2015年03月07日

世界で暗闘する超グローバル企業36社の秘密



読書家の友人に勧められて読んでみた。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で取り上げられている企業を紹介する。

金融
ゴールドマン・サックス
モルガン・スタンレー
バンク・オブ・アメリカ
パリ・オルレアンSA(ロスチャイルド家
ドイツ銀行(ドイチェ・バンク)
中国4大商業銀行の野望

エネルギー
BP Plc
ガスプロム
シェブロン・コーポレーション
中国3大国有石油企業の研究

鉱物資源
BHPビリトンリオ・ティント
ヴァーレ
(三井物産はヴァーレの持株会社ヴァレパールの15%の株式を保有)

商社
ジャーディン・マセソン・ホールディングス

資源商社
グレンコア・インターナショナル(グレンコア・エクストラータ、登記上の本社はタックス・ヘイブンのイギリス王室属領のジャージーにある)

メーカー
GE
(エディソンが創業したが、その後エディソンは持ち株を売却)

原子力総合
アレヴァSA

旅客機・軍需
ボーイング

マスメディア
ニューズ・コーポレーション

インフラ
GDFスエズ

建設
サウジ・ビンラディン・グループ

食品
ネスレダノンの「ボトルウォーター戦争」
アンハイザー・ブッシュ・インベブ

総合小売
ウォルマート・ストアーズ

電機・半導体・他
サムスン(三星)・グループ

財閥
タタ財閥

新興国
トルコ4大財閥 コチ サバンジュ ドアン ドウシュ

業界でトップの上位3社など、ルールに基づいたまとめ方はしておらず、随意リストなので、あまり整理されていない印象を受ける。

上記ではウィキペディアの記事を中心にリンクを入れておいたので、気になる企業があれば、リンクをクリックしてさらに詳しい紹介を参照してほしい。

この本で参考になったのがジャーディン・マセソンだ。

中国のお茶や生糸を輸入して、インドのアヘンを中国に売って、アヘン戦争の原因をつくったのがジャーディン・マセソンである。

日本では1859年に横浜に事務所を開設、続いて神戸、長崎にも事務所を開設し、長崎支店長のグラバーは武器商人として薩長を支援し、坂本竜馬の亀山社中との取引があった。明治になると三菱財閥の岩崎弥太郎と深くかかわることになる。

吉田茂首相の養父の吉田健三は、ジャーディン・マセソンの横浜支店長をつとめたあと、起業した。吉田茂は養父の莫大な遺産を相続している。

現在は日本での影響力はなくなったが、アジアでは依然として各国で建設、運輸、ホテル(マンダリン・オリエンタルなど)、製造業(インドネシアでトヨタ車を製造しているアストラ・インターナショナルなど)。

現在はジャーディン家の閨閥のケズウィック家が経営を握っている。

ボーイングの歴史も参考になった。

1929年にボーイング、ユナイテッド航空機、ノースロップ航空機、プラット&ホイットニー、シコルスキーなどが大合同してユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポート社を設立したが、ルーズベルト大統領時代に独占禁止法違反で解体され、西部のボーイング、当部のユナイテッド・テクノロジー、航空会社のユナイテッド航空に分割されたのだ。

現在のCEOのジョン・マクナニーは、GEでジャック・ウェルチの後継者を争ったが、後継者レースに敗れ、スリーエムのCEOに転出、その後2001年にボーイングのCEOに選ばれたものだ。

マクナニーは、ジョージ・ブッシュ大統領とエール大学で同級生だったという。

グレンコアについても、筆者は依然は鉄鋼原料の貿易を担当していたので、思い出深い。

もともフィリップ・ブラザースにいたマーク・リッチが、独立してMarc Rich + CO.を設立し、石油ショックの時にイラン原油で大儲けしたが、イラン革命後もホメイニ政権と取引を続けて莫大な利益を上げていたため、脱税の容疑で米国から指名手配され、1990年にグレンコアに社名を変えたものだ。

現在ではメタルのほか、石油、石炭の資源商社としてロンドン証券取引所などに上場し、日本商社を上回る時価総額で評価されている。

筆者が会社に入社した約40年ほど前はフィリップ・ブラザースは世界でも最大手のメタルトレーダーで、その後、証券会社のソロモン・ブラザースを買収するほどの勢いがあった。

東京・大阪はじめ、世界中にオフィスがあったが、名前もフィブロ(Phibro)に変えて、シティグループを経て、現在はオキシデンタル・オイルの子会社として米国コネチカット、ロンドン、アイルランド、シンガポールの4か所のみにオフィスがある。

フィブロがまだ会社として残っていたことも驚きだが、世界最大のメタルトレーダーがここまで規模が小さくなってしまったことも、また驚きだ。

自分ではこれまでの40年は短いと感じているが、やはり40年間の栄枯盛衰は避けられないものだ。

平家物語の「祇園精舎の鐘のこえ、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。…」という冒頭の文が、思い出される。

上記のリストで社名をクリックすれば、ウィキペディアでかなりのことはわかるが、本としてまとまっていた方が読みやすいので、興味のある人は一度手にとってみてもよいと思う。


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2015年02月22日

医療詐欺 タイトルが内容を表していないが参考になる



図書館の新刊書コーナーにあったので読んでみた。

東大医学部卒で、東大系の病院を何か所か勤め、現在は東大の医科学研究所で「先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門」特任教授を勤める上(かみ)昌広さんの本。

医療詐欺というと、ろくな治療もしていないのに法外な治療費を請求する医者とか、実際には効果のない医薬品をでっちあげの実験データを使って承認を取って、高額で販売する医薬メーカーとかが思い浮かぶ。

たとえば新薬開発では、2013年に明るみに出た事件として、ノバルティスファーマの「ディオバン(バルサルタン)」という血圧を下げる降圧剤の臨床データ不正操作疑惑がある。ノバルティスファーマの社員が結果の統計解析を行ったり、臨床試験を行った5大学に11億円の奨学寄附金を払ったというものだ。

また研究費の不正請求としては、2013年7月に詐欺容疑で逮捕された電子カルテの権威・東大の秋山昌範教授の事件が有名だが、同様の事件は国立がん研究センターの牧本医師などでも起こっている。

ところが、この本でいう「医療詐欺」とは、医者の育成から、薬価決定、大学病院や国立病院を中心とする日本の高度医療機関など、日本の全体の医療システムが詐欺、つまり一般人をだましているということだ。

つぎのような「不都合な真実」が紹介されている。この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で「不都合な真実」の項目を紹介しておく。

1.日本には「原子力ムラ」とよく似た「医療ムラ」が存在している。

2.医学会には薬の宣伝をする「御用学者」がいる

3.「中医協」によって日本の製薬会社の「開発力」が低下している

4.今のままでは日本の再生医療研究は欧米や韓国よりも遅れてしまう

5.名門国立病院は軽症患者ばかりを集めたがる

6.国立病院は旧日本軍の人事システムと体質を引き継いでいる

7.戊辰戦争で政府に反逆した地域は医師不足になっている

8.東北の急性白血病患者は北陸の患者と比較してリスクが二倍

9.20年後、郊外の高齢者は「通院ラッシュ」に揺られて都心の病院に通う

10.20年後の医療はテレビ局入社並みの超コネ社会になる

11.「日本医師会」とは医師の団体ではなく「開業医」の団体

12.実は「学費の安い私大医学部」をつくる方法がある

13.「医師が増えると医療費が増える」という主張は世界的には否定されている

14.国や医師会が批判する「混合医療」を導入すれば安全性が上がる

まず日本の新薬の値段の決め方が紹介されている。日本の新薬の値段は類似薬があれば、その薬の価格を基準として同じような薬価が決められる。類似薬がない場合は、コストをベースに考え、米国、英国、ドイツ、フランスの「先進四か国」の薬価とも比べられる。

普通の先進国では、評判の良い薬は需要も増え、薬価も上がる。ところが、日本の場合は、国が強い影響力を持つ「全国健康保健協会」加盟の健康保険組合に、買い手がほぼ一本化されているので、良い薬ほど価格が引き下げられなければならないという論理がまかり通っている。

だから新薬開発のインセンティブが低いため、「ドラッグラグ」(他の先進国で承認された新薬が日本では承認に時間がかかること)が生じている。

また、他の先進国であればジェネリックなら新薬の値段の2〜3割程度なのが、日本ではジェネリック医薬品は新薬の6割程度で、あまり安くないので、ジェネリック医薬品が普及しない原因の一つにもなっている。

日本の薬の売り上げは、2011年度で9.3兆円、そのうち8.7兆円が病院で処方される医療用医薬品で、薬局で売られる薬は6,500億円しかない。売り上げの最も多いのが「長期収載品」で、これは特許が切れたブランド薬で41%、次に新薬36%という比率だという。

つまり特許が切れた古い薬を日本人は高く買わされているのだと。

このようにインサイダーならではの医療行政批判を展開している。

特異な見方のようにも思えるが、上さんは、国立病院は「国の政策医療」を推進する施設なので、「臨床研究」に参加できる患者を受け入れ、重症患者でも研究に参加できないものは難癖つけて他の病院に追いやるのだという。

国立病院と旧日本軍の類似性や、賊軍地域の医師不足など、にわかには信じられないが、人口当たりの医師数では明らかに西高東低になっている。埼玉、千葉、茨城県が、日本で最も医師が少ないワースト3となっていることなど考えると、本当かもしれないという気になってくる。

「水戸市の医師数は離島以下、つくば市だけが孤軍奮闘」なのだと。

「徳川家親藩、譜代が治めていた茨城県水戸市、兵庫県姫路市、埼玉県川越市、新潟県長岡市、福島県会津市、静岡県静岡市、神奈川県小田原市には大学病院がないため、深刻な医師不足になっている」と上さんは語る。

日本の医師と看護師の絶対数の不足も参考になる。看護師や薬剤師を含む病院従事者のことを「コ・メディカル」と呼ぶが、日本ではコ・メディカルが圧倒的に少ない。上さんは、日本の病院は欧米より「超危険」なのだという。

現場の医師も、様々な統計資料を挙げて同様の警鐘を鳴らしている

日本の医師不足が解消しない理由は、「日本医師会」と「全国医学部長病院長会議」が医学部新設に反対しているからだと。「日本医師会」は開業医の団体で、同業者=商売敵が増えるのを嫌っている。

そんなわけで日本の医学部新設は1979年の琉球大学以来1件もない。安倍政権で特区で医学部を新設しようという動きに対して、またも「日本医師会」と「全国医学部長病院長会議」が反対している

医者が例に出すのは歯科医だ。今や歯科医はコンビニより多いと言われるほどで、同じような現象が起こることを開業医は懸念しているのだ。

大学病院は地方の医療界のトップに君臨する「殿様」なので、「全国医学部長病院長会議」は、「殿様」が増えることを嫌っている。

最後に「日本医師会」がパンフレットまでつくって反対し厚生労働省も反対している混合診療は「医療のビジネスクラス」で、ビジネスクラスが航空業界の活性化に役立ったように、混合診療も医療界の活性化に役立つと提言している。

にわかには信じられない主張もあるが、何が医療で問題なのかわかり、参考になる本である。


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2015年02月15日

僕はミドリムシで世界を救うことに決めました 発端はグラミン銀行から



会社の人間力向上セミナーで(株)ユーグレナの出雲充社長の講演を聞いた。

出雲さんの「僕はミドリムシで世界を救うことに決めました」は数年前に読んだ。手元にある本は2012年12月の初版本なので、たぶん2013年くらいに読んだのだと思う。

出雲さんが次男と同じ駒場東邦高校の出身ということもあり、以前から興味を持っていた。

出雲さんの講演内容はだいたいどこの講演でも同じようなストーリーのようだ。たとえば大阪市で行った講演内容がネットで公開されている。会社で行った講演も全体のストーリーとしては同じような流れだ。

この部分はネットで公開されているので、詳しくは紹介しない。時間のある人は、YouTubeに出雲さんのインタビューが様々な資料と一緒に公開されているので、参照してほしい。



1980年に生まれ、多摩ニュータウンで育ったごく普通の家庭に育った出雲さんが、東京大学に入学して初めての夏休みに、バングラデシュのグラミン銀行にインターンとして働き、「貧困は博物館に」をスローガンとしているグラミン銀行創始者のムハマド・ユヌスさんの主張に感動した。

そして動物と植物両方の特性を備え、59種類のビタミン、ミネラル、アミノ酸、不飽和脂肪酸などの栄養素を含むミドリムシで世界を救おうと決め、東大の文靴ら農学部の農業構造経営学科に進学する。

そこで数学の天才鈴木健吾と出会う。鈴木さんはユーグレナの取締役研究開発部長を務めている。鈴木さんと一緒にミドリムシの大量培養技術開発に専念するが、なかなかうまくいかない。

その時に会ったクロレラ販売会社の専務だった福本さんを販売担当として招き入れ、福本さんのツテで石垣島の八重山興産でクロレラ培養用のプールを借り、独自の培養液を使ったミドリムシの大量生産に成功する。

大量生産に成功しても、実績がないので、なかなか買ってくれる会社が現れなかったが、501社めでミドリムシ事業を支援してくれる会社が現れた、それが伊藤忠商事だ…。

このような内容だ。

ただし、最後のメッセージの部分はその場にあった内容に変えている。つまりユーグレナ創業ストーリーやミドリムシの大量培養に成功した話は、どこでも同じ講演をしているが、それから引き出すメッセージはその会場とオーディエンスにあわせたものにしている。

たとえば筆者の会社の場合には、出雲さんが500社訪問して1社もミドリムシを採用してくれなかったという500社の一社なので、若手社員向けのセミナーということもあり、やたらと同業の伊藤忠商事のことを持ち上げていた。

501社めに伊藤忠に行ったら、それまでの500社が「実績がないから採用を見送る」という反応だったのに対して、伊藤忠は「実績がないから、大きなビジネスチャンスがある」と判断してくれ、ユーグレナに出資し、大手企業への紹介を引き受けてくれたのだと。

ユーグレナのミドリムシが売れるようになったのは、伊藤忠のおかげであり、出雲さんはコンビニならどんなに遠くともファミマに行くと語り、ベンチャーは助けてくれた会社には絶対に恩返しすると強調していた。筆者の会社の若手社員には、発奮材料として大変刺激になったと思う。

それと講演ではふれていなかったが、本で恩人として紹介しているのが、元マイクロソフト日本法人社長の成毛眞(まこと)さんだ。

ユーグレナは当初、ホリエモンが「ミドリムシは宇宙食に役立つ」と考えて、ライブドアの支援を受けていたが、ホリエモンが粉飾決算で逮捕されると、ライブドア関連企業ということで、どこからも総スカンをくらった。

その時ミドリムシの将来性に注目して、出資して助けてくれたのが成毛さんだ。

成毛さんと最初に会った時の話がこの本に紹介されている。

ミドリムシは発電所からでてくる高濃度の炭酸ガスを使って光合成できるという話をすると、

成毛さんは「そんなに高い濃度の二酸化炭素を処理するために培養液にエアレーション(水中に気体を溶かし込むこと)したら、PHが急激に下がって、強い炭酸水になるだろう。そんな環境でミドリムシは生存できるのか?」と聞いてきたという。

これに対し、「はい、ミドリムシは5億年前から光合成をしており、その当時の地球環境は…」と説明すると、

「ふーん、そもそもなんでミドリムシはそんなに光合成の能力が高いんだ?クロロフィル(葉緑素)には3種類あるけど、ミドリムシはどのパターンを使ってるの?」と聞いてきたという。

さすが読書クラブHONZを主催している成毛さんだ。その知識には出雲さんならずとも驚かされる。

この本では、筆者の会社の先輩で、成毛さんの会社のインスパイアで役員をしている芦田さんが、ANAなどを説得して航空燃料ビジネスの道を開いたことも紹介されている。

航空燃料生産のために、JX日鉱日石エネルギーと日立プラントテクノロジーが出資した。

ミドリムシから燃料をつくるというのは、まさに当時の通産省が国家プロジェクトとして推進していた「ニューサンシャイン計画」の藻類活用プロジェクトそのものだ。

しかし巨額の国費を投入した「ニューサンシャイン計画」の藻類から燃料をつくるというプロジェクトは、結局ミドリムシの大量培養ができなくて頓挫した。

ミドリムシは食物連鎖の最下層にいるので、少しでも他の微生物が侵入してくると、あっという間に食べつくされてしまう。国家プロジェクトでもできなかったミドリムシの大量培養に成功したのは、ミドリムシだけが生き延びられる劣悪な環境の培養液をつくるという逆転の発想だったという。

講演の後の質問で、出雲さんはミドリムシの応用技術、たとえば食品の製造法とかは、パテントで保護するが、ミドリムシの培養液はノウハウで公開はしないと説明していた。

コカコーラやケンタッキー・フライド・チキンがレシピを公開しないのと同じだという。パテントとして公開してしまうと、パテントを侵害して同じようなものをつくる業者が現れても、パテントを侵害しているという証明が民間企業では難しいからだと。

講演の最後で出雲さんはメンター(支援者)とアンカー(精神的な支え)の重要性を強調していた。

出雲さんの場合、アンカーは18歳の時にグラミン銀行で出会ったムハマド・ユヌスさんだという。

今は、バングラデシュの2,500人の小学生の給食にミドリムシ製品を提供しているが、いずれは100万人分のミドリムシ製品をバングラデシュの小学生に提供したいと言っていた。

筆者は30年近く毎日マルチビタミン・ミネラルサプリメントを飲んでいるし、食事でもできるだけ食物繊維の多いものを摂るようにしているので、59種類のビタミン・ミネラル・不飽和脂肪酸…と聞いても、あまり必要性を感じないが、一度試しにサプリメントかユーグレナバーを買ってみようと思う。

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本も面白いし、講演も大変参考になった。学名とか物質名の部分では急に早口になり、ほとんど聞き取れない調子で話しているのが印象に残った。

ベンチャー企業の社長の本は、ワタミの渡邉美樹さんが典型だが、三木谷さんといい、大体自分のことしか書かないジコチュー本が多いが、この本は仲間のことも紹介している。その意味でも好感を持った。

出雲さんが講演で言っていたように、普通のサラリーマン家庭出身の子供でも、ベンチャーで成功できる。たとえ成功確率が1%しかなくても、四百何回(はっきりした数字は忘れた)繰り返せば、成功率は99%になるという。

やる気が起こる本とセミナーだった。


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2014年12月15日

ウィスキーと私 「マッサン」の主人公・竹鶴政孝さんの自伝

ウイスキーと私
竹鶴 政孝
NHK出版
2014-08-27


現在NHKの朝ドラで放映中の「マッサン」の主人公、日本のウィスキーの創始者・竹鶴政孝さんの自伝。

日経新聞の「私の履歴書』の連載をNHK出版が単行本にしたものだ。

「マッサン」は筆者も「どんど晴れ」以来、久しぶりに見ている朝ドラだ。毎日録画して、土日に1週間分まとめて見ている。



朝ドラを見だしたきっかけは、昨年北海道旅行の際に余市蒸留所を訪問したからだ。

すでにその時にNHKの朝ドラになるという話は決まっていたが、まだブームとなる前で、ゆったり蒸留所やその中にある竹鶴邸を見学できた。

その時はフーンと思って、あまり気にしなかったが、ポットスティルで蒸留した無色無臭のアルコールを樽に入れて5年ほど熟成すると、量は2/3くらいに減ってしまうかわりに、ウィスキーのあの色と味が出るのは思えば不思議なものだ。

減ってしまう分は「天使の分け前」と言われている。

この「ウィスキーと私」は竹鶴さんの自伝で、事実と違う点は、リタさんと出会ったときは、リタさんの父親は亡くなった後だったという点だけだと、この本の註と竹鶴さんの孫の竹鶴孝太郎さんの随想で語られている。

父親の亡くなった家庭に独身男性が出入りすることになっては、リタさんの実家に不名誉だと思って、わざと事実を変えて記しているのではないかというのが、孫の孝太郎さんの見解だ。

「マッサン」は、テレビドラマとして部分部分、脚色はされているが、ストーリーは竹鶴さんの原作に近い内容となっている。

この本では、竹鶴さんがスコットランド留学を決め、アメリカのサンフランシスコ経由で、アメリカのカリフォルニア・ワイナリーというワインの醸造所を見学してから、スコットランドに渡ったことも紹介されている。

当時は第一次世界大戦の最中で、竹鶴さんの乗った船が、ドイツの潜水艦攻撃を避けるために随伴船とジグザグ航行していたら、随伴の貨物船にぶつかって貨物船が沈没してしまい、生存者は1名だけだった話が紹介されている。

ちょうど乗り合わせたベルギーの皇太子が音頭を取って、竹鶴さんが犠牲者の義捐金集めに一役買ったのだという。

当時の日英同盟の関係もあり、スコットランドでは王立工科大学(原書ではグラスゴー大学と記されているが、これは記憶間違いのようだ)やロングモーン・グレン・リベット蒸留所の工場長に大変親切にしてもらっい、ウィスキーの製造法を学んだ。

しかし日本に帰ってからは、留学に送り出してもらった摂津酒造ではウィスキー製造は、株主会議で否決され、結局サントリーの前身の寿屋の鳥井信治郎さんに拾ってもらい、京都の山崎に蒸留所を建設する。

鳥井さんは今のボンドなど接着剤をつくっているコニシの前身の小西儀助商店の出身で、「やってみなはれ」の人だ。

鳥井さんがマッサンをウィスキー工場長として、年俸4,000円で雇うのも、朝ドラの通りだ。大正12年、1923年のことだ。契約は10年間だったという。

その後、サントリーは日本で白札、赤札などのウィスキーを売り出し、当初は日本人の味に合わなかったが、だんだんに売れるようになった。マッサンは横浜でサントリーのビールもつくっていた。

マッサンはその後独立して、出資者を集め、住友銀行などから融資を得て、大日本果汁株式会社を設立。昭和9年に余市工場を建設した。ウィスキーの原酒を寝かす5年以上の間は、リンゴジュースをまず販売して食いつないだ。これがニッカの社名の由来だ。

工場設立の2年目の昭和11年にウィスキーの蒸留を始め、一級ウィスキー工場として大蔵省の認定を受けた。戦争中は海軍の指定工場となって、原料は優先的に配分されていた。

戦後は、ウィスキーは酒税法で、特級から3級(その後廃止)まで等級分けされ、3級は原酒の配合率が0〜5%とされていた。つまり、ウィスキーの原酒がゼロでも3級ウィスキーは作れたのだ。

筆者の学生時代は、2級ウィスキーはサントリーのレッド、1級はホワイト、特級は角瓶以上だったが、たぶん当時も2級ウィスキーには原酒はほとんど入っておらず、醸造用アルコールが主体だったのだと思う。

どうりで飲みすぎると悪酔いしたわけだ。

ニッカは余市工場と、仙台郊外に宮城峡に工場を建設し、昭和44年から生産を始めた。

余市はハイランド・モルト工場だ。

西宮工場にカフェ式連続蒸留機を入れて、穀物原料からアルコールを蒸留してグレイン・スピリッツをつくり、ハイランド・モルトと混ぜた。

さらに宮城峡では、ローランド・モルトをつくり、これでうまいウィスキーの原酒のフルセレクションがそろった。

最後に竹鶴さんは、ウィスキーのうまい飲み方をエッセーで書いている。

毎日飲むにはストレートだと、胃に悪いので、ウィスキー:水=1:2が適当だという。竹鶴さんは、オンザロックは冷えすぎるとしてあまり勧めていない。いずれにせよ、人それぞれ、一番うまいと思う方法で楽しむべきだし、飲む人の量によっても変わってくると。

巻末のコラムや随想も入れて190ページ余りの本で、簡単に読める。

竹鶴さんの他の本も読みたくなる。ウィスキーのことも学べ、読んでいて楽しい明治生まれの気骨ある日本男児の自伝である。


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2014年12月08日

あの夏、サバ缶はなぜ売れたのか? データ分析もPDCAサイクルだ



博報堂グループで制作と広告・プロモーションをワンストップで提供する博報堂プロダクツのデータベースマーケティング部長大木真吾さんの本。

顧客分析は筆者が最も興味を持っている分野の一つで、いままで世界最高のCRM能力を持つといわれている「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」や「アナリティクス界のドラッカー」(大木さんの表現)といわれる米国ダブソン大学のトーマス・ダベンポート教授の「分析力を武器とする企業」などのあらすじを詳しく紹介してきた。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略
C. ハンビィ
海文堂出版
2007-09



分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社
2008-07-24


この本では、データ活用のPDCAサイクルを次の様に紹介している。

PLAN : 「意志を持つ」フェーズ データ分析の目的を明確にして仮説を構築する

DO   : 「可視化する」フェーズ データを収集し、分析作業を行う

CHECK: 「翻訳する」フェーズ   分析結果の意味するところを解釈し、課題解決を目指す施策を打ち出す

ACTION: 「アクションする」フェーズ あらかじめ目標を設定し、実際に分析結果に基づいたアクションをする

参考になったのは、JALが行った「海外女子旅」プロジェクト。最初はデータには全く触れず、JALの旅客販売統括部WEB販売部と博報堂プロダクツの社員で構成されるプロジェクトチームが、顧客の旅行パターンを思い思いに挙げて70の「行動仮説」をつくった。

それをさらにふるいにかけて、十数個のグループにわけ、それぞれにJAL顧客のデータをあてはめていって、「海外女子旅」というグループを見つけた。

このグループは:
1.JALのホームページにログインしたうえで、WEB経由で購買している。
2.過去2年間に1回以上、日本発のJAL国際線に搭乗している。
3.20〜45歳の女性マイレージ会員である。
4.比較的同年代の女性同志での搭乗が1回以上ある。

クロス分析の結果、1万人の海外女子旅経験者を抽出できた。、

次に、この1万人の海外女子旅経験者をプロファイリングして、ペルソナ化(擬人化)して、同様の人を探した結果、母集団8万人から、1万7千人の「近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者」グループをあぶりだすことができた。

母集団8万人は、今や次のようなグループに分けられた。

1万人 海外女子旅経験者
1万7千人 近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者
5万人 海外女子旅をしないと思われる候補者

同じ「海外女子旅」のバナー広告などを表示した結果、上記の1万7千人の「近い将来海外女子旅をするかもしれない候補者」グループが、5万人の「海外女子旅をしないと思われる候補者」より10倍も売り上げが上がったという。

データ分析の成功例だ。

この本ではID−POSデータ(ポイント会員組織を持つスーパーなどでのPOSレジ売り上げデータ)を分析した例も紹介されている。

本のタイトルになっている「あの夏(=2013年)、サバ缶はなぜ売れたのか?」は、2013年7月30日に「たけしの健康エンターテインメント! みんなの家庭の医学 新発見!やせるホルモンで病の元凶【肥満】を解消SP」で「サバの水煮缶」がダイエット効果があると放送されたからだった。

大雪と「雪見だいふく」の関係とか、食べるラー油とキムチにラー油をかけた「キムラ君」など、テレビCMとの関係が紹介されている。

その他には「シュークリーム男子」とか、「地域ナンバーワンスーパーが、ネットサービスの会員を増やしたい」、「居酒屋の顧客単価を上げる」などの例が紹介されている。

平易に読めるのはいいが、いかんせん具体例が弱い。

顧客データ分析では、英国のTESCO社と、NECTAR共通ポイントプログラムを英国、イタリア、チリなどで運営するカナダのAIMIA社が世界最高峰だ。

残念ながら日本の顧客分析は、到底英国のレベルに達していない。

最大の原因は、英国の流通業界は寡占で、TESCOやAIMIA(運営会社は英国のLMG=Loyalty Management Group、スーパーはSainsburry)は、英国の全世帯数の半分以上の情報を持っているのに対し、日本最大の流通業のイオンでもマーケットシェアは10%強程度だからだ。

日本の消費者は、スーパーのチラシで特売情報を入手し、いつも行くスーパー数社の中から選択している。それだけスーパーは競争も激しいし、結果として消費者の購買情報はスーパー数社で散逸してしまう。

だから集められるデータが少なく、たとえID=顧客情報を持っていても、一人の顧客の全体像がつかめないのだ。

それと誰も問題にしていないが、実は日本の郵便番号のメッシュは荒すぎて、たとえば建物一つ一つに郵便番号がついている英国とは比べ物にならない。

階級社会の英国は、年収や勤務先などのデータがなくても郵便番号だけで、どういったクラスの人が住んでいる場所なのか判別できるという。郵便番号をプロファイリングデータの一つとして活用しているのだ。

実際、筆者が英国出張中にNECTARのカードをロンドン支店の住所で申し込んだら、その住所には住んでいる人はいないので、正しい住所を連絡して欲しいという回答があった。

日本ではこういう具合にはいかないだろう。

この本では、データ分析はどういう具合にやるのかがわかって、参考になった。しかし、ビッグデータ時代到来と騒がれているが、日本の所与の条件で、どれだけデータ分析が進歩していくのか不安を感じさせる内容でもあった。


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2014年08月13日

再掲  「零の遺伝子」 国産ステルス戦闘機 試験飛行決定

2014年8月13日再掲:

夏休みや冬休みが終わりに近くになると、このブログのランキングは上がる。
休み中の課題図書となっている本の感想文を書くために、小中学生がこのブログを参考にしているのだと思う。

「助かりました」という感謝のコメントをもらうこともある。小中学生はあらすじを読んだら、律儀に文末の「このブログに投票する」をクリックしてくれるから、ランキングが上がるのだろう。

現在のこのブログの人気記事ランキングは次の様になっている。

1.「海賊と呼ばれた男」 百田尚樹

2.「ホームレス中学生」 田村裕

3.「零の遺伝子」 春原剛

4.「日本男児」 長友佑都

5.「心を整える。」 長谷部誠

たぶん3.を除いて、他は課題図書になっているのだと思う。

3.は、このブログの人気記事のランキングにずっと入っている。たぶんあまり他のブログ等で紹介されていないからなのだろう。

その国産ステルス戦闘機開発に関して、新しいニュースがあった。開発者の三菱重工がステルス戦闘機「心神」の試作機の初飛行を2015年1月に行うと報じられたのだ。

国産ステルス機配備計画は、エンジン調達など、まだまだ課題があるが、予定通り進められているようだ。

来年1月の初飛行を期待して、「零の遺伝子」のあらすじを再掲する。


2012年11月22日初掲:
零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)零の遺伝子: 21世紀の「日の丸戦闘機」と日本の国防 (新潮文庫)
著者:春原 剛
新潮社(2012-07-28)
販売元:Amazon.co.jp

日経新聞編集委員の春原 剛(すのはら つよし)さんの本。春原さんは先日の日経・CSISシンポジウムでアーミテージ・ナイ鼎談の進行役を務めていた。

1990年代の次期支援戦闘機FSX商戦では、自主開発を求める自衛隊の制服組や三菱重工業などの産業界を、米国との外交関係を重視した日本政府が押し切り、F16をベースとした共同開発に決着した経緯がある。

たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)
著者:手嶋 龍一
新潮社(2006-06)
販売元:Amazon.co.jp




これにより、日本の開発したアクティブ・フェーズド・アレイ・レーダー技術と炭素複合材を使った軽量主要成型技術が米国に召し上げられ、生産分担分も米国に持って行かれるという結果となり、日本の航空エンジニアは2重の屈辱を味わった。

FSXをトラウマとして抱える防衛省・自衛隊の関係者は、いつしか日本の独自開発で戦闘機を作る夢を持ち続けた。それが現在も開発が進められている先進技術実証機ATD−X、コードネーム「心神(しんしん)」と呼ばれる国産ステルス戦闘機で、これを支援したのが「防衛庁の天皇」と呼ばれ、事務次官を異例の4年も続けた守屋事務次官だった。


守屋次官の政治力

山田洋行の過剰接待を受けた収賄罪で起訴され、現在は懲役刑で服役している「防衛庁の天皇」と言われた守屋武昌次官は、かつて「日米キャデラック・カローラ論」を掲げていたという。第5世代戦闘機としてはF22がキャデラックであり、カローラに相当するのが、日本の「心神」である。

実際、F22が推力15トンのF119エンジン2基を搭載するのに対して、推力5トンのIHI製のXF5エンジンを2基使った「心神」はたしかにカローラのようなコンパクト機となる。日本にも推力10トン以上の自主開発エンジンの計画があるが、費用は1兆円を超えるので、なかなか踏み切れないのだ。

セロ戦もライバルF6Fヘルキャットのエンジンが2,000馬力超に対し、当初の栄エンジンは1,000馬力以下だった。非力なエンジンを使ったので、軽量で敏捷な戦闘機ができたことから、この本ではセロ戦と「心神」の類似性をタイトルに使っている。

ちなみに、このブログで守屋さんの「普天間交渉秘録」のあらすじを紹介しているので、興味ある方は参照してほしい。淡々と事実を説明しており、わかりやすい本だった。

守屋次官は、小泉純一郎首相に気に入られていたので、米軍再編問題で外務省が打ち出していた「スモール・パッケージ」(横田基地の米軍司令部のグアム移転だけ受け入れて、米陸軍第1軍司令部の座間移転は拒否する)に対抗して、米軍のグローバル再編に協力する「トータル・パッケージ」として小泉首相に説明し、「トータル・パッケージはおもしろいじゃないか」という言葉を引き出すことに成功する。

「トータル・パッケージ」とは、1.米海軍厚木基地の艦載機部隊を海兵隊岩国基地へ移転、2.普天間飛行場の移転、3.相模補給廠や牧港補給地区など使用頻度の低い遊休施設の返還などを含んだ防衛省の独自プランだ。

2004年9月の小泉・ブッシュ会談のために、小泉首相は守屋次官に発言要旨メモをまとめるよう指示し、ここで日米交渉の主導権は外務省から防衛省に移った。


「機体はつくるな」という指令

防衛庁幹部には、米国の印象を悪くするような「新・国産戦闘機プロジェクト」を声高に進めるのは賢明でないという考えがあったので、「心神」開発は「高運動飛行制御システム」という名目で始められた。2004年前後に130億円の予算を確保したが、「機体はつくるな」とクギを刺されていたという。

そこで防衛省の技術開発本部は「心神」の実物大のモックアップ模型をつくって、フランスの仏国防整備庁の設備でステルス性能を試した。このことはYouTubeの次の映像で報じられている。




もともとF22が欲しかった防衛庁

防衛庁は国産開発の「心神」をもとから欲しかったわけではない。第5世代戦闘機のトップに位置する米軍のF22が導入希望のトップだった。F22のステルス性能は、自動車ぐらいの大きさのものが、レーダーではゴルフボールくらいにしか映らないという驚異的なものだ。

フランスでの「心神」のステルス性能テスト結果は、上記のビデオでは「中型の鳥よりは小さいが、虫よりは大きい」と防衛庁幹部が語っている。「せいぜいサッカーボールぐらい」だったという。



現代の戦闘機は戦闘機だけで行動するわけではない。強力なレーダーを持つ早期警戒機や地上・海上のレーダーと一体化した高速データリンクの中で、敵を攻撃する役割が与えられている。だから敵の「脳」ともいえる早期警戒機を撃墜できる能力があり、また「敵地深くに入り込み、爆撃する能力」を持つステルス戦闘爆撃機は、「核にも匹敵する戦略兵器」と言われるのだ。

F22は燃料を大量に消費するアフターバーナーを使わず超音速飛行ができるので航続距離も長く、グアム島から北朝鮮に侵入して、電撃爆撃し、北朝鮮軍機とドッグファイトをしてグアム島に帰還することが可能という。航空自衛隊のF15だと、日本から北朝鮮の往復飛行がやっとで、ドッグファイトすると「片道切符」になるという。

F15があれば、F22は要らない」と言っていた航空自衛隊は、2007年に沖縄で行われた航空自衛隊のF15対米軍F22の共同訓練で、双方が早期警戒機を導入していたにもかかわらず、完全に「お手上げ」の状態だったことから、F22導入希望に変わったという。

これに先立ち2004年に行われたインドと米軍の合同軍事演習で、F15がSU30に惨敗したという情報を自衛隊は得ていた。この時は、早期警戒機なしのデータリンク抜き、自動追尾ミサイルなしのドッグファイトだった。

次のビデオを見れば、SU30の驚異的な運動性能がわかると思う。まるで風に舞う木の葉のようだ。



2009年5月に自民党の新・国防族を代表する浜田靖一防衛大臣は、ワシントンを訪問して当時のゲーツ国防長官と面談した時に、次期主力戦闘機にF22を有力候補として位置付けていることを強調した。しかし、ゲーツ長官はF35を「良い戦闘機」だと勧める発言をした。




F22は打ち切り、F35は大増産

F22は1983年にコンセプトをつくり、2005年に実戦配備が始まった。ところがあまりにカネがかかり、しかも飛ぶごとに毎回お化粧直しが必要ということもあり、メインテナンスもバカにならない。

このため米国では183機で生産中止が決まっている。米国議会の輸出禁止決議もあり、日本がF22を購入することは不可能となった。

一方F35は、同じ生産ラインから空軍仕様、海軍仕様、海兵隊のSTOVL仕様が一括生産でき、米空軍1,800機、米海軍400機、米海兵隊600機、英国空軍150機に加え、NATO諸国、イスラエルも導入し、日本も2011年末にF35を導入決定した戦闘機のベストセラーだ。

F22,F35と並ぶ第5世代戦闘機としては、ロシアのPAK FAと呼ばれるSU50や中国の殲20がある。






第6世代戦闘機

米軍の中では、第6世代戦闘機は、いよいよ無人機になると言われている。映画「ステルス」もAIを搭載した無人機が、隊長を自らの意思で救出するというストーリーだ。同じようなことが次世代の戦闘機では起こる可能性があるという。



次世代戦闘機の特性は"morphing”(変形)というコンセプトだという。なにやら映画「ターミネーター2」のT−1000のような印象があるが、「しなり」に近いものを機体に持たせるものとみられているという。



ちなみに航空自衛隊は、早くから無人飛行機の研究を続けており、F104の無人機を10機以上生産した。

パイロット訓練用の逃げ回るターゲットとして考えられていたが、運輸省との論争で航路が限定されたため、すぐに撃ち落とされるようになり、結局岐阜県の航空自衛隊第2補給処に死蔵されているという。


F35は空軍、海軍、海兵隊が同じ戦闘機を使う初めてのケースで、その意味ではいままで米軍戦闘機が抱えていたインターオペラビリティの問題を抜本的に解決した戦闘機である。(いままでの米軍の戦闘機はF15、F−16は空軍だけ、F14、F−18は海軍だけ、ハリヤーは主に海兵隊が使っており、ミサイル、弾薬、燃料、潤滑油、レーダー、タイヤに至るまで装備品の仕様が異なっていた)。

平和の配当で、どの国も防衛予算を削減している流れのなかで、F35は世界各国が参加した文字通りの"Joint Strike Force"といえる共同開発機種である。

日本もライセンス生産という形で、その開発に加わることになるので、いまさら日本独自で「心神」戦闘機を開発するということになるとは考えにくい。それゆえ「心神」はせいぜい試作機にとどまるのではないかと思うが、今後の動きに注目したい。

問題点がよく整理された本である。もともと2009年に単行本として出版され、2012年に文庫化された。春原さんの本をいろいろ読んでみて、この本が一番よくまとまっていると思う。


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2014年08月10日

ボルドー・バブル崩壊 しかし価格はまた高止まり



読売新聞記者としてヨミウリ・オンラインのワイン欄を担当。2014年に独立したワイン・ジャーナリスト山本昭彦さんの本。

山本さんはワイン・レポートというブログで多くのワインに関する記事を公開してするほか、ヴィノテークワイン王国など専門誌に寄稿。アカデミー・デュ・ヴァン講師。シャンパーニュ騎士団オフィシエ・ドヌール。ボルドーのボンタン騎士にも叙任されている。ロック評論も専門誌に寄稿しているという、多芸の人だ。

ボルドーは世界最高クラスのワインを生産する。次は代表的なボルドーのトップクラスのワインだ。これらがワインバブルの投機対象となっている。

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出典:本書34ページ

ボルドーの主要なワイン産地の地図は次の通りだ。

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出典:本書56ページ

ボルドーのワインには「プリムール」という先物取引のシステムがある。生産者は毎年春、収穫から半年足らずのワインを試飲させて、熟成した時の品質を予想させ、収穫から3年先の納期で売りさばく。

定価はなく、ワインの出来や景気を考慮した上で、需要と供給のバランスによって売り出し価格を決める。このプリムール価格が2005年に暴騰したのだ。

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出典:本書22ページ

それまでもフランスが熱波に襲われ、13,000人もの死者が出た2003年に収穫量が激減し、価格が急上昇した。しかし、2004年は平凡な年だったので、価格は下がった。

ところが2005年は、世界的ワイン評論家ロバート・パーカーが「過去28年間に試飲したどれとも違う例外的なヴィンテージ」と高く評価したことから、人気が急上昇した。

続く2006年、2007年は平均的な年だったので、過去の例からいけば価格は大きく下がるはずだったのが、2006年は逆に値上がりした銘柄もあった。2007年に若干下がったが、それでも2004年の4倍以上の価格だった。

この価格急騰の原因は、ロシア、中国、香港という新しいバイヤーがプリムール商戦に参入してきたからだ。

シャトー側も需要の変化に目ざとく気づき、たとえばMBAホルダーの社長が率いるシャトー・ラトゥールは、普通だと生産量の8〜9割を売るプリムールでの販売量を絞り込み、生産量の半分も売っていない。先高と予想しているのだ。ちなみにラトゥールは2012年からプリムール販売をやめた。

ワイン銘柄偽装も横行しだした。1級シャトーのいい年のワインの瓶に、同じ会社のセカンドワインや、悪い年の1級ワインを詰めるのはむしろ「良心的?」なほうで、ひどいものは全然違うワインを瓶だけ詰め替えている例もあるという。

古いワインは状態を保つために、リコルキングと言ってコルクを詰め替える作業をする。その時に、中身をすり替えるのだ。

オークションで売っているワインにはニセモノが多いと、山本さんは注意を喚起している。


リーマン・ショックで2008年ものはバブル崩壊 しかし翌年は急騰

2007年からの世界金融危機、2008年9月のリーマン・ショックでワインバブルは一時的に崩壊した。2008年の売出価格は2007年のほぼ半分の100ユーロ近辺にまで下がった。

しかし、2009年と2010年が2年続けて偉大な出来だったので、また価格は上昇し、2010年に過去最高値をつけた。その後は平凡な年が続いたので、2011年、2012年と価格は下がっている。

2012 primur













出典:43navi.com

2013年は天候のせいで生産量が大きくダウンしたため、平凡な出来にもかかわらず価格は小幅ダウンのみだ。

Bordoverviewというサイトで、ボルドーの全主要銘柄の生産年ごとのプリムール価格がわかるので、参照してほしい。

最後にボルドーワイン業界の有名人8人と、飲まずに死ねない10大シャトーを紹介している。そのリストは次の通りだ。

有名人8人

1.シャトー・コス・デストゥルネル支配人 : ジャン・ギョーム・プラッツ(現在はLVMHのワイン部門社長)

2.シャトー・ラトゥール社長 : フレデリック・アンジェラ

3.シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・ディケム支配人: ピエール・リュルトン

4.シャトー・ムートン・ロートシルト醸造責任者: フィリップ・ダルーアン

5.醸造コンサルタント: ジャック・ボワノス

6.シグナチャー・セレクションズ代表: ジェフリー・デイヴィス

7.ワイン評論家: ロバート・パーカー

8.シャトー・ペトリュス当主: クリスチャン・ムエックス

飲まずに死ねない10大シャトー

1.シャトー・ラトゥール 2006年

送料無料!シャトー・ラトゥール 2006年750ml Chateau Latour【2006】【楽ギフ_包装】【楽ギフ_のし】
送料無料!シャトー・ラトゥール 2006年750ml Chateau Latour【2006】【楽ギフ_包装】【楽ギフ_のし】

2.シャトー・ペトリュス 2006年

送料無料 シャトー・ペトリュス 2010年【2010】 Chateau PetrusPP98-100点 750ml【楽ギフ_包装】【楽ギフ_のし】
送料無料 シャトー・ペトリュス 2010年【2010】 Chateau PetrusPP98-100点 750ml【楽ギフ_包装】【楽ギフ_のし】

山本さんがペトリュスを訪問した時の話が載っている。高級ワインのいわば標準装備である温度調節の可能なステンレスの発酵タンクがなく、小さな建物の中にセメントで固めた発酵槽が10個あるだけだったという。そんな設備で世界最高級のワインが生産できるとは!

3.シャトー・オーゾンヌ 2006年

【初出し特価】シャトー・オーゾンヌ[2006](赤ワイン)[J]
【初出し特価】シャトー・オーゾンヌ[2006](赤ワイン)[J]

4.シャトー・ディケム 2004年

シャトー・ディケム[2004]年・・ソーテルヌ・プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ・ソーテルヌ格付・特別第一級Chateau d'Yquem [2004] AOC Sauternes Grand Premiers Cru(Premier Grand Cru Classe en 1855)
シャトー・ディケム[2004]年・・ソーテルヌ・プルミエ・グラン・クリュ・クラッセ・ソーテルヌ格付・特別第一級Chateau d'Yquem [2004] AOC Sauternes Grand Premiers Cru(Premier Grand Cru Classe en 1855)

5.ラ・モンドット 2006年

《PP97点》 ラ・モンドット[2006]【楽ギフ_包装】
《PP97点》 ラ・モンドット[2006]【楽ギフ_包装】

6.シャトー・マルゴー 2006年

シャトー・マルゴー[2005](赤ワイン)[Y][J]
シャトー・マルゴー[2005](赤ワイン)[Y][J]

7.シャトー・ムートン・ロートシルト 2006年

シャトー・ムートン・ロートシルト[2005](赤ワイン)[J]
シャトー・ムートン・ロートシルト[2005](赤ワイン)[J]

8.
シャトー・ラフィット・ロートシルト2006年

シャトー・ラフィット・ロートシルト[2006](赤ワイン)[J]
シャトー・ラフィット・ロートシルト[2006](赤ワイン)[J] 

9.シャトー・オー・ブリオン 2006年

シャトー・オー・ブリオン(赤) 2004 (750ml)
シャトー・オー・ブリオン(赤) 2004 (750ml)

10.シャトー・シュヴァル・ブラン 2006年

【送料・クール代無料】◆シャトー・シュヴァル・ブラン [2008]
【送料・クール代無料】◆シャトー・シュヴァル・ブラン [2008]

ボルドーワインの値上がりは激しい。筆者は1級シャトーではラトゥール、ムートンとラフィット・ロートシルトは飲んだことがあるが、それは30年くらい昔の話だ。当時は店で買っても1〜2万円程度で買えた。

今の様に10万円程度に価格が上がっては、「死ぬまでに飲みたい」という気には到底ならない。むしろ1級格付け以外の値段が安くて、いいワインを見つけることの方がやるべきことだろう。また、ボルドーワインだけがワインではない。他の国やフランスの他の地方にもいいワインはいくらでもある。

筆者がピッツバーグに駐在していた時に、もう20年近く前になるが、シニア・ゴルフ・トーナメントがピッツバーグで開催され、有名なシニア・プロゴルファーの某氏がピッツバーグに来た。

筆者はその場に居合わせなかったが、ピッツバーグにある日本人経営の唯一の日本食レストランで、彼が取り巻きと食事して、「俺は20万円以下のワインは飲まないんだ」と豪語していたという話を他の駐在員から聞いた。(そのレストランには20万円以上のワインは置いていない。ペンシルベニアはワインは州営のリカーショップでしか買えないので、もともとそんな高いワインは買いたくても州内では買えないのだ)

そういう成金趣味の人が、高いワインほど良いと思って高い金でも買うから、ワインバブルは収まらない。

俳優の内田朝陽君のお父さんで、ソムリエでレストラン経営者の内田さんは、ボルドーの1級シャトーやロマネコンティなどのDRCのワインは高くて、ずっと買っていないと言っていた。

下がってきたとはいえ、本当にワイン好きの人には、ボルドーの超高値の1級シャトーワインは値段に見合う価値はない状態が続いている。

ワインバブルはまだまだ自壊していない。みんなが高い金を出して買わないことで、値段がリーズナブルな水準になってくるのを待つしかないだろう。

そんなことを考えさせられた本である。


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2014年08月02日

ビジネス書の9割はゴーストライター ありうる話だ



通信社勤務のあと、出版社で編集者として働き、38歳でフリージャーナリストとして独立し、自分の著作のほかに年間数冊のゴーストライティングを引き受ける吉田典史(のりふみ)さんの本。

吉田さんは、「震災死」などのルポもののほか、「年収1000万円!稼ぐ「ライター」の仕事術」といった自分の名前での著作のほか、有名経営者や経営コンサルタント、タレントやスポーツ選手などの多くの「著書」をゴーストライターとして書いてきたという。





アメリカではライターズギルドのような書き手の権利を守る協会があり、ライターがちゃんと本に共著者として登場する。

日本では、「構成」や「編集協力」として名前が紹介されればよい方で、まったくライターの名前が本に出てこない場合が多い。また、実際には著者が書いたのではなく、「談」とすべきところを、著者が書いたような体裁の本も多い。


ビジネス書の9割はゴーストライター作?

9割が正しいのかどうかわからないが、特に経営者の書く本など、多くのビジネス書はライターの助けを借りていることは間違いないと思う。

たぶん、いい例が、超多作の中谷彰宏さんだろう。中谷さんは920冊の本を出したという。年間百回前後の講演をこなしながら、そんな数の本を自分で書くのは不可能だ。

中谷さんは元コピーライターだから、自分でも書けるのだろうが、大まかな構成を自分で決め、最初のおきまりの「この本は次の3人のために書きました」を自分で書いて、他は生産性を上げるためにライターを使っているのだと思う。

中谷彰宏という名前で本は売れる。自分ですべて書いたら、20年間で、たぶん100冊前後が限界なのではないか。それよりは、中谷さんの監修のもとにライターに書かせる方が、より多くのテーマについて書くことができるので、読者にとっても悪くないと思う。

有名な著者は、自分でもそれなりに書けるのだろうが、しろうとの経営者とかスポーツ選手に、いきなり本をかけてと言っても無理がある。

本に書いてあることは、1回読めば意味がすんなり分かることが必要である。それを吉田さんは「商業用日本語」と呼んでいる。素人の文章は、「商業用日本語」にはなっていない。そこで出版社が使うのがゴーストライターだ。

ゴーストライティングが一般的になっていることを示すエピソードを紹介している。

吉田さんが編集者だった時、担当していた冊子の巻頭エッセーをサラリーマンもので有名な漫画家(フジ三太郎のサトウサンペイか?)に依頼した。

その漫画家は、「事務所に取材に来て、自分が語った内容を、自分が書いたような記事にして欲しい。他の出版社ではいつもそのスタイルでやっている」と言ったという。吉田さんは、自分で書かないのに、書いたような作品を載せることは、本物の作家や読者に申し訳ないように感じたという。


ゴーストライターを使う理由

出版不況の日本では、そこそこ売れるビジネス書を数多くだすことが出版社が利益を上げる道だ。それも初版でとどまらず、増刷ができる本を出さないと収益は上がらない。

小説家は当然のことながら、自分で小説を書かなければならないし、年間に書ける小説の数は限られる。しかも、売れる小説家はほんの一握りしかいないし、売れる小説家でもすべての作品が売れるわけではない。

このブログで紹介している大沢在昌さんの「売れる作家の全技術」でも、大沢さんは「新宿鮫」がヒットするまで、11年間全く本が売れず、「永久初版作家」と言われていたと語っている。

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
大沢 在昌
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-08-01


しかし、ビジネス書であれば、たとえば会社社長というカテゴリーであれば、日本に会社は420万社以上あるのだから、社長は420万人はいる。会社経営者ということであれば、社長に限定する必要はないし、会社の宣伝のために、本を出したい経営者も多い。

他にコンサルタント、学者、評論家、タレント、スポーツ選手など、著者候補はいくらでもいるし、ゴーストライターをつければ、いくらでも大量生産可能だ。

著者の名前で本は売れる。出版社にとっては、「集客力のある著者」を確保することが何よりも大事なのだ。

そして、「数打てば当たる」戦法で、多くの本を出す。だから、ほとんどの本は初版でとどまり、増刷になる本は2割以下だという。

ゴーストライターを使うもう一つの理由は、出版社の編集者の書く能力が不足しているためだ。

出版社の編集者は年に15〜20本くらいの本を出すのがノルマだ。著者やゴーストライターとの調整で時間を取られ、編集者が自分で書いたり校正したりする力は落ちている。

吉田さんが知っている200人ほどの編集者のうち、朝日新聞社などで15年程度記事を書いてきた中堅記者と対抗できる編集者はほとんどいないという。

就職予備校の就職模擬試験のデータでは、朝日新聞の偏差値が80以上、読売・毎日新聞が75程度、出版社でも難易度が高い講談社や小学館の偏差値が50程度だという。それ以下の出版社は推して知るべしだ。厳然としたヒエラルキーがあるのだ。

編集者が本格的に書いたことがないから、ゴーストライターという仕事が浸透しやすいのだと吉田さんは語る。

ちなみにマスコミの採用試験の過去問は公開されている。ここをクリックして朝日新聞の2014年春の問題を参考までに見て欲しい。なるほど、これはきちんと新聞を読んでいないと難しい。


ゴーストライターのやり方

ゴーストライターは、まず著者に2時間づつ、5回、合計10時間のインタビューをする。そしてその著者のブログや書いたものを読み込んで、インタビューからストーリーをつくりあげて再構成し、1冊の本に仕立てる。200ページ程度の本で、短くて1か月、長くて半年を超えることもあるという。

しかし、なかなかインタビューに10時間とってくれる著者はおらず、ひどいときはインタビュー2時間のみで、本を書かなければならないこともあったという。


ライターもピンキリ

ライターの企画力、取材交渉力、取材力、執筆力、編集力は低い。ライター150人のうち、120〜130人は素人と大差なく、全国紙のキャリア15年くらいの中堅記者に対抗できるのはせいぜい3人くらいだろうと。

それもあって、ライターの年収は低い。吉田さんの場合、多いときは一冊200〜300万円ということもあったが、これは何度も増刷された本の場合で、大半は100万円以下だった。

初版のみで終わる場合は、50万円から70万円というところだ。50万円以下で引き受けたケースはトラブルが多かったので、避けた方が良いという。

一般のライターは年収400万円以下、200〜300万円の人が多く、コンスタントに毎年600万円を10年間にわたって稼げるライターはせいぜい数パーセントだという。到底家族を養うだけ稼げないので、主婦ライターも多いという。

ゴーストライターが読むべき本

この本はところどころにQ&Aを載せていて、その中の一つでゴーストライターについて書いている本を紹介している。1991年に宝島社から発行されたソフトカバーの「ライターの事情」と、1995年にに出版された「ライターになる ー ライター養成実践マニュアル」だ。






どちらも絶版だが、面白そうなのでアマゾンで中古品を買ってみた。後日内容を紹介する。

9割がゴーストライターによるものかどうかわからないが、半分以上はゴーストライターによるものなのだろう。ゴーストライティングを請け負う人が書いたものだけに、赤裸々に実態をあきらかにしている。


出版界の暴露本だから、編集者から協力を得られなかったようで、本の構成はイマイチだが、唯一無二の内容ではある。

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2014年07月24日

Jリーグ再建計画 新旧チェアマンによる継続的改善



2014年1月末にJリーグチェアマンを退任した大東さんと、後任チェアマンの村井さんの本。サッカーライターの秋元大輔さんが構成(ライティング)している。

大東さんがJリーグチェアマンを務めた3年間で、クラブライセンス制の構築、J1昇格プレーオフ導入、ポストシーズン制、J3創設など、様々な改革が推進され、大東さんは2014年シーズンが始まる前にリクルート出身の村井満氏にチェアマンを引き継いだ。まさに継続的改善だ。

大東さんは筆者の会社のラグビー部のチームメートで、一緒にスクラムを組んだ。今でも年に1〜2回は当時のメンバーで集まっている。

4月の大東さんのチェアマン退任慰労会で、大東さんがJリーグの広告代理店を変えたという話をされていたので、筆者は単純に電通の方がスポーツには強いのだなと勘違いしていた(筆者は博報堂との合弁会社に4年半出向していたので、広告業界はある程度知見がある)。

しかし、この本を読むと、電通が博報堂より強いとかいったレベルの問題ではなく、電通と博報堂の力をもってしても、スポンサーが集まらない今のJリーグの窮状がよくわかる。

Jリーグの現状

そもそもJリーグが赤字になりそうなことは、この本を読んで初めて知った。

Jリーグは2015年からのポストシーズン制導入を決定した。2014年のJリーグ収入が最大13億円減収になるという予想が出たことがきっかけとなった。

13億円減収となると、クラブへの分配金を減らさなければならないが、経営体質の弱いクラブにダメージを与える恐れがある。

年間1ステージのホーム&アウェイ方式が理想だが、ポストシーズン制を導入すれば増収につながるという見込みが立ったので、やむなくポストシーズン制を導入したというのが今回の制度改定の背景だ。

スーパーステージ












出典:Jリーグプレスリリース


Jリーグの収益構造

Jリーグの収入は、大体年間120億円で、放映権料(毎年50億円程度)、協賛金(トップパートナー全12枠、約40億円)、入場料30億円という構成だ。

Jリーグのテレビ視聴率と一試合平均の入場者数の推移は次の通りだ。

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出典:本書16ページ

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出典:本書22ページ

視聴率が上がらないとNHK、TBS、スカパーの3社との放映権料交渉も難航する。

協賛金に至っては、Jリーグ発足以来の広告代理店で、ファミリーともいえる博報堂が買い取っていたが、12社のパートナー=広告主を確保できないので、穴埋めのため毎年赤字取引になっていたという。

博報堂が2005年に東証一部に上場されたことから、赤字取引にメスが入り、2011年から電通も加わった。しかし博報堂と電通の力をもってしても、新しいパートナーは日本マクドナルド1社のみに留まっている。

Jリーグチームも赤字のチームがあり、責任企業から補てんを受けられないチームは、時々経営危機が表面化する。

岡田武史元日本代表監督は、今年で22年目を迎えるJリーグについて「最初の10年で選手がプロになり、次の10年で監督がプロになった。最後に残ったのは、経営者のプロ化だ」と語っているそうだ。しかし、言葉では「プロ化」とか言えても、会社経営と同じで、クラブ経営は簡単なものではない。


Jリーグが4大リーグのファーム化?

次の表はJリーグから海外移籍した選手のリストだ。

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出典:本書29ページ

世界のサッカーマーケットは欧州を中心に動いている。実力のある選手はJリーグから4大リーグ(スペイン、イタリア、イギリス、ドイツ)などへ移籍する。4大リーグの放映権料が高騰し、ローカルリーグが4大リーグのファーム化するのは世界で見られる傾向だ。


アジア戦略

アジアでもJリーグチームが勝てなくなっている。

ACL優勝は2007年の浦和レッズ、2008年のガンバ大阪の後は出ていない。最近ではACLで早期敗退するチームが続出している。中国の富裕クラブ(たとえば2013年に柏レイソルに合計8:1で勝った広州恒大は年間予算100億円と言われている)やオイルマネーがバックにあるクラブチームに勝てないのだ。

東南アジア初のJリーガー、ベトナムの英雄レ・コンビンのJ2コンサドーレ札幌加入は、Jリーグの新たな可能性を示した。ベトナムのテレビ局がコンサドーレ札幌の試合を生中継したり、パブリックビューイングも開催された。

レ・コンビンの移籍交渉がまとまらず、在籍はわずか6か月間だったが、アジアにおけるJリーグの認知度を上げ、Jリーグのアジア戦略の重要性を示した効果は大きい。

Jリーグでは、外国人枠3人のほかに、アジア枠が1名あった。2014年からは提携国枠として1名設けて、東南アジア選手の獲得がしやすいように制度変更をしている。


Jリーグチームの活性化策

この本ではJ1チームの活性化策の例として、横浜Fマリノスを紹介している。マリノスは日産を責任企業として持つが、2012年末で16億円の累積赤字を抱えていた。

マリノスの観客数はマリノスのリーグ順位上昇とともに増加し、2012年(4位)から最終節で優勝を逃した2013年には約25%増え、単一試合の62,632人はJリーグ記録を塗り替えた。

マリノスは日産で成功したクロスファンクショナルチームの考え方を導入した。

ホームタウンの横浜市港北地区担当の港北プロジェクトチーム、試合に行ったことのない人をスタジアムに行ってみようという気にさせるプロモーションチーム、試合結果にかかわらず試合に行った人がいい印象を持って帰るようホスピタリティ向上をめざすホスピタリティチームの3つが共同で作業している。

たとえば港北区の25の小学校に毎年トップチームの選手を2名ずつ派遣する活動や、児童全員のマリノスの選手名鑑と試合予定をプリントした下敷きとクリアファイルを配る活動、同じ横浜をベースとする横浜ベイスターズとのタイアップなどの活動を行っている。


J3創設

2014年よりJFLからJリーグ昇格をめざす12チーム(1チームはJ1とJ2のU22選抜)でJ3が誕生した。これでJ1、J2、J3あわせて51チームとなり、36都道府県をカバーすることになった。

J3は小さい予算規模でもまわるように配慮されている。プロ契約選手は3名以上(J2は5名以上)、予算規模は1〜3億円を想定している。

選手としての年俸は無給〜月20万円程度でも、それ以外の仕事をもつことで生計を立てているケースが一般的で、Jリーグ事務局では選手の食と住確保を各J3チームに要望している。

たとえば筆者が住んでいる町田市のチームの町田ゼルビアでは、クラブ社長イーグル建創社長)が建設関係の仕事をしているので、選手を手ごろな物件に安く住まわせ、地元の食堂と提携して1食あたり500円の食費援助を行っているという。

Jリーグでは選手育成のために、全クラブにアカデミー組織の保有を義務付けている。アカデミーからトップチームに昇格できなかった選手の大半は大学に進学し、大学サッカーのレベルアップに貢献している。


2050年までに自国W杯開催・優勝

日本サッカー協会では2050年までに自国でワールドカップを開催し、優勝することを目標に掲げている。Jリーグでは、ACLのタイトルを奪還することが、目標の一つだ。

2013年からJリーグではACLクラブサポートプロジェクトをスタートさせ、日本サッカー協会とともに遠征費や強化費といった費用援助や、日程調整についても協力することを表明している。

過密スケジュールとともに、足枷となっていた「ベストメンバー規定(先発メンバーは直近のリーグ戦5試合の内1試合以上先発出場した選手を6名以上含まなければならない)」も、プロA契約6名以上と緩和された。

選手の平均年俸は現在J1で2,000万円、J2で700万円だ。J2選手の中には年俸300万円程度の選手も多いという。もっと選手の年俸を上げていかないと、将来的にJリーガーを目指す子供が少なくなってしまうかもしれないと両チェアマンは危惧する。


W杯自国開催・優勝というのは、遠い目標だが、それに向けて一歩一歩近づけることはできるはずだ。

筆者は高校2年生まで湘南高校サッカー部に属し(下手なので3年になって辞めた。OB会には属していない)、最初の駐在地アルゼンチンではリーベル・プレートのソシオ(公式サポーター)だった。

プレーヤー歴としては会社に入って始めたラグビーの方が長いが、サッカーに対する愛情も強い。

Jリーグの関心度低下やJリーガーの年棒アップなど、簡単に解決できる問題ではないが、Jリーグの窮状を知り、ファンとして応援することで、Jリーグを盛りたてようという気持ちになった。


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2014年07月14日

あなたの年収は1分で決まる 要領よくまとめる技術



現役フリーアナウンサーの三橋泰介さんの本。

副題は「現役アナウンサーが教える『稼ぐ人』の話し方」となっている。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックしてまずは目次を見て欲しい。目次を読めば、大体の内容がわかると思う。

次の様な構成だ。

第1章 なぜいま「話し方」が求められるのか
第2章 「稼ぐ人」の話し方 3原則
第3章 「稼ぐ人」の話の組み立て方
第4章 「稼ぐ人」の話し方習慣
第5章 「稼ぐ人」のスピーチテクニック

年収が1分で決まるとは、1分程度であなたがどういう人かを判断されてしまうということだ。

エレベータートークの様に、簡潔に自分の考えを30秒〜1分で説明できなければならない。

それができれば「年収が上がる」のだ。

三橋さんは、「稼ぐ人」の話し方には次の3原則があるという。

原則1.本質を捉え、簡潔に伝える「要約力」

原則2.わかりやすく、広く伝える「マス伝達力」

原則3.相手を納得させる「WHYのあるストーリー」


原則1.の要約力の重要性は筆者も100%同感だ。実は、筆者がこのブログを書いている理由も、要約力をつけるためである。

筆者は大学に入学して、教養学部の大森弥(わたる)先生のゼミを取った時に、自分の読解力・要約力のなさを痛感させられた。

たしか「組織のなかの人間」という翻訳もののテキストをつかった社会学のゼミで、2〜3章ごとに学生が手分けして要約を説明するというものだった。




大森教授は後期ゼミでは、社会学における幼児教育の重要性を理解するために、当時は世界的に有名だった「スポック博士の育児書」の英語版をテキストとして導入したので、筆者も読んだ記憶がある。当時読んだ本がプレミアム付きでアマゾンで売られている。



最新版 スポック博士の育児書
ベンジャミン スポック
暮しの手帖社
1997-11



話が脱線したが、「著者は何ページで何々と言っている。」という様な引用をつなぎ合わせた説明しか筆者はできず、自分の言葉で内容を要約できなかった。

ところが、北沢豪みたいな長髪で、麻布だか開成だか出身の学生は、きちっと自分の言葉で要約を説明して、本文の引用はゼロだった。

筆者は大変ショックを受けた。同じ大学1年生とは、とても思えなかった。

それ以降、要約力をつけるべく、読んだ本はあらすじを人に説明できるくらいまで理解するように心がけてきた。あの時の屈辱が、このブログを書く遠因になったともいえる。

今度紹介する中谷彰宏さんの「大学時代しなければならない50のこと」の中でも同様の話が出てくる。



中谷さんの本で、50のことの最初に出てくるのが:

1.「コイツはすごい」という人に出会う。

2.このままではヤバイ、と感じることを体験する。

の2つだ。中谷さんの場合は、早稲田大学に入って文化人類学の西江雅之先生に出会ったのが、これはヤバイと感じたことだという。

原則1.の「要約力」の説明が長くなったが、原則2.の「マス伝達力」というのは、要は誰にでもわかる言葉で話せということだ。また、「WHYのあるストーリー」は、要は論理的な説明をしろということだ。

第3章「稼ぐ人」の話の組み立て方では、「稼ぐ人」の話の組み立て方として、次の9例を紹介している。
1.プレパ法 
2.ホールパート法
3.そもそも法
4.帰納法
5.問題解決法
6.B−ファベ法
7.ギャップストーリー法
8.電気製品法
9.タイムマシン法

プレパ法というのは、一般的にはPREP法と呼ばれ、P=Point(結論), R=Reason(理由), E=Example(具体例), P=Point(結論)という、結論をまず最初に言うやり方だ。三橋さんはこれにA=After that(その後どうなる)を付けて、PREPA法と言っている。

ホールパート法は、まず全体に触れ、それから部分的な説明をするやり方だ。3がキーワードで、最初に「3つのポイントがあります。」とか切りだすやり方だ。

上記9例をすべて知っておく必要はなく、最初のプレパ法とホールパート法さえ覚えておけば足りると思う。

第4章の「稼ぐ人」の話し方習慣、では7例を紹介している。

たとえば、「グチュグチュ法」(このネーミングはなんとかならないのかと感じるが…)として、具体的な事例と抽象概念を組み合わせて説明することで、話の奥行き、説得力が生まれると説明している。

第5章の「稼ぐ人」のスピーチテクニックでは、「一番左後ろの人」を意識しようとか、「Zの視線」と「短い言葉」、アガらないこつなど、アナウンサーとしての経験を基にしたスピーチテクニックを紹介している。

「稼ぐ人」というコンセプトだと、第2章と第3章が役に立つと思う。簡単に読めるので、一度手に取ってパラパラめくってみることをおすすめする。

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2014年07月13日

人は誰でも講師になれる 中谷彰宏さんの本領発揮

人は誰でも講師になれる
中谷 彰宏
日本経済新聞出版社
2012-08-25


著書が約900冊ある多作の中谷彰宏さんの本。

一度会社で中谷さんの講演を聞いたので、その後いくつか中谷さんの本を読んでいる。

中谷さんはいろいろなところで講演をしているので、この本はまさに本領発揮というところだ。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次をみてほしい。

自分が講師をやる場合の様々な注意事項が、次の章立てで説明されている。

1章 講師になる勉強をする10の方法

2章 講師の依頼をされる11の方法

3章 講師を依頼されたらする20のこと

4章 講師を続ける10の方法

5章 自分主催でする18の方法

中谷さんの経験に基づくアドバイスだけに実践的だ。こんなキーワードが全部で71並ぶ。

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出典:本書6〜9ページ

たとえば、35.の「反論に、反論しない。」というのは、まさに経験しないとできない局面打開法だと思う。

中谷さんは、基本的に同じネタは使い回ししないそうだが、この件の対応方法については、別の本にも説明されている。

中谷さんの「大学時代出会わなければならない50人」という本の「そんな考え方もあるのかと吸収することで大きくなる」という節のなかに、「ときどきこんなお手紙をいただきます。『あなたの考えはまちがっている』というのです。…」という文がある。




「あなたの言う通りですね」と答えるのだと。

講演内容を聞かれて、1分で説明できない話に、依頼は来ないという。まさにエレベータートークだ。

テーマは狭く絞り、1分でできる話をベースに、メモを見ずに1時間でも2時間でも話すのだ。

謝礼は自分の基準料金を伝え、最終的には先方の予算に合わせるというような実践的なTIP(秘訣・助言)も参考になる。

筆者も時々、会社でセミナー講師をやることがある。やはり自分で講師をやると大変勉強になる。

中谷さんは「生徒の10倍、毎回勉強して引き分け」という言い方をしている。その通りだと思う。

講師をやる上で大変参考になる本である。

1時間程度で簡単に読めるので、今度自分が講師になるという人には、是非一読をおすすめする。


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2014年06月22日

税務署は見ている。 元国税調査官が語る税務調査の実態

税務署は見ている。 (日経プレミアシリーズ)
飯田 真弓
日本経済新聞出版社
2013-09-10


元大阪国税局管内の税務署で26年間税務調査官として勤務した飯田真弓さんの本。気になるタイトルなので、読んでみた。

プロローグで、「節税対策本ではありません。」と断っている。

節税対策本は、元国税調査官の大村大次郎さんの得意分野だ。筆者も大村さんの本を何冊か読んだことがある。



この本は節税本ではないが、税務調査の時はどこを見ているかとか、都市伝説の「税務調査が入ったら、おみやげを持たさないといけない」とか、「国税OB税理士は税務署に顔がきく」などは本当かなどの点を説明しており、参考になる。

税務調査は自分で事業でもやっていないかぎり、一般のサラリーマンには縁のない分野だ。なので、このあらすじも簡単に紹介しておく。

税務調査の時に見るべきポイントは、帳面ではなく、人柄だと。

飯田さんが最初に税務調査に行ったときに、統括官(課長)は「帳面は逃げへんのや。どんな納税者を調べに行くのが調査や!」と言っていたという。

「マルサの女」のモデルになった斎藤和子さんという国税OBの税理士も、その経営者が不正を働いているかどうかは、目を見ればわかると語っていたという。



「マルサの女」はYouTubeで全編公開されている。



たとえ税理士が同席していても、税理士にすべてを任せてはいけない。

調査官は経営者の人柄を見ているので、経営者より税理士が答える場面が多いと、「税理士に余計なことは話さない様に口止めされているかもしれない」という印象を与えて、かえって良くないという。


試験組税理士と国税OB税理士

以前は一定期間国税の組織に在籍し、在職中に簿記論と財務諸表の比較的簡単な研修を受ければ、「税法免除」となって、定年退職後は税理士として開業できる仕組みになっていた。

しかし平成13年に税理士試験制度がかわり、必須科目の簿記論と財務諸表については、かなりレベルの高い研修を受け、その後試験に合格しないと税理士資格を取得できなくなった。

だから今は、税務著に努めれば、退職後は全員税理士となれるわけではなくなった。

税理士資格は永久ライセンスなので、登録人数的には試験組税理士と国税OB税理士は半々だが、高齢の国税OB税理士もいるので、実際には試験組弁理士が多い。

最も気になるのが「国税OBは税務署に顔がきくのか」という点だが、昔はともかく、今はコネによってどうこうなる時代ではない。


「税務調査が入ったら、おみやげを持たさないといけない」のか

もう一つ気になるのが、いわゆる「おみやげ」だ。税務署員は手ぶらで帰るわけにはいかないので、何か見つかるまで調査する。調査を切り上げてもらうために、適当なところで妥協する必要はないと飯田さんは語る。

むしろ申告に絶対自信があれば、「修正申告に応じない」と主張するのが理にかなった行動なのだと。

申告是認(「申是」と呼ぶ)を勝ち取ると、次からは税務署は訪問しにくくなるのだ。

ところがおみやげを用意して、毎回修正申告に応じている会社は、税務署にとっては、「訪問しやすい会社」ということになる。

税務調査の対象となるのは、法人で5%、個人で0.8%だという。

飯田さんは、グレーな部分をおみやげとして残すのではなく、すべてガラス張りの経営をすれば、95%の会社になり、税務調査で煩わされることはなくなると語る。


税務調査ではどこまで調べるのか

この本では、飯田さんが実際に税務調査で調べたやり方が紹介されている。たとえば、現金商売の事業者では、車のダッシュボードの中にあった領収書の控えを見つけ出して、売り上げを過少計上していることがわかった。

飲食店などでは、テーブルごとの伝票、レジペーパーのロール、売上帳、現金を入金している金融機関の通帳をチェックする、さらにレジペーパーは、打ち直ししていないかどうか、レジペーパーの切れ目をつないでみるという。

そのほかにも税務署員が使う業界用語などが参考になる。税務調査が入りそうな会社は、一度読んでおくとよいと思う。


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2014年06月08日

イッシューからはじめよ 問題解決のハンドブック



元マッキンゼーで、脳神経学の博士号を持つ安宅和人さんの本。

安宅さんは現在はYahoo!のCOO室長、CSO(Chief Security Officer)として活躍している。安宅さんのツイッターのアカウントもある。

問題解決では、以前元BCGの内田さんの「仮説思考」を紹介した

仮説思考 BCG流 問題発見・解決の発想法
内田 和成
東洋経済新報社
2006-03-31


「仮説思考」は筆者が読んでから買った数少ない本の一つで、大変参考になった。

「仮説思考」と同様に、この本も大変参考になる。

ほぼ日で糸井重里さんと安宅和人さんの対談が紹介されている。糸井さんはこの本を読んで、「一人ひとりが読み、チームで共有したい本」だと感じたという。

新刊.jpというサイトに、この本に関する安宅さんへのインタビューが載っており、この本のエッセンスが簡潔に紹介されているので、参考にしてほしい。

最初に、この本の主張が次のように整理されている。

★「問題を解く」より「問題を見極める」

★「解の質を上げる」より「イシューの質を上げる」

★「知れば知るほど知識が湧く」より「知り過ぎるとバカになる」

★「一つひとつを速くやる」より「やることを削る」

★「数字のケタ数にこだわる」より「答えがだせるかにこだわる」


「犬の道」には踏み込むな

バリューのある仕事とは、安宅さんの定義だと、イシュー度が高く、解の質も高い仕事だという。

バリューのある仕事をやるためには、「根性」で一心不乱に大量の仕事をしてはいけない。それを安宅さんは「犬の道」と呼んでいる。

問題かもしれないという問題が100あるとしたら、そのうち2つか3つが本当に白黒つけるべき問題なのだと。理系の研究者の研究テーマは、このような考えで絞り込むのではないかと思う。

直観でこれが解決につながりそうだとか目星をつけてはいけない。じっくり考えて、なにが問題解決につながるイシューなのかを見極める。

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出典:本書32ページ

このようなアプローチをとれる人と取れない人では、一週間の仕事の進め方に次のような差がでる。

犬の道の人

月曜 やり方がわからずに途方にくれる
火曜 まだ途方にくれている
水曜 ひとまず役立ちそうな情報・資料をかき集める
木曜 引き続きかき集める
金曜 山のような資料に埋もれ、再び途方にくれる

イシューからはじめる人

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出典:本書34ページ


もっと前にこの本を知っていれば…

この本には上記の全体図のように図が多く使われ、コンサルなどの専門家でなくとも、わかりやすくイシュードリブンの問題解決法が理解できるようになっている。

またイシュードリブン、仮説ドリブンなどのステップではさらにいろいろな図が使われている。

たとえば、イシューを見極めるコツとして、1.一次情報に触れる、2.基本情報をスキャンする、3.集め過ぎない・知り過ぎないの3つが紹介されているが、次が2.の基本情報をスキャンする場合の図だ。

真ん中の四角で囲んだ部分がマイケル・ポーターの「ファイブ・フォース」であり、それに6.技術・イノベーション、7.法制・規則を加えたFAW(Forces at Work)である。

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出典:本書82ページ

惜しむらくは、事例があまり少なく、具体的でないことだが、現在会社に勤めていたり、研究に携わっている人は、経営者でなくても、自分の業務に当てはめて応用してみるとよいだろう。

たとえば、次の図は、イシューを分解するうえで、意味のある分解と意味のない分解を図示したものだ。これがMECEだと言われれば、納得できるだろう。

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出典:本書109ページ

筆者も2002年から2007年まで、子会社のネット企業を代表取締役副社長として経営していたことがある。今思えば、業界の全体図、伸びる分野、自社の占めるポジション、SWOTなどのビッグピクチャーをよく理解せずに、ただ日々の問題を解決するのに手いっぱいという感じで経営していた。全く汗顔の至りだ。

もっと前にこの本を知っていれば…と思う。

筆者の読んだものは、第10版で、本の帯には8万部突破と書いてある。

アマゾンの売り上げランキングでも全体の1,210位で、このブログで紹介した内田さんの「仮説思考」が1,718位、必読書「ロジカル・シンキング」が668位、バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」は1,464位だ。






つまり、これらの名著と同じくらい売れているということだ。

ハンドブックとしても役に立つ。この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次に続く、コンテンツをパラパラめくってほしい。

仕事の役に立ちそうなことがわかると思う。


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2014年05月07日

電力と震災 原発はどこでも同じ、ではない 東北電力の地道な地震対策



日経出身で、2004年に独立し、「東電国有化の罠」とか、「JAL再建の真実」など、企業ものを中心に書いている経済ジャーナリスト・町田徹さんの本。

表紙の写真は白洲次郎が東北電力会長の時に、只見川水系のダム建設現場を視察した時の写真だ。

東電国有化の罠 (ちくま新書)
町田 徹
筑摩書房
2012-06-05


只見川水系の開発における白洲次郎の活躍については、北康利さんの「白洲次郎ー占領を背負った男」のあらすじの「続きを読む」に詳しく紹介しているので、参照願いたい。



この本では、東北電力の初代社長の内ヶ贇五郎(うんごろう)や、初代会長の白洲次郎のエピソードについても紹介しており、興味深い。

白洲次郎は、会長室を東北電力の本社ではなく、東京支社に置かせて、水力発電所やダムの建設など政府の開発計画ににらみを利かせていたという。東北電力が建設現場用ランドローバー200台、ヘリコプター、マイクロ波通信などを導入したのも、白洲次郎のアイデアだという。

YouTubeで筆者の町田徹さんが、本の内容を紹介している音声が載っている。



電力会社は、攻撃しようと思えば、いくらでも攻撃できると思う。たとえば料金値上げや、無駄な出費などだ。ところが、この本では東北電力の悪い点はほとんど書いていない。

東北人のイメージのように、冒頓(ぼくとつ)で真面目、しっかりしているという印象を受ける。

東日本大震災では、震源地に最も近かった東北電力の女川原子力発電所は冷温停止に成功し、東電福島第一原発ではメルトダウン事故となった。今もなお周辺は立ち入り禁止区域となっている。

女川原発が海抜15メートルという高台に立地していたことが最大の要因だが、それ以外にも高い防潮堤と引き波対策のためのブロック、事務本館の耐震補強と通信網等、様々な東北電力の地震・津波対策が功を奏して、福島と女川の差になったことがよくわかる。女川原発では、震災後PRセンターに避難してきた被災者40名を原発敷地内に収容することまでやっている。被災者を多数だした福島第一とは、えらい違いだ。

女川原発のこのような地震への備えは、宮城県出身で、三陸津波の恐ろしさを熟知していた平井弥之助という技術者出身の東北電力副社長が、平安時代に起こった貞観津波クラスの巨大津波に耐える必要があると力説していたからだという。

女川原発は無事だったが、女川原発で働いていた技術者の家族が住んでいた女川町既婚者住宅(4階建て)は津波にのまれ、16名の妻子が命を失った。いまだに5名が行方不明ということも、この本では書いている。

ちなみに、3月11日に首相官邸から東北電力の福島支店に問い合わせがあり、東北電力では急遽、電源車を4台手配して、東電の福島第一原発に当日の夜11時までに到着させた。しかし、これらの電源車は、がれきで原発にたどり着けず、やむなくその場に放棄せざるを得なかったという。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応している。今のところ、飛び飛びではあるが、かなりのページが「なか見!検索」で読める。

全部読むのも疲れるので、まずはここをクリックして目次を見て、ついでに中身もざっと見てほしい。

300ページ余りの本だが、一気に読める。

いくつか参考になった点を紹介しておく。

まずは東北電力の規模だ。

次が2013年3月末時点での各電力会社の契約件数である。

東京電力 : 2,888万件
関西電力 : 1、357万件
中部電力 : 1,052万件
九州電力 :   863万件
東北電力 :   767万件
中国電力 :   522万件
北海道電力:   401万件
四国電力 :   287万件
北陸電力 :   210万件
沖縄電力 :    86万件

東北電力は東電のほぼ1/4の規模である。

この本では震災の時に、東北電力社長以下の面々が、それぞれの部署で、どのように緊急対応したかが紹介されている。

たとえば、東北電力の海輪社長は地震当日名古屋に出張中だったが、急遽取りやめ引き返した。仙台空港が閉鎖されていたので、名古屋から飛行機で新潟に戻り、陸路仙台を目指した。

原町石炭火力発電所では、18メートルの津波で大型船が陸に打ち上げられ、クレーンも4基のうち、3基が横倒しになった。しかし、職員は高さ38メートルのタービン建屋の屋上に避難して無事だった。唯一、消防車の誘導の為に残っていた総務課副長が津波にのまれて殉職した。

東北電力の電力ミックスは次の通りだ。火力が一番大きい。東北電力は戦前の電力大合同前は、221社の中小電力会社の集合体だったせいか、水力発電所が多い。

火力 : 17発電所 1,253万KW(東新潟ーLNG, 秋田ー石油、新仙台ー重油、原町ー石炭等)
原子力:  2発電所   327万KW(女川、東通)
水力 : 227発電所  254万KW

東北電力の釜石営業所、石巻営業所、石巻技術センターなどの職員の奮闘も紹介している。

新潟支店では、中越地震、中越沖地震の時に助けてもらったので、今度は自分たちが助ける番と、地震発生から44分後の午後3時30分に第一陣375名が被災地に向け出発している。地震発生後48時間以内に、700名を復旧支援部隊として派遣した。

新潟支店は地震後1年の間に、93回にわたり復旧支援部隊を送り出し、その数は延べ4万6千名に上る。当時の新潟支店長だった矢萩さんは、山形県の国立鶴岡工業高専卒のたたき上げで、現在はお客様本部長として副社長に昇進している。

東北電力は、地震発生後は停電を早急に解消し、火力発電所を順次復旧させて電力供給力回復をはかった。復旧のためには金には糸目をつけないということで、すでに納入先が決まっていたガスタービンを、採算を度外視して世界中から買い集め、計画停電を回避した努力が紹介されている。

東北電力の原町火力発電所の事務本館ビルには、表面がはげ落ちて無残な姿となったタービン軸受が展示されているという。地震に対する準備を常に怠らない様にとの戒めからだ。

最後に町田さんは、新潟県の泉田知事と話した時に、泉田知事が柏崎刈羽原発の早期再稼働を認めてもよい唯一のシナリオは、「東京電力から東北電力が原発を買い取って、東北電力が運転する」ことだと語っていたことを紹介している。

この話は、にわかには信じられないが、東電と東北電力に対する泉田知事のとらえ方の違いは、たしかに両社の体質の違いを物語っているのかもしれない。

筆者の通っている財団があるビルには原子力規制庁が入っており、今でも毎週金曜日夜になると、原発反対派が10名前後集まってくる。

この原発反対派の人たちのように「原発はどこでも同じ」と考えている人は聞く耳を持たないかもしれないが、女川原発と東通原発の両方を現地取材してきた町田さんの報告は、原発問題を考える上で考慮に値する。


東北電力を持ち上げすぎという印象もあるが、「電力会社はどこも同じ」ではないことがわかる。読みやすく、参考になる本である。


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2014年05月03日

統計学が最強の学問である あたまにスッと入らない統計学のすすめ



家内が図書館から借りていたので読んでみた。

町田の図書館でも10冊蔵書があり、80人が予約していて、なかなか人気のある本だ。まさに、本はタイトルで売れるという好例だろう。

同じ著者・西内啓さんの、「1億人のための統計解析」の読んだ。こちらは、「統計学が最強の学問である」に輪をかけて理解できなかった。

エクセルを使うと相当高度な分析までできることはわかったが、ケースもあまり興味を惹くものではない。実際にエクセルを立ち上げて、試してみればまた違うのかもしれないが、そこまで興味が持てなかった。

ちなみに、ケースは1.和食レストランの夜の売り上げを増やす、2.事務機器販売の販売戦略を立てる、3.情シスの手助けなしで、ECサイトの顧客行動を分析する、4.画像処理機器の過去5年のデータを元に販売予測を立てる、というものだ。



さて、この「統計学が最強の学問である」という本だが、はっきり言って「統計学のすすめ」であって、「入門書」ではない。

しろうと向けに書かれた本にしては、難しすぎる。あたまにスッと入らないし、この本を読んでも単語の意味すらわからない。

たとえば、この本でよく出てくる「カイ(χ=ギリシャ文字)二乗(じじょう)検定」と「p値」だが、言葉の説明すらない。その部分を引用すると(本書83ページ)、

「こうしたクロス集計表(ある企業のA/Bテストの結果が前に出てくる)について『意味のある偏り(かたより)』なのか、それとも『誤差でもこれぐらいの差は生じるのか』といったことを確かめる解析手法に『カイ二乗検定』というものがある。…」

というぐあいに、結局「カイ二乗検定」というものが何なのか、わからずじまいだ。

同様に、この本で頻出する「p値」だが(本書84ページ)、

「この『実際には何の差もないのに誤差や偶然によって、たまたまデータのような差(正確にはそれ以上に極端な差を含む)が生じる確率』のことを統計学の専門用語で「p値」という。

このp値が小さければ(慣例的には5%以下)、それに基づいて科学者たちば、『この結果は偶然得られたとは考えにくい』と判断する。」

この「カイ二乗分析」や「p値」といった消化不良の専門用語が、この本のところどころに出てくるので、フラストレーションが溜まる。

目的がいわゆるビッグデータに興味がある人なら、以前このブログで紹介したトーマス・ダベンポートさんの「分析力を武器とする企業」が世界的ベストセラーで、具体例を満載しているので、こちらの方が良いと思う。

分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社
2008-07-24


ちなみにダベンポートさんの本では、この本にも取り上げられている「オムツを買う人は、ビールも一緒に買う」という事例のルーツを調べた結果、それは都市伝説であろうと結論づけている。

ともあれ、参考になる点をいくつか紹介しておく。

★あみだくじ必勝法
あみだくじにも当たる確率がある。この本で紹介されている8本の縦線、4本の横線のあみだくじの場合、4番目の線の当たる確率が21%で、一番右の8番目の線は3.3%だという。

★ダイレクトメールで売上を上げる方法
西内さんがかかわった案件で、いままで漫然と送っていたダイレクトメールを、「どういった顧客には送り、どういった顧客には送らないか」を最適化することで、同じコストで、売上を6%上げる「ズル」ができたという。

DMによるマーケティングの高度化に興味がある人には、まずはこのブログの詳細なあらすじを読んでから、「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」を読むことをおすすめする。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略
C. ハンビィ
海文堂出版
2007-09


★サンプリングが情報コストを激減させる
分析対象のデータをすべて分析対象とする実務上の必要はない。「標準偏差」という考えが80年以上前に統計学で生まれた。

たとえば失業率が6%、標準偏差が0.5%だったとしたら、失業率が6%+/ー1%の5〜7%に収まっている確率は95%だということだ。

ある一定数のサンプル数があれば、それ以上増やしても、標準偏差の差は小さい。たとえば10万人の顧客のデータを調べる時、8,000名まで調べれば、標準偏差は1%となり、実務上はかなり正確なデータとなる。

ちなみに、前述のTESCOは、以前は全英のスーパーマーケットの売上POSデータの5%を分析対象としていた。競合のSainsburyは100%分析しているので、現在はもっと精度を上げてきているかもしれない。

★世間にあふれる因果関係を考えない統計解析
この説明も参考になる。たとえば、ある商品の購入者にその商品の広告を見たかと聞くと、5割近くが見た・たぶん見たと回答したとする。これで単純にキャンペーンの効果があったと結論づけることはできない。

非購入者にも、その商品の広告を見たかと聞くと、非購入者の方が広告を見たという結果が出ることがあるからだ。

「広告を認知していたから商品を購入した」のか、「商品を購入したから広告をその後も認知していた」のかがわからないのだ。これが「因果関係の向き」だ。

★「ランダム化」は最強の武器
現代統計学の父として、この本で紹介されているロナルド・フィッシャーは、ミルクティーは牛乳を先に入れるか、紅茶を先に淹れるかで議論になったときに、それぞれの淹れ方のカップを10個用意して、ランダムに置き、婦人にテストさせた。1920年代末のことだ。

これがランダム化比較実験の最初だという。その他にもフィッシャーは、農地を40に分割して、ランダムに20カ所選んで、肥料Aと肥料Bをテストするといったランダム化実験を行っている。

ちなみに婦人は正確に違いを言い当てたという。その後2003年に英国王立化学協会は、牛乳は75度を超えると変質するので、牛乳は紅茶の前に注がれるべきだと発表しているという。

なるほど、だから低温殺菌牛乳は65度とか75度とかで加熱殺菌しているので、味が変わらないのだろう。



もっとも、日本の普通の牛乳の場合は135度で数秒殺菌しているので、日本の牛乳でミルクティーを作れば、どちらが先でも味は変わらないかもしれない。

★「ミシンを2台買ったら1割引き」で売上は上がるのか?

アメリカで成功したキャンペーンの事例だ。このキャンペーンにより、顧客はわざわざ友人や隣人を誘って、共同購入を呼び掛けた。つまり、優秀なセールススタッフを雇い入れるのと同じ効果があったのだ。

ミシンを2台も買う人はいないので、不発に終わったキャンペーンでは?という第一印象だったが、なるほどと思う。こんな考え方もあったのだ。

この本の後半はかなり専門的な説明で、回帰分析一般化線形モデル重回帰分析ロジスティック回帰、テキストマイニングの「形態素解析」、ベイズ派と頻度論派の確率をめぐる対立、といった話題が紹介されている。

筆者が大学の教養課程で受けた統計学の授業の教官は、たしか村上さんだったと思う。てっきり、村上陽一郎教授だとばかり思っていたが、村上正康教授かもしれない。村上正康教授は、「統計学演習」という本を出している。

統計学演習
村上 正康
培風館
1989-01



チャレンジしてみたい人にはいいかもしれないが、統計学の入門書としては、ちょっと難しいので、統計学のすすめとして読むのが良いと思う。


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2014年04月30日

東大教授 大学法人化で東大教授もずいぶん変わった

東大教授 (新潮新書)
沖 大幹
新潮社
2014-03-15


地球上の水を扱う科学=水文学(すいもんがく)者の沖大幹東大教授の本。沖教授は専門の水文学では、「水危機、ほんとうの話」などの本を書いている。



沖教授は今年50歳。新進気鋭の教授だ。毎年のスケジュールは、大体年初に決まってしまうという売れっ子教授でもある。

そんな沖教授が、この本を書いた理由は、1.東大で学問に取り組む際の様々な知恵や心構えを後進に伝えたかったこと、2.優秀な若者が東大教授を目指さない(東大経由で海外の大学で奉職する)のは、長期的に悪影響が大きいという危機感、3.東大教授への信頼感の欠如に発奮、なのだという。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次を紹介しておく(節のタイトルは重要なものだけ選んだ)。目次からもだいたいの内容が推測できると思う。後進へのアドバイスが満載なことがわかると思う。

まえがき
・死ぬまでの暇つぶしのために
・自由と名誉と資産がほしいなら
・東京大学教授道

第1章 東京大学教授解体新書
・大学教授の定義
・年齢構成は?
・なぜ「総長」なのか
・旧制第一高等学校とは?
・東京大学名誉教授の条件
・給与について
・平均的キャリアは?
・給与は増やせるのか?
・勤務時間は?
・勤務はどう評価されるのか
・車、個室、秘書など待遇は?
・企業としての東大
・安定した自由業

第2章 どうすればなれるのか
・世界一になるのは簡単
・「東大卒」は必須条件か?
・東大入学への道
・「最難関」入試の考察
・進学の振り分けは?
・専門分野の選び方
・研究室と指導教員の選択
・地球の水循環と世界の水資源
・若者、ばか者、よそ者
・研究はスポーツ的か、芸術的か
・動物的研究と植物的研究
・論文書きの論文読み
・博士課程へ進むべきか
・「論文博士」とは?
・東大教授になるチャンス

第3章 社会的役割と権威
・日本を代表するには?
・国の審議会に参加したら
・政府の委員会での立ちふるまい
・英語で講演するために
・海外出張は魅力的か
・テレビ出演の注意
・新聞や雑誌との付き合い方
・政策立案支援と研究審査
・論文執筆こそ命
・有名学術誌から原稿を依頼されたら
・書籍の執筆法
・一般向けの講演も刺激的
・講演料はいくらか?
・東大教授の役得

第4章 醍醐味と作法
・講義こそ自己啓発の源
・弱小チームでも勝つには
・明日やろうは馬鹿野郎
・ゼミは英語で
・留学生の真実
・外国人教員の損得
・東大と国家百年の計
・次世代を育てるには
・教科書を書き換える研究
・伯楽への道

第5章 知的生産現場のマネジメント
・学内組織を円滑に運営するには
・学内会議のしきたり
・雑用を考察する
・東大の予算とは?
・業務マネジメント
・東大教授ほど素敵な商売はない

第6章 おわりに
・本書執筆の3つの理由
・究極の目的は何か
・知の統合のために

いくつか参考になった点を紹介しておく。


生まれ変わっても東大教授となりたい

沖教授は、生まれ変わっても東大教授として働けたらいいなと思う」という。東大教授になったら、自由、名誉、資産、いずれも努力が報われる程度には、バランスよく得られるのだと。

東大には3,900人の教員がいて、そのうち1,300人が教授だ。また、別枠で特任教授や特任研究員などの2,000人ほどの特定有期雇用教員がいる。職員は、事務系職員が1,500人、技術系職員が800人、医療系職員が1,800人いる。

東大教授の平均年齢は55.4歳で、東大教授に占める女性の割合は5%だ。准教授の平均年齢は45.6歳、助教は40.1歳だ。

ちなみに東大の財務報告を中心とした「事業報告書」と、より大学の実態を説明した「業務の実績に関する報告書」がネットで公開されているので、興味のある人は参照してほしい。


東大教授の給与

東大教授の平均年間給与は1,123万円、准教授で900万円、助手で730万円となっている。50歳前後で教授となって、年収は1,000万円程度、定年の65歳で1,200万円というのが平均的キャリアだ。医師免許を持っている場合は、大学外で医師になった場合の給与格差補てん(最大35年間の「初任給調整手当」)があるので、医学系の給与は、それ以外より高いという。

教授に昇格してからは、普通は出世もなく肩書きも変わらず、給与もあまり増えないが、減りはしない。成果が上がっても、上がらなくても、世間に認められようが、認められまいが、大学内ではほぼ同じように遇される。

沖教授は、この平等主義が東大の学問の自由を支えていると語る。つまり、結果が出るかどうか確信が持てずとも、学問的に重要だと信じる新しい研究に挑戦できるのだと。究極的には人類社会のためになるという信念があれば、研究に打ち込めるのだ。

給与を増やそうと思えば、管理職を目指すことになる。総長は倍、理事は6割増しの給与となるし、各組織の長でも理事並みの手当てがつく。しかし理事でない副学長の場合は、多少の上積みはあるが、普通の教授と大差ない。

ちなみに、政府の審議会の委員になった場合の謝礼は2時間の会議で2万円前後だという。


東大の学長を総長と呼ぶ理由

東大の学長を「総長」と呼ぶのは、東大の成り立ちが東京開成学校(法学部、理学部、文学部)と東京医学校(医学部)、工部大学校、予備門(東京英語学校)が一緒となったものだからで、それらを束ねる役職として「総長」が東京帝国大学に置かれた。東大の総長は、総長選考会議で選考される決まりになっているが、実際には、全学の講師以上の教員による投票によって決まるという内規になっている。

沖さんは東大の土木工学科(現在は社会基盤学科)の出身で、同窓会名簿には理学部工学科の卒業生と、工部大学校の卒業生の両方の名前が記されているという。

沖さんの水文学研究

水文学(すいもんがく)とはあまり聞きなれない言葉だが、沖さんたちは、貯水池操作や灌漑取水などの人間活動を含んだグローバルな水循環シミュレーションや、食料の輸入によって水不足地域の水需給がどの程度緩和されるかを見積もるバーチャルウォーター貿易研究、世界の水問題の実態把握、社会変化・気候変動に伴う水需給の変化などを研究しているという。

また、沖教授は、IPCCのウォーターフットプリントに関する作業部会に日本からの専門家として参加している。会議に出席するための旅費は日本政府が出してくれるが、謝礼はなく、経費節減でエコノミークラスにされる場合もあり、キツイという。

ちなみに東大の社会基盤学(土木工学)専攻では、書類選考のみで入学許可が出され、奨学金も受けられるという留学生特別コースを1982年から設けていたので、いまでは600名を超す留学生が卒業している。

東大が平成24年のQS World University Ranking のCivil Engineering分野でMITに次ぎ第2位になったのも、留学生コースの卒業生が活躍してくれているおかげだと。 (ちなみに2014年版では第4位となっている)。 


学問に対する態度

学問に対する態度としては、「論文書きの論文読み」として、何が学術的に高く評価されるのかを知るためにも、文献を地道に読みこなることが必要だと沖教授は語る。

音楽家が音楽をよく聴き、画家が絵を頻繁に鑑賞し、作家が本を濫読するのと同じだと。従来の枠組みを超えるためには、従来の枠組みがどうなっているのかを知っておく必要がある。

また、次の様な話も紹介している。

竜巻の大きさを示すFスケールに名前を残す、シカゴ大学名誉教授の故・藤田哲也教授は、大分県の「青の洞門」の話を小学生の時に聞いたときに、次のように思ったという。

「20年(伝承では30年)かけて穴を掘った人は本当に立派な人だと思いましたが、自分だったらそんな努力はしないで、まず最初の10年で穴を掘る機械を発明し、その後2倍のスピードで穴を掘る方が有効だと思いました。つまり、後に「穴」と「機械」が残りますので。研究でも同じで、仕事を始める前に「道具」をつくっています。そうすれば研究結果と「道具」の2つが残ります」。


以前は小講座制、現在は大講座制

以前は小講座制と呼ばれる伝統的な仕組みで、ある教授が辞めた後、その教授職にだれを据えるかは、辞めていく教授の意志を尊重していた。いわば徒弟制度のように、小講座制の人事には総長といえども選考に意見するのは難しかったという。

この反省で、現在は大講座制となっており、ある特定分野の教授を必ず置くというわけではなく、学問や組織の状況を考慮しつつ、大講座部門の教授の合議制で次に採用する教授の専門分野や候補者を決めるという。

国立大学法人は私立大学のように組織を経営する理事会と、教育研究を所管する教授会とが完全に切り分けられていないので、たとえば予算配分から人事制度、はては防災規則や、駐車場の配置、自転車置き場の通則まで、教員から成る委員会で議論する。

東大の「文化」として、「自分に悪影響が及ばない限りにおいて同僚の足は引っ張らず、やりたいようにやってもらうが、かといって特段の協力もしない」傾向があるという。

東大では2012年に「東京大学ファカルティ・ハンドブック2012(試行版)」という教員業務に関するマニュアルをつくっている。その内容は、この本にも一部紹介されているが、マニュアルなので本当のノウハウなどは含まれていない。この本では、そのノウハウ的な部分も紹介しており、現役の研究者には大変参考になると思う。


沖教授は理系の先生ではあるが、文才があり、文章は読みやすい。筆者も東大教授の先輩・後輩が数名いるが、こういう実務的なことを聞いたことはなく、参考になった。

現役の研究者の役にも立ち、東大教授についての一般知識を得るにも最適な本である。


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2014年02月02日

日本電産永守重信、世界一への方程式



パソコン向けハードディスク市場の急激な縮小から、2013年3月期には純利益が前年同期比80%も減少したにもかかわらず、2013年に文字通りV字回復を示した日本電産・創業社長の永守重信さんの経営手腕を紹介した本。

永守さんと長い付き合いがあるという日経ビジネス編集委員の田村賢司さんが書いている。永守さんは、2012年第4四半期に254億円という営業赤字を計上して、2013年の業績急回復の布石を打った。「残尿感なし。絞りきった!」と言っていたという。

文字通りV字回復を実現したのはさすがだ

このブログで紹介した「人を動かす人になれ」などの永守さん自身の本に比べて、迫力はないが、日本電産の戦略を紹介していて大変参考になる。


大前研一さんなどが絶賛する日本電産の永守さんに注目したのは、「人を動かす人になれ」のあらすじでも書いた通り、筆者のアルゼンチン駐在時代の友人が銀行を辞めて、日本電産に転職しているからだ。

1998年発刊の「人を動かす人になれ」では”365日フル回転”と永守さんは書いていたが、最近は元旦だけは休むらしい。それでも、事実上フル稼働であることに変わりはない。

1984年からここ30年間の売上高と営業利益の推移は次の通りだ。

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出典:本書17ページ

なかなかここまでは仕事漬けにはなれない。すごい経営者である。

この本では37社の企業を買収して、急速に業容を拡大した日本電産が、最初はハードディスク駆動用の精密モーター関連分野に集中、そして次は車載用・家電用・産業用モーターなどの異業種向け多角化と、2段ロケットで、さらなる成長を遂げた姿を紹介している。

過去10年の業績推移の中ほどで紹介されている商品グループ別売上高推移を見ると、車載用・家電用・産業用モーターの売り上げが、精密モーターと肩を並べるくらいまで成長してきていることがわかると思う。

XPパソコンを買い替えた記事で書いた様に、パソコン向けハードディスクはどんどん駆動部がないSSDに変わっている。ノートPCでは特に顕著だ。

コストの問題から、サーバやデスクトップPC向けは当分ハードディスクで変わらないだろうし、大容量のハードディスクをバックアップ用の外付けとして使用する用途はなくならない。

だから、ハードディスクがなくなることは近い将来ないだろうが、それでも精密モーターの最大市場だったハードディスクや、ブルーレイなどのメディア向けディスクドライブの市場は、大きな成長は見込めない。

そんな状況を見越したM&Aは、タイムリーで優れた企業戦略だ。

この本では、モーターの技術的な側面も紹介していて面白い。たとえば日本電産の得意なのはブラシレスモーターである。

最近も教えているかどうかわからないが、筆者が中学の時に工作でつくったようなモーターはブラシ付モーターだ。

ブラシレスモーター















出典:東芝ホームページ

ブラシレスは回転部分に接するブラシがないため、ブラシ部分の摩耗がなく、メインテナンスフリーで、高速回転が可能、騒音も少ないというメリットがある。家電や自動車などのモーターに静穏化が求められる傾向のなかで、売り上げを伸ばしているのがブラシレスモーターだ。

精密モーター分野では、軸受をボールベアリングからオイルで満たすFDB(Fluid Dynamic Bearing)に変えて、より一層の高速化を実現した。

これが日本電産がハードディスク用モーターで市場シェア80%を勝ち取った一つの要因になった。

ball bearing














出典:日本電産ホームページ

FDBモーター

















出典:日本電産ホームページ

買収した37社(2014年に入って1社買収したので、現在は38社)の、時系列的なリストは次の通りだ。
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出典:本書111ページ

地域と製品をマトリクス表にすると見事に日本電産の世界戦略が見えてくる。

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出典:本書130ページ

日本電産は、買収した会社の経営陣にそのまま経営を担当させる。日本電産から送り込む役員はせいぜい数名だ。永守さん自身が会長として毎週行くこともある。

買収された会社はそれなりの理由があって、赤字だったために、買収されたわけだが、それを永守流のKプロ(経費節減)、Mプロ(「まけてよ」の意味、購買コスト削減)、意識改革で大体1年で黒字転換する。

その方程式の例が紹介されている。(日本電産セイミツグループの健全企業経営の指針)

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出典:本書55ページ

この実現のために、世界各地の日本電産グループの会社には、永守さんをキャラクター化した次のようなポスターが貼ってあるという。スローガンは日本語、英語、中国語で書かれている。

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出典:本書162ページ

この本の最後に、「奇人変人の創業者とどう向き合えばよいのか」という永守さんが、一部の経営幹部に送ったメールが紹介されている。

強烈な個性を持った経営者だけに、転職組で、永守流に合わずに辞めていく人もいる。

永守さんは、途中入社の幹部に対しても、どこまで永守さんの叱責に耐えられるかを見極めて、「これなら簡単に敵前逃亡しない人物だから信用できる」と判断して責任ある地位に登用してきたという。いわばストレステストに合格することで、信頼関係が構築できたと判断するやり方なのだと。

役員の中では、長年の同士ともいえるプロパー生え抜き役員の他に、買収した会社の経営者、自動車部品のカルソニック・カンセイ前社長、三菱自動車で電気自動車を育成した役員、三菱電機から外資系を経たCFOなど、多用な人材がいる。

著者の田村さんは、創業から20年は「超ワンマン」の時代、M&Aが本格化した1990年代からは「みこし型ワンマン」の時代、2010年から海外M&Aが増え、「分権型ワンマン」の時代と呼ぶ。

強い思いは変わらない「変わらぬ永守」と、経営者としてのあり方を自ら変えていく「変わる永守」がいるのだと締めくくっている。

200ページ余りの本だが、平易で簡単に読める。日本電産の戦略と永守さんの考えがよくわかる優れた本である。


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2013年12月16日

トコトンやさしい天然ガスの本 基礎知識を得るのに最適の本



図書館の新刊書コーナーに置いてあったので読んでみた。2013年9月25日に出たばかりの本だ。

近年「シェールガス革命」と言われている。世界最大の天然ガス消費国の米国は、5年ほど前は、いずれ天然ガス輸入国になるとみられて、液化天然ガスを輸入するターミナル建設のプロジェクトまであったほどだ。

ところが、水平掘削技術と水圧破砕技術の発達により、シェール(頁岩=けつがん。ページのように薄く割れる性質を持つ堆積岩)層からのシェールガス開発が可能になってくると、事態は一変した。

普通の天然ガスとシェールガスの賦存状況の違いは次の図がわかりやすい。

GasDepositDiagram



















出典:Wikipedia

ガスが岩盤に貯まったところに、上から垂直にパイプを下して掘削するのが普通の天然ガス。これは見るからに簡単だ。

それに対してシェールガスは、上からのパイプをシェール層に沿って、水平方向にも展開し、高圧の水を吹き込んでシェール層に閉じ込められていたガスを回収する高度な採掘方法だ。

現在では深さ2,000メートルほどのシェール層に、。水平に3,000メートルほどのガス井戸が掘られている。そしてこの水平部で水圧破砕を行うのだ。

これにより米国の天然ガス生産は飛躍的に増加し、数年後は米国はシェールガス輸出国になることが確実とみられている。

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出典:本書132−133ページ

しかし、シェールガス生産の問題点は、まさに上記のグラフで明らかになっている。

最初こそ、猛烈な勢いでガスが噴出するが、すぐに勢いが弱まり、なんと1年目の減衰率は82%だ。

10年間でガス井の可採埋蔵量の80%を回収する場合、1年目でほぼ半分のガスを回収し、あとの9年で残りの半分をチマチマ時間をかけて回収することになる。

つまり、生産量のコントロールが難しいのだ。多くの企業がシェールガス開発に走れば、一挙にガスが供給過剰となって、ガスの市場価格が暴落する。

一方、1年目の減衰が激しいので、ガス開発企業はガス供給量を保つためには、継続的に掘削を続けざるを得ない。

ガス田を当てれば、あとは自噴するので、寝ていても儲かるという従来型の天然ガスのビジネスモデルとは違うのだ。

こんなことがわかってきたので、米国のシェールガスの技術的回収可能量は2011年には862Tcf(兆cubic feet)とされていたが、2013年に、ほぼ半分の481Tcfに見直しされている。マセーラスガス田の回収可能量の下方修正が大きな原因だとされている。

大変参考になった。

そのほかにも、石炭からとれるメタンガス(Coal Bed Methane)、日本の千葉県などで生産されている水溶性天然ガスとヨウ素資源(日本は世界第2位のヨウ素生産国だ)、2013年3月に行われたメタンハイドレートの産出テスト、バイオマスによるメタンガスの製造技術など、興味深い話題をわかりやすく取り上げている。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、まずはここをクリックして目次と出だしの8章までの部分を見て欲しい。出だしに「天然ガス」とはどいうものか紹介されていて、これだけでも勉強になると思う。

天然ガスの基礎知識を得るには最適の本である。


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2013年11月29日

父の肖像 堤清二(辻井喬)が書いた西武グループ創始者 堤康次郎の伝記小説

2013年11月29日再掲

セゾングループの創始者の堤清二さんが86歳で亡くなった。堤さんは「辻井喬」のペンネームで作家としても活躍されている。堤さんのご冥福を祈って、辻井喬さんの代表作の「父の肖像」のあらすじを再掲する。


2005年11月28日初掲:

父の肖像


西武百貨店(セゾン)グループの総帥だった堤清二氏は辻井喬(つじいたかし)のペンネームで作家としても有名である。

筆者の読んだ本のなかでは詩人で住友財閥の重役だった川田順のことを書いた『虹の岬』も印象に残る作品だったが、この本は自ら『最大の宿命』と呼ぶ、父であり西武グループの創始者である堤康次郎氏の伝記小説である。


虹の岬


実は図書館で3ヶ月前に借りて一旦読み出したのだが、あまりのボリューム(640ページ)に完読できず、再度またリクエストして読んだのだ。

この本は雑誌『新潮』に2000年から2004年にかけて連載されたものを2004年9月に本にまとめて出版されたものでもあり、西武鉄道・コクドの事件とは直接関係はないが、この作品で辻井喬氏が野間文学賞を受賞したこともあり、出版後1年以上経つのにいまだにリクエスト者が数十名居るという、図書館でも非常に人気が高い本である。

筆者のポリシーは小説を紹介するときは、面白みが薄れてしまうので、詳しいあらすじは書かないというものだが、この小説は堤康次郎の生き様を描くかたわら、作者堤清二自身の出生の秘密と未知の実母に対する複雑な思い(フィクションなのか実話なのか不明)がちりばめられた伝記と小説の混合なので、640ページという大作でもあり、印象に残った点を紹介したい。


西武鉄道有価証券法違反事件

堤ファミリーが保有する株式を、第三者名義にして株主名を何十年も偽って報告したため、有価証券取引法違反等で、昨年西武鉄道の総帥堤義明氏が逮捕されたことは、記憶に新しい。

この本の中でも堤康次郎が堤義明らに次のように言ったとされている:

「世間では東急を近代的とか大企業らしいなどと言っているが、どの企業も五島家のものではない。そこへいくとわしの事業は全部堤家のものだ。」

「西武鉄道は上場しているが、それは形だけのこと。絶対の支配権はわし一人が握っている。成り立ちが違う。経営の実態を知らない近代かぶれの学者や記者ごとき軽薄才子に惑わされてはいかんぞ。」

「お前らは堤家中興の祖、曾祖父清太郎の遺志だけを継げ、世間の評判は一切無視しろ。そんなもの、悪ければわるいほどよろしい。」


なんと最初は特定郵便局長から事業開始

小泉首相が郵政民営化は是か非かを問うた今年9月の総選挙が記憶に新しいが、なんと堤康次郎は東京に出てきて早稲田大学高等予科に通う傍ら、郵便局を買収して郵便局長として最初の事業を始めている。

明治時代から特定郵便局は儲かる商売だと思われていたようだ。

堤康次郎は明治22年滋賀県東畑郡六箇荘生まれで、幼少の頃父が腸チフスで亡くなったため、弟は養子に出され、実母は実家に帰ることとなり、妹と一緒に祖父に育てられた。しかしその祖父も康次郎が19歳の時になくなる。

田舎では肥料の仲買をやったり、郡役所に勤めたりして最初の結婚をし、21歳で長女が誕生しているがすぐに離婚した。

祖父から相続した田畑を売り、学資をつくって上京し、早稲田大学予科に入学し、政治経済学部へ進学する。立身出世を目指す康次郎は雄弁会で弁舌を鍛えながら、柔道でも腕を上げる。

学生ながら株式投資でできた資金を使って特定郵便局を買収する一方、鉄工所も買収し、複数事業に同時に取り組むという今で言うとポートフォリオ戦略を実行する。

郵便局長時代に23歳で、局員に産ませたのが長男であるが、この相手とは結局結婚はしなかった。


政治への野望

早稲田時代には、ちょうどオックスフォードでの留学を終えて教授として帰国したばかりの永井柳太郎に師事、当時第2次大隈内閣を率いていた早稲田大学創始者の大隈重信とも近づきとなる。このとき永井の指導で『日露財政比較論』という本も出版している。

ほとんどが士族出身で、なおかつ藩閥内閣の薩長閥が力を持っていた当時の政治の世界では、近江の百姓出身というコンプレックスを常に抱いていた康次郎だったが、大正5年に永井の妻の友人の編集者で、2歳年上で小名浜の医者の娘の桜と2度目の結婚をした後は、文人とのつきあいも増え、コンプレックスは薄れた様だ。

桜との間には結局子供はできず、長男と、夭折した弟の息子として戸籍上は届けられた作者堤清二を引き取り、堤清二は桜に育てられる。

永井柳太郎が大正9年に当選し、康次郎もその後を継いで大正13年に衆議院議員となり、以来戦前戦後を通じてずっと議員の資格を持つ。

大正13年の最初の選挙では『家老の子か、土民の子か』という戦略で、普通選挙を求める民衆の意識の高まりをうまく利用し、かつ勧業銀行、興業銀行、山下汽船、東京電燈、実業之日本社などの社長、早稲田や東大教授の支援を得て当選し、永井のいる憲政会に入党する。

ちなみに普通選挙法は大正14年に成立するので、康次郎の民衆意識に訴えるという戦略は、まさに時代を先取りしていた。

昭和7年には永井が外地(台湾・韓国・満州など)を担当する拓務省の大臣となった関係で、政務次官となる。このとき満州を視察し、匪賊に悩まされている辺境の開拓民の実体を知り、満州経営は非常に困難であることを実感したが、流れを変えることはできず、昭和11年に2.26事件が起こったあとは日本は全面戦争に向けひた走ることになる。


地域開発事業への進出

大正2年に大学卒業後、大正6年に後藤新平のすすめで軽井沢の沓掛地区に80万坪の土地を購入し、地域開発事業に進出。郵便局とか鉄工所は手放したが、東京護謨(ゴム)という会社を買収するなど、事業には才能があり、不動産業や鉄道業でもその才覚を発揮する。

司法大臣等を歴任した政治家大木遠吉を訪ねて熱海を訪問した時に、十国峠を越えて箱根を視察し、首都から1日圏の観光地としてのポテンシャルを見抜き、観光地開発を決意、三島から修善寺を走っている駿函鉄道も買収して伊豆・箱根開発に力を入れる。

また東京市長の後藤新平と相談して、国分寺と立川の間に国立をつくり、ドイツのハイデルベルク等にならって、核となる東京商科大学(一橋大学)を敷地が4千坪から2万坪になるという計画で誘致し、駅から延びる『60メートル道路』を持つ学園都市として開発する。

昭和初期には第1次世界大戦後の不況で、不動産業は窮地に陥り、開発費の支払いが滞り、コクドは破産状態となっていたが、なんとか持ちこたえ、戦争拡大とともに景気は回復し、窮地を脱する。

コクドはその後減資・増資して埼京鉄道(西武鉄道)を買収し、さらに路線での不動産開発をすすめ、西武グループは新興企業グループとして確固たる地位を占める。

このころ学園都市開発で知り合った大学教授の娘の治栄とねんごろになり、三男が誕生する。堤義明氏である。治栄とは婚外で2男、1女をもうけた。

戦後、衆議院議長として宮内に正式な妻ではない治栄と一緒に拝謁したことから、スキャンダルを恐れ、長年別居していた正妻桜と離婚して治栄と正式に結婚する。

昭和15年には麻布に一万坪の六荘館とよぶ迎賓館を建設し、一族はそこに住む様になる。東条内閣の時には大東亜迎賓館と呼ばれ、政府の公式な迎賓館としても使われたが、結局空襲で焼けてしまう。


難民は叩き出せ

空襲で大東亜迎賓館が焼け、近所の避難民が逃げてきたとき、堤康次郎は「叩き出せ。絶対に入れるな。棍棒を持って追い出してこい。一度入れたら居座られるぞ。」と大音声を発したと。

「いいか清二、覚えておけ。今、難民たちに甘い顔をしてみろ、どこまでもつけあがるぞ。そのうちに小屋掛けをして居座り、結果は乗っ取られる。財産を守るというのはそういう事だ。」と叫んだという。


戦後の発展

戦後康次郎は5年間公職追放となっていたが、軽井沢、箱根、西武線沿線、ホテル、デパート、スキー場、国立地区、三浦半島、大磯、伊豆など西武グループの事業はさらに拡大した。従業員には康次郎は『大将』と呼ばれ、人望も厚かったようだ。前立腺肥大で尿管閉塞を起こし、これが持病となるが、見事快復する。

康次郎の会社の3原則は:

第1に人のためになることをせよ
第2に人のやらないことをせよ
第3に儲かることをせよ

だという。

箱根では五島慶太率いる東急グループ、小田急グループと熾烈な箱根戦争を繰り広げ、西武が建設した自動車専用道路(箱根ターンパイク?)に東急パスが路線申請をしたことから訴訟合戦も繰り広げられることとなるが、その後自動車専用道路を静岡県に売却し、伊豆観光開発の利権につなげる。


作者出生の秘密

この本を通じての最大のテーマが作者出生(しゅっしょう)の秘密である。

作者は「私は自分が何者なのかを知りたくて、そこから父の伝記を書こうと考えたのだ。」と語っているが、作者出生の秘密を握る謎の人物が出てくる。

渋谷の飲食店経営者で後に近江に戻り尼となる平松摂緒とその姪平松佐智子である。

このふたりは小説の中心の人物なので、詳しく説明しないが、この作品に不思議なテイストを与えている。


不思議な読後感

その他作者が康次郎に反発して、東大経済学部時代に共産党に入党したことや、結核療養、一緒に訪米してマッカーサー、アイゼンハワーに面談したことなどのエピソードもあるが、これは詳しくは本を読んでいただきたい。

結局読み終えるまで20時間以上かかったが、読み終えてみると艶福家(えんぷくか)というより好色の事業家堤康次郎に対する嫌悪感は残らず、一介の百姓から西武グループを創り衆議院議長にまでなった尊敬できる人物の様に思えてきた。

たぶんこれが作者堤清二氏の康次郎氏に対する現在の感情なのであろうと思う。

不思議な読後感であった。


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2013年10月13日

農業ビッグバンの経済学 今の農政に批判的な農水省官僚もいたんだ!

農業ビッグバンの経済学
山下 一仁
日本経済新聞出版社
2010-03-24


元農水省の官僚で、農村振興局次長にて退官、現在はキャノングローバル戦略研究所研究主幹、経済産業研究所上席研究員、東京財団上席研究員などを務める山下一仁(かずひと)さんの本。山下さんはS52卒だから、筆者とほぼ同年代だ。

このブログでは農業に関しては、改革派の月刊誌「農業経営者」副編集長・浅川芳裕さんの「日本は世界第5位の農業大国」「日本の農業が必ず復活する45の理由」を紹介している。





一方、農協を中心とする保守派のTPP反対論としては「TPPを考える」や、農林水産省のパンフレットを紹介している。



農林水産省のパンフレットを見る限り、農林水産省の官僚は「保守派」一枚岩で固まっているものと思っていたが、中には農林水産省の保守本流に反対する山下さんのような官僚がいたことを初めて知った。

山下さんはほかにも「『亡国農政』の終焉」や、「農協の大罪」などといった、刺激的な本を出している。

「亡国農政」の終焉 (ベスト新書)
山下 一仁
ベストセラーズ
2009-11-07


農協の大罪 (宝島社新書)
山下一仁
宝島社
2009-01-10



この本の目次

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次を紹介しておく。項タイトルまで書いてある優れた目次だが、項タイトルまですべて紹介すると長くなりすぎるので、重要なものだけピックアップして紹介しておく。

序章  間違いだらけの日本の農政

第1章 誰のための農業・食料政策か
  1. なぜ農業を保護するのか
  2. 忍び寄る小農主義

第2章 食料安全保障問題の本質
  1. 世界の食料・農産物市場の特殊性
    ・隔離されている国内市場と国際市場
    ・自国優先の政策が増幅する国際食料市場の不安定性
  2. 農業生産の特殊性
    ・代替不能な農地資源
  3. 我が国の食料安全保障の現状
    ・250万ヘクタールの農地が消滅
  4. 食料自給率の向上は食料安全保障にはつながらない
  5. 人口減少時代が迫る農業衰退

第3章 なぜ、農業は衰退するのか
  1. 農業生産の特徴ーBC(Bio/Chemical)過程とM(Machinery)過程
  2. 高収益農業の存在
    ・「考える企業家」としての農家
    ・契約栽培で価格変動を吸収
    ・グローバル化を利用した成功例
  3. 土地利用型農業の可能性
  4. 政策の失敗が招いた日本農業衰退
    ・構造改革を阻んだ農地法の成立
    ・ゾーニングや転用規制の不徹底
    ・農協が兼業農家を重視する理由

第4章 世界農政は価格支持から直接支払いへ
  1. 先進国の農業問題と途上国の農業問題
  2. 1980年代のアメリカ・EC農政と国際貿易の混乱
  3. ガット・ウルグアイ・ラウンド交渉
  4. さらなるEUの農政改革
    ・アジェンダ2000
    ・アメリカとのWTO農業合意に備えたさらなる改革
  5. アメリカ農政の転換
    ・1996年農業法ー不足払いから直接固定支払いへ
    ・2002年農業法ー価格変動型支払いの導入
    ・2008年農業法の内容
  6. 関税か直接支払いか
    ・関税よりも優れている直接支払い
  7. 世界農政の比較
    ・世界農政の流れから取り残される日本農政
    ・保護方法を間違えている日本農政

第5章 グローバル化に対応できない日本農政
  1. WTO交渉がもたらす困難
    ・EUの変化を読み間違えた日本
    ・交渉のコア・グループから外された日本
  2. 農業のためにFTAを結べない

第6章 農地制度の改革
  1. 国際競争力強化の手段としての技術進歩と農地のゾーニング
  2. 農地法廃止という規制の緩和とゾーニング規制の強化
  
第7章 米についての奇妙な経済学
  1. 日本の米は安いのか?
  2. 減反維持の主張のおかしな前提
  3. 構造改革効果が期待できない減反選択制
  4. 自民党が導入した直接支払い政策の経緯と内容
  5. 民主党の戸別所得補償政策
    ・国民負担をさらに重くする戸別所得補償政策
    ・米輸出の可能性を摘み取る戸別所得補償制度

第8章 直接支払いによる構造改革
  1. 規模拡大の条件
  2. 農地の転用・耕作放棄の防止と構造改革
  3. 直接支払いによる規模拡大
  4. 具体的な制度設計

第9章 農業組織の解体的改革
  1. 農政トライアングルの形成と科学的行政の後退
  2. 農協改革
  3. 農林水産省の改革

終章  真の食料安全保障の確立を目指して

以上ちょっと長くなったが、目次を見ると大体の主張がわかると思う。


山下さんの主張は農林水産省の政策とは正反対

山下さんの主張は次の通りだ。

減反を段階的に廃止して米価を下げれば、コストの高い兼業農家は耕作を中止し、農地を貸し出すようになる。そこで、一定規模以上の主業農家に直接支払いを交付し、地代支払い能力を補強すれば、農地は主業農家に集まり、規模は拡大し、コストは下がる。また、環境にやさしい農業を実現できる」。

これは長年高い農産物価格で農家の所得を維持しようとしてきた農林水産省の政策とは正反対だ。

農林水産省のこのような政策を推す進めてきた結果、次のようなウソと現実が生まれたと山下さんは語る。

農林水産省のウソ:

1.小規模の兼業農家が農業を支えている
2.農家は赤字でも米つくりに励んでいる
3.予算額を比較して日本の農業保護はアメリカやEUよりも低い
4.平均コストがアメリカや中国に及ばないので競争できない

長年ウソが続いたので起こった現実:

1.小規模農家が多く、肥料・農薬を多用して環境に悪い農業を継続している
2.食料自給率が40%なのに、米を余らせて水田面積の4割、100万ヘクタールもの減反政策を推進している
3.減反しながらミニマム・アクセス米を輸入している
4.生活様式の多様化と高米価のため、米消費は毎年減少している。

米消費量推移







出典:民主党ホームページの記事

国際農政比較や農業に関する冷静な議論は大変参考になる。

いくつか参考になった点を紹介しておく。


フードマイルの考え方は単純化しすぎている

WTOのパスカル・ラミー事務局長は、次のように語っている。

「食料生産及び出荷チェーンにおける主たるCO2の排出は生産過程で発生する。輸送における排出はわずか4%に過ぎない。殺虫剤および肥料の生産ならびに、農場および食品加工によって必要とされる燃料から生じるCO2の発生に比べると、輸送による排出は小さい。(中略)フードマイルの議論は国内食料調達政策における自給の確立に対する正当化にはならない。

ロンドンの店に出荷されたスペイン産、あるいはポルトガル産のトマトは、イギリスの温室で栽培されたトマトよりもCO2の排出が少ない。ニュージーランド産のラムはイギリス産のラムより4倍エネルギー効率が良い。これはイギリスの農民は気候上の制約のために、補完的な飼料を用いることを余儀なくされるからである。(後略)」

なるほど、その通りだと思う。


水田による二毛作は熱帯雨林を上回るO2を生産する

水田で稲と麦の二毛作を行えば、光合成によるO2の生産量は熱帯雨林に迫ると言われている。以前は6月に麦を収穫してから田植えをして、二毛作を行っていたが、最近は兼業農家が増加し、5月の連休中に田植えが行われるようになって、二毛作はほとんど行われなくなってしまった。

かつてのコメと麦の水田二毛作が、今では米単作・サラリーマン兼業という二毛作に変わっている。

これは筆者も以前から疑問に思っていた点だ。小学校の時は、北海道・東北を除く日本のほとんどの地域では二毛作が可能だとたしか習ったと思うが、いつの間にか二毛作はほとんど死語になってしまった。

最大の原因は米の減反政策と、小麦価格が米より低いことだと思う。


食料自給率ではなく、食料自給力の強化を

農林水産省は数年前から金額ベースの食料自給率も発表している。これだと65%という数字になり、農政の失敗を問われないからだと。しかし金額ベースでは、価格を上げて消費者負担を増やせば自給率が上昇するという結果となる。

山下さんは、食料自給率ではなく、農地や若い担い手を中心とした農業資源の確保を目標にすべきだと主張する。真に食料安全保障を確立するためには、農業の収益性を向上させ、農地規模の拡大や後継者確保につながるような政策を打ち出す必要がある。

毎日食べなければならない食料に関しては、一週間でも供給不足が生じると大変な事態になるという。

たとえ50年に一度という低い確率でも、その場合の悲惨さは経済面のみならず、社会的、政治的な不安や混乱を生じさせかねない。これは軍事的な紛争の場合と同じであると。

この辺の感覚が筆者とは全然違うところだ。

官僚は、食管会計で麦などを入札で買っているだけなので、ビジネス感覚がないのだろう。

筆者の長い貿易経験では、たとえ不可抗力でも、何らかの事情で売り手が一度でも供給をストップすると、買い手は二度とその売り手からは買うまいと心に誓う。

たとえば米国国内の飼料用の大豆かすの需要が増えて、ニクソン大統領が大豆輸出をストップした時、多くの買い手は米国の大豆に依存するリスクを痛感して、代替ソースの確保に注力した。

もちろんすぐに代替ソースを確保できるわけではないが、そういった着実な努力の結果、米国の大豆禁輸をきっかけに、ブラジルとアルゼンチンの大豆生産量は着実に増加して、今では2国の合計生産量は米国を上回る。

主要国大豆生産量推移









出典:FAO日本事務所長 横山光弘さんの講演資料

「やられたら倍返し」は半沢直樹の専売特許ではない。国際資源ビジネスの常識だ。

中国がレアアース禁輸を宣言してから、日本とはじめとする消費国が代替ソース確保に走ったため、ふたを開けたら中国のレアアース業界自体がひん死の重傷を負う結果となった。

日本レアアース輸入量








出典「木走日記」ブログ・レアアース関連記事

筆者はニクソンの1973年の大豆禁輸は、米国より後に訪中したにもかかわらず、米国より先に日中国交正常化を実現した日本の田中角栄総理に対するニクソンの報復もあると考えている。

アメリカの大豆禁輸が中南米での日本の援助による大豆生産を急増させる結果となった

長くなりすぎるので、この辺でやめておくが、ほかにも「農地法は日本の3大ザル法の一つ」とか、ヨーロッパの徹底した農地ゾーニング、日本の米価格は1953年までは国際価格より安かった、現在の日本の米の単収はヘリコプターで種まきしているカリフォルニアの粗放農業より3割も少ないなど参考になる情報が満載だ。

山下さんは、農林水産省や農協からは裏切り者のように見られていると思うが、冷静な議論は大変参考になる。

一度手に取ってみることをお勧めする。

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2013年10月11日

金融庁が6カ月の業務停止命令 【再掲】富裕層はなぜYucasee(ゆかし)に入るのか 

2013年10月11日再掲:

「ゆかし」で投資商品を紹介している投資助言会社「アブラハム・プライベートバンク」(東京都港区)が無登録で投資ファンドの運用商品を販売するなど金融商品取引法に違反したとして、金融庁から6カ月の業務停止命令を受けた

「ゆかし」については、このブログで5年前に紹介している。その時も「ゆかし」について疑問を呈しているが、懸念が現実になったようだ。

事件を機に「富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか」のあらすじを再掲する。


2008年10月4日初掲:

富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか富裕層はなぜ、YUCASEE(ゆかし)に入るのか
著者:高岡 壮一郎
販売元:幻冬舎
発売日:2008-02-08
おすすめ度:5.0
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純金融資産1億円以上が入会資格というプライベートクラブ「ゆかし」を運営する高岡壮一郎さんの本。

高岡さんは三井物産で情報産業、M&A事業に従事した後、退社してアブラハム・グループ・ホールディングス株式会社を創設し、プライベートクラブ「ゆかし」を始める。

「ゆかし」とは日本の古語で、「見たい、知り合い、会いにゆきたい」という意味だという。


東大OBネットの主催者

東大のOBネットも高岡さんがプロモートしている。

東大OBネット





東大を含めた旧七帝大は学士会というOB組織があるが、非常に緩やかなOB会で、会員になっている人も各大学の卒業生のほんの一部だと思う。

たとえば一橋大学などは如水会というOB会があり、結束が強い。今でもそうかもしれないが、以前は大手企業なら会社の如水会があって毎年一橋大学の新入社員を歓迎していた。

医学部とかの一部学部や学科・ゼミなどを除き、東大は全学のOB会がなかったので、高岡さんが学士会に呼びかけて東大OBネットをつくったものだ。ちょうど東大は130周年記念ということで募金活動をしていたので、渡りに舟だったのだろう。

世の中には、思いたったことをどんどん挑戦、実行すべく努力する超ポジティブ人間がいる。楽天の三木谷さんの言う"Get things done"タイプの人だ。高岡さんもまさにその超積極タイプで、三井物産というエスタブリシュメントではあきたらなかったようだ。


相続リッチとインテリッチ

富裕層は、相続リッチとインテリッチの二タイプがあるという。この本ではインテリッチを主に取り上げている。

インテリッチと一般人との違いは、失われた10年と呼ばれる90年代をチャンスととらえ、自らの戦略で果敢に挑戦してきたことだという。

職業は様々だが、外資系金融機関の幹部、オーナー企業や上場企業の社長、ベンチャー企業の役員、医師、弁護士、個人投資家などで、いかにしてリッチになったかの様々なケースを簡単に紹介している。

純資産は1−5億円が75%、職業は経営者40%、医師・弁護士などの専門職が34%で、世帯年収は3,000−5,000万円が最も多く20%で、次が2,000−3,000万円の18%となっている。

たとえば「ウィーンのコンチェルトハウスの命名権が日本人を対象に数十億円で売りに出されている」というような情報が、ゆかしで紹介されているという。

自分が一億円も金融資産を持っていないので、本を読んでも今ひとつピンとこないが、富裕層マーケティングというのは今注目されている分野だ。富裕層を集める手法としてプライベートクラブを開くというのもアリだと思う。


この本の目次

アマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。

序章  すべてはインターネット上のプライベートクラブから始まった
第1章 新世代富裕層「インテリッチ」の誕生
第2章 インテリッチはどうやって富裕層になったのか
第3章 インテリッチが社会を変える
第4章 新世代富裕層の日常としての「ゆかし」
対談  富裕層社会の未来(渋澤建氏を迎えて)
第5章 世界が富裕層を奪い合う
終章  個人が主役になる社会

各章はさらに3−6の節からできており、よくできた目次である。


リッチスタン

日本には資産1億円以上の富裕層が147万人いると言われ、アメリカでは100万ドル以上の富裕層が950万世帯いるという。そんなアメリカでも相続で富裕層になった相続リッチは10%で、ほとんどが一代で富を築いた人たちだという。

アメリカでは原題が「リッチスタン」、邦訳「ザ・ニューリッチ」という富裕層の本がベストセラーになっているという。

ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態ザ・ニューリッチ―アメリカ新富裕層の知られざる実態
著者:ロバート・フランク
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-09-14
おすすめ度:4.0
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富裕層向けの情報が満載

ゆかしの会員になると会員同士の口コミコーナーや、ゆかしマネーという投資情報が役に立つという。

ある会員は、「マネー誌に載ったら、もう売りだが、ゆかし会員が興味を持っている情報は自分も関心を持つ。成功者についていくことができるからだ。」と語っているという。

ゆかしで紹介されている情報は、ゆかし限定のドナルド・トランプ倶楽部への案内とか、イタリアの名門クラブの入会資格付きの高級別荘、5億円のクルーザー、名門英国ロイヤルスクール入学、400年の歴史を持つ有名レストランのオーナーシップ、有望なロシア人アーティスト、オランダ人写真家についてとかといったものだ。


富裕層を惹きつける国

世界で最も富裕層が増えているのはシンガポールで、増加率は21%だという。国策として世界の金融業の中心となることを目指しているので、所得税の最高税率も18%と低い。最近ではシンガポールに日本の金持ちが移住する傾向が増えているという。

高給取りが集まっている金融業界を惹きつけようとしたら、所得税・法人税を安くするのが効果的だ。だからアジアでは香港とシンガポールの税率が低い

昔はモナコとかが金持ちの集まる国として有名だったが、シンガポールもそれを目指している。

所得税の料率は低くとも、仮に年収1億ドルの人が新たにシンガポールに移住してくれば、シンガポールの税収は1,800万ドルの純増となる。

金持ちから税金を徴収した方が効率も良い。要は絶対額の勝負なのだ。

日本の一人当たりGDPは昨年シンガポールに抜かれ、アジアNo.1の座をゆずったが、その裏には所得税や法人税が低いので、村上ファンドの村上さん以外にも世界の富裕層が移住しているという事情もあったのだ。


国民一人当たりGDP

次が国民一人当たりのGDPだ。日本はシンガポールの次の22位で、すぐ次はクウェートだ。


順位  国名     2007年(単位 ドル)
― 世界[18] 8,354.95
― 欧州連合[19] 33,251.80
1 ルクセンブルク 104,673.28
2 ノルウェー 83,922.50
3 カタール 72,849.07
4 アイスランド 63,830.08
5 アイルランド 59,924.42
6 スイス      58,083.57
7 デンマーク 57,260.95
8 スウェーデン 49,654.87
9 フィンランド 46,601.87
10 オランダ 46,260.69
11 アメリカ合衆国 45,845.48
12 イギリス 45,574.74
13 オーストリア 45,181.12
14 カナダ 43,484.94
15 オーストラリア 43,312.32
16 アラブ首長国連邦 42,934.13
17 ベルギー 42,556.92
18 フランス 41,511.15
19 ドイツ 40,415.41
20 イタリア 35,872.42
21 シンガポール 35,162.93
22 日本 34,312.14
23 クウェート 33,634.34


富裕層が「ゆかし」に入る理由

最後に高岡さんは、富裕層が「ゆかし」に入る理由は、今の日本の社会が個人のニーズを十分に充足していないからだと語る。

現代の富裕層は、「個人が主役になる社会」の成功者であり、どこの国でも通用するので、日本が大切にすべき人材である。そんな人々に対して「ゆかし」がより良い環境を提供したいと高岡さんは語る。

日本では白洲次郎が理事長となっていた軽井沢ゴルフ倶楽部とか、東京青山のカナダ大使館ビルにある"City Club of Tokyo"などの超名門クラブが、プライベートクラブにあたるのだろう。

アメリカの主要都市にはプライベートクラブがある。筆者の住んでいたピッツバーグには、デュケン・クラブ(Duqeusne Club)という名門クラブがある。

Duquesne Club





20世紀初頭カーネギーやメロンという企業家が会員となって盛り立てた創立130年の由緒あるクラブだ。

日本人の駐在員で会員になれる人はほんの一握りで、このメンバーシップは金を出せばなれるというものではない。複数の有力会員からの推薦があって、夫婦一緒の面接を含め厳しい入会審査を通らないと会員になれない。

数年に一度USオープンが開かれるオークモントというカントリークラブもピッツバーグにある。2007年のUSオープンの優勝スコアは5オーバー、タイガーウッズでさえ6オーバーという難コースだが、ここも入会金は数万ドルとたいしたことはない。

Oakmont





しかし会員になるのが非常に難しく、審査まで数年待ちで、定期的に交代する駐在員では会員にはなれない。WASP中心のクラブで、以前はユダヤ人は会員になれないという噂があったくらいだ。

会員になるために他の会員の推薦が必要だし、地元の名士として認められないとダメだ。本来クラブとはこういうもので、メンバーになりたくてもなれない希少価値があってこそ、クラブの価値がある。

「404 Blog Not Found」の小飼 弾さんもこの本を読んで、試しに「ゆかし」の会員になってみたそうだが、小飼さんのブログにゆかしについての続報は見あたらない。

小飼弾のアルファギークに逢ってきた [WEB+DB PRESS plus] (WEB+DB PRESS plusシリーズ)小飼弾のアルファギークに逢ってきた [WEB+DB PRESS plus] (WEB+DB PRESS plusシリーズ)
著者:小飼 弾
販売元:技術評論社
発売日:2008-04-15
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


まさにこの点が問題だと思う。「ゆかし」の知名度を上げるためにはネットの有名人の小飼弾さんは、本音はなんとしても入って欲しい会員だと思うが、富裕層一般に受ける人ではない。あえて落とすことで希少価値を上げるという手もあったのではないか。

小飼さんは、勝間さんとか本田さんなどと親しいし、影響力のある人なので落とされたら逆に宣伝になったのではないかと思う。

自分には縁のない話なので、勝手なことを言って著者の高岡さんには申し訳ないが、メンバーになりたくてもなれないクラブ。それこそが富裕層が列を作って入りたがるクラブではないのか?

ベンチャー企業には難しいとは思うが、本当に希少価値のあるクラブをつくるなら、電話2回の質問で会員にするなどとということをせず、すべて面接で会員を審査し、当初は経営は赤字でも、少数の超選りすぐりの会員組織をまずつくり、それから徐々に口コミで広げていくやり方の方が長い目で成功する道ではないのかと思う。

本を出して宣伝するというやり方も疑問が残る。

富裕層向けにプライベートクラブを開くというのは目の付け所は良いと思う。はたしてプライベートクラブという業態が成功するのか。注目されるところだ。


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2013年10月05日

再掲 バナナの世界史 バナナ・リパブリックは衣料品ブランドだけじゃない

2013年10月5日再掲:

議会と大統領の対立で10月からスタートした新年度の予算執行が停止している米国のことを、「バナナ・リパブリック」と呼んで揶揄する人がいる。

政府がコントロール不能に陥っていることを指すのだろう。

しかし、発展途上国などのいわゆる「バナナ・リパブリック」と異なり、米国の場合には制度上の欠陥で予算に議会の承認を得られない場合の規定がないことが原因であり、これをもって「バナナ・リパブリック」と呼ぶのは、ジョークにしても的外れのような気がする。

1995年から1996年にかけてのクリントン政権でも、同じ事態が起こっている。

この「バナナ・リパブリック」?騒動と、バナップルを最近食べたので「バナナの歴史」を再掲する。

「バナナの歴史」の最後で、バナナの新しい品種として紹介されている「バナップル」を食べてみた。近くのスーパーで売っていたものだ。

Banapple












出典:スミフルホームページ

Banapple2












出典:フルーツの殿堂 楽天市場店

味はバナナの中心にリンゴの粒が入っているような感じだった。

食感はバナナ、ほんのりとリンゴの味がするという感じで、普通のバナナよりだいぶ小ぶりだ。

筆者は近くのスーパーで買ったが、上記の「フルーツの殿堂」楽天市場店でも買える。いずれは日本中のスーパーで売られることになるかもしれない。

300〜400円で買えると思うので、一度試してみることをお勧めする。


2013年1月3日初掲:

バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)バナナの世界史――歴史を変えた果物の数奇な運命 (ヒストリカル・スタディーズ)
著者:ダン・コッペル
太田出版(2012-01-19)
販売元:Amazon.co.jp
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世界で一番生産量が多い果物であるバナナの歴史を通してバナナビジネスを描いた本。

世界のバナナ生産量は約1億トン。インドがダントツの1位で30%を占めるが、生産量のほぼ全量が国内で消費され、輸出にはまわらない。2位の中国も同様に国内消費用で、3位のフィリピンと4位のエクアドルが輸出バナナ生産の最大手だ。


バナナのジャイアント:ユナイテッド・フルーツ社

バナナは19世紀から貿易されていたが、現在のように大量に輸出入される商品となったのは、1899年に合併によって成立し、世界32カ国で事業展開したユナイテッド・フルーツ社によるプランテーション拡大によるところが大きい。

ユナイテッド・フルーツ社は専用船団と各地にバナナ倉庫を持ち、パナマ、ホンジュラス、グアテマラ、キューバなどの各地の自社バナナプランテーションで収穫したバナナを専用船で輸送し、米国やヨーロッパに置いた専用倉庫から消費地に出荷していた。


ユナイテッド・フルーツ社の政治力

1912年に米軍がホンジュラス、パナマなどに侵攻した事実は知らなかった。米軍の侵攻後、ユナイテッド・フルーツ社は鉄道建設の許可を得て、プランテーションを建設している。

コロンビア人のノーベル賞作家のガブリエル・ガルシア・マルケス「百年の孤独」には、プランテーションでストライキを起こした3,000人の労働者たちを軍隊が機関銃で殺す場面がでてくる。これは1928〜9年にコロンビアで実際に起こった事件だ。

百年の孤独百年の孤独
著者:G. ガルシア=マルケス
新潮社(1999-08)
販売元:Amazon.co.jp

ユナイテッド・フルーツ社はグアテマラで世界最初のバナナプランテーションを運営していた。

グアテマラのアルベンス大統領は1951年に反バナナプランテーション政策をとったので、ユナイテッド・フルーツ社は政治力を行使してアイゼンハワー大統領を動かし、大統領はCIAに政権転覆工作を命じた。アルベンス大統領は空港で服を脱がされ、下着姿でメキシコに亡命したという。

スパイ映画によくある、多国籍企業が開発途上国の利権を握り、利権を危うくする者をCIAを使って抹殺するというストーリーが現実に起こっていたのだ。

キューバではカストロ政権転覆のためのピッグス湾事件で、自社の船団を反カストロ勢力の輸送に供している。

ユナイテッド・フルーツ社がグアテマラとホンジュラスの独裁政権を支援してきたこと、またユナイテッド・フルーツ社からの依頼でCIAによるグアテマラ工作が実施されたことが、情報公開法により公開された一連の政府文書から明るみに出ている。


まさにバナナ・リパブリック

バナナ・リパブリックというと、現在はカジュアル衣料ブランドとして有名だが、本来の意味は、開発途上国の頼りない政府を揶揄した言葉だ。グアテマラの政権転覆は、まさにバナナ・リパブリックにおける多国籍企業の政治力を見せつける事件だ。

【Men's】BANANA REPUBLIC(バナナリパブリック)ボーダー鹿の子ポロシャツ(Gray)
【Men's】BANANA REPUBLIC(バナナリパブリック)ボーダー鹿の子ポロシャツ(Gray)



バナナの品種交代がユナイテッド・フルーツ社の没落のきっかけ

バナナはクローニングにより栽培されるので、抵抗力のない病気が発生すると大規模な病害が起こる。

現在世界各地で生産されているバナナは中国が原産とされているキャベンディッシュという品種だが、1960年以前は世界のバナナはグロスミッチェルという品種だった。

グロスミッチェルは1910年ごろパナマから広がったパナマ病という病気に耐性がなかったため絶滅した。

米国政府まで動かす政治力があったユナイテッド・フルーツ社だったが、当時のバナナプランテーションの主力品種のグロスミッチェル種にこだわったため、パナマ病の蔓延でシェアを落とした。

日本でもエクアドルバナナの代名詞として有名なチキータはユナイテッド・フルーツ社のブランドで、CMソングは全米で評判になったという。




スタンダード・フルーツ社はバナナの箱輸送で活路

一方、スタンダード・フルーツ社も1899年創業だが、ユナイテッド・フルーツ社よりは規模が小さく、マーケットシェアも長年20%を超えることはなかった。

しかし、グロスミッチェル種がパナマ病に侵される面積が拡大するにつれ、ユナイテッド・フルーツ社の業績は悪化し、1950年の66百万ドルの利益が、1960年には2百万ドルまで落ち込んだ。

これに代わって主要品種として栽培されたのがキャベンディッシュで、スタンダード・フルーツ社はキャベンディッシュに集中することで、マーケットシェアを一気に拡大した。

キャベンディッシュはこすれると黒ずんで柔らかくなるという欠点がある。これをスタンダード・フルーツ社は、箱に詰めて箱ごと輸送するというやりかたで解決した。これは”バナナ産業史上最大の技術革命”と呼ばれている。


ユナイテッド・フルーツ社の落日

落ち目のユナイテッド・フルーツ社は、1969年にユリ・ブラックというユダヤ人投資家に買収され、社名もユナイテッド・ブランズに変更された。

この頃パナマ、コスタリカ、ホンジュラスなどの中米バナナ輸出国が一致してひと箱あたり1ドルの「バナナ税」を課すことを決定した。バナナ版OPECをつくろうとして、「バナナ輸出国機構」設立の動きがあったのだ。

そんななかで1975年ユリ・ブラックは、ニューヨークのパンナムビルにある本社事務所の窓から飛び降り自殺した。

バナナ税を引下げさせるために、ホンジュラス大統領へ巨額のわいろを贈ることを決定したことを悩んでの自殺だったと見られる。

ユナイテッド・ブランズ社は1992年に投資家に買収され、チキータに社名変更したが、シェア低下・収益低下に悩まされ、とうとう2001年にチキータは会社更生法を申請した。1世紀以上も世界のバナナ生産と貿易を牛耳ってきたユナイテッド・フルーツ社の終焉だった。


未来のバナナ

バナナのゲノム解明は2001年に開始され、2012年に完了した。

遺伝子組み換えバナナは不稔なので、在来種との混合の恐れはない。ベルギーなど世界各地で品種改良が進められている。

現在はキャベンディッシュが世界各国で生産されているが、他にアップル・バナナとしてゴールドフィンガーという種類がある。

カハラフレッシュ アップルバナナ プレミアムドライフルーツ  【あす楽対応_関東】【YDKG-kd】【RCP】
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これからもバナナの品種改良は進められ、近い将来は様々な味のバナナが登場することだろう。


バナナ業界を牛耳る多国籍企業の歴史とバナナの雑学が楽しく学べる本である。


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2013年09月14日

ブラック企業 若者を使い捨て、日本の将来を危うくする企業

ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)ブラック企業 日本を食いつぶす妖怪 (文春新書)
著者:今野 晴貴
文藝春秋(2012-11-19)
販売元:Amazon.co.jp

若者を使い捨て、日本の将来を奪うブラック企業についての本。

著者の今野さんは、中央大学法学部在籍中の2006年に学生や社会人を中心にNPO法人POSSEを立ち上げ、労働関係に関する相談を1,500件以上も受付けているという。

NPO法人POSSEでも「ブラック企業に負けない」という本を出している。

ブラック企業に負けないブラック企業に負けない
著者:NPO法人 POSSE
旬報社(2011-09-26)
販売元:Amazon.co.jp

あまり新しい情報はないが、ブラック企業に関する情報がよくまとまっている。大体の内容がわかると思うのでここをクリックして、目次を見てほしい。

このブログでは基本的に個別企業の例は挙げない。この本の目次を見ればわかるし、ブラック企業大賞というようなイベントも開催されており、これに名前が出てくるような企業がこの本でも取り上げられている。



今野さんが挙げるブラック企業のパターンは次の通りだ。

1.大量募集
初めから残業代を含んだ月収を公表して、報酬を誇張する手口や、「正社員」ということで学生を引き付け、実は「試用期間」の間に選別するという手口がある。

2.選別
入社後も選別が続き、資格を取れない者、店長になれない者は自発的に辞めざるを得ない環境に追い込む。選別に耐えられず自殺してしまった人もいる。そして選別からの脱落者を追い込む手口が、今野さんが「戦略的パワハラ」と呼ぶ、職場全体でパワハラを行い自発的に辞めざるをえないように追い込むものだ。

3.使い捨て
「営業手当」などという名目で、一定の手当てを払う代わりに残業代を払わない手口や、「裁量労働制」として年俸制にするなどで、残業代を払わない手口だ。マクドナルドなどで問題になった「名ばかり管理職」、「名ばかり店長」も同様だ。



36(サブロク)協定」の悪用で、異常な残業上限時間を決めるとか(たとえば月80時間以上で決めている例もあるという)で長時間労働を強いる。

そして「離職手続を取らせない」、「最終月の給与を支払わない」、「損害賠償請求で脅す」など、辞めさせないのもブラック企業の典型的パターンだ。

4.職場崩壊
セクハラがあったり、管理職がパワハラし放題。公私混同が激しい。整理整頓が全くできていないなど、職場崩壊もブラック企業の典型的なパターンだ。

ブラック企業の代表として取り上げられることが多いワタミの渡邉美樹社長の、「もう、国には頼らない」を以前このブログでは紹介した。



ブラック企業の代表格としてワタミが取り上げられるようになる前の2008年に書いたあらすじなので、渡邉社長以外の登場人物がほとんどいない等の変なサインには気づいているものの、従業員に対する姿勢は見破れていないところが残念に思う。

ただ渡邉社長の本はいろいろ読んだが、本に書いてあることは、まっとうで正しい主張が多い。しかし、会社経営理念は正しくても、働く人たちの福祉を考えない劣悪な労働条件では、世間からブラック企業と呼ばれることになるだろう。

たとえばワタミで早々に退社する人もいるが、順調に出世していく人も中にはいるはずだ。

この本を読むと、ブラック企業の実態がわかると同時に、なぜブラック企業が店長育成にこだわり、店長にふさわしくない者は早々にふるい落とすのか、ブラック企業側の理由もわかるような気がする。

結局外食産業や小売業などは、いわば「店長力」が企業の力なのだと思う。

現場の店長の接客、仕入れや販売促進キャンペーンなどの采配、アルバイトの使い方で、その店の収益や顧客満足度が変わる。その意味で店長は最も重要な役職で、店長にするために正社員を雇っていると言ってもよい。だから、店長にふさわしくない社員はどんどんふるい落とすのだと思う。

しかし、ふるい落とされる社員にとっては、堪ったものではない。人生が狂わされる結果となる。

企業は店長にとなれる人材を求め、社員はそこそこ働いて人並みの給料がもらえる待遇の良い職場を求める。企業と社員の期待のミスマッチ、それがブラック企業問題のすべてだろう。

今野さんを含め、マスコミなどがいくらブラック企業の実態を報道し、ブラック企業大賞などで、世間の注目度を上げても、ブラック企業とわかっていながら、それでも入社する若者はなくならないと思う。

成功したい、野心のある若者は店長、さらにはその上を目指す。実態がある程度分かった上で、入社するのであれば、もはや外部から言うべきことはないと思う。

この本に書かれているのは一部の実態だと思うが、若者がブラック企業に入社するのであれば、前もって、一部の実態は分かっておいてほしい。

その意味では、この本を読んだり、YouTubeで「ブラック企業」や「今野晴貴」で検索すると出てくる次のような映像を見て、その上で採用応募の判断をすることをお勧めする。




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2013年09月07日

ライク・ア・ヴァージン リチャード・ブランソンの成功哲学



ヴァージングループ総帥のリチャード・ブランソンさんの成功哲学と、読者からの質問に答えるQ&Aをまとめた本。

ブランソンさんは現在でこそ「サー」・リチャード・ブランソンだが、バッキンガムの高校を中退して自分の雑誌を作り始めたころは、問題児だった。実は失読症と注意欠陥障害だったのだという。失読症(英語ではディスレクシア、Dyslexia)という病気の名前を初めて知った。

失読症とは、知的能力に異常がないにもかかわらず、読み書き学習に著しい困難を抱える障害である。トム・クルーズが告白して有名となり、レオナルド・ダヴィンチ、エディソン、アインシュタイン、ジャッキー・チェン、キアヌ・リーブスなども失読症だったという。

「マンガ・リチャード・ブランソン」という本にブランソンさんの子供のころの話が載っている。アマゾンの”なか見!検索”に対応しているので、ここをクリックして出だしのところを見てほしい。



ヴァージングループは現在世界に400社ある。ブランソンさんは高校を中退して「ストゥーデント」という雑誌の出版を始め、それからレコード店経営、レコード会社経営、さらには航空会社、フォーミュラ1レーシングチーム、宇宙旅行会社、失敗に終わったヴァージン・コーラなど様々な事業に乗り出していった。

この本では、自分の成功哲学を具体例を挙げて語るとともに、今まで受けた代表的な質問に対するQ&Aという形式で、ブランソンさんがヴァージングループの経営理念や、モーターボートでの大西洋横断、熱気球世界一周などの冒険に乗り出したことなどを自由に語っている。

この本はなんといっても翻訳がいい。いかにもブランソンさんが語っているような口ぶりで、頭にスッと入る。一部を引用しておこう。

「ぼくはだれかの下で働いたことがないので、この本は創業者の視点に立っている。でも、ここに書いたアドバイスは、企業で働くことの難しさに直面しているすべての人に当てはまるものだ。」

Q. 朝起きて、最初に考えることは?

A. 「普通の人と同じさ。『今何時かな?』って考えるよ。それから『どの国にいるんだっけ?』と。

Q. 朝、ベッドから起き上がる原動力となる言葉を一つ挙げると?

A. 「正確に言うと三つかな。『リチャード、いいかげん、起きなさい!』っていうグラスゴー訛りの妻の声だよ」

Q. 成功のカギとなる言葉を、三つ挙げてください。

A. 「ヒト、ヒト、ヒト」

Q. まだ手に入れたいものはある?

A. 「孫が欲しいよ。妻と一緒さ。どうか願いが叶いますように!」

Q. ヴァージン・ブランドを表現する単語を三つ挙げると?

A. 「革命的、おもしろい、お値打ち価格で質の高いサービス。最後のは単語じゃないけど、大目に見てもらえるかな」

というような具合で、テンポがよく軽妙だ。

参考になる話も多い。いくつか紹介しておく。


麻薬被害を減らす戦略

ブランソンさんは、もともと麻薬と戦うことが社会にとって最善の策だと思っていたが、「薬物政策に関する世界委員会」に加わったことをきっかけに考えが変わったという。

ポルトガルでは、2001年に薬物の使用と所持を非犯罪化し、ここ10年は麻薬犯を一人も刑務所に送っていない。ヘロイン使用者のための病院を設置し、注射や中毒治療用の合成麻薬剤メタドンを提供するとともに、医学的治療を施した。その結果、薬物使用者は大きく減少した。注射針を使いまわすことによるエイズも70%減少した。強盗の件数も大幅に減っている。

スイスも同様だ。通常は麻薬の使用者であり末端の売人でもあった中毒患者にヘロイン代替物を支給することにより、一般市民と麻薬組織とのパイプ役がいなくなったのだ。

ヴァージンでは他の国で成功した事例を研究し、どうすれば新しい市場に移植できるか考える。麻薬に対する戦いも同様だと。


CEOになりたいなら

CEOになりたいなら、会社のすべてを知り尽くす必要がある。ヴァージン・ブルー(今のヴァージン・オーストラリア)のCEOだったブレット・ゴドフレイは、幹部社員全員が航空会社のすべての業務を体験しなければならないというルールをつくった。ブランソンさんもチェックド・バゲージの積み込みをやって、整骨院に通うことになったという。

こうすることで、会社がどれだけ成長しても、適切な人材に仕事を任せられるようになる。部下が相談に来たときも、現場を直接知っていれば、適切なアドバイスができる。

それと、CEOは会社が振り出すすべての小切手に自らサインし、少なくとも6週間に1回はすべての発注書に目を通さなければならない。こうすることによって会社のお金の流れがわかる。

ブランソンさんはヴァージングループでも長年これを続け、半年のうち1か月はすべての小切手にサインする。グループ会社の社長にも同じことを求めているのだと。

会社のお金の流れをつかむというのは、基礎的だが重要なことだ。筆者の友人でも励行している人がいる。


量産可能な航空燃料プロジェクト

ブランソンさんは、工場のCO2を含む排ガスを利用して、航空燃料に変えるプロジェクトを紹介している。ニュージーランドのランザ・テックと開発しているのだと。

オーストラリアでは小型ユーカリ樹のマリーを使って、やはり航空燃料を生産するプロジェクトを推進している。これはヴァージン・オーストラリア、ダイナモーティブ・エナジー・システム、リニューアブル・オイルなどと組んでいる。


アップルのiPod, iTunesはエイプリルフールのジョークにインスパイアされた?

ヴァージンは世界各地にレコードショップのヴァージン・メガストアを経営していた。これの息の根を止めたのが、iPod, iTunesのアップル勢だ。

ブランソンさんは、ある年のエイプリルフールに、「イギリスに設置した巨大なコンピューターに、あらゆるレコード会社のあらゆる楽曲を保存し、音楽ファンがどこでも好きな音楽をダウンロードできるような”ミュージックボックス”という端末を発売する」と発表し、昼ごろにジョークだと発表した。

レコード会社の面々は真に受けて、「やめてくれ」と泣きついてきたという。ところが、スティーブ・ジョッブスはこれにインスパイアされて、数年後にiPod, iTunesをつくったのだという。

この話の教訓は、「エイプリルフールのジョークを仕掛けたら、最後まで自分でやれ」ということだと。

アップルのデザインやマーケティングはすばらしく、iPhoneによって携帯電話市場を席巻してしまった。それからiPadで出版業界に攻めてきた。


ヴァージンは新しいアイデアに対してオープンであり続ける

ヴァージン・レコードを始めたのは、マイク・オールドフィールドが、ほかのレコード会社に断られ続けた「チューブラー・ベルズ」を売り込みにきて、その価値に気が付いたからだ。マイクを助けるためにレコード会社をつくることにしたのだ。



ヴァージン・レコードは1990年代には世界最大の独立系レコード会社になった。今はヴァージンはレコード会社とレコード販売事業を売却してしまったが、音楽祭を主催するなど音楽との関係は保っている。



ヴァージン・メガストア事業からの撤退が遅れたことに関して、ブランソンさんは自分がタイムズスクウェアや、オックスフォードストリートなどの一等地に旗艦店を置くことにこだわったからだと語っている。

これらの旗艦店は知名度を上げるのに役立ち、グループの歴史にも深く結びついていたので、これらを失うことが怖かったのだと。


バーチャルネットワーク・モデルで事業展開

1990年代末には、携帯電話でTモバイルと組んでヴァージン・モバイルを立ち上げ、若者向けに割安な価格で提供し、同じモデルで世界各国でも事業展開した。

既存の会社と組んで、「ヴァージン」ブランドを冠したサービスを提供する”バーチャルネットワーク・モデル”がうまく機能した一例だ。


ABCD戦略

ブランソンさんはヴァージングループの戦略としてABCD戦略を挙げる。Always Be Connecrting Dots(ひたすら点と点を結べ)だ。故・スティーブ・ジョッブスの有名なスタンフォード卒業式スピーチを思い出させる。

次のスピーチの最初のテーマが"Connecting Dots"だ。ビデオの5分くらいから、"Connecting Dots"の教訓が語られている。



最初にヴァージン・アトランティック航空をスタートした時は、本業(ヴァージン・メガストア)と何の接点もなかった。

当時の航空会社のサービスはあまりにもお粗末だった。もっと質の高い仕事をすれば、大きなチャンスがあるはずだと思ったのが参入のきっかけだ。

実際に事業を始めて、機内エンターテインメントに最高の音楽と映画を持ちこみ、お客様の世話をするのが好きというスタッフを集め、居心地のよくモダンな内装を設計し、すべてを割安な値段で売り出すことにより、点と点がつながった。

ヴァージングループのカスタマーサービスで長年大切にしてきたルールは「最初に問題を知った者が、最初に対処する」というものだ。これの例が挙げられている。

サンフランシスコ空港でフライトの出発が遅れたとき、乗務員が飛行機から飲み物のワゴンを持ち出して、ゲートでお客様にサービスを始めた。数か月後、この乗務員にブランソンさんは年間優秀社員賞を授与したという。


事業化で考慮すべきポイント

最後にブランソンさんは事業化で考慮すべきポイントを挙げている。簡単だが参考になるので、紹介しておく。

1.価格は適正か?

2.設備が古くないか?

3.顧客になりそうな人々をリサーチしよう

4.サービスの幅を広げられないか?

5.収入の一部を地域の慈善事業に寄付しよう



翻訳が良いこともあり、スラスラ読める。本人は大変な努力をして、ヴァージングループを作り上げたのだろうが、労働者階級出身の人ではないので、底辺から這い上がったという感じはない。

気軽に読める成功哲学である。


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2013年07月25日

ブレイクアウト・ネーションズ BRICSは終わった? 次はどこだ?

ブレイクアウト・ネーションズブレイクアウト・ネーションズ [単行本]
著者:ルチル シャルマ
出版:早川書房
(2013-02-22)

モーガン・スタンレーで新興国・グローバルマクロ担当ディレクターで、250億ドルを運用するというルチル・シャルマさんの本。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次タイトルだけ紹介しておく。

第1章 長い目で見れば何でも正しい?
第2章 宴の後ー中国
第3章 誰もが驚く魔法のロープーインド
第4章 神様はきっとブラジル人ーブラジル
第5章 「大立て者(タイクーン)」経済ーメキシコ
第6章 天上にしかスペースがないーロシア
第7章 ヨーロッパのスイート・スポットーポーランドとチェコ(含ハンガリー)
第8章 中東に響く単旋律ートルコ
第9章 虎への道ー東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア)
第10章 金メダリストー韓国と台湾
第11章 エンドレス・ハネムーンー南アフリカ
第12章 第四世界ースリランカからナイジェリアまで(含ベトナム、ペルシャ湾岸諸国)
第13章 宴の後の後片付けーコモディティ・ドットコムを超えて
第14章 「第三の降臨」−次なるブレイクアウト・ネーションズ

世界各国を網羅的に紹介していることがわかると思う。

付録として新興国一覧とフロンティア諸国一覧が載っている。

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出典:いずれも本書352〜355ページ

ブレイクアウト・ネーションとは、これから突出して成長する国のことで、次のブレイクアウト・ネーションズになる可能性のある国は次の通りだ。

一人当たり国民所得が:

2.5〜2万ドルで成長率が3%を超えそうなのは、チェコと、第三次産業人口が増えず、製造業の常識をぶち破っている韓国。

1.5〜1万ドルではトルコとポルトガル。ちなみにトルコは、「エルドアン首相の強力なリーダーシップ」と褒めているが、もちろんトルコの政情不安が勃発する前の2012年発刊の本なので、致し方ないところだろう。

1〜0.5万ドルでは、タイ。ただし、新政権が誕生したばかりで、これから何ができるのかがまだ見えていないという。

0.5万ドル前後では中国が高い成長率を示すことが見込まれるほか、インドネシア、フィリピン(アキノ新政権に期待)、スリランカ(平和の配当)、ナイジェリア(誠実なリーダーが腐敗した政府に終止符を打つ)、さらに経済同盟が成立しようとしている東アフリカ諸国を挙げている。


いくつか印象に残った話を紹介しておく。

★中国の外貨準備は2兆5000億ドルあり、米国の主要債権国でもある。中国が債務問題を抱えていると思う人は誰もいないが、現実は違う。政府の発表している債務残高はGDPの30%だが、企業(多くは政府所有)と家計の債務残高はGDPの130%、しかもこれは公式発表数字の話だ。

シャドウバンキングと呼ばれる2008年から急増した、銀行を介さない融資残高は公式統計には含まれず、これを入れると中国の債務残高はGDPの200%を超えると見られるという。

★メキシコの10大ファミリーは、電話からメディアまでほぼあらゆる産業を支配しているので、ほどんど労せず値上げを断行でき、ほかの国では考えられないほどの高収益を享受できる。有名な企業としては、世界最大の通信会社・アメリカン・モービル、世界第3位のセメント会社・セメックス、世界最大のコカコーラ販売会社・フェムサ、食品会社のグルマなどだ。

★中国とメキシコは製造業で競合している。しかし、2002年の賃金格差は240%あったのが、最近は13%になっており、メキシコに有利になっている。

★ロシアには中間層は存在しない。中小企業の割合はほかのどの主要国よりも低く、起業家精神に満ちた企業はロシアにはほとんどない。ロシアは十分に保護された巨大国営企業と、誰も耳にしたことがない零細企業で成り立っている。

★モスクワ証券取引所には世界的な製造企業が一社も上場されていない。ウォッカの世界トップブランドにロシア企業は登場しない。ノーベル賞受賞者を27人も生んだ国としてはさびしい現実である。

★ロシアは世界でも最も人口密度の低い20か国のうちの一つで、わずか800しか都市がなく、そのうち人口100万人を超えるのは12都市だけだ。

★世界の10億ドル以上の資産がある資産家の数では、1位米国412人、2位中国115人の次にロシア100人が入っている。経済規模は中国の1/4なのに、ロシアの億万長者の資産総額は中国の億万長者の資産総額の倍であり、中国ほど厳しい競争にさらされていない。

★ポーランドとチェコなどがユーロを敬遠する理由は、共通通貨を採用すると自分の政策に手錠をかけるのと同じことになるからだ。危機の時に、自国通貨を切り下げられない国は、賃金を下げて競争力を保たないと、輸出が崩壊してしまう。これが2009年にギリシャやほかのユーロ圏小国に起こったことだ。

★南アフリカでは各種の社会手当を受けている人の数は1.600万人で、1998年の7倍だ。納税者一人当たり、3人の受給者がいる計算だ。

★モザンビークが大躍進を遂げたのは、ジョアキン・シサノ前大統領の神がかり的な指導力によるところが大きい。シサノ前大統領は、社会主義政策を放棄し、2期目の任期終了とともに、後進に道をゆずった。シサノ前大統領と後継者のすすめた改革で、モザンビークはこの10年で年率7%の成長を遂げた。

★フセイン亡きあとのイラク経済は石油生産の回復で、成長率が5%を超えている。2011年後半には9%を超えており、カムバック経済の代表となった。

★ベトナムの河川港の老朽化はひどく、ベトナムの港に入る船のコンテナーの平均数は169本で、コンテナーを1,000本運べるフィーダー船すら入港できない。現在は1万5千本を運べる超大型コンテナー船まで就航しているのに、ベトナムの後進性は際立つ。

★ベトナムは統制経済の典型的な経路をたどっており、投資額の配分も政治的理由で決まる。

Mペサはケニアで普及している携帯電話を使った少額決済サービスだ。Mペサが始まった2007年以降、銀行にお金を預けるケニア人の数は5人に一人から2人に一人になった。銀行預金が増加すれば、インフラ投資の資金源ともなる。

★カタールの天然ガス資源は膨大で、今のペースで生産を続けていても今後100〜200年は生産を続けられるだけの埋蔵量がある。2010年までの5年間の平均成長率は17.5%で、一人当たりの国民所得は10万ドルと米国の2倍である。

★ボストン・コンサルティング・グループは、2011年に発表した「メイド・イン・アメリカ再び」というレポートのなかで、なぜアメリカの製造業が復活するのかについて説得力ある議論を展開している。低コストのサウスカロライナ、アラバマ、テネシーを中心に製造業が復活すると予測している。


大前研一さんの一連の著書のように、インパクトある実話をもっと織り込めば、もっと良かったと思う。

国や地域にはプラスの評価もマイナスの評価も両方あり、この本ではマイナスの評価ばかり集めているが、もちろんこれらの指摘は一面の真実であって、その国をこれらの指摘だけで評価するわけにはいかない。

判断材料でなく、参考情報として読むべき本だと思う。


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2013年07月16日

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話
著者:本田 亮
大和書房(2013-04-20)
販売元:Amazon.co.jp

元電通のエクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの本田亮さんの本。

本田さんが、「望月衛介の音楽と広告」というラジオ番組に出演した時の話も公開されているので、こちらも参照願いたい。

アマゾンの表紙写真は、本田さんの手書きメモを紹介したものだが、本屋に並んでいる本には、次のようなカバーがついている。

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エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターというのがどういう役職なのかわからないが、電通のクエイエイティブ職のトップクラスなのだろう。本田さん自身の作品としては、「ピッカピカの小学生」や「こだまでしょうか?(AC)」などがある。





この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見ていただきたい。

肩ひじ張らない内容で、仕事の上での「気づき」を与えてくれると思う。


日本のクリエイターを代表する知人

筆者は以前、博報堂とのIT関係の合弁会社に居た関係で、博報堂のクリエイティブの人は何人か知っている。そのなかでも特に有名なのが、宮崎晋(顧問)チーフクリエイティブオフィサーだ。

きさくな人で、たまたま筆者のいた会社の博報堂側の担当役員だった関係で、社員向けに講演していただいた。

「入社以来定期券は持ったことない」とか、「通勤に使っている山手線は、その時の気分で内回りに乗ったり、外回りに乗ったりする」とかいった話が記憶に残っている。

毎日新しいことを探して町をほっつき歩いているから、定期券は持たない。また山手線の内回り・外回りにこだわらないのも、一つの見方に執着せず、常に違う見方がないか探すという心構えなのだ。

宮崎さんの作品はいくつもカンヌの国際広告賞を受賞している。たとえばカップヌードルの「ハングリー?」というシリーズだ。





そのほか、宮沢りえの「Santa Fe」という写真集の表紙で使ったドアを持ってきて撮影した豊島園のCMもある。

Santa Fe 宮沢りえSanta Fe 宮沢りえ [大型本]
著者:篠山 紀信
出版:朝日出版社
(1991-11)


雑誌の「ナンバー」も宮崎さんの作品だ。「ナンバー??」と毎号タイトルが変わるので、雑誌を認可している文部省(?)が難色を示したという話をされていた。ちなみに「ナンバー4」の表紙は、パンチを受けて腫れ上がった試合翌日の具志堅用高の写真だったのを覚えている。

具志堅用高










出典:ウェブ画像検索

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌]Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌] [雑誌]
出版:文藝春秋
(2013-06-27)


宮崎さんは、博報堂の役員を務めながらクリエイティブの現場にも復帰された。復帰作が黄桜の有名な江川と小林が出演するCMと、全日空のロマンあふれるCMだ。






話が博報堂にそれたが、この本で参考になった点をいくつか紹介しておこう。

02 プレゼンはかっこよくなくていい

電通に入って一番意外だったことは、「おもしろい企画」を出せば誰もが「おもしろい!」と言ってくれるのだと思ったら、そうではなかったことだ。「おもしろい企画」を出すことは仕事の半分だけで、残りは「おもしろい企画だと相手にわかってもらうこと」だとわかったという。

「みっともないくらいでもいいから、全身全霊で説明すること。それ以上のものでも、それ以下のものでもない」

10 人間臭さを前面にさらけ出す

クライアントに広告企画のプレゼンが終わった。女性プランナーは淡いブルーのスーツに身を包み、スマートにプレゼンして、大したものだと思っていると、クライアントの宣伝部長から突っ込みが入った。

「そんなことを言ってもね、そんなに簡単に番組が取り上げてくれるわけはないよ。われわれは、いつもそこで苦労しているんだ。」

「大丈夫です。私たちには秘策があります!」

(「大丈夫か!?、うちにそんな秘策あるのかよ?」)

「土下座です!」「最後はこの手しかありません。私が土下座してお願いしてきます!」

この思わぬ超アナログ兵器に会場中が大爆笑となり、仕事も勝ち取ったという。

18 企画は必ず、冷蔵庫に入れる

アイデアは考えるときは頭がホットなほうがいいけど、チェックするときは頭がクールなほうがよい。自分の手を離れたアイデアは、時間とともに他人のアイデアになっていく。

自分の企画に冷たく接することができるようになったときに、初めていい企画を作れるようになるのだと。

なお、どうでもよいことながら、28などで出てくる「決済」は「決裁」だ。やや誤字が多いのが気になる。

38 人生はジグザグに歩いたほうが長い
「直線の人生よりジグザグ人生のほうがはるかに長い線になる」。

39 努力できる才能を持つ宮里藍さん

宮里藍は非常に忙しいので、CM撮影のための時間は、1年のうちでもほんの数時間しかもらえないという。この時もオーストラリアのゴルフ場で、なんとか3時間もらって2本のCMを撮影した。

「午後はどんな予定が入っているんですか?」

「練習です」。 毎日毎日が練習ばかりなのだ。

藍ちゃんの凄いところは、「努力できる心」を持っていることなのだと。

このブログで紹介した「不動心」で、松井が言っている「努力できることが才能だ」という、言葉そのものだ。

不動心 (新潮新書)不動心 (新潮新書) [新書]
著者:松井 秀喜
出版:新潮社
(2007-02-16)


43 どんなときも、他人は見ている

仕事の評価は上司やクライアントの間だけで成り立っているとは思ってはいけない。まったく関係ない人に対してどう接しているかということが、意外とその人の仕事の評価にもつながっている。

44 マイク・ベルナルドに見た礼儀正しさ

あるときK1格闘家のマイク・ベルナルドをキャラクターに起用して、ニュージーランドでロケを行った。マイクのカットは順調に撮影が終わったが、商品カットに時間がかかりすぎてレストランに着いたのは10時近くだった。

マイクは先にホテルに帰るので、夕食の時に声をかけてくれと言っていた。コーディネーターが迎えに行くと、5時間も前にホテルに帰っていたマイクは食事をせずにじっと待っていた。

「みなさんの仕事が終わらないのに、食べることなんてできません」。

「えっ……本当に!?」その一言でスタッフ全員がマイクのファンになってしまった。

有名だったり地位が高かったり立場の強い人が謙虚に行動すると、すごく大きなインパクトを与える。マイクの礼儀正しさと優しさに「謙虚でいること」「頭を下げること」ってカッコいいことだと教えられたという。



49 一目置かれる営業マン

仕事で同じ能力のある2人の人間がいたとしたら、おもしろそうな人と仕事がしたいと思うのは当たり前のことだと思う。遊びも自分のセールスポイントにしたほうがいい。


50 自分が聞かれたことは、自分の口で返す

本田さんは、今や社長や専務になってしまった人の平社員だったころを知っている。

ひと言で言うと「矢面」だと。クライアントからも社内からも集中攻撃されて、全身に矢が刺さっているというイメージだ。

仕事の最前線にいると、ストレスも大きいけど、「矢面」に立つ姿が、クライアントからも社内からも信頼される存在になる。サラリーマンの仕事のだいご味が味わえるのだと。

本田さんは、自分にかかってきた電話や質問は、他人に振らないで自分の口で返すようにしている。情報が集中してくると、その人が仕事のハブとなり、その人なしでは仕事は進まなくなってくる。

55 遠距離通勤オフィス

本田さんは会社の仕事がものすごく忙しく、いくつかの雑誌に連載を抱えていたため、毎日が地獄のように忙しかったという。そんな本田さんの時間の作り方は、「電車企画室」だ。

通勤時間の1時間半を使って企画する。電車は意外と企画に向いている空間なのだ。雑誌の見出しを見れば、世の中の動きがわかる。中吊り広告には表現のヒントがある。乗客は企画の登場人物に見立て、窓の風景はシチュエーションのヒントになる。情報がたくさんあるのに、誰も干渉してこないところは、図書館にも似ている。

今でも本田さんは、企画に詰まると、「ちょっと電車に乗ってくる」といって、山手線一周して帰ると、仕事の5つや6つは片付いているのだと。

上記で紹介した博報堂の宮崎さんと似た発想だ。毎日通勤時間を「電車読書室」にしている筆者も、わが意を得たりという気がする。

長くなりすぎるので、この程度にしておく。気軽に読めて、仕事の「気づき」を与えてくれる、参考になる本である。


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2013年07月13日

この金融政策が日本経済を救う 高橋洋一さんの金融政策入門書

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)この金融政策が日本経済を救う (光文社新書) [新書]
著者:高橋洋一
出版:光文社
(2008-12-16)

リーマンショック直後の2008年末に出版された嘉悦大学教授・元財務官僚の高橋洋一さんの「世界一簡単な金融政策の入門書」。これが現在のアベノミクスのベースとなっている。

このブログでは高橋洋一さんの最近著の2013年3月に出版された「アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる」と2012年末に出版された「日本経済の真相」のあらすじを紹介している。

アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる (現代ビジネスブック)アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる (現代ビジネスブック) [単行本(ソフトカバー)]
著者:高橋 洋一
出版:講談社
(2013-03-28)

日本経済の真相日本経済の真相 [単行本(ソフトカバー)]
著者:高橋 洋一
出版:中経出版
(2012-02-15)

イェール大学の浜田宏一名誉教授も、「アメリカは日本経済の復活を知っている」で、この本を推薦書として挙げている。

アメリカは日本経済の復活を知っているアメリカは日本経済の復活を知っている [単行本]
著者:浜田 宏一
出版:講談社
(2012-12-19)


高橋教授の論点を整理すると次の通りだ。

日本の景気は2007年中ごろから後退しているが、これはサブプライムローンの影響ではない。日銀が2006年から2007年にかけて金融引き締め策を打ち出したからだ。

市場に資金供給を減らしたから、日本は景気後退に陥り、日本株は暴落した、。サブプライムローンから最も縁遠い日本が、最も激しい景気後退に襲われたのだ。

日銀が金融政策を誤り、市場に資金供給を減らしたからだ。

日銀のホームページの「にちぎん☆キッズ」という子供向けのコーナーには次のように書いてある。

「デフレのとき、日本銀行は、銀行などの手持ちのお金をふやすそうさをします。
インフレのときや、インフレになりそうなとき、日本銀行は、銀行などの手持ちのお金をへらすそうさをします」。

昔は、公定歩合の上げ下げが金融政策の基本だったが、現在は「公定歩合」という呼び名すらなくなっている。現在の金融政策の中心ツールは、公開市場操作だ。

つまり、日銀が銀行から国債やREITなどを買い上げて、銀行に資金を振り込む。その資金を銀行は融資に回すのだ。


名目金利と実質金利

日銀や世界の中央銀行は、長い間ゼロ金利政策を続けてきた。これ以上は金利では打つ手がないように思えるが、そうではない。名目金利はゼロ以下には下げられないが、実質金利はいくらでも下げられるので、実質金利を下げればよいのだ。

国民の物価上昇率予想に働きかけ、予想がプラス2%のインフレ予想であれば、ゼロ金利なら実質マイナス2%の金利となる。企業は積極的に設備投資を行って、不況から脱出できるのだ。

逆にデフレで、毎年1%づつ物価が下落していれば、ゼロ金利だとプラス1%の金利がついているのと同じになる。つまり1%の金利で資金を借りると、それは実質2%の金利がかかることになる。だから企業の設備投資が盛り上がらないのだ。

このインフレ予想に働きかけるのが量的緩和策だ。


量的緩和

日銀は紙幣を印刷して、民間銀行が持っている国債などを買い取り、民間銀行の当座預金残高を増やす。民間銀行はそのお金を企業の設備投資資金等に貸し出す。紙幣の発行益は、シニョレッジと呼ばれ、国庫納付金として財政収入となる。

早い話が、紙幣をたくさん刷れば、インフレになるというのと同じだ。

日本では財政政策でなく、公共投資で景気回復するという論陣を張るエコノミストが多いが、高橋さんは、ノーベル経済学賞受賞者の「マンデル・フレミング理論」を紹介し、変動為替相場制のもとでは、公共投資の効果が輸出減、輸入増で海外に流出してしまうので、理論的には財政政策の効果はないと説く。


大恐慌からの脱出は金融政策がカギだった

大恐慌からの脱出は、ニューディール政策による公共投資でなく、金融政策がカギであったと最近の大恐慌研究では明らかになっている。

「オズの魔法使い」は19世紀末のアメリカの金融政策からヒントを得ているという。OZは金の単位のオンスの略号で、ドロシーは伝統的なアメリカ人の価値観、カカシは農民、ブリキのきこりは産業資本、ライオンは民主党のブライアン候補だという。

高橋さんは大蔵省の新人研修で、「男子の本懐」を読んで感想文を書けという問題に対して、高橋さんはなぜ世界大恐慌のなかで、浜口雄幸と井上準之助が金解禁を行ったのか理解できなくて感想文を書けなかったという。

男子の本懐 (新潮文庫)男子の本懐 (新潮文庫) [文庫]
著者:城山 三郎
出版:新潮社
(1983-11)

世界のどの国でも金本位制は放棄され、現在に至っている。本来愚策の金解禁のはずが、「男子の本懐」では美談に仕立てられている。

この疑問が解消したのは、留学先のプリンストン大学でバーナンキの「大恐慌論文集」を読んでからだという。

世界恐慌は金本位制によって発生して伝播した。大恐慌から脱出するためには、金本位制を捨て、金融緩和をすることが必要だった。金本位制を維持した国は十分な金融緩和ができず、デフレから抜け出せなかった。金本位制を放棄した国は自由に金融緩和ができて、すぐに抜け出せた。

大恐慌論大恐慌論
著者:ベン・S・バーナンキ
日本経済新聞出版社(2013-03-26)
販売元:Amazon.co.jp


大恐慌研究の世界的権威のバーナンキは、政府が国債を大量に発行し、日銀が国債を購入するという高橋是清の政策を高く評価していたという。これが大恐慌脱出の決定版といえる究極の政策で、ミルトン・フリードマンのいう「ヘリコプター・マネー」、バーナンキのいう「マネー・ファイナンシング」なのだと。


デフレなら円高は続く

為替相場も重要だ。一般に物価上昇率に差がある二国の通貨は、物価が低い方の国の通貨は長期的に通貨高になる。デフレを止められなかった日本は、当然の結末として円高になっていたのだ。


日銀の独立性は手段の独立性

高橋さんは、メディアも含めて多くの人が「日銀の独立性」を誤解しているという。「中央銀行は手段の独立性は確保されているが、目標は政府と協調して決めるのが世界の標準」なのだと。

目標は政府が決めるが、その目標のもとで、どのような手段をどのようなタイミングでやるかは中央銀行が責任を持つ。つまり日銀には手段の独立性が認められているかわりに、本来であればPDCAサイクルを導入し、日銀が選んだ手段の有効性を検証して、失敗であればペナルティを課すというのが世界の常識であると。

こういった考え方を持っていたのに、民主党の反対により日銀副総裁就任を拒否されたのが、東京大学の伊藤隆敏教授だ。伊藤教授の「インフレ目標政策」はこのブログでも紹介している。

インフレ目標政策インフレ目標政策
著者:伊藤 隆敏
日本経済新聞出版社(2013-02-26)
販売元:Amazon.co.jp


日本の景気悪化は金融引き締めが原因

この本は2008年12月に発刊された。つまりリーマンショック(2008年9月)の直後だ。当時、筆者も含めた誰もが日本の景気悪化はサブプライムローン問題によるリーマンショックにより、輸出が減少したためだと思っていたと思う。

日本のGDPに占める輸出の割合はせいぜい15%程度なのに、あれだけ景気が急速に悪くなったので、筆者は間接輸出(見かけは国内取引だが、最終製品は輸出される)が、かなりあるためだと思っていた。

全く的外れだったわけだ。

高橋さんは、この本で日本の景気悪化は2006年から2007年にかけての金融引き締めが原因だと断言する。つまり日銀の政策ミスが原因だと。2008年第2四半期のGDP成長率は、サブプライム問題まっただ中の米国がプラス2.8%で、サブプライム問題の影響がないはずの日本がマイナス3%だった。


外為特会を機動的に運用

高橋さんは、「霞が関埋蔵金」で有名だが、埋蔵金のなかでも大きいのが外国為替資金特別会計(外為特会)の超過積立金だ。この本の当時で20兆円あると言われていた。

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)
著者:高橋 洋一
文藝春秋(2008-05)
販売元:Amazon.co.jp


高橋さんは、渡辺喜美金融担当大臣時代に、金融庁の金融市場戦略チームの一員となって、超過積立金を米国の政府系金融機関の救済に機動的に運用する戦略を打ち出しているが、実現しなかったという。既に外為特会を使って、ファニーメイ債などに8兆円投資していたので、株式とスワップすることを考えていたのだと。


25兆円の量的緩和と25兆円の政府通貨発行

この本の最後で、高橋さんは非常時(当時はリーマンショックのまっただ中だった)の対策として、25兆円の量的緩和と、25兆円の政府通貨発行を提言している。25兆円の政府通貨発行を財源として、2年くらい社会保険料を免除するのだと。

通常時であればインフレを引き起こすが、100年に一度の大恐慌であれば、インフレは有効な治療薬となるだろうと。実際の黒田日銀の政策は50兆円より規模は大きい。高橋さんの提言は、まさに株高、円安の流れを作ったアベノミクスそのものだ。


高橋さんが、「世界一簡単な金融政策の入門書」というだけあって、数式は一切出てこず、わかりやすい。

筆者が読んでから買った本の一つである。今なら、アマゾンの中古品なら12円(+送料250円)で買える。高橋さんのようなリフレ派は長らく経済学の主流とはなれなかったが、アベノミクス登場で、流れは変わった。例の予備校講師のコマーシャルではないが、12円なら、買うのは「今でしょ」。


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2013年06月18日

マッキンゼー流入社1年目の問題解決の教科書 これが教科書?

マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書 [単行本]
マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書
マッキンゼー流 入社1年目問題解決の教科書 [単行本]
著者:大嶋 祥誉
出版:ソフトバンククリエイティブ
(2013-04-27)

エクゼクティブ・コーチングなどの人材育成コンサルタント会社、センジュヒューマンデザインワークス社長の大嶋祥誉(さちよ)さんの本。

大嶋さんは、上智大学卒業後、米国デューク大学でMBAを取得。マッキンゼー勤務のあと、ウィリアム・エム・マーサーワトソン・ワイアット、三和総合研究所などの人材コンサルティング会社やヘッドハンターで勤務した後、2002年に独立した。

編集者は「マッキンゼー流」というタイトルをつけて、売らんかなという姿勢なのだと思うが、アマゾンの、カスタマーレビューでも辛口のコメントが多いようだ。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見てもらえれば、大体の内容が推測できると思う。

著者の大嶋さんは、独立して人材育成コンサルタント会社を興しているのは、スゴイとは思うが、マッキンゼー流のフレームワークを学ぶのであれば、読むべきなのは、この本ではない。

このブログで紹介している「ロジカル・シンキング」と、「ロジカル・ライティング」の2冊だ。

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution) [単行本]
著者:照屋 華子
出版:東洋経済新報社
(2001-04)

ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING)ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING) [単行本]
著者:照屋 華子
出版:東洋経済新報社
(2006-03-24)

これらの本の著者の照屋さんは長年、マッキンゼー等で、コミュニケーションのプロとして多くのコンサルタントを教えている。

筆者も読んで、当時大学生だった長男にプレゼントした。

長男は昨年就職して、現在はある会社の地方の寮にいる。

家から持っていた本の中には、「ロジカル・シンキング」と「ロジカル・ライティング」そして、バーバラ・ミントの「考える技術、書く技術」が入っていた。よほど気に入ったようだ。

考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則考える技術・書く技術―問題解決力を伸ばすピラミッド原則 [単行本]
著者:バーバラ ミント
出版:ダイヤモンド社
(1999-03)

照屋さんの本こそ、フレームワークのことを理解するための必読書だということを、この本を読んで、あらためて気づかされた。

2冊とも2,300円と結構高いので、どちらか一冊ということなら、「ロジカル・ライティング」をおすすめする。

照屋さんの「ロジカル・シンキング」は2001年発刊の本、バーバラ・ミントの「考える技術・書く技術」は1999年の本だが、どちらも、いまだにアマゾンの売り上げ600位くらいに入っている。

本物の「教科書」はどういうものかがわかるだろう。


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2013年06月13日

漁業という日本の問題 ニシンは絶滅 このままだと日本の漁業資源は枯渇する!

日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)日本の魚は大丈夫か―漁業は三陸から生まれ変わる (NHK出版新書 360)
著者:勝川 俊雄
NHK出版(2011-09-08)
販売元:Amazon.co.jp

ひとことでいうと「乱獲」に他ならない日本の漁業の実態を、するどく解明する三重大学准教授の勝川俊雄さんの本。

勝川さんは、ほかに「漁業と言う日本の問題」などの著書もある。

漁業という日本の問題漁業という日本の問題
著者:勝川 俊雄
エヌティティ出版(2012-04-12)
販売元:Amazon.co.jp

両方読んでみたが、ほぼ同じ内容で、「日本の魚は大丈夫か」では放射能汚染についても触れているので、こちらを買った。ひさしぶりの読んでから買った本である。

勝川さんはYouTubeにも日本の漁業改革について英文で投稿している。説明している内容はこの本とほぼ同じだ。著者の勝川さん自身が吹き込んでいるわかりやすい英語なので、参考になる。



日本の漁業の最大の問題は、「乱獲」

日本では「オリンピック方式」で、日本の漁業者であれば誰でも「よーい、ドン」で参画できる。

それゆえ、いずれ高く売れる成魚になる幼魚でも、逃したら他の誰かが捕ってしまうので、肥料や飼料用にしか売れないような安い値段にもかかわらず、網で根こそぎ捕っていってしまう。

だから漁獲量が年々減少し、漁業者は自分で自分の首を絞めているのだ。

いままで漁業の問題については、韓国漁船や中国漁船が日本の排他的経済水域内に来て、勝手に魚を捕っていくことが問題だと思っていたが、実は乱獲を放置している日本の水産行政が最大の問題だった。

たとえば東シナ海の底曳(そこびき)網漁業の漁獲量の推移は次の通りだ。

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出典:本書39ページ

最新の魚群探知機を備えた大型漁船による魚を文字通り「一網打尽」にする底曳網漁法で、漁獲量がこれだけ減少しているということは、漁業資源が乏しくなっていることに他ならない。


漁獲割り当ての絶大な効果

一方、たとえばノルウェーでは次の表のように漁業生産額が毎年増加している。

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出典:本書118ページ

日本とノルウェーとの差は、漁獲量割り当てがあるかないかだ。


世界の水産先進国では当たり前の漁獲割り当て

ノルウェー以外でも、世界の水産先進国を見てみると、いまや資源保護のために漁獲割当制が当たり前となっている。

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出典:60ページ

つまり漁業も管理漁業の時代になっているのだ。

ノルウェーでは漁船ごとに漁獲枠を配分しているので、他人をさしおいて自分だけ早く魚を捕りにいく必要がない。

だから日本のように早く魚群を見つけるためにエンジンを強化したり、強力なソナーを設置する必要がない。

魚の相場を見て、高く売れそうな時に捕りに行き、魚をできるだけ高く売るために、フィッシュポンプをつけたり、捕った魚を冷やしておく冷凍設備などを充実させている。

たとえばサバで比較してみると、ヨーロッパと日本では大きな差がある。

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出典:本書

日本ではサバの漁獲量は激減しており、1970年代のピークの500万トンに比べて、近年では100万トンを割っている。

一方、ヨーロッパはピークの600万トンよりは減ったものの、400万トンくらいで安定しており、近年ではむしろ増加している。

漁獲の年齢構成でも大きな差がある。

日本では1980年ころまでは、漁獲の年齢構成はバランスが捕れていたが、1985年に漁獲高が激減して以降は、ほとんど0〜3歳の魚ばかりで、これでは親となって卵を産む前の幼魚を根こそぎ捕っている状態だ。

ヨーロッパでは、漁獲の大半を5〜6歳以上の成魚が占めており、日本の年齢構成とは大きな差がある。再生産ができる体制が維持できているのだ。

マグロについても同様だ。再生産のできない魚齢のものばかり日本では捕っている。

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出典:本書


ノルウェーのニシンは復活、日本のニシンはほぼ絶滅した

ニシンについても、漁獲高が激減した1970年代後半に禁漁措置を取り、資源を増やす努力をした結果、ニシン資源は回復し、それ以降も厳しい漁獲制限を実施している。一方、日本のニシンは乱獲のためにほぼ絶滅した。


魚の価値を高め、高く売るための努力

ノルウェーの漁業者は成魚を中心に漁獲し、魚を高く売る為の努力をしている。
YouTubeに勝川さんがノルウェーの漁業協同組合にインタビューした内容が掲載されているので、紹介しておく。



ノルウェーの漁業協同組合は、漁船から漁獲重量と体重組成の連絡を受け、インターネットのオークションで世界中に向けて売りに出す。

成魚のみ漁獲し、一定基準以下の幼魚は捕らないのだ。

入札参加資格は、水揚げ設備を持っている水産加工場なので、ノルウェー以外にもスコットランドなどの水産会社も入札に参加し、スコットランドの会社が落札すれば、漁船は直接スコットランドに行って水揚げするという形だ。

成魚を最も高く売るシステムができあがっているのだ。

漁協の手数料は0.65%と非常に低い。日本の漁業協同組合が、旧態依然としたセリで魚を売り、セリの参加者同士の談合を見て見ぬふりをしながらも5%の手数料を取ることと大違いだと勝川さんは語る。


イカ釣り漁船の集魚灯

先日の円安による燃料費高騰に抗議して、一部のイカ釣り漁船が一斉に2日ほど休漁することがあった。

日本ではこのようなイカ釣り漁民の苦境が報道されるが、なぜそういった事態になっているのかは報道されない。

日本の漁業は「オリンピック方式」なので、イカ釣り漁船は他の誰よりも早く漁場に到着して、他の誰よりも強力な集魚灯でイカを集めて釣る必要がある。

そのために強力なエンジン、高性能魚群探知機、そして高出力の集魚灯が必要なのだ。だから燃料費が高騰すると、たちまち採算割れという事態に陥る。

集魚灯も現在はLED集魚灯に変わって、電力消費は減っている。それでも宇宙から日本近海を見ると、集魚灯の明かりで煌々と照らされていることがわかる。(次のビデオの1:28から1:40あたりが日本の夜景)



韓国漁船や中国漁船も中にはいるのかもしれないが、世界中でこれほど明かりをつけて夜に漁をしている地域はない。

そもそもこんな「オリンピック方式」で、高いコストを掛けて、漁獲を競いあって維持可能なのだろうかと思う。


いままであまり知らなかった日本の漁業の問題点がよくわかった。水産庁や漁協の圧力があるのかどうかわからないが、この種の漁業問題を取り上げた本は少ない。

筆者が読んでから買った本の一冊だ。大変参考になると思う。


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2013年06月09日

ハーバード流宴会術 本はタイトルで売れ!?

ハーバード流宴会術ハーバード流宴会術
著者:児玉 教仁
大和書房(2012-11-24)
販売元:Amazon.co.jp

ハーバードMBA卒、三菱商事鉄鋼部隊出身で、現在はグローバルアストロラインズというベンチャー企業の代表取締役社長の児玉教仁さんの”日本流”宴会術。

児玉さんによると、ハーバードは、”パーティ・スクール”と呼ばれているほど、各種イベントやパーティが多く、生徒の多くはパーティの達人だったという。

しかし、このブログで紹介したマイクロソフト社長の樋口泰行さんの「愚直論」では、MBAの勉強中は、毎週数冊の本を読み、毎晩3時か4時まで必死に予習しないと授業についていけないと書いている。

「愚直」論  私はこうして社長になった「愚直」論 私はこうして社長になった
著者:樋口 泰行
ダイヤモンド社(2005-03-04)
販売元:Amazon.co.jp

”パーティ・スクール”と呼ばれているなどというノー天気な話は、正直信じられない。

ハーバード・ビジネススクールには卒業生の同窓会があり、日本でもHBS Club of Japanとして活動している。

著名経営者はじめ、ゲストの講演も多いはずなので、そいういったゲストとのパーティや、卒業生パーティなどで、パーティ術を身につけたのかもしれないと思って半信半疑で読んでみた。

まずは目次を紹介しておこう。この本はアマゾンの”なか見!検索”に対応しているので、ここをクリックしてこの本の目次を見てほしい。

コラムとしては、「外国人のパーティは必ず2人で行け」(日本人の友達と二人で行けと児玉さんはいうが、自分の友達だけと話すのはパーティのルール違反だと筆者は思うが…)などの外国人とのパーティ術があるが、それ以外は日本の宴会術についての本であることがわかると思う。

アマゾンのカスターマーレビューでも、辛口のコメントが多いようだ。

このブログで「入社1年目の教科書」、「超凡思考」などを紹介したライフネット生命保険副社長の岩瀬大輔さんが、”激推薦”と本の帯には書いてある。

入社1年目の教科書入社1年目の教科書
著者:岩瀬 大輔
ダイヤモンド社(2011-05-20)
販売元:Amazon.co.jp

超凡思考超凡思考
著者:岩瀬 大輔
幻冬舎(2009-02-10)
販売元:Amazon.co.jp

しかし、岩瀬さんは児玉さんとはハーバードMBAで同期で、MBA学生140人もの"Japan Tour"を一緒にオーガナイズしたという関係はあるが、別に岩瀬氏の推薦文が載っているわけではない。

ハーバードMBA卒の人が本を出すと、出版社は売らんがために「ハーバード流○○術」というタイトルで本を出したいようだ。

しかし、「ハーバード流」でも本物の「ハーバード流」がある。

たとえば「ハーバード流交渉術」は、ハーバード・ロースクールのロジャー・フィッシャー教授が代表者となっている"Harvard Negotition Project"(交渉術研究所)の研究成果で、いまやビジネス書の古典に属する名著だ。

ハーバード流交渉術ハーバード流交渉術
著者:ロジャー フィッシャー
阪急コミュニケーションズ(1998-03)
販売元:Amazon.co.jp

筆者はこの本を大変気に入ったので、英文の原著まで購入した。手元には1987年版のオーディオ・ブックがある。

Getting To Yes: Negotiating An Agreement Without Giving InGetting To Yes: Negotiating An Agreement Without Giving In
著者:Roger Fisher
Random House Business Books(2012-06-07)
販売元:Amazon.co.jp

本物の「ハーバード流」を知りたいのなら、こっちを読んだ方が良いだろう。


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