
著者:クリス・アンダーソン
NHK出版(2012-10-23)
販売元:Amazon.co.jp
前作「フリー」を大ヒットさせた米国「ワイアード(Wired)」誌編集長、クリス・アンダーソンの近著。

著者:クリス・アンダーソン
日本放送出版協会(2009-11-21)
販売元:Amazon.co.jp
![Wired [US] March 2013 (単号)](http://ecx.images-amazon.com/images/I/51nBfBvJiKL._SL160_.jpg)
Conde Nast Publications(2013-02-22)
販売元:Amazon.co.jp
「MAKERS」というタイトルでもわかる通り、今度は製造業だ。
いま世界中におよそ1,000か所以上の工作スペースがあり、その数は増えている。キンコーズのような誰でも使える工作スペースを展開しているのがTechShopだ。
手作り品の職人のためのウェブ市場、Etsyでは、2011年に100万人の売り手が、5億ドルを超える取引を行った。サンマテオはじめ、各地で開催されるメイカーフェアは、どこも盛況だという。
オバマ政権は、2012年から4年間で、全国の1,000か所の学校に3Dプリンターやレーザーカッターなどのデジタル工作機械を完備した「工作室」を開くことを決定した。
オンラインを、現実の製造の世界にも持ち込めることになってきたのだ。
何千という中小のメイカーが、キックスターター(Kickstarter)をはじめとするクラウドファンディングでプロジェクト資金を調達している。
いままではオンライン・スタートアップ企業はオンラインのみのサービスが多かったが、いまやリアル世界の製造業スタートアップ企業が増えているのだ。
特に少量の小口生産品などは、企業がつくると多額の費用が掛かるが、個人で金型などを作って、製造すればむしろ企業より個人の方が競争力がある。
それを可能としたのは、3Dプリンターや、3Dスキャナーなどの情報機器と、小口でも部品の注文に応じることができるインターネット企業だ。誰でもアイデアさえあれば、製造業を始められる時代になったのだ。

立体造形できる積層式3Dプリンター 良蔵 (よいぞう)

Printrbot LC
販売元:Amazon.co.jp
この本では、具体的な例として次のようなものをあげている。
★娘たちのドールハウスの家具
種類が少ない上に、高価なドールハウスの家具も、自分で3Dプリンターでつくれば、思い通りのデザインとサイズのものができる。
デザインは3Dデザイン共有サイトのThingivereseで手に入れ、3Dプリンターをつないで、「作成」をクリックすると、20分後にはドールハウス用の家具が完成したという。
ちなみにThingivereseは3DプリンターのMakerBotと提携している。

MakerBot
販売元:Amazon.co.jp
★歯科矯正用のマウスピース
すこしずつ形を変えたマウスピースを2−3週間ずつ装着し、数か月かけて歯の位置を調整することができる。
専用ソフトウェアを使えば、すこしずつ形を変えて最終的な理想形まで到達するまでの中間的なマウスピースを簡単に制作できる。
★3Dプリンターでチョコレートなどを押し出してカップケーキの装飾をつくる
★バイオプリンターで幹細胞(ES細胞)の層を積み重ねて臓器をつくる
まだ実験段階だが、将来は、iPS細胞が使えるようになるだろう。
★ローカルモーターズという自動車会社は、自分たちで自動車をつくりたいという2,000人がアイデア、知識を持ち寄って、一部は既存の車の部品を活用することでラリーファイターという車をつくりあげた。
次のビデオがローカル・モーターズの製造現場を紹介している。
★ローカルモーターズは国防総省のクラウドデザインによる次期戦闘用車両(XC2V)のコンテストにも優勝している。次のビデオがデザインを基にモデルを実際に手作りで仕上げている様子を紹介している。
★ブリックアームズは、レゴの正規品にはないAK−47などの現代的な武器をレゴ用につくっている。まずはCADソフトでデザインしてデスクトップの工作機械で試作品を作る。それが良ければ金型をつくって、米国国内の工場で射出成型して販売している。レゴ本社では、現代的な武器はご法度なので、こういった傍流レゴを容認している。
★BtoBでは、2000年前後に、はやったe-steelやメタルサイトなどのBtoBサイトや逆オークションなどは、ITバブルにまぎれて衰退した。残ったのはMFGドットコムという、特注品の見積もりを取るサイトだ。見積もり比較の機能はなく、入札もないが、これで十分だったという。
逆オークションについては、筆者も一時注目して、これが筆者が鉄鋼原料からIT業界に移るきっかけとなった。
CADの図面を送って、見積もりを取るだけという単機能でよかったと言われると、その通りかもしれないと思うが、こういった工業用の資材には品質の問題がある。
サプライヤーの品質が信頼できるのかどうかわからない。
それがこのブログでも紹介した中国発のBtoBサイト、アリババの問題でもある。
ちなみに、アリババの創業者・ジャック・マーは、著者のクリス・アンダーソンが初めて会った時は体重35キロくらいで、英語が抜群にうまかったという。

著者:張 剛
東洋経済新報社(2010-07-09)
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結局はBtoBの工業用資材には簡単な調達法はないのだ。
アマゾンのジェフ・ベゾスがMFGドットコムに注目し、大株主となった。いまでは、20万人以上の会員がいて、これまでに1150億ドルの取引が行われ、ひと月の取引額は20〜40億ドルに上るという。
どんな会社でもCADファイルをアップロードすれば、見積もりを取ることができる。これは同じファイル形式を使っているから、情報伝達のロスがなくなり、取引コストが下がったからだ。
この他にも最新の事例が紹介されている。いつもながら、刺激に富む本である。
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