
著者:大前研一
日経BP社(2011-02-24)
販売元:Amazon.co.jp
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大前研一さんの過去40年間にわたる100冊以上の著書や雑誌のコラムなどの言葉を集めた本。
いわば大前版「道をひらく」だ。

著者:松下 幸之助
PHP研究所(1968-05)
販売元:Amazon.co.jp
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元々はビジネス・ブレークスルーのスタッフが、大前さんの言葉をツイッターで紹介する「大前研一 BOT」を開始したところ、またたく間にフォロアーが万人単位で増え、それが注目されたものだという。
筆者は大前さんの本はかなり読んでいる。引用した本を入れると、このブログでもたぶん40冊くらいは紹介していると思う。
大前さんの本を読んでいつも感心するのは、ネタが常に新しいということだ。
大前さんはサラリーマン「再起動」マニュアルで、神田地区にある「江戸っ子寿司」がいきつけだと言っていたが、ネタが新鮮な大前さんが推薦する「江戸っ子寿司」はさぞかしネタが良いのだと思う。
冗談はさておき、この本は筆者があらすじを書く上でも大変参考になった。というのは、この本には大前さんの250くらいの言葉がまとめられているので、ブログで紹介する言葉に優先順位をつける必要があったからだ。
筆者は通常読んだ本で、参考になったところにはポストイットを貼っておき、あとでその部分を中心にあらすじを書いている。しかしあまりにも参考になる部分が多いとポストイットが多すぎて、結局あらすじが書けない本がいくつもある。
その代表例がカーネギーの「人を動かす」だ。

著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
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カーネギーの「人を動かす」は日本語では数回しか読んだことがないが(最初は日本語で読んだ)、英語のオーディオブックはたぶん100回くらいは聞いていると思う。ほとんどのストーリーが頭に入っているが、あまりに参考になる部分が多いので、あらすじにまとめきれないのだ。
この本も参考になる言葉が多く、ポストイットだらけになったが、1ページに一つの文だけなので、優先順位を付けやすかった。だから最初に読んだときにポストイットを貼りまくり、次にポストイットを貼った場所に優先順位をつけて、あらすじに紹介す言葉を選び出した。
同じやり方で、他の本のあらすじもまとめればよいということに気が付いた。つまりポストイットの部分をすべて紹介するのではなく、参考になる部分をさらに厳選してあらすじにまとめるのだ。
このやり方で、まだあらすじを書けていないウォルマートのサム・ウォルトンの本とか、ポストイットだけ貼って、あらすじを書けていない本を今後紹介していく。

著者:サム・ウォルトン
講談社(2002-11-20)
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閑話休題。
横道にそれたが、上記の一次選抜>二次選抜方式で、選んだのが次の10作の大前さんの言葉だ。
この本は「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次も見て欲しい。
未来は予測できる
「その力はなぜ起きているのか。一時的なものか、継続的なものか。継続するとすれば、その力は強くなるのか。ベクトルは一定か、変化するかなどを考え、その結果、現象が先々どのように変化するのかと考える。
こうした論理的な洞察を繰り返すことで、自ずと未来が予測できる。これは「予言者」の勘、あるいは霊感とは異なり、誰でも身につけることのできる能力だ。」
原出典:「Think!」 2009 No.30
この未来予測可能性については、「ビジネス力の磨き方」のあらすじを参照して欲しい。
「未来は予測できる」という発想が重要だ。
ノウハウを手にする
「与えられた仕事は、文句をつけたり拒んだりするべきではない。すべてはチャンスだ。せっかくいやな仕事をやり遂げるのだから、自分は必ずノウハウを手にしてやる、と心に決めて取りかかっていけばいい。」
原出典:「朝日新聞」 2003年3月2日
同趣旨のことは、楽天の三木谷さんも言っている。三木谷さんの場合にはルーティンジョブの典型の外国為替に配属されたが、与えられた仕事に集中し、ついには銀行派遣のハーバード留学生になれた。
筆者も全く同感だ。就職が決まった大学4年生の長男にも、この言葉を贈りたい。
指数関数
「人の二倍考える人間は10倍の収入を得ることができる。三倍考える人間は、100倍稼ぐことができる。」
原出典:「考える技術」
人間が変わる三つの方法
「人間が変わる方法は三つしかない。一つは時間配分を変える、二番目は住む場所を変える、三番目は付き合う人を変える。この三つの要素でしか人間は変わらない。もっとも無意味なのは、「決意を新たにする」ことだ。」
原出典;「プレジデント」2005年1月17日号
世間話ができない
「日本全体のこととか、世界経済だとか、東京全体の問題とかは、一生懸命考えてきたけれど、下町の風景のなかでおじいちゃん、おばあちゃんと世間話ができない。
日本改造から自分はスタートしたが、まずは自分の改造が先だということに気がついたのだった。」
原出典;「大前研一敗戦記」
このブログで紹介した大震災と原発事故からの復興計画を提案する「日本復興計画」でも、この傾向が出ていると思う。大前さんの欠点の一つは、庶民感覚がないのだ。

著者:大前 研一
文藝春秋(2011-04-28)
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大前さんは政治家には向いていないと思う。
妥協
「ビジネス・プロフェッショナルに、『妥協』の二文字は厳禁です。妥協とは自分の都合であって、顧客の都合はもちろん、ビジネス・パートナーの都合なども一方的に無視する、甘えた態度です。」
原出典:「ザ・プロフェッショナル」
筆者もインターネット企業に出向して、このことを痛感し、かつ反省している。”NO”はいつまで経っても”NO”で、”YES”とはならないのだ。何に”NO”を言うのかが、経営者の職務なのだ。
自分の家の庭に原子炉を作るつもりで考える
「MIT(マサチューセッツ工科大学)の原子力工学部の名物教授で、マンハッタン計画にも参画していたトムプソン教授の言葉を思い出す。
彼はわれわれ大学院生に原子炉の安全に関しての講義のなかで、『一番基本的なことは開発技術者としての知識を云々するよりも、当該原子炉を自分の家の裏に作る、という態度で物事を考えること』と教えてくれた。」
原出典:大前の頭脳
現在原発事故で問題になっている原子炉の安全性の基本がこれだ。つまり原子炉設計者は、NIMBY(=Not In My Back Yard)ではイカンという教えである。
最近も原発の現場で作業に当たっている東電社員が累積350ミリ・シーベルトの放射線を浴びたという報道があった。
現場のみんなが決死の覚悟で作業に当たっておられるのだと思う。
このブログで紹介した京大原子炉実験所の助教の小出裕章さんの「隠される原子力 核の真実」に書いてあった通り、放射線が身体にダメージを与えることは間違いない。

著者:小出 裕章
創史社(2011-01)
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生命体を構成しているDNAなどの分子結合エネルギーはせいぜい数電子ボルトだが、放射線のエネルギーは数百万から数千万電子ボルトに達する。放射線が身体に飛び込んでくれば、DNAはじめ身体の分子構造が切断されてしまうのだ。
筆者の先輩で原子力学科を卒業した人は、結婚するときに精子を保存したと言っていた。
大前さん自身もMITで放射能を含んだ物質を呑み込んでしまったとYouTubeで公開されているビジネスブレークスルー大学院大学の講義で言っていた。まさに内部被ばくである。それだけ原子力関係者は被ばくのリスクにさらされているのだ。
筆者は、このブログで紹介した広瀬さんや小出さんの言うように、原発を全部廃止することは、人類の進歩に逆行すると思う。原子力関係者の奮闘を評価して、原発をより安全なものにすべく我々も支援すべきだと思う。
唯一のツール
「私の唯一のツールは、「なぜか」である。同じ商品なのに、売れるセールスマンとそうでない人間がいるのは「なぜ」だろう。東京で売れて、大阪で売れないのは「どうして」だろう。そういうことをいつも考えていると、答えは見えてくる。」
原出典:「ニュービジネス活眼塾」
サマリーを作る練習をする
「プレゼン能力を高めるためには、サマリーを作る練習を繰り返さなければならないのである。具体的にはどうすればいいのか?私は、ベストセラー小説や文学賞を受賞した小説を読んで、それがなぜベストセラーになったのか、自分なりの論理で説明する、という訓練を薦めたい。」
原出典:「サラリーマン『再起動』マニュアル」
筆者もまさにこのブログで、サマリーを作る練習を繰り返している。このブログで書いた様に、要約の重要性がわかったのは、アルゼンチンでスペイン語を学んだ時だ。
アルゼンチン駐在の二年目はカトリック大学の講師にオフィスに来て貰って、週1回個人教授を受けていた。その教え方が要約だった。
短編小説集を教材にして、一つの短編を翌週までに読見込んで、次の授業の冒頭でその短編のあらすじをスペイン語で説明する。そして短編を読んで新しく覚えた単語を使ってスペイン語で作文するのが宿題だった。
この勉強を続けたので、帰国して研修生上がりでは唯一のスペイン語社内検定一級になれた。
サマリーを作る練習を筆者も是非お勧めする。あなたのビジネス力がアップすること請け合いだ。
ビル・ゲイツも悪夢を見る
「マイクロソフトにしても、トヨタ自動車にしても、経営トップは強烈な危機何を抱いています。かつてビル・ゲイツは、「今日、私が一つ判断を誤れば、この会社は明日にも潰れる。そういう夢をいまでもよく見る」と私に語ってくれました。」
原出典:「ザ・プロフェッショナル」
冒頭に紹介したように、松下幸之助の「道をひらく」のように、毎日1ページ読む座右の書としても使える本だと思う。
大前さんの特長である「ネタ」の新しさがこの本では味わえないので、やや魅力には欠けるが、大前さんの考え方が概略わかって参考になる本である。
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