あたまにスッと入るあらすじ掲載記事一覧を更新 掲載記事は532件!

掲載記事一覧の更新が遅れていたが、年末年始の休みを使って、2009年12月31日現在の掲載記事一覧をマイクロソフトのSkyDriveにアップした。

最新掲載記事一覧は、右のアイコン、または次の「あたまにスッと入るあらすじ記事一覧」アイコンをクリックしてダウンロード願う。



一覧表はエクセル表なので、著者別のソートなども可能。URL付きなので、興味ある本が見つかれば、URLをクリックすればあらすじページが表示される。

このブログの掲載記事は532件になった。あらためて掲載記事一覧を読み返してみると、本は知識の宝庫であることが実感できる。

ブログトップの検索窓とともに、掲載記事一覧も是非活用願いたい。


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Posted by yaori at 00:59Comments(0)TrackBack(0)