2012年05月30日

大往生したけりゃ医療とかかわるな ベストセラーの「自然死」のすすめ

大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)大往生したけりゃ医療とかかわるな (幻冬舎新書)
著者:中村 仁一
幻冬舎(2012-01-28)
販売元:Amazon.co.jp
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現在アマゾン売り上げ18位で、50万部近いベストセラーになっている医者にかからない自然死のすすめ。読書家の上司から借りて読んだ。

方向としては、以前ベストセラーになった蒲田實さんの「がんばらない」と同じだが、「がんばらない」が感動の実話集だったのに対して、この本は中村さんの自然死の提言というような内容だ。この本を読んでも、ウルウルくることはない。

がんばらない (集英社文庫)がんばらない (集英社文庫)
著者:鎌田 實
集英社(2003-06-20)
販売元:Amazon.co.jp
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著者の中村仁一さんは、1940年生まれ。京都大学医学部を卒業した内科医で、京都市にある高雄病院の院長・理事長を経て、現在はやはり京都市にある社会福祉法人「同和園」附属病院の院長を務めている。

京都新聞のサイトで、昨年収録された中村さんのインタビュー記事が載っているので、紹介しておく。「老いを受け入れて死ぬ」と、この本の趣旨とほぼ同じことを語っている。


中村さんの医療の鉄則

中村さんの医療の鉄則は次の2つだという。

1.死にゆく自然の過程を邪魔しない。
2.死にゆく人間に無用の苦痛を与えてはならない。

つまり「自然死」のすすめである。


医療に対する思い込みテスト

最初に医療に対する思い込みテストが15問ある。これをやると自分の考えと中村さんの考え方が対比できるので紹介しておく。

1.ちょっと具合がわるくなると、すぐ医者にかかる。

2.薬を飲まないことには病気はよくならない。

3.病名がつかないと不安。

4.医者にかかった以上、薬をもらわないことには気がすまない。

5.医者は病気のことなら何でもわかる。

6.病気は注射を打った方が早くよくなる。

7.よく検査するのは熱心ないい医者だ。

8.医者にあれこれ質問するのは失礼だ。

9.医者はプロだから、自分に一番いい治療法を教えてくれるはず。

10.大病院ほど信頼できる医者がたくさんいる。

11.入院するなら大病院、大学病院の方が安心できる。

12.外科の教授は手術がうまい。

13.マスコミに登場する医者は名医だ。

14.医学博士は腕がいい。

15.リハビリすればするほど効果が出る。

筆者はいくつか○(マル)があったが、中村さんが主宰している「自分の死を考える集い」の出席者は、○はほとんどゼロだという。

中村さんは、病気を治す力の中心は自然治癒力であり、薬や医療者は援助者にすぎないという。

目次を見ると中村さんの主張が大体わかる。

日経新聞の広告で、次の通り目次が紹介されていた。

大往生






読みにくいので、なんちゃってなか見!検索でも主な目次を紹介しておく。

第1章 医療が”穏やかな死”を邪魔している 
 
    本人に治せないものを、他人である医者に治せるはずがない
 
    ワクチンを打ってもインフルエンザにはかかる
 
    解熱剤で熱を下げると、治りは遅れる
  
第2章 「できるだけの手を尽くす」は「できる限り苦しめる」 

    「自然死」のしくみとは
  
    長期の強制人工栄養は、悲惨な姿に変身させる
  
    食べないから死ぬのではない、「死に時」が来たから食べないのだ
  
    ”年のせい”と割り切った方が楽
  
   「看取らせること」が年寄の最後の務め
    
第3章 がんは完全放置すれば痛まない

    死ぬのはがんに限る
 
    がんはどこまで予防できるか

    がんはあの世からの”お迎えの使者”
 
    「がん」で死ぬんじゃないよ、「がんの治療」で死ぬんだよ
 
    余命2,3か月が1年になった自然死の例
 
    手遅れのがんでも苦痛なしに死ねる
 
    医者にかからずに死ぬと「不審死」になる
 
    安易に「心のケア」をいいすぎないか

第4章 自分の死について考えると、生き方が変わる 
 
    「あなたもお棺に入って、人生の軌道修正をしてみませんか」
 
    「死生観」に大きく影響した父の死にっぷり
  
    延命の受け取り方は人によって違う
 
    「死」を考えることは生き方のチェック
  
    「自分の死を考える」ための具体的行動とは
 
    意思表示不能時の「事前指示書」はすこぶる重要
    
第5章 「健康」には振り回されず、「死」には妙にあらがわず、医療は限定利用を心がける    

    生きものは繁殖を終えれば死ぬ
    
    医者にとって年寄りは大事な「飯の種」
   
    生活習慣病は治らない
   
    年寄りはどこか具合の悪いのが正常
   
    検査の数値は微妙なことで変わる
    
    病気が判明しても、手立てがない場合もある
   
    年寄りに「過度の安静」はご法度

終章  私の生前葬ショー

    クイズにはまる

    「自分史」のまとめ

    私の「事前指示」


たとえば肺がんは痛いし、苦しむと聞いていたので、筆者は半信半疑なのだが、中村さんはがんでさえも、何の手出しもしなければ、全く痛まず、穏やかに死んでいくという。

中村さんは以前から「死ぬのはがんに限る」と思っていたが、年寄りのがんの自然死60〜70例を経験した今は確信に変わったという。「手遅れの幸せ」を得るためには、がん検診や人間ドックを受けてはいけないという。

アマゾンの書評を見ると、医者による反対意見も出されている。早々にあきらめることは医者としては認めることはできないと。また症例も60〜70例は少ないと指摘している。

著者の中村さんは今年72歳で、普通なら現役を引退しても良い年齢だ。内科医だから病院長という仕事を続けているが、外科医ならとっくに引退だろう。また72歳の医者の言うことと、たとえば40代、50代の働き盛りの医者の言うことは多分違うだろう。

その意味で、この本の自然死のすすめは、割り引いて考える必要があると思う。

中村さんは「繁殖年齢」という言い方をしているが、たとえば、50代くらいまでの人がガンに罹ったら、当然「自然死」コースではないだろう。なんとか治すべく、放射線治療でもなんでも、可能な治療法をとるべきだろう。

しかし70代以上であれば、中村さんの言う「自然死」コースも、アリだと思う。たとえばチューブだらけになって、すこしでも生きようとするのがいいのか、あるいは寿命と考えて、延命治療は拒否するのか、考えてしまう。


がんは不老不死の細胞

以前このブログで紹介した「ヒトはどうして死ぬのか」で、がん細胞が不死の細胞であり、遺伝子のコピーミスで毎日5,000くらいのがん細胞が誕生しているが、免疫細胞のおかげでがんが発症しないで済んでいることを知った。

ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎 (幻冬舎新書)
著者:田沼 靖一
幻冬舎(2010-07)
販売元:Amazon.co.jp
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がん細胞は毎日生まれ、生活習慣病や加齢により免疫力が弱まればどんどん増殖する。不死の細胞なので、やがては体の器官のあちこちに転移して、器官の働きを阻害し、ついには人の生命を奪うことになる。

自分の体を構成する細胞ががん細胞になって不死になったのに、自分は死んでしまうというと、なにかわりきれないところがある。

がんを克服すべく、医学や薬学は研究しているが、現状ではがんは克服できていない。外来の生物でなく、自分の細胞の突然変異だから、元々不死のがん細胞を殺すくらい強力な治療をすると、他の細胞も死んでしまい元も子もないからだ。

筆者の歳では中村さんのように、簡単にあきらめるというのは抵抗がある。しかし、もともと毎日発生している遺伝子のコピーミスががん細胞なので、その意味では人体の寿命とあきらめるべき時が来るのかもしれない。

この本がベストセラーになって、人の生き方が変わるかどうか疑問があるところだが、延命治療に対する自分の考えを家族に表明しておくことは意味があると思う。

そんなことを考えさせられる本である。


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2012年05月15日

就職に強い大学・学部 まあ大体わかっていたことではあるが…

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2012-03-13)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログでも「学歴の耐えられない軽さ」など何冊か紹介している転職エージェントマンガ・エンゼルバンクのモデルとなったリクルートワークス編集長で人材コンサルティング会社(株)ニッチモ社長の海老原嗣生(つぐお)さんの本。

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2009-12-18)
販売元:Amazon.co.jp
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就職をめぐるデマ・誤解

この本のあとがきで、海老原さんは、マスコミに流れるデマ・誤解をデータで反証するために就職関係の本をこれで5冊出したが、もうこれで打ち止めにしようとして、この本を書いたという。

そのデマとは(カッコ内は海老原さんの反論や筆者のコメントだ):

1.新卒偏重の日本では、大学卒業時点の1回しか正社員になるチャンスがない。

2.既卒3年まで新卒扱いすれば、若者は救われる

3.内定解禁を半年後ろ倒しにして4年の秋にすべき
(筆者はこれを”デマ”とは思っていなかったが、海老原さんは4月1日解禁の現在でも10月1日時点で4割近い未就職者が出ている。そこから3月末までにこのうちの3割は(大体は中小企業に)内定する。もし10月解禁にすると、3月末に4割近い未就職者が出てしまうという。)

4.採用広報を12月1日に後ろ倒しにすることで、学業阻害が和らぐ

5.採用を通年化すべき
(採用を通研化すると、いつまでも大手志向が冷めやらず、学生が中小企業に目を向ける機会が減る。人気100社には5%しか入れず、1000人以上の企業に就職できるのは1/3だという現実を忘れている。)

6.日本式の新卒一括採用が、若者を苦しめる諸悪の根源
(OECDのデータでも一括採用している日本と韓国の若年失業率が際立って低い。欧米型にすると就職できずに、インターンとかアソシエイトという不安定な待遇を我慢しないと、正社員にはなれない。どちらが若者にとって良いのだ?)


大体わかっていたことではあるが…

国公立大学は卒業生の就職先を公表していないので、この本で論じられているのは私立大学の卒業生の話だ。大体わかっている通りだが、結論は次の通りだ:

★人気上位100社への就職に強いのは慶應、早稲田、上智まで。それも経済・法学部・商学部など偏差値の高い学部に限られる。

海老原さんが各大学の公表資料からまとめた人気上位100社への就職率が載っている。高い方の数字は全就職者に占める比率、低い方の数字は全卒業生に占める比率。全卒業生は大学院進学者も含んでいる。

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出典:本書68ページ

次が上位100社に就職できたどの大学の学生が、どの業界に卒業できたかという表だ。早稲田・慶應・上智はいろいろな業界に、分布しているが、それ以下だと大量に採用する金融系の比率が圧倒的。

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出典:本書71ページ

金融系を除いた人気上位100社への就職率は、早稲田・慶応・上智が10%、同志社が6%、それ以下だと数パーセントとなっている。

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出典:本書75ページ

つまり、就職に強い私立大学は簡単に言うと慶應、早稲田、上智、同志社の順で、それ以下は金融系を除いては人気上位100社に就職は難しい。金融系は大量に採用するが、それは本店中心のキャリアを歩むエリートと、支店要員のソルジャーを両方採用しているからだという。


「誰でも大学生化」の当然の結果

「学歴の耐えられない軽さ」で説明されていた通り、若年層の人口は減っているのに、大学生の数は増えている。

基礎人口と大学進学率推移















当然のことながら、誰もが大学生となっている現在、平均学力は落ちている。産業構造が変わり、高卒求人が減少したことにより大学進学者が増えたのだ。

大学は少子化にもかかわらず、学生を確保しなければならない必要に迫られ、学力試験なしのAO入試や女子学生を増加させて、学生数を増やし続けてきた。そのツケが大学生の学力低下なのだ。

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出典:本書37ページ

これからは東大の秋入学化に象徴されるように、日本の少子化対策として留学生獲得競争が日本の大学に起こるだろう。


企業の求める人材の要素

企業が求める人材の要素は次の6つだ。
1.地頭がいい
2.要領がいい
3.継続性がある
4.体力がある
5.ストレスに強い
6.人に嫌われない、人を嫌わない。


人気上位100社の採用数は景気が良くても悪くても大体2万人前後で変わらない。

従来型の入試で、厳しい受験戦争を勝ち抜いて難関校に入るには、少なくとも上記の1〜3が必要だ。だから企業は難関校出身者を優先的に採用してきた。

一方、AO入試拡大で全私立大学の無試験入学者は5割にも上る。国公立を加えた全大学でも無試験入学は4割を超えるという。

厳しい受験戦争を経験せず「誰でも大学生化」で入学した学生は、上記1〜3の試練を受けていないので、大企業の選考ではじかれてしまう結果となるのだ。

昔のエントリーはハガキの手書きで、多くの企業に応募するのはよほど根気がないとできなかった。ところが、今は就職サイトに一旦情報を登録しておけば、同じ情報を使って何十社でもボタン一つで応募できる。

就職説明会などのエントリーでも、大手企業は有名校向けは大学別に開催し、それ以外の大学はまとめて開催している。誰でもエントリーが可能なので、希望者が殺到し、下位大学の学生はエントリーシートすら提出できないという事態になっているが、企業側も機械的スクリーニングせざるを得ないのだ。


早稲田対慶応の星取表が面白い

この本では早稲田対慶応の人気100社への就職状況を細かく分析していて面白い。

就職数では早稲田、就職率では慶応。業界数では早稲田だが、慶応が強い業界は慶応が圧勝しており、早稲田はまんべんなく、慶応は金融、商社などに集中する傾向がある。


国際教養大学が就職では最強

就職に強い大学は、開学からまだ8年の秋田県にある国際教養大学だという。

一般入試比率が7割で、入学者全員にTOEFLの成績でクラス分けし、最初の1年は全員が寮生活。1年の海外留学が必須で、4年で卒業できる学生は半分。企業の評価は高く、就職率はほぼ100%だという。


女子のほうが相対的に優秀のメカニズム

人気企業では男子学生の応募が大量にあるので、ライフイベントコストの低い男子を優先的に採用する。そんなハンディをものともしないパワフル女子は、激戦を勝ち抜いた精鋭となり、同期男子に比べて優秀さが際立つ。

人気企業が優秀な男子学生を大量に採用するので、それほど人気のない企業では優秀な男子学生が集まらない。

ところが女子は優秀でもなかなか人気企業に採用されないため、こうした企業群にも数多く応募する。したがって、優秀な女子とそれほど優秀でない男子との比較なら、どうしても女子が良く見えるのだ。

しかし女子が優秀=女子を多く採用とはならない。女性が長期で活躍できるのは、マスコミと化学・日用品業界というのが現実だ。


下位私立大学の高就職率は分母を操作している

下位私立大学が発表する9割という就職率は、就職できなかった学生をいろいろな理由でノーカウントにして操作された数字だ。

つまり就職者数=分子はいじれないので、分母=就職希望者数を少なくしているのだ。


大体わかっていたことではあるが、データで詳しく検証しているので納得できる。読みやすく参考になる本である。


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2012年03月22日

百年たっても後悔しない仕事のやり方  ライフネット生命社長の出口さんの本

百年たっても後悔しない仕事のやり方百年たっても後悔しない仕事のやり方
著者:出口 治明
ダイヤモンド社(2011-03-11)
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日本初のインターネット専門の生命保険会社・ライフネット生命の出口治明社長の本。

出口さんは日本生命出身で、生命保険に関する本を数冊書いておられる他、ライフネット生命設立までの話をまとめた本も出している。

直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた直球勝負の会社―戦後初の独立系の生命保険会社はこうして生まれた
著者:出口 治明
ダイヤモンド社(2009-04-10)
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副社長の岩瀬大輔さんとコンビを組んでライフネット生命を経営しており、3月15日に株式公開したばかりだ。

岩瀬さんはライフネット生命起業の際の話を「132億円集めたビジネスプラン」という本にして出版している。
132億円集めたビジネスプラン132億円集めたビジネスプラン
著者:岩瀬 大輔
PHP研究所(2010-11-16)
販売元:Amazon.co.jp
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岩瀬さんの他の本はこのブログでも「入社一年目の教科書」と司法試験受験で有名な伊藤塾の伊藤真塾長との共著「超凡思考」を紹介している

ライフネット生命はこれからの生命保険がどうなるかを予測して、「インターネットオンリーで営業職のない超低コストの生命保険会社」というビジネスモデルをピンポイントで狙っており、”スイートスポット”を打っていることは間違いないと思う。

しかしたとえば自動車保険では、ソニー損保やアクサダイレクトが伸びてくると、東京海上系のイーデザイン損保や、SBI損保など、既存の生命保険会社や新規参入者が増えてきて、競争は激化している。

筆者は毎年自動車保険の一括見積もりサービスを利用して、毎年最安値の保険会社と契約している。

最安値保険会社は、以前は三井物産系の三井ダイレクトやイタリア系のゼネラリ保険会社だったが、ここ数年はイーデザイン損保、SBI損保と契約し、現在はアクサダイレクトと契約している。保険求償したこともあるが、どこの保険会社も事故対応サービスの質に差はなく、全く問題ない。

生命保険は自動車保険のように毎年更新することはないので、一旦契約が取れれば保険料収入は将来にわたって確保できる。しかしそのためにはライフネット生命の知名度を上げ、契約者に安心感を与える必要がある。

既存の生命保険会社はライフネット生命をつぶしにかかるだろうから、自動車保険の様にネットで生命保険料の比較が一般的になってくると、競争力ある水準を出して早期に顧客を囲い込めるかどうかがライフネット生命が成功するかどうかの鍵となるだろう。

この本はプロのライターが(出口さんにインタビューして)書いているせいか、あるいはプロのライターが書いているにも拘わらずと言うべきか、どうも心に響いてこない。

筆者の読み方が悪かったのかもしれないが、印象に残った点だけ紹介しておく。


ユスティニアヌス帝が、なぜベリサリウスを首にしたのか、ずっと疑問に思っていました

出口さんが日本生命の英国現地法人社長としてオックスフォード大学に支援をしていたときに、オックスフォード大学で初めての女性学長のキーブルカレッジ学長と一緒にランチを取って雑談していた時の話だ。

学長の専門が「後期ローマ帝国」ということなので、出口さんもこの分野は好きで、かなり読書をしていたので、上記の質問をしたという。

日本のビジネスマンとはいままで何回もお会いしたが、ベリサリウスの名前が出たのは初めてだということで、話がはずみ、その後も会社でのお別れ会にも顔を出してくれたという。

この話、筆者は全くチンプンカンプンだった。教養には終わりはない。まだまだ勉強が必要である。


イギリスはインドを失ったときから没落が運命づけられています

これも同じ学長が語った言葉だ。だから英国のエリートは没落のスピードをゆるめることが自分の仕事だと思っているのだと。

それゆえオックスフォードを出た最優秀の学生は、外務省を目指す。外交を強化することで、没落のスピードを遅くし、イギリスの存在を維持することができるからだ。外交を徹底的に大事にすることはイギリスの責務であると。

学生が民間に入る場合は、一番優秀な学生は教師になるのだと。次の世代に英国の実態をきちんと教えることが重要だからだと。

学長の話は大変示唆に富み、日本も成長したいのなら徹底的に人口を増やすか、あるいは冷静にピークアウトしたことを認め、その代わりに落ちるスピードを遅くして、徐々に降りていくという方向にまぜ方向転換できないかと疑問に思うと、出口さんは書いている。


在日英国大使館員は実は日本語が話せる

英国は英国大使館が経営する日本語学校を持っているという。以前は鎌倉にあったが、現在はアメリカと共同で横浜で経営しているという。だから麹町にある英国大使館の人は全員日本語が話せて、聞きとれるのだと。

横浜にあるYCAC=横浜カントリー&アスレティッククラブのことはラグビーでも対戦したことがあるので知っていたが、英国が横浜に日本語学校を持っているとは知らなかった。

英国大使館の人は公式の場では絶対に英語でしか話さないが、日本人同士で日本語で打合せしている内容はすべて理解しているのだと。まさにインテリジェンスである。

エリートたちは、英国は外交でしか国家の力をキープできないという意識があるのだという。


これからのビジネス英語で通用するのはTOEFL100点以上を取れる英語力

筆者はTOEFLは受けたことがないが、出口さんの教わった英語の先生によると、評価にブレがなく、グレードが信頼できるのは1.TOEFL,2.英検、3.TOEICの順だという。

TOEICは英語を母国語としない者を対象としたコミュニケーション能力テストであるのに対して、TOEFLは英語圏の教育機関による入学希望者の外国語としての英語力判定テストなので、シンプルなコミュニケーション能力以上のものを求められるという。

だからビジネスパーソンはTOEFL100点以上を常識とするのだと。


本論に具体例がほとんどなく、印象に残る部分が少なかったので、雑記録のようなあらすじになった。アマゾンのレビューで高評価を付けている人もいるので、中にはフィットする人もいるのだろう。


あまり参考にならなかったかもしれないが、よろしければ投票ボタンをクリック願いたい。





  
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2011年02月23日

あなたはこうして成功する マーフィーの成功法則

あなたはこうして成功する 新装版―マーフィーの成功法則あなたはこうして成功する 新装版―マーフィーの成功法則
著者:マーフィー
産能大出版部(1984-01-11)
販売元:Amazon.co.jp
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ドハデな火山学者として知られる鎌田浩毅京大教授の「知的生産な生き方」にすべての成功哲学のネタ本としてカーネギーの「人を動かす」と一緒にマーフィーの成功哲学も取り上げられていたので読んでみた。

京大・鎌田流 知的生産な生き方―ロールモデルを求めて京大・鎌田流 知的生産な生き方―ロールモデルを求めて
著者:鎌田 浩毅
東洋経済新報社(2009-10-30)
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人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
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もっとも鎌田教授がそれこそ100回以上も読んだと言っているのは、「マーフィー 100の成功法則」の方だが、たまたまこちらは筆者の利用している3つの図書館には置いていなかったので、とりあえずこの本を読んでみた。

マーフィー100の成功法則 (知的生きかた文庫)マーフィー100の成功法則 (知的生きかた文庫)
著者:大島 淳一
三笠書房(2001-04)
販売元:Amazon.co.jp
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マーフィーにはもう一つ「眠りながら成功する」というベストセラーがある。

眠りながら成功する―自己暗示と潜在意識の活用眠りながら成功する―自己暗示と潜在意識の活用
著者:ジョセフ・マーフィー
産能大出版部(1989-11-01)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の訳者の「大島淳一」という人は、渡部昇一さんだ。上記の「マーフィー100の成功法則」は筆者の使っている図書館には置いていなかったので、書店で買ったら渡部昇一さんが「大島淳一」と名乗った事情を明らかにしている。

マーフィーの一連の成功法則に感動した渡部昇一さんが、1950年代に日本に紹介しようとしたが、人生哲学のような本を若い渡部さんが出しても信ぴょう性に欠けるので「大島淳一」というペンネームを使ったのだという。

この「あなたはこうして成功する」を読んで、たしかに鎌田教授が言っている「タネ本」という意味がわかった。

たとえばこのブログで紹介した京セラの稲盛和夫名誉会長の「生き方」にも、「心に描いたものが実現するという宇宙の法則」というように紹介されているが、これはまさにマーフィーの成功法則のことである。

生き方―人間として一番大切なこと生き方―人間として一番大切なこと
著者:稲盛 和夫
サンマーク出版(2004-07)
販売元:Amazon.co.jp
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「あなたはこうして成功する」の一番最初に「あなたの願いは必ず実現します」という一文が載せられているが、これも稲盛さんの書いた「君の思いは必ず実現する」という本のタイトルそのままだ。

君の思いは必ず実現する―二十一世紀の子供たちへ君の思いは必ず実現する―二十一世紀の子供たちへ
著者:稲盛 和夫
財界研究所(2004-04)
販売元:Amazon.co.jp
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別にタネ本があるからといって、稲盛さんの著作の価値が下がる訳ではないが、鎌田教授に指摘されなければ、マーフィーの成功哲学というカーネギーとも並び称されるという一連のシリーズ物に気が付かなかった。

この「あなたはこうして成功する」は、マーフィーと大島淳一の対談という形式をとっている。

マーフィーの成功法則は非常にシンプルだ。

それは次のステップである。

1.願望をいくらでも頭に思い浮かぶまま「現在進行形で」紙に書き留める。

2.自分がその願望を実現しているところを頭に描いて実感し、自分の潜在意識に送り込む。

3.静かにしているときに心に浮かんでくるアイデアを実行に移す。

この場合重要なのは、「潜在意識は冗談がわからない」という言葉で表現されることだ。つまり潜在意識は自分の本音しか受け付けない。潜在意識は神と同じで、本当に信じ込まないとダメなのだ。

マーフィーは、ブリストルの「信念の魔術」のような自己暗示は危険だと語る。潜在意識は本音をキャッチするからだと。

信念の魔術 新装版信念の魔術 新装版
著者:大原 武夫
ダイヤモンド社(1982-02)
販売元:Amazon.co.jp
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潜在意識は諸刃の剣となるので、願望はすべて「現在進行形」として、逆暗示を避けるべきだと語る。これがマーフィー理論の基礎をなすものだ。

そして何度も繰り返すことを勧める。潜在意識に効果的に刻印するには、繰り返すことがきわめて重要なのだと。

シンプルであるが、実用性が高い成功法則だと思う。鎌田教授が紹介する「マーフィー100の成功法則」も買ったので、今度あらすじを紹介する。


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2011年02月18日

カーネギー・トレーニングコースの案内

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパンより時々メルマガがくる。このブログではカーネギーの本とカーネギーに影響を受けた人の本を数多く紹介しているので、メルマガも紹介しておく。

筆者の大学3年生の長男にも12週間のデール・カーネギー・トレーニングを昨年受講させた。

卒業生の集いも定期的に開催されており、個別の集まりもあるようだ。大変満足度の高いコースである。


"2012年に100周年を迎えます" − デール・カーネギーは人材開発のパイオニア

【デール・カーネギー成功の秘訣】

感謝の気持ちはいくら多くても多すぎることはありません!


事実、長く続く関係を築くために最も強力な方法の一つは、あなたが知っている相手の長所を伝え、それに対して敬意を表することです。感謝の気持ちは惜しみなく十分に表現しましょう。そして見つけた長所は、言葉で表現するようにしましょう。

感謝の気持ちを表現する:4つのキーポイント

1. 率直で誠実な感謝の気持ちを伝えましょう。

  私達はごまかしを見つけることがとても上手です。ですから、偽りのお世辞を言うことは忘れ、私達の本当の感謝の気持ちを伝えましょう。

2. 批判、非難、不平はやめましょう。

  私達は批判を受けた瞬間、言われたことを聞き入れない傾向にあります。ですから、相手の粗探しをし、批判、非難、不平を言うのはやめましょう。もしあなのメッセージを伝えたいのであれば、彼らが行っている良い点、そして彼らの行動のうち、さらに良くなると思われる点の2つのパートに分けて伝えてみてください。
  彼らは一心に耳を傾けてくれることでしょう!

3. 相手が重要な人であると伝えましょう。

  私達は好きな相手の話に耳を傾けます。そして私達は自分のことを好きになってくれる人を好みます。他者に備わっている特性を認めることは、間違いなく彼らの心をひきつけ、たいていの場合は、彼らからのサポートも得ることができます。真価を認めること、承認すること、評価することは、いくら受けても多すぎることはありません。

4. 相手が受けて正当と思われる評価を十分に与えましょう。

  他者をどのように理解するかは、私達がどのように彼らと関わり合うかということに強く結び付いています。もし、私が息子のサッカーコーチに、練習の初日、息子の長所は頭の回転が早く、戦略的な考え方をするタイプだと話したならば、コーチはその事を認識し、息子のプレーにそれらの点を見つけようとするでしょう。これは好循環を作り、息子は認めてもらえたことで、プレーの中でそれらの要素を示し続けることになります。このように、私達の中に埋まっている良い資質を引き出すことにより、あなた自身と他者を成功へ築きあげていきましょう。
  あなたが発見することにきっと驚くのではないでしょうか!




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★ 3月3日 大阪 無料デール・カーネギー・コース説明会
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2011年02月10日

これからの「正義」の話をしよう オーディオブックも良い 

2011年2月10日追記:

昨年NHKで放送されたこともあって、いまだにアマゾンの人気ランキング60位にはいっているほど人気の高いハーバード大学マイケル・サンデル教授の"Justice"(邦訳「これからの『正義』の話をしよう」。

英語のオーディオブックを買って、通勤途上で聞いてみた。オーディオブックはサンデル教授自身が吹き込んでいる。

授業風景を記録したNHKのシリーズのような学生との掛け合いの面白さはないが、本の内容はかえってオーディオブックの方が頭に入りやすいと思う。

Justice: What's the Right Thing to Do?Justice: What's the Right Thing to Do?
著者:Michael J. Sandel
MacMillan Audio(2009-09-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

尚、アマゾンでは編集されたCDしか売っていないようだが、Audibleなら本の内容全編が吹き込まれたものを売っている。

Justice






一部の哲学の特殊な単語があるほかは、内容も平易だ。通勤・通学途上で聞くには適当な題材だと思うので紹介しておく。


2010年8月20日初掲:

これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学これからの「正義」の話をしよう――いまを生き延びるための哲学
著者:マイケル・サンデル
販売元:早川書房
発売日:2010-05-22
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

NHK教育テレビで人気となった「ハーバード白熱教室」のマイケル・サンデル教授の本。ハーバード大学史上最多の履修者数を誇る名講義と本の帯に書いてある。

次がNHK版だ

Justice2





そしてハーバード大学のサイトは次の通りだ。4分程度の映像が載っているので、講義の様子がわかる。是非見て欲しい。

Justice





この本は哲学の本では異例の22万部のベストセラーとなっているという。「東洋経済」はこの本を特集した号を出しているほどだ。

週刊 東洋経済 2010年 8/21号 [雑誌]週刊 東洋経済 2010年 8/21号 [雑誌]
販売元:東洋経済新報社
発売日:2010-08-09
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「哲学」と「翻訳」という2大障壁

この本は「哲学」と「翻訳」という2大障壁があって、読んでも理解することは難しい。

以前紹介したフランス人の皮肉な本「読んでいない本について堂々と語る方法」に書いてある通り、多くの書評は本を全部読まないで書いているのではないかと推測する。

翻訳者がはたしてこの本に書かれている内容を理解しているかも、正直疑問に思う。たとえばこの本の哲学論としての結論は次のようになっている。(本文312ぺージ)

「すでに考察した正義についての二つの考え方を思い出してみよう。カントロールズにとって、正しさは善に優先する。人間の義務と権利を定義する正義の原理は、善良な生活をめぐって対立する構想のすべてに中立でなければいけない。

道徳法則に到達するためには、偶発的な利害や目的を捨象しなければならないと、カントは主張する。ロールズの持論では、正義について考えるためには、特定の目的、愛着、善の構想を脇においておかねばならない。

それが、無知のベールに包まれて正義を考える際の重要な点だ。」


長々と引用はしないが、この本の後半のカントロールズアリストテレスなどが出てくる哲学論の部分は、翻訳者が理解しているとは思えない上記のような部分が続く。

翻訳がこんな感じなので、もちろん訳者による解説もない。

ニーチェの言葉の「超訳」が売れているようだが、この本についても「超訳」が欲しいところだ。

超訳 ニーチェの言葉超訳 ニーチェの言葉
販売元:ディスカヴァー・トゥエンティワン
発売日:2010-01-12
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


以前紹介した「車輪の下」で、主人公のハンスが神学校でヘブライ語を学び、聖書を原著で読んでいたことを思いだす。

車輪の下で (光文社古典新訳文庫)車輪の下で (光文社古典新訳文庫)
著者:ヘッセ
販売元:光文社
発売日:2007-12-06
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


筆者の実家の近くに住んでいた哲学者の故桂寿一先生の部屋を訪ねたことがあるが、ドイツ語やフランス語など原著で埋まっていたことを思い出す。

哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)哲学原理 (岩波文庫 青 613-3)
著者:デカルト
販売元:岩波書店
発売日:1964-01
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


やはり哲学の本は原著で読まないと、本当の意味では理解できないのかもしれない。その意味で「東洋経済」のまとめが大変参考になる。

justice chart








出典:東洋経済 2010年8月14-21日号

上記チャートの前のページに質問表があり、それの結果から自分の考え方の傾向をプロッティングするという熱の入れようだ。

上記のチャートの、1.リベラリズム、2.リバタリアニズム、3.コミュニタリアニズム、4.コンサバティズムの4つの象限で捉える考え方は、いままでのたとえば妊娠中絶にプロかコンか(賛成か反対か)の2元論よりは、ずっと考えの多様性があらわせると思う。

ちなみにリバタリアン(自由至上主義者)はパターナリズム(父親的温情主義、たとえばオードバイに乗るときにヘルメットをかぶれというような規制)、道徳的規制(たとえば売春禁止法)、所得や冨の再分配の拒否が特徴だという。


ディベートのための本

この本はハーバード大学の哲学の先生が自分の講義を題材にして書いた本で、身近な例を使って学生に「正義」について考える習慣を付けさせることを目的にしている。


いくつか印象に残った設問を紹介しておこう。

★暴走する路面電車の前に5人の路線作業員がいる。右側の待避線にはたった一人だ。あなたは電車を右にターンさせるべきか?この本の紹介でよく引用される例だ。

★同じ設問で、陸橋の上に太った男がいる。この男を線路に突き落とせば、電車は止まる。一人の犠牲で5人が助かる。突き落とすべきか?

こういう議論をしている人たちに、新大久保の美談の話をしたら、どう思うだろうか?

★ハリケーン・チャーリー来襲時に便乗値上げをした店やホテルは、正当な経済活動なのか?

★サブプライムでAIG生命保険会社を米国政府が税金で救済したときに、73人の幹部が100万ドルを超えるボーナスを受け取っていた。下院は90%の税金を課すことにした。

グラスリー上院議員はラジオのインタビューで「彼らが日本の経営者のようにアメリカ国民の前に姿を見せ、深く頭を下げて『申し訳ありませんでした』と謝り、それから2つのことの一つーーつまり辞職か自殺をすれば、少しは気が収まる」と話して、物議を醸した。

経営に失敗した経営者が、税金からまかなわれたお金で高い報酬を受け取ることは、正義が損なわれていると多くが感じたのだ。

ちなみにアメリカの平均的CEOは2007年には平均的な労働者の344倍の年間1330万ドルの報酬を得ており、ヨーロッパのCEOは660万ドル、日本のCEOは150万ドルだという。

これらは正義に関する問題で、1.幸福の最大化、2.自由の尊重、3.美徳の推進の3つの理念で考えることができる。

★タリバン掃討作戦中のネービーシールズは、出会ったヤギ飼い達を自分たちの事をタリバンに通報させないために殺すべきか?

★難破した英国船からボートで逃げ出した3人の船長、水夫が、雑用係の少年を殺して食べた。3人を救うために一人を殺すことが許されるか?

★フィリップモリスはタバコをすえば、早死にするので、チェコ政府の医療費、年金負担が一人当たり1227ドル助かるという外部機関の研究をサポートした。このことが判明し、広報活動に大きな打撃を受けた。

★フォードピントの欠陥の話は有名だ。追突を受けたときにガソリンタンクが爆発しやすく、500人以上が死亡した。

フォードは事故で180人が死亡し、180人がやけどを負うと想定していたが、死亡は20万ドル、やけどは7万ドル弱で計算すると、車両代を入れて損害賠償は5千万ドルと見積もっていた。

一方1台当たり11ドルの部品を付けてリコールすると、安全性が向上するが、1,250万台につけると1億4千万ドル弱掛かる。

だからフォードは修理しないほうが良いと判断したのだ。

★子どもを大学に行かせるために腎臓を2つとも売りたいという農夫に2つめの腎臓を売る権利を認めるべきか?

★末期患者の自殺を幇助している医者を罰すべきか?

★2001年ドイツのローテンブルクに住むソフトウェアエンジニアは、殺され、食べられたいという人を募集する広告に応募して、食べられた。ドイツは食人を罰する法律はない。被告は嘱託殺人という軽い刑に処すべきか?

★南北戦争の時、徴兵制が敷かれたが、カネをはらうか、身代わりを立てれば徴兵は免除されたので、鉄鋼王のアンドリュー・カーネギーやJPモルガンなどの富裕層や、政治家などは身代わりを雇った。これは不公平か?

★アメリカのブラックウォーター・ワールドワイド社は、民間軍事企業の最大手の一つだ。「フェデラル・エクスプレスが郵便事業でやったことを、われわればアメリカの安全機構でやろうとしている」と語る。

彼らの仲間は2004年にイラクでリンチにあい、死体をさらしものにされた。その後2007年に彼らはイラクで群衆に向かって発砲し、17名の市民が死亡した。

営利企業に戦争を外注することは正しいのか?

★卵子を提供した代理妊娠の母は生まれてきた子供に権利があるのか?ベビーM事件だ。

このような問題を避けるために、今は卵子と精子を支給して、子宮借りビジネスがインド南部のアナンドでさかんだという。合計2万5千ドルの費用で、女性は4,500ドルから7,500ドルの収入になる。彼女達の15年分の収入だ。

子宮を貸す自由を認めるべきか?


★真実だからといって、屋根裏に隠れているアンネ・フランクの家族のことをナチスに告げるべきか?

★カントならモニカ・ルインスキーとの「性的関係」を否定したクリントン大統領を弁護したか?

★アファーマティブ・アクションのせいで不合格となった白人ホップウッドは逆差別されているか?彼女と同等の成績を収めたマイノリティの学生は全員合格している。

★アファーマティブ・アクションは過去の過ちを補償しているのか?それとも多様性を促進する制度か?

★車いすのチアリーダーは許されるのか?

★障がい者プロゴルファーのケーシー・マーティンにはゴルフカート使用が認められるべきか?

★ドイツや日本の過去の戦争の謝罪など、先祖の罪を償うべきか?

★同性愛者の権利、妊娠中絶の権利を認めるべきか?


以上、考えさせられた例を紹介した。この本の後半の哲学論の部分が理解不能でも、問題ない。唯一無二の正解はないので、自分の意見を持てば良いのだ。

後半の哲学論の部分は、最大多数の最大幸福を唱えたジェレミー・ベンサム、他人に危害を及ぼさない限り自分の望むいかなる行動も自由であるべきと唱えたJS.ミルの「自由論」などを紹介している。

ベンサムは死後も自分の身体を剥製にして、ユニバーシティ・カレッジの運営審議会に台車に乗って出席したという。

カントの動機を重視し、自律と他律を対立させる道徳論、ジョン・ロールズの平等論、アリストテレスの目的論と奴隷制度擁護論を説明している。このあたりになると筆者もちんぷんかんぷんだった。

一度書店で手にとって、パラパラっとめくってみることをおすすめする。


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2007年08月08日

お金持ちになる心得71 韓国のベストセラー 蓮池薫さんの翻訳本

成功への道―お金持ちになる「心得71」
成功への道―お金持ちになる「心得71」


拉致問題の本をいくつか紹介しているが、翻訳家として活躍している蓮池薫さんへの応援の意味もあって、蓮池さんの翻訳本をいくつか読んでみた。

この本は2005年1月の発刊以来、韓国で42万部を超すベストセラーとなっている自己啓発本だ。著者のハン・チャンウクさんはフリーランスのジャーナリストのようだ。

英語のタイトルは"Good habit to change myself"となっており、そのまま訳すと「自分を変える良い習慣」となる。

翻訳者の蓮池薫さん自身も、「読んでいてこんなにうなずかされた本も最近めずらしい」と語っている。ちょっとしたファンになり、さっそくいくつかの心得を実践している。大事なのは自分を変えてみようという意識ではないだろうかと。

この手の自己啓発本は、筆者が好きなジャンルで、デール・カーネギーをはじめ、スティーブン・コビー、アンソニー・ロビンス、ジム・ローン、ブライアン・トレーシー、日本人では松下幸之助稲盛和夫PHPの江口克彦さん新将命(あたらしまさみ)さんなど多くの本を読み、かつこのブログでも紹介している。


能力主義の徹底 IMF危機を乗り越えた韓国らしい心得

韓国の自己啓発本を読むのはこの本が初めてだが、どの国でも通用する習慣を71例も紹介するとともに、いかにも韓国らしい部分もある。

1997年のIMF危機が、韓国でのビジネス慣行をガラリと変えたのだと。IMF危機後は終身雇用という概念が希薄となり、契約関係に急変した。人脈や学閥やコネが通用しない時代となり、できない社員はリストラの対象となった。社員も会社との関係を、報酬や待遇でドライに考える様になった。

心得28の「自分だけの特技を持て」では、世の中が急速に変わっており、年功序列給が能力給にかわり、目に付かない社員は無能な社員として烙印を押される様になった。リストラの対象になるのは、同じような能力を持った社員達で、他に埋め合わせができない必要な人材のみを会社は求めているのだと。

これといった特技のない人は淘汰されざるをえない。未来がどう変わるのかを予測して、特技を選択しろという。英語よりも中国語だと。

これには全く同感である。英語はいわば当然で、次に第2外国語としてなにができるかが重要だろう。筆者は英語もスペイン語もできるが、中国語はできない。

約30年前に会社の語学研修生というキャリアを選択した時、中国語やロシア語は駐在地とその後のキャリアが限定されるということで人気がなかった。当時は英語やスペイン語が人気だったが、今は中国語だろう。

筆者が最初に中国に出張したのは1983年だが、当時の上海は戦前の外国人居留区の風景が残っていて、まともなパンは上海で唯一のフレンチレストランのマキシムでしか食べられなかった。今の上海とは似ても似つかない。

著者のハンさんが言うように未来を予測するという意味で、中国語圏の人口から考えれば予測できた当然の結論だったのかもしれないが、それにしても中国の進歩はめざましいものがある。

ブラジル、ロシア、インド、中国のBRICs(最後のSは大文字にして、南アフリカを入れる場合もある)の次はベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンのVISTAと言われているので、これからはこいうった国の語学を学ぶこともキャリアディベロプメントには役立つだろう。


自分を売り込もう!

自分を売り込むことをいろいろすすめていることも、この本の特徴と思える。

品格を備えよう。大声で笑ってあいさつをせよ。欠点をカバーし、長所が目立つ服装を。自分を宣伝しろ等々。

心得17は「失敗しても言い訳をするな」と。サムスングループの李建熙会長は失敗して弁解する人間を最低の社員とみなす。他のグループの総帥も同じだと。

心得18の「歯にお金をかけろ」では、浅田次郎の「天国までの百マイル」の主人公 安男が事業で失敗し、前歯が2本抜け落ちていることを例に出している。

”神の手”心臓外科医に、前歯がないと運が逃げていくと忠告されるシーンだ。「あなたなら前歯の抜けた女を誘惑するか」と。

成功する人は歯がきれいで、堂々としていると。

天国までの百マイル (朝日文庫)
天国までの百マイル (朝日文庫)



記録する習慣

心得27の「記録する習慣を身につけろ」では、1983年のソ連軍戦闘機による大韓航空機撃墜事件の時、ある日本人乗客が緊迫した状況の中で事故の記録を残していたことが、例として出されている。

絶体絶命のなかで記録を残したことをみると、その人の普段の習慣がどういうものであったかわかる。

記録することは良い習慣で、成功した人の中にはメモの習慣を持っている人が多い。本を読んだり、映画をみたら、感想をメモにしろと。反省のない人には進歩もない。


韓国人の儒教精神

心得33の「うちに秘めているリーダーシップを起こせ」では、韓国人が持っている儒教精神がリーダーとして重要だと説く。大義、奉仕精神、犠牲精神こそ、リーダーが備えるべき基本的な資質なのだ。

立派なリーダーになるためには、次の3つを肝に銘じよと説く:
1.責任感がなくてはならない
2.個人の利益よりも全体の利益を考えなければならない
3.犠牲心がなければならない

完璧に見えるリーダーは、忍耐と粘り強さで自らを磨いてきた人たちで、自分のやるべき事を知っており、引き受けた仕事はかならずやり遂げられるという自信を持っている。


韓国の留学熱

心得34の「惜しむお金と惜しんではならないお金」では、韓国人の留学に対する考えがわかって面白い。惜しんではならないお金は次の4通りだ。

1.能力の啓発と留学など未来に対する投資
2.健康に対する投資
3.配偶者に対する投資
4.セミナーや集まりの参加に掛かる費用


なんと小泉前首相も登場

心得36の「本を読まない人に進化は望めない」では、なんと小泉前総理の言葉を紹介している。「本を読んでものを考える人とそうでない人は顔に明らかな違いがある」と。

韓国のサラリーマンの一ヶ月の平均的な読書量は、1冊から3冊だが、成功する人は一般人よりずっと多くの本を読む。人間は今も進化しているはずで、その進化を可能にしているのが、本のような知識の媒体物なのだ。

成功する人は読書を通じて得たものを現実にうまく活用する。話をするときに本の内容や表現を使うなど、本を読んでたえず自分を進化させようとしている。情報化時代の成功は進化した人たちのものだと。


韓国流ポジティブ・シンキング

心得37「勝者になるのか、敗者になるのか」も良い。

二人の子供が居て、一人は小銭があると貯金し、一人は使ってしまう。貯金する子供の方が成功する可能性が高い。

バスが遅れて約束の時間を守れなかった。一人は「バスが遅れた」と言い訳をし、一人は「ごめん。僕がもう少し早く出ていれば…」と言った。

遅れた理由を自分のせいにする人は伸びる、その人は2度と同じミスを繰り返さないように努力するからだと。

「一朝一夕で大成する人などいない。成功するぞという覚悟、成功を目指す緻密な計画、成功のための自己革新、成功をめざしたたゆまない努力など、多くのことが一つに凝縮されてこそ成功という高い敷居をまたげるのだ」と。


シニアへのエール

心得61の「歳をとるほど強くなる」では、高齢のため自信をなくした人によく出会うが、新しい仕事を始めるという点から見ると、短所より長所がはるかに多いと、シニアへエールを送る。

金で買えない人生経験や広い人脈、豊富な知識を持っているではないかと。

好奇心と興味を失えば歳をとる。一生懸命仕事をする人は歳をとらない。

人生の年輪を積んだということは強くなったことを意味する。

孫子の兵書には「敵を知り、己をしれば百戦危うからず」という言葉がある。歳を取った人は既に己を知っている。だから戦うにはいっそう有利なのだと。


なにせ全部で71もの心得があり、全部紹介していると長くなりすぎるので、この程度にしておくが、それぞれが2〜4ページで簡潔にわかりやすく書かれている。

最後に男あるいは女の人生を駄目にする悪い心得が、それぞれ10ずつ挙げられている。たとえば男の場合には、時間に拘束されないようにしようとか、まずは自分の利益から追求しよう、言いたいことはその場で言おう、背広三着で1年をすごそうなどだ。

女の場合には、仕事ではあなたが女であることを密かにアピールしようとか、上司に叱られたら涙を見せよう、感情のままに行動せよとか、自分の非を認めてはならないなどだ。なかなか面白い。

韓国らしさもあり、ユニバーサルな提言もあり、それぞれが参考になる。簡単に読めるので、一度手に取ってみることをおすすめする。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


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2007年07月10日

鈍感力 2007年上期のベストセラーエッセー

鈍感力
鈍感力


月刊プレイボーイに連載された渡辺淳一氏のエッセー集。今年上半期のベストセラー第1位となっている。

渡辺淳一氏といえば、日本経済新聞の連載小説「化身」や「愛の流刑地」で有名な人気作家であると同時に、医師でもある。

「化身」は大人の恋愛を描いた小説で、日本経済新聞に連載されていた当時(15年ほど前?)は、日経を最後のページから読む人が多かった。

当時電車の中で日経を読んでいると、ちょっと気恥ずかしく感じたものだ。


化身〈上〉 (講談社文庫)
化身〈上〉 (講談社文庫)

最後にボルドーの5大シャトーの一つ、シャトーマルゴーを二人で飲む場面が思い出される。

大人の恋愛を描いた「マディソン郡の橋」がベストセラーとなったのも、同じ時期ではないかと思う。

マディソン郡の橋 (文春文庫)
マディソン郡の橋 (文春文庫)


同じ日経の連載小説で、今年映画化された「愛の流刑地」(愛ルケ)も「化身」の現代版の様なストーリーで、大人の恋愛小説だ。

そんな大人の恋愛小説家の渡辺淳一と、この本を書いた医師渡辺淳一とは同じ人とは思えない様な気がするが、紛れもなく同一人物である。

医師としての医学的根拠もあるので、男と女(母)との関係などに展開する論理が、ロマンがあって、なおかつなるほどと説得力がある。

渡辺氏は、健康であるために最も大切なことは、いつも全身の血がさらさらと流れる事だという。

鈍感に生きることで、長生きで満足できる人生が過ごせるのだと説く。

小さな事にくよくよ悩まず、叱られても受け流し、緊張せずリラックスして、五感はアバウトに、いつもすっきり眠れて、ノリが良く、おだてられたら、すぐその気になる。

そんな環境適応力が鈍感力だ。

これが長生きする秘訣だと言う。

俗に「結婚したら片目をつぶれ」と言われる結婚は言うに及ばず、恋愛でも鈍感力が成功の秘訣だ。ある程度相手を許して、鈍くなる鈍感力が恋愛を長続きさせる恋愛力なのだと。

ガンの原因も自律神経説が最近有力だ。

自律神経が順調に動き、体も心も安定している人ほどガンにかかりにくいし、ガンになっても、治りやすい。すべては気の持ちようだ。

女性の強さも鈍感力だ。

人は1/3の血液を失うと死ぬといわれているが、それは男性の場合で、女性は出血には強いと産婦人科医から言われた経験を語る。

女性は出血に強く、痛みに強い。だから出産という大事を生き延びられるのだ。

医師が語っていても、今ひとつ鋭い説得力があるわけではないが、なぜか納得できる。そんなアバウトなところがベストセラーとなっている理由だろう。

簡単に読めるので、書店で一度は手にとってみることをおすすめする。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします。


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2006年02月11日

高学歴ノーリターン 高学歴者でも格差拡大のギャンブル資本主義の時代

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay


厚生労働省キャリア官僚から兵庫県立大学助教授に転出した中野雅至(まさし)さんの日本の学歴価値の再考察。

中野さんは同志社大学出身で一旦、大和郡山市役所に就職するが、国家公務員上級職試験に合格し、旧労働省に入省。労働省、厚生省の様々なポジションをキャリア官僚として経験し、ミシガン大学へのMBA留学も経験する。

投稿論文で研究者としての実績を積み重ね、公募で兵庫県立大学に転職する。

一見留学経験もあるバリバリのキャリア官僚に見えるが、東大中心の官僚世界で同志社大学卒の中野氏は同志社卒の後輩もなく、いわばアウトサイダーだと感じていた様だ。

東大社会ともいえる中央官庁勤務と米国でのMBA留学経験をふまえて、東大を頂点とする日本のピラミッド型学歴社会が、運と人脈だよりの高学歴ノーリターンの社会になりつつあることを描いている。


『お役所の掟』の再来?

旧厚生省と言えば『お役所の掟』などの役所の実態暴露シリーズがベストセラーとなり、結局厚生省を懲戒免職となった故・宮本政於(まさお)さんを思い出す。


お役所の掟―ぶっとび霞が関事情


『お役所の掟』ほどではないが、キャリア官僚の長時間勤務の実態が描かれていて、読み物としても面白い。

こんなタイトルである:

主導したくてしているわけじゃない!事務局地獄

コピー機が火を噴く ペーパーコピー地獄

パワーポイントの普及とともに広がった 矢印地獄

知性は全く必要なし (ワープロ)代打ち稼業地獄

意外に平気でやってしまう ゴマすり地獄

振り返ればむなしさだけが残る 多能工化地獄

鬱病・自殺地獄

労務管理という概念は一切なし マネジメント無視地獄(部下をつぶして出世する)


高学歴者の3層化

中野さんは日本の高学歴者は次の三層化していると。

1.リスクを取る勇気やリーダーシップのある「カリスマ性のある高学歴者」…5%

2.親が金持ちの「ボンボン高学歴者」…20%

3.下・中間層出身で目立った取り柄のない「さえない高学歴者」…75%

社会全体で格差が拡大していることは、いろいろな人が指摘するところだが、高学歴のサラリーマンも収入は増えず税負担は増えるばかりで、大半がもはや勝ち組とはいえなくなっていると。


ギャンブル資本主義社会の到来

ロバート・ライシュは『勝利の代償』でこれからは変人(アーティスト、発明者、デザイナー、エンジニアなど)と精神分析家(営業担当者、需要開拓者、流行観察者など)の、他の人々がなにを欲しているのか、何を見たいのか、市場の機会を生み出せる人が勝者となる時代であると語っている。


勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来


中野さんは、『一流大学を卒業したヤツより、カネを稼ぐヤツが偉い』という考えが優位になってきており、ピラミッド型学歴社会からギャンブル資本主義社会へ変化すると語る。

運と人脈がすべてを決すると。

例えば著者の中野さんはこうやって本を書いているが、中には「この程度であれば俺でも書ける」と思っている読者も必ずいるだろうと。自分もそうであったと。

しかし、しょせんそんなことはぼやきに過ぎず、重要なことは「出版の機会をうまく捕まえたかどうか」であると。

人脈やコネを利用して、市場やマスコミに売り込んで、実力を認めさせることができるかどうかが重要なのだ。つまりすべて市場化能力のなせるワザなのだと。

自分の実力や能力を売りこむ際に最も重要なものは人脈で、ギャンブル資本主義社会で頼れるものは人脈であると。


大学の価値は誰と出会ったかである

中野さんは大学教育の本当の価値は、なにを学んだかではなく、誰と出会ったかであると説く。

たとえば米国の大学院に留学する場合、選考書類は1.TOEFLのスコア、2.大学時代の成績、3.エッセー(自己アピール)、4.そして推薦状だ。

ビッグショットの推薦状があれば、おおかたの大学は通る。米国の有名大学は私立大学が中心で、コネクションが重要なのだ。

コネが重要な要素となれば、最も得するのはどこか。小泉首相の出身校ボンボン大学の慶応大学であり、最も多くの社長を輩出する日本大学だと。

戦前の金持ち社会と同じ「慶応ボンと東大番頭時代」が既に訪れているのだと。


新・学歴社会

この様に高学歴が必ずしもハイリターンを保証しない時代になってきてはいるが、こつこつと努力することの重要性、夢を持たせることの重要性を保つためには、学歴はわかりやすい羅針盤であると。

米国でもトップのMBAプログラムの卒業生の初任給はスタンフォードで1300万円と高く、あきらかに高学歴ハイリターンの報酬となっている。

理想的な学歴社会とは学歴アップデート社会であり、東大>京大>一橋>それ以外といった順位付けはやめ、米国の様にトップ20は常に変動するというような形が良いと提言している。

最後に2004年度の高額納税者番付が付いているので、これもスポニチの記事を紹介しておこう。


筆者は某大学某学部出身だが、出身運動部のOB会などに行くと、最近の卒業生で定職に就いていない人の割合が増えてきた様な気がする。

筆者の学生時代でも留年を繰り返して大学にいつまでも残っていた人はいたが、それでも司法試験浪人とか一応ちゃんと目的はあった人が多かったと思う。

近々あらすじを紹介する大前研一氏の『私はこうして発想する』で、大前氏は現在の日本の教育では21世紀に必要とされる人間が生まれてこないと語っている。

筆者も国際的ビジネスマンに要求・評価される教育水準が、マスプロ教育中心の大学では不足で、専門性の高い大学院卒まで上がってきたのが実体ではないかと思っているが、現象面で中野さんが『高学歴ノーリターン』と呼ぶ事態も起こっているような気がする。

面白く読め、そんなことを考えさせられる本でした。


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2005年12月27日

負け犬の遠吠え 頭にスッと入る酒井順子さんのエッセー 負け犬なんかじゃないよ 一生懸命生きよう!

負け犬の遠吠え


ちょっと前のベストセラー。今年の初めに家内が読んでいたが、面白そうだったので、自分でも今回読んでみた。

女性作家のエッセー集は、家内の好きな林真理子とかを一時読んでいたが、最近はご無沙汰である。

この本はカバーがピンク色で、筆者のようなおじさんが表紙カバーむき出しで読んでいると、ちょっと恥ずかしい。

若干抵抗があったが、読んでみたら断然面白い。

負け犬とは狭義では『未婚、子なし、30代以上の女性』だそうで、離婚して今は独身、シングルマザーなども広義の負け犬に入る。

「でも○○さんみたいに、美人で仕事もバリバリやっている人は、結婚していなくても負け犬ではないのでは?」という名誉白人みたいな例外は本書では認めないと。

「既婚子持ち女に勝とうなどと思わず、とりあえず負けましたと自らの弱さを認めた犬の様に腹を見せて置いた方が、生きやすいのではなかろうか」という処世術と見て貰っても良いと。


以下羅列となるが、印象に残ったポイントをあげる。この本の魅力が垣間見えると思う。


余はいかにして負け犬となりし乎(か)

言うまでもなく夏目漱石の『吾輩は猫である』の出だしをもじった章題。

男であれ、仕事であれ二つの選択肢があった場合、右はまっとうで安心、でもあまり面白みはない道、左はあぶなっかしいけどスリリング、そしてアメイジングな道。

この中で、右側を選ぶことができるのが勝ち犬、左を選ぶのが負け犬であると。

それにしても「負け犬」はともかく、筆者には「勝ち犬」という言葉は今ひとつ抵抗がある。

筆者はティーンエージャーの子供がいるので、塾とか学校の説明会とかで「勝ち犬」軍団に囲まれることも多い。こういった会合は家内もいまひとつとけ込めないので、筆者を行かせるのかもしれない。

たしかに国民の再生産に貢献しているという意味では、勝ち犬なのかもしれないが、大勢集まってくっちゃべっている集団に取り囲まれると、結婚/子持ちで勝ち負けが決まるという訳でもないと思うのだが…。

負け犬からすると勝ち犬はどこかで、恥を捨てた人に見えると。

結婚という目的を達成するために、手練手管を使って男に取り入ろうとする人を見ていると、いたたまれない気分になってしまうと。それが負け犬が負け犬でいるゆえんであると。

これを含羞(がんしゅう;恥を知ること)という言葉で表現している。うまいことを言うものだ。言い得て妙である。


負け犬と年齢

先輩負け犬に言われたことがある。

「そうやって『子供なんかいらない』とか堂々と言っていられるのはね、30代前半だからなのよ。30代後半になったらきっと、違う気分になると思う」と。

子供を産むリミットが近づいてきていると。

オスの負け犬でありながら全てを超越している寅さんに悲壮感や哀愁がなく、メスの負け犬には哀愁があるのはこれが理由なのだろう。


負け犬と少子化ー『低方婚』とオスの負け犬

伝統的に日本の男性はじぶんよりある意味で『下』の女性を結婚相手に選ぶという『低方婚』を好むから、『高』女性が余るのと、オスの負け犬が増えていることが原因だと。

オスの負け犬は次の5タイプがいる:

1.オタ夫  あまり生身の女性に興味のない人
2.ダレ夫  女性に興味はあるけど、責任を負うのは嫌な人
3.ジョヒ夫 女性に興味はあるけど、負け犬には興味のない人(男尊女卑)
4.ブス夫  女性に興味はあるけど、全くモテない人
5.ダメ夫  女性に興味はあるけど、単にダメな人(酒乱、ギャンブル、仕事しないなど)

いずれもメスの負け犬の伴侶としては不適であり、それゆえ少子化の進行が止まらないと。


負け犬と年金論争

森喜朗前首相が「年金はそもそも子供をたくさん生んだ人にご苦労様、として渡すべきものであって、子供をつくらない女性が歳をとったからといって税金で面倒見ろというのはおかしい」という発言を平成15年にしたそうだ。

この発言に対して当然の事ながら、「何言ってるんだバカ」、「こっちはたんと税金払ってるんだ」という非難が寄せられた。

それに対してテレビで「子を産まない人たちは贅沢三昧の生活をしているのに、子育てで苦労している私達と同じ年金をもらうのはいかがなものか」という発言をしている主婦がいたという。

この論争でどちらかの肩を持つつもりはないが、結婚や子供の有無で年金金額が変わること自体がおかしい様に思う。


負け犬と家族

ある40代の負け犬は「うちの母親が最近『私はあなたを看取ってから死にたい』ってよく言うのよ」「うちの母親は結婚もせず、子供も産まない私が、不憫でならないのね。私が一人で死ぬというのが可哀相でたまらないんですって」

逆縁は悲しいものだが、この母親の気持ちは分かるような気がする。


負け犬と女の幸せ

相手を完膚無きまでに打ちのめす「それを言っちゃあおしまいよ」的なフレーズは、「あの人は女として幸せじゃない感じがするよねー」だと。

緒方貞子さんのような人の存在のせいで、「日本で一番優秀で、忙しいキャリアウーマンですら、結婚して子供も産んでいるのにだ。しもじもの女が、『仕事が忙しくて結婚なんてする暇ありませんでした』などと言うのは言い訳だ。単に魅力がないだけだ」という空気が濃厚になってきたと。


負け犬の先達

向田邦子的ないい女系の独身女。もうひとりはあまりにも一芸に秀でつつも結婚しない孤高の人系の長谷川町子系の独身女。


負け犬と孤独

二つのタイプがある。孤独に強いというより、孤独がすきであるが故に、結婚せず負け犬となったタイプと、孤独に弱いあまり、男性とつきあってもベッタリしすぎて暑苦しくおもわれて負け犬になったタイプ。


負け犬と敗北

負け犬界のヒエラルキーがあると言う。結婚歴ありが上、恋人有りが上、しかし不倫は下、過去にモテた経験ありが上、蜘蛛の巣城のお姫様タイプの負け犬を見下ろしつつ、「よかった私はあんなんじゃなくて」と胸をなで下ろすのだと。

「私は貧乏な主婦だけど、でもとりあえず現時点で結婚はしている。負け犬ではないのだ」というところを心のよりどころにして頑張っている人もいるので、負け犬も存在価値があるのかもしれないと思うと。


負け犬がシンパシーを寄せる最後の大物サーヤ

本ではこう書いてあったが、でももう負け犬ではないもんね。サーヤおめでとう!


最後に負け犬に成らないための十箇条:

1.不倫をしない
2.「…っすよ」と言わない
3.腕を組まない
4.女性誌を読む
5.ナチュラルストッキングを愛用する
6.一人旅はしない
7.同性に嫌われることを恐れない
8.名字で呼ばれないようにする
9.「大丈夫」って言わない。
10.長期的視野のもとで物事を考える


負け犬になってしまってからの十箇条:

1.悲惨すぎない先輩負け犬の友達を持つ
2.崇拝者をキープ
3.セックス経験を喧伝しない
4.落ち込んだときの対処法を開発する
5.外見はそこそこキープ
6.特定の負け犬とだけツルまない
7.産んでいない子の歳は数えない
8.体を鍛える
9.愛玩的欲求を放出させる
10.突き抜ける


これを読んであなたはどう感じるだろうか?

この本のあらすじを紹介することで、一度収まった論争に火をつけてしまう様な気もするが、ともかく読んで面白い本だ。

いままでなんとなく縁遠かった未婚女性に親しみを覚える。

一生懸命生きることと結婚や子育てとは直接関係ない。

負け犬なんかじゃないよ。一生懸命生きよう!


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2005年12月12日

団塊世代を総括する 下流社会の著者三浦展氏の団塊世代レポート

団塊世代を総括する


『下流社会』がベストセラーとなっている。この本は同じ三浦展(あつし)氏によるもの。三浦展氏は団塊世代が『下流社会』を生んだと言っている。


下流社会 新たな階層集団の出現


三浦展氏はみずからのホームページカルチャースタディーズにて、下流社会や団塊世代につき、レポートしているので、ご興味あればこちらのサイトを覗いて頂きたい。

著者によるこの本の抜粋もサイトに掲載されているので、今回は詳しいあらすじは書かないが、この本の構成が次の通りとなってることからも、内容がある程度推測できると思う。

プロローグ 団塊世代とは何か?

1.消費する若者

2.ニューファミリーの光と影

3.マイホーム主義の末路

4.存在理由が問われる定年後

エピローグ これから彼らがなすべきこと

参考までに子供人口の増減の資料が統計局のサイトに載っているので、ご紹介しておこう。

統計局のホームページも要ブックマークだ。

この本自体は団塊世代の統計資料と解説が主体で、「(団塊世代の)自由尊重という名のほったらかしがフリーターを生んだ」と、『下流社会』の導入部となっている。

中流社会を完成させた団塊が中流社会を壊すのだと。

不況により団塊世代は勝ち組と負け組にわかれ、勝ち組団塊の子供は良い条件で就職しており、負け組団塊の子供は無業ないしフリーターになっている可能性が高い。

親子ともに大企業に勤めている世帯と、親がリストラされて子供も無業という世帯が生まれ、大きな格差が生まれたのである。

著者の結論としての提言は次の通りだ:


団塊世代は自分の会社を作って若者を雇え!

定年起業して、空洞化の起きるはずの都心にオフィスを借り、なんらかのビジネスで年商3,000万円を目指す。

そうすれば単に消費のみの生活よりも、消費が増え、国も税収が増える。さらに月収が37万円以上になれば国は年金を1円も払わなくてもすむ。

さらにフリーター、無業者の若者を雇用して、新しい社会システムをつくるのだと。


団塊世代は心身共に若い。昔の60歳とは違う。

定年延長と定年起業。団塊世代のどれだけが、自分で起業のリスクを取るか疑問が残るところではあるが、団塊世代の何百万人もが一挙に定年退職して、非生産階級となるのはいかにも日本の社会にとってマイナスだ。

そのためにも定年延長以外に団塊世代を支援する政策を導入すべきだ。

団塊世代の男性は今まで子供の教育や自宅のローン返済で四苦八苦していたので、自らの能力開発は進んでいなかった。

しかしたとえば税制で再教育、トレーニングを支援するとかの制度を打ち出せば、自らの能力アップにも取り組む人は多いはずだ。

日本がこれからも活性化を続けるのか、あるいは団塊世代とともに斜陽の国になるのか、団塊世代の戦力化がカギとなると思う。


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2005年08月15日

壊れる日本人 柳田邦男のコラム集 題ほどのインパクトはない 

壊れる日本人 ケータイ・ネット依存症への告別


このブログでも取り上げた前作の『キャッシュカードがあぶない』が日本全体を動かすパワーがあったので、タイトルに惹かれ、図書館で予約して読んでみた。

残念ながら前作の様なパワーはない。

月刊誌『新潮45』のコラムをまとめた本なので、いくつものテーマが一つの本となっている。

あまりにもシリアスな佐世保の小学6年生の同級生殺人事件、西鉄バス乗っ取り事件、神戸市の少年A事件、長崎市の五歳児を駐車場より投げ殺した事件等、子を持つ親として、つい涙が浮かぶ被害者家族の手記と、ケセン語(気仙沼地域の方言)の聖書の話が一緒の本になっていると、アンバランスは否めない。

柳田氏自身がワープロもパソコンも使っておらず、手書き派であると本の中で言っており、その人が『ケータイ・ネット依存症』の事をレポートするというのは、なんとなく場違いな印象だ。

カーナビ付きのレンタカーを借りて、「うるさい。だまれカーナビ」とつぶやいたと言っている。

筆者もカーナビを使ったことがなかったが、つい先日義父の葬儀の関係で、山梨県の山奥のキャンプ場に行っていた長男を車でピックアップして、そのまま伊勢の葬儀場に直行した。

片道約600KMのドライブだったが、どちらも初めて行く場所で、片方は山の中で電話もない場所、片方は名古屋市内を初めて通って夜になって到着することになった。

地図をいちいち見ていては、到底一日で両方行くことは不可能で、カーナビなくしては不可能な旅だった。

バカとはさみならぬ、道具は結局使いよう。食わず嫌いではないのか?

それはさておき印象に残るストーリーも多い。

『医師としてできること できなかったことー川の見える病院から』

四国遍路の話。

徳島鳴門市にある大塚製薬の創業者がつくった大塚国際美術館(世界中の美術品・史跡等を一箇所に集め再現している)

インドボパールのUCCの有毒ガス漏れ事故は、従業員がガス漏れを目撃して所長に通報したが、計器パネルがOFFで警報も鳴っていなかったため、所長が計器を信用して、「ティータイムが済んだら行く」と人間の通報にすぐに取り合わなかったので大事故となった話。

井上ひさし氏の自宅がぼやになったとき、かけつけた消防士は「もうすこし日が大きくならないと、放水するわけにいかない」として傍観していた話。

栃木県鹿沼市図書館の、本の寄贈、特に文庫の寄贈はたとえ郷里出身の柳田邦男氏のサイン入り全集であったとしても受け取れないとの回答。

神戸の少年A事件の少年審判担当判事だった井垣氏が、当初の遺族の傍聴を拒否した対応を反省し、むしろ少年審判手続きのなかでも遺族が語れる時間と場所をもうけるべきと考えを変えた話。

ぐっと惹きつける話もあり、シリアス編は印象に残った。

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2005年07月10日

57歳のセカンドハローワーク わかりやすく現実的な定年後生活入門書


57歳のセカンドハローワーク
著者の布施克彦氏自身も1947年生まれの団塊の世代で、総合商社に28年間勤務した後に、NPO法人に勤務したり、大学講師となったりしている。本書は自らの経験をふまえたわかりやすい定年後の人生設計の入門書となっている。


13歳のハローワーク
ベストセラーとなった『13歳のハローワーク』を意識したタイトルだが、『13歳のハローワーク』は作家の村上龍となんの関係があるの?という感じの幻冬舎制作の職業辞典にすぎないのに対して、この本は経験者がケースファイルとして多く取り上げられており、転職コンサルタント等の専門家のコメントも参考になる実践的な入門書である。

57歳まではまだ間があるが、筆者もセカンドライフを考える年になってきたので読んでみた。

2007年問題といわれ、2007年に団塊の世代が大量に60歳定年を迎えることが、大きな社会変化を起こすと見込まれている。団塊世代は昔の60代=老人というイメージはあてはまらず、依然としてエネルギッシュで、もちろん現役のビジネスマンとしてもやっていける。

以前米国に駐在していたときに読んだGreat Boom Aheadという本を思い出す
The Great Boom Ahead: Your Comprehensive Guide to Personal and Business Profit in the New Era of Prosperity

米国では日本とはベビーブーマーの時代が10年ほど後ろにずれていて、1961年から1964年生まれの人が米国ではベビーブーマーといわれているが、この本ではベビーブーマーたちが社会・経済の中心となるに従って、1990年代前半より始まった経済成長が持続的に、かつさらに加速すると予測しており、事実その通りになっている

ちなみに米国ではベビーブーマーヘッドクオーターというサイトもあり、ベビーブーマーの様々なニーズ、活動に役立つようになっている。

日本では50歳代後半のベビーブーマー、いわゆる団塊の世代は今までは、猛烈にはたらいてきて日本経済をリードしてきたが、60歳定年を数年後に迎え、これからはお金も暇も両方持つ巨大な購買力を持つ集団となってくる。

現にプラズマや液晶テレビなど50万円前後もする高額テレビの購入者は半分以上がシニア世代と言われており、シニア市場が注目されているわけである。

この本はこの団塊の世代の定年後の進路を
1.年収200万円以上コース、
2.年収200万円以下コース、
3.悠々自適コース、
4.エリート対応
と4つのコースに分けており、一応200万円を収入の基準としている。


新版 年収300万円時代を生き抜く経済学
たけしのテレビ等によく登場する森永卓郎氏が『年収300万円時代を生き抜く経済学』を出している。若い人も含めて日本人の大半が年収300万円という時代となると言っていたのはちょっと問題だが、定年後は200万円(月収15万円程度)が基準と考えるというのは実際的だと思う。

日本政府の対応は2004年6月に成立した改正高年齢者雇用安定法は2006年4月から施行され、2013年までには企業は65歳の定年延長が義務付けられる。団塊の世代もこの65歳定年に引っかかる可能性もある。

しかし65歳定年となれば、たぶん企業は給与体系の見直し、年金の見直し、ポストオフ制度等を導入し、結局60歳定年制と65歳定年制では個人の収入はあまり変わらない可能性があるのだ。

それでは具体的にそれぞれのコースを紹介してみよう。

200万円以上コースは会社しがみつき型、転職型、起業型、海外出稼ぎ型の4パターン。7月2日に紹介した『なぜか仕事のできる人の習慣』のあらすじで、、大前研一の発言を紹介したが、200万円以上コースを目指すのであれば、自分に『名札と値札』をつけていることが絶対に必要となる

つまり自分はこういう仕事をやり、こういうことができる。従ってこれだけの市場価値があると言えることが転職型でも会社しがみつき型でも必要なのだ。

200万円以下コースは嘱託型、落ち穂拾い型、資格型、農業を含む新規挑戦型、生活コストダウン型、海外移住型がある。会社しがみつき型と似ているが、嘱託型はどちらかというと週に数日会社に顔出す程度。落ち穂拾いは会社がやめた商権などを自分で引き継ぐパターン。

税理士など資格を取っても独立してクライアントを得ることは難しく、また農業なども収入という意味ではしれている。

悠々自適コースは趣味、勉強、社会貢献など。どの程度時間を使うかは個人差はあろうが、他のコースの人でも自由時間の過ごし方は今後の楽しみに考えておく必要があるだろう。

最後のエリート対応コースは第1の会社人生で、経営トップ陣まで上り詰めた人たちのコース。

いまやトップまで上り詰めても、明日は権威失墜する可能性もある。今回退任したソニーの出井さんと、退職金を寄付して軽井沢に大賀ホールを建設する大賀さんの対比を考えれば社長受難の時代というのが納得できる。

このエリート対応コースは経営コンサルタント型、大学教員型、自分史制作型がある。

年収200万円=月収10〜20万円と割り切れば、どんな仕事でもやれるし、好きな仕事でもできるだろう。

人生80歳時代となった現在、あと20年をいかに有益に過ごすのかは本当に重要だ。なかには会社の経営者となり、まだまだ現役で頑張る人もいるだろうが、そんな人も数年の差がつくだけで、いずれにせよ全員が定年後の人生を考える必要がある。

この本は入門書であり、大まかにコースを分け、それぞれを概観しただけである。まだまだエネルギッシュなシニア世代には、今後の自分の人生設計を考える上でおすすめできる本である。

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2005年04月26日

君の思いは必ず実現する 子供にすすめられる稲盛和夫の子供達への本

最近文庫版が出たので、追加する (2010年5月24日)

君の思いは必ず実現する―二十一世紀の子供たちへ君の思いは必ず実現する―二十一世紀の子供たちへ
著者:稲盛 和夫
販売元:財界研究所
発売日:2004-04
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

君の思いは必ず実現する君の思いは必ず実現する
著者:稲盛 和夫
販売元:財界研究所
発売日:2010-05
クチコミを見る

一度は仏門に入ろうと決心した京セラ稲盛名誉会長の子供達への本。平易な内容で、ふりがな付き。ところどころマンガもある。

人生に明るい希望を持ち、努力を続ければ、必ず道は開けることを、いろいろな切り口から説いている。

稲盛さんの人生を通じて仏教の影響は強い。

また中学の恩師や大学の友人、京都での独立資金を家屋敷を担保に出して調達して支援してくれた恩人。人のおかげでいまの稲盛さんがある。

中学受験に2度失敗した話とか、中学で結核となったこと、鹿児島の実家(印刷の町工場)が空襲により焼失し、戦後手作業で作った紙袋を自転車で行商した話とか、苦労した話が続く。

阪大入試も失敗し、やっと入った鹿児島大学の卒業は近づいたが、就職先が見つからない。

なんとか京都のつぶれる寸前の松風工業という碍子メーカーに就職できたが、入社した早々給料も遅配となる。

しかし自らのセラミック技術を利用して、高周波絶縁材料を開発し、ブラウン管向けとして松下電子工業に採用された。

会社でストライキが起きたときも、スト破りをして生産は続け、製品は塀を越えて投げ、向こうで待っている女子社員に届けて貰うということで、なんとか納入を続けた。ちなみにその女子社員が稲盛さんの奥さんであると。

その後独立して京都セラミックスを創立。誰にも負けない努力を続けること。

仕事を好きになること。

日々、創意工夫を重ねること。

素直に喜ぶこと。

会社を好きになること。

創造性を大事にすること。

「人生の結果=能力X熱意X考え方」。

人生の目的は美しい心の人間になること等々。

寓話として心に残るのは地獄と極楽の話。

地獄も極楽も見た目は変わらない。釜ゆでのうどんを1メートルのはしとつけ汁で食べるのだと。

地獄では誰もが1メートルのはしを使って自分で食べようと争奪戦が起こる。

極楽では1メートルのはしを使って向かいに座っている人に食べさせる。向かいの人はお礼に自分に食べさせてくれる。誰もが穏やかに食べることができる。

みんなが思いやりを持って、利他の心でものごとをとらえることができれば、すばらしい社会が開けるはずなのだと。

平易ながらも、心に残る。感受性の強い子供にすすめても良い本だと思う。
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2005年02月09日

50代からの選択 大前研一のひさしぶりの会心作

大前研一、堺屋太一は新しい本が出れば必ず読む好きな作者だが、大前研一は多作な上に、最近は同じようなネタを使い回ししていることが多く、正直失望していた。そんなわけでここ数年は大前研一の本は図書館で借りて読み、買っていない。この本はひさびさに目から鱗の会心作で図書館で借りて読んだが、買おうと思う。選挙の投票率はいつも年齢にリンクしており、老人の政治パワーは若者に常に勝るとか、勝ち逃げ50代(但し住宅ローンは定年前に完済が前提)と割食う40代との深い溝とか、なるほどと考えさせられる。30代、40代を革命の起こせない『少年ジャンプ世代』と呼び、自分が政治活動した時期にも全く動かなかったこの世代の政治無関心が結局墓穴を掘ったと切り捨てている。この人は毒がないとダメだとつくづく思う。
50代からの選択
日本の平均年齢は50歳だそうで、この本のタイトルとなっている50代の読者には、定年まで10年、それから20年程度の人生を、ちょうど平均年齢の50歳代でのリセットを勧めている。  続きを読む
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