2009年11月30日

松坂大輔が読んでいるトレーニングの本 復刻版登場

2009年11月30日再掲:

松坂大輔が読んでいるトレーニングの本として紹介した本が講談社から復活した。

筋を鍛える   ヒトはトレーニングによってどう変わるのか?筋を鍛える ヒトはトレーニングによってどう変わるのか?
著者:石井 直方
販売元:講談社
発売日:2009-09-30
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かなり専門的な内容だが、筋トレの最新理論を詳しく紹介し、具体的なトレーニング方法も紹介しているので参考になる。

もともとは山海堂という出版社から出ていた本だが、出版社が倒産し、アマゾンの中古本市場では実に1万円以上していたことは、以下に説明したとおりだ。

今回復刻版が出たので、オリジナルの本の中古価格は700円くらいになってしまっている。

今だから明かせるが、実は今年の1月にオリジナルの本のあらすじを書いた直前に大学のクラブのOB会があり、石井教授から復刻版が出ると聞いていた。

しかし当時は中古本がプレミアムで売れていたので、この情報を公開すると中古本ディーラーの人に影響が出ると思って、元々のあらすじには復刻版のことはふれなかった。

なにはともあれ、トレーニングの伝説の名著が、簡単に読めるようになったのは喜ばしいことだ。

普通の人にはちょっと専門的すぎるかもしれないが、第5章は「キミはマイケル・ジョーダンになれるか?」という様な肩のこらない読み物になっている。

今度は簡単に手に入るので、ぜひ書店で手にとって見てほしい。


2009年1月27日初掲:

先日のNHKテレビの「スポーツ大陸」の松坂大輔特集を見ていたら、松坂がこのブログでも紹介しているスロトレで有名な東大の石井教授の本を読んでトレーニング法を研究している場面があった。

それがこの本だ。

石井教授自身は、日本で2度ほど松坂の練習を見たと言っておられたが、松坂の体はあきらかにアメリカに行く前と違う。

現在のほうが筋肉がついて、いかにも大リーグのピッチャー(筆者は大リーグのピッチャーというと、ロジャー・クレメンスのイメージが浮かぶ)らしくなってきたという感じだ。

この本が松坂のビルドアップに役立っているのだと思う。

筋と筋力の科学〈2〉筋を鍛える―トレーニングするとからだはどうなるのか? (からだ読本シリーズ)筋と筋力の科学〈2〉筋を鍛える―トレーニングするとからだはどうなるのか? (からだ読本シリーズ)
著者:石井 直方
販売元:山海堂
発売日:2001-07
おすすめ度:4.5
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先週石井教授にお会いしたので聞いてみたら、実はこの本の出版社の山海堂が倒産したので、もうこの本を買うことはできないのだとのこと。

同じシリーズの「重力と闘う筋」にはプレミアムはついていないので、まさに松坂効果だと思う。

筋と筋力の科学〈1〉重力と闘う筋―筋はどのようにして力を出すのか? (からだ読本シリーズ)筋と筋力の科学〈1〉重力と闘う筋―筋はどのようにして力を出すのか? (からだ読本シリーズ)
著者:石井 直方
販売元:山海堂
発売日:2001-07
おすすめ度:4.5
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この本は絶版で、アマゾンのマーケットプレースでは1,800円の本に15,000円の値段がついている。

町田市の図書館では蔵書がなかったが、図書館同士の貸し借りネットワークがあるので、西東京市図書館から借りて貰った。

このように稀少本でも図書館にリクエストすれば読めるのだ。


この本はサニーサイドアップ社発刊「月間フィジーク」というトレーニング雑誌(現在は休刊)に、1999年から石井教授が連載したシリーズ記事をまとめたもので、次の目次のようにかなり専門的な内容だ。

第1章 レジスタンストレーニングの効果
  1.トレーニング効果とは
  2.トレーニング効果の動作特異性
  3.トレーニング効果の現れ方
第2章 トレーニング効果発現のメカニズム
  1.トレーニングによる筋肥大のメカニズム
  2.メカニカルストレスと筋肥大
  3.代謝・内分泌系と筋肥大
  4.筋内の酸素環境と筋肥大
第3章 トレーニング法の違いと効果の違い
  1.刺激の要因と特徴を理解する
  2.さまざまなトレーニング法
第4章 スキルという迷宮
  1.筋を制御する仕組み
  2.スキルという迷宮
  3.予測(読み)と反射とイメージトレーニング
第5章 キミはマイケル・ジョーダンになれるか?
  1.ダンクシュートの力学
  2.トレーニングでできるようになること、ならないこと
  3.運動能力と遺伝

トレーニングの基礎理論に加え、様々な実験結果が満載で参考になる。

いくつか参考になった点を紹介する。


腕や脚の周径位が10%増えると、筋肉の量は20%増える。

だから1998年の大リーグのホームラン王だったマーク・マグワイア選手(その後ドーピングの疑いがかけられているが黙秘することで記録は剥奪されていない)の上腕囲は51センチだったので、日本のプロ野球選手の平均上腕囲が36センチとすると、上腕囲が40%アップ、筋力は2倍と推定される。

オリックスのカブレラなどの上腕囲の太さはマグワイア並だと思うが、日本の野球選手の倍の筋力というのは、うなずける気がする。松坂もアメリカに行って相当筋力アップしているはずだ。

トレーニングを開始して1ヶ月くらいで筋力は伸びるが、筋量をふやすには最低3ヶ月、中高齢者は4ヶ月以上トレーニングを継続する必要がある。

特に中高齢者は筋肥大が若者に比べて遅い。筆者も加圧トレーニングを週1回程度続けているが、やはりこれでは現状維持がやっとだ。最低回数を週2回以上にして4ヶ月以上続ける必要がありそうだ。

この本の原稿は1999年頃に書かれたものなので、石井教授自身が加圧式トレーニングを半信半疑で試してみて、驚くべき効果が得られたことが書かれている。

加圧トレーニングは筋内の酸素環境を強く刺激して効果を得るトレーニングだが、これと同様の効果を得られる可能性があるトレーニングとして、コンティニュアス・テンション・メソッド(「常時緊張法」とでも訳すべきか)という名称で、スロトレの原型が紹介されている。

唯一無二の絶対的トレーニングはないので、継続的に能力を向上させたい場合は3〜4ヶ月毎にトレーニングの方法や処方を見直し、段階的に変える必要があるというのも重要な指摘だ。


最新のスポーツ理論の本だけに、現在スポーツ界で深刻な問題になっているステロイド、成長ホルモン、遺伝子ドーピングなどについても解説している。

特に高齢者の筋萎縮治療や、筋ジストロフィー治療に開発された遺伝子ドーピング療法の悪用は「スポーツ自体を滅ぼす最終兵器」になるおそれがあるとして、強く注意を呼びかけている。

石井教授は、筋肉を増強する悪魔の技術をいくつか挙げている。ネガティブミオスタチンインスリン様成長因子(IGF−I)そしてミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP−2,UCP−3)などがあるという。

北京オリンピックでベラルーシのハンマー投げのチホン選手など2選手がドーピングで失格して室伏選手が3位に繰り上がったが、ベラルーシの選手もこういった遺伝子関係の巧妙なドーピングをやっていたのかもしれない。

トップ選手ほど壁を乗り越えるために大変苦労するのだろうが、カベを乗り越えるために薬物を使っては倫理上の問題は勿論、自分の健康もむしばむことになる。

一時は隆盛を極めた野球のマーク・マグワイアもドーピングのせいで、野球の殿堂入りはまず無理と言われている。バリー・ボンズも薬物を使用していたのに、使っていなかったとウソをついたと偽証罪で訴えられている。

筆者はピッツバーグに2度駐在しているが、バリー・ボンズは元々ピッツバーグパイレーツの選手だった。最初の駐在(1986年ー1991年)のときのボンズはスリムだったのに、二度目の駐在(1997年ー2000年)のとき(サンフランシスコ・ジャイアンツ)はえらく筋肉隆々になっていたのに驚いた記憶がある。

ドーピングした選手の末路はみじめである。せいぜいホセ・カンセコの様に暴露本をだすくらいしか金を稼ぐ方法がなくなる。

Juiced: Wild Times, Rampant 'roids, Smash Hits, And How Baseball Got BigJuiced: Wild Times, Rampant 'roids, Smash Hits, And How Baseball Got Big
著者:Jose Canseco
販売元:Regan Books
発売日:2006-03
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かなり専門的な内容で、こんな本を読んで、あきらかに一回り体を大きくしている松坂大輔投手を見直した。稀少本なので、買うと15、000円もしてしまうので、是非もよりの図書館でリクエストして探して読んで欲しい本だ。


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Posted by yaori at 23:45Comments(0)TrackBack(0)