2013年07月30日

ヒトは食べられて進化した 化石からわかる真実

ヒトは食べられて進化したヒトは食べられて進化した [単行本]
著者:ドナ・ハート
出版:化学同人
(2007-06-28)

アンリ・ルソーの人を襲うヒョウの表紙絵がキャッチーな本。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして表紙、目次、そして頭の後ろにかぶるトラよけのインドのお面の写真をチェックしてほしい。

昔のカップヌードルの"Hungry?"というコマーシャルにあるように、人間は集団による狩りや、こん棒やヤリ、弓矢などの武器を発明して、どんどん動物を追い詰め、日本オオカミなど多くの種類を絶滅させたと思われているが、実は人間自身が動物に食べられていたという事実を紹介している。



ネコ科、ハイエナ、オオカミなどのイヌ科、クマ、空から襲ってくる猛禽類、ヘビ、変わったところではコモド・オオトカゲなど、人間を捕食してきた動物たちは多い。

この中で最も気を付けなければならないのは、ネコ科のライオン、トラ、ヒョウ、ピューマなどだ。ハイエナもネコ目のハイエナ科である。

ライオン、トラなどは夜間獲物を襲うことは少ないが、ヒョウは夜行性で、寝ているヒトを襲い、殺して獲物を横取りされないように、木の上に引っ張り上げるという。

ディズニーのアニメ映画「ターザン」でも冒頭のシーンで、ゴリラの子供がヒョウにやられた後、ターザンの父母もヒョウにやられて、残された赤ん坊のターザンがゴリラに育てられるシーンが出てくる。



この本でもヒョウが人を獲物にしている想像図が載っている。おぞましい絵だが、一目瞭然なので紹介しておく。

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出典:本書


人間は常に食べられていた

ヒトはチンパンジーから約500万年前に分岐して(分岐は600〜760万年前という報告もある)、独自の進化系を構成した。

320万年くらいにアフリカにいたアウストラロピテクス・アファレンシスの人体骨格の40%がアフリカ・エチオピアで発掘され、ルーシーという愛称で呼ばれている。

人間は最近1万年くらいはヤリや弓矢、ここ1,000年位は鉄砲などで、ほかの動物には圧倒的な強さを示し、今では武装していれば、ネコ科等の動物にやられることは、ほとんどなくなった。

しかし、その前の500〜600万年は、動物に食べられる弱い存在だったのだ。

ゴリラなど大型霊長類も含めて、霊長類はネコ科などの猛獣に食べられていた。


ネコ科の捕食のやりかた

ゴリラがヒョウにやられるというのは、にわかには信じがたいが、この本ではヒョウの糞にゴリラの足指がそのまま見つかった写真を載せている。

ネコ科の捕食は後をつけて、動けなくするのが基本だ。最終段階での攻撃では、飛び掛かって伸縮自由の鋭い爪で獲物をつかみ、首のひと噛みで脊髄を切断して死をもたらす。

さらに、噛み方は、獲物を窒息させるための首へのひと噛み、鼻や口をねらうひと噛み、獲物の頭骨を押しつぶすほどのひと噛みという3つのバリエーションがある。

ヒョウに人間やゴリラがやられる場合でも、首へのひと噛みで勝負は決するのだ。


北京原人の化石はハイエナに食べられたヒトの骨

ネコ科に属するハイエナ類も、その抜群のあごの力で、ヒトを捕食してきた。

北京原人の骨が発掘された周口店では、頭蓋骨が破壊された人骨が多く発見された。当初は北京原人が人肉を食べていたという仮説が出されたが、その後、ハイエナが頭骨をかみ砕いて、脂質のつまった脳を食べていたという説が有力になった。

周口店で発見された北京原人の骨はハイエナに食べられた人類の骨だったのだ。

武器も持っていないヒトが、なんらかの理由で集団から離れると、猛獣の恰好の獲物だろう。

この本の原題は"Man the Hunted"だ。たしかに、人類の歴史の中で、動物に食べられることも、動物を食べることと同様に頻繁に起こっていたのだと思う。

読んでいくうちに、ネコが嫌いになってくるという副作用?はあるかもしれないが、新しい視点に気付かせてくれる本である。


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2013年07月28日

月刊ボディビルディング 石井教授のミスター日本DVD付き

ボディビルディング 2013年 09月号 [雑誌]ボディビルディング 2013年 09月号 [雑誌] [雑誌]
出版:体育とスポーツ出版社
(2013-07-25)

学生の時は毎号買っていた「ボディビルディング」の最新号に、「スロトレ」で有名な石井直方東大教授がミスター日本になったときのDVDが付録でついている。

石井教授はYouTubeでも、トレーニングするとなぜ筋肉が太く強くなるのか研究しているが、実はよくわからないことが多いと説明している。



石井教授は1981年と1983年にミスター日本になっているが、付録は1983年の優勝の時のものだ。

ミスター日本と、この時からはじまったミス日本ボディビルコンテスト第1回の模様が収録されている。ミスター日本は全部で60分余りで、石井教授のポージングは43分過ぎから、優勝決定は54分頃に収録されている。ちなみにミス日本ボディビルコンテストは55分くらいの長さだ。

ミスター日本になるには、筋肉の量ももちろん必要だが、ディフィニション(筋肉のキレ)が絶対に必要だ。

この時の石井教授の筋肉のキレはすごい。ここまでキレの良い体をつくりあげた、当時の石井教授の節制に敬意を表するとともに、筆者も最近は週1回しかトレーニングできていないので、もっと回数を増やそうと思う。


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2013年07月25日

ブレイクアウト・ネーションズ BRICSは終わった? 次はどこだ?

ブレイクアウト・ネーションズブレイクアウト・ネーションズ [単行本]
著者:ルチル シャルマ
出版:早川書房
(2013-02-22)

モーガン・スタンレーで新興国・グローバルマクロ担当ディレクターで、250億ドルを運用するというルチル・シャルマさんの本。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次タイトルだけ紹介しておく。

第1章 長い目で見れば何でも正しい?
第2章 宴の後ー中国
第3章 誰もが驚く魔法のロープーインド
第4章 神様はきっとブラジル人ーブラジル
第5章 「大立て者(タイクーン)」経済ーメキシコ
第6章 天上にしかスペースがないーロシア
第7章 ヨーロッパのスイート・スポットーポーランドとチェコ(含ハンガリー)
第8章 中東に響く単旋律ートルコ
第9章 虎への道ー東南アジア(インドネシア、フィリピン、タイ、マレーシア)
第10章 金メダリストー韓国と台湾
第11章 エンドレス・ハネムーンー南アフリカ
第12章 第四世界ースリランカからナイジェリアまで(含ベトナム、ペルシャ湾岸諸国)
第13章 宴の後の後片付けーコモディティ・ドットコムを超えて
第14章 「第三の降臨」−次なるブレイクアウト・ネーションズ

世界各国を網羅的に紹介していることがわかると思う。

付録として新興国一覧とフロンティア諸国一覧が載っている。

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出典:いずれも本書352〜355ページ

ブレイクアウト・ネーションとは、これから突出して成長する国のことで、次のブレイクアウト・ネーションズになる可能性のある国は次の通りだ。

一人当たり国民所得が:

2.5〜2万ドルで成長率が3%を超えそうなのは、チェコと、第三次産業人口が増えず、製造業の常識をぶち破っている韓国。

1.5〜1万ドルではトルコとポルトガル。ちなみにトルコは、「エルドアン首相の強力なリーダーシップ」と褒めているが、もちろんトルコの政情不安が勃発する前の2012年発刊の本なので、致し方ないところだろう。

1〜0.5万ドルでは、タイ。ただし、新政権が誕生したばかりで、これから何ができるのかがまだ見えていないという。

0.5万ドル前後では中国が高い成長率を示すことが見込まれるほか、インドネシア、フィリピン(アキノ新政権に期待)、スリランカ(平和の配当)、ナイジェリア(誠実なリーダーが腐敗した政府に終止符を打つ)、さらに経済同盟が成立しようとしている東アフリカ諸国を挙げている。


いくつか印象に残った話を紹介しておく。

★中国の外貨準備は2兆5000億ドルあり、米国の主要債権国でもある。中国が債務問題を抱えていると思う人は誰もいないが、現実は違う。政府の発表している債務残高はGDPの30%だが、企業(多くは政府所有)と家計の債務残高はGDPの130%、しかもこれは公式発表数字の話だ。

シャドウバンキングと呼ばれる2008年から急増した、銀行を介さない融資残高は公式統計には含まれず、これを入れると中国の債務残高はGDPの200%を超えると見られるという。

★メキシコの10大ファミリーは、電話からメディアまでほぼあらゆる産業を支配しているので、ほどんど労せず値上げを断行でき、ほかの国では考えられないほどの高収益を享受できる。有名な企業としては、世界最大の通信会社・アメリカン・モービル、世界第3位のセメント会社・セメックス、世界最大のコカコーラ販売会社・フェムサ、食品会社のグルマなどだ。

★中国とメキシコは製造業で競合している。しかし、2002年の賃金格差は240%あったのが、最近は13%になっており、メキシコに有利になっている。

★ロシアには中間層は存在しない。中小企業の割合はほかのどの主要国よりも低く、起業家精神に満ちた企業はロシアにはほとんどない。ロシアは十分に保護された巨大国営企業と、誰も耳にしたことがない零細企業で成り立っている。

★モスクワ証券取引所には世界的な製造企業が一社も上場されていない。ウォッカの世界トップブランドにロシア企業は登場しない。ノーベル賞受賞者を27人も生んだ国としてはさびしい現実である。

★ロシアは世界でも最も人口密度の低い20か国のうちの一つで、わずか800しか都市がなく、そのうち人口100万人を超えるのは12都市だけだ。

★世界の10億ドル以上の資産がある資産家の数では、1位米国412人、2位中国115人の次にロシア100人が入っている。経済規模は中国の1/4なのに、ロシアの億万長者の資産総額は中国の億万長者の資産総額の倍であり、中国ほど厳しい競争にさらされていない。

★ポーランドとチェコなどがユーロを敬遠する理由は、共通通貨を採用すると自分の政策に手錠をかけるのと同じことになるからだ。危機の時に、自国通貨を切り下げられない国は、賃金を下げて競争力を保たないと、輸出が崩壊してしまう。これが2009年にギリシャやほかのユーロ圏小国に起こったことだ。

★南アフリカでは各種の社会手当を受けている人の数は1.600万人で、1998年の7倍だ。納税者一人当たり、3人の受給者がいる計算だ。

★モザンビークが大躍進を遂げたのは、ジョアキン・シサノ前大統領の神がかり的な指導力によるところが大きい。シサノ前大統領は、社会主義政策を放棄し、2期目の任期終了とともに、後進に道をゆずった。シサノ前大統領と後継者のすすめた改革で、モザンビークはこの10年で年率7%の成長を遂げた。

★フセイン亡きあとのイラク経済は石油生産の回復で、成長率が5%を超えている。2011年後半には9%を超えており、カムバック経済の代表となった。

★ベトナムの河川港の老朽化はひどく、ベトナムの港に入る船のコンテナーの平均数は169本で、コンテナーを1,000本運べるフィーダー船すら入港できない。現在は1万5千本を運べる超大型コンテナー船まで就航しているのに、ベトナムの後進性は際立つ。

★ベトナムは統制経済の典型的な経路をたどっており、投資額の配分も政治的理由で決まる。

Mペサはケニアで普及している携帯電話を使った少額決済サービスだ。Mペサが始まった2007年以降、銀行にお金を預けるケニア人の数は5人に一人から2人に一人になった。銀行預金が増加すれば、インフラ投資の資金源ともなる。

★カタールの天然ガス資源は膨大で、今のペースで生産を続けていても今後100〜200年は生産を続けられるだけの埋蔵量がある。2010年までの5年間の平均成長率は17.5%で、一人当たりの国民所得は10万ドルと米国の2倍である。

★ボストン・コンサルティング・グループは、2011年に発表した「メイド・イン・アメリカ再び」というレポートのなかで、なぜアメリカの製造業が復活するのかについて説得力ある議論を展開している。低コストのサウスカロライナ、アラバマ、テネシーを中心に製造業が復活すると予測している。


大前研一さんの一連の著書のように、インパクトある実話をもっと織り込めば、もっと良かったと思う。

国や地域にはプラスの評価もマイナスの評価も両方あり、この本ではマイナスの評価ばかり集めているが、もちろんこれらの指摘は一面の真実であって、その国をこれらの指摘だけで評価するわけにはいかない。

判断材料でなく、参考情報として読むべき本だと思う。


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2013年07月23日

イヴの七人の娘たち ミトコンドリア・イヴとは?

イヴの七人の娘たち (ヴィレッジブックス N サ 1-1)イヴの七人の娘たち (ヴィレッジブックス N サ 1-1)
著者:ブライアン・サイクス
ウイーヴ(2006-11)
販売元:Amazon.co.jp

ヒト細胞のミトコンドリアからDNAを取り出し、そのパターンを研究することでヒトの起源を研究するオックスフォード大学人類遺伝学教室のブライアン・サイクス教授の本。日本では2001年に出版されている。

「ノンフィクションはこれを読め」で紹介されていたので読んでみた。

ノンフィクションはこれを読め!  - HONZが選んだ150冊ノンフィクションはこれを読め! - HONZが選んだ150冊 [単行本]
著者:成毛 眞
出版:中央公論新社
(2012-10-24)


サイクス教授の研究室では、自分のDNA検体を送ると199ポンドで自分がどの祖先の系列に属するかDNA判定してくれるサービスをウェブで提供している。

同じウェブサイトでは、この本の続編の「アダムの呪い」にちなんでY染色体の分析サービスも提供しているようだ。「アダムの呪い」も今度読んでみる。

アダムの呪い (ヴィレッジブックス)アダムの呪い (ヴィレッジブックス)
著者:ブライアン サイクス
ヴィレッジブックス(2006-12)
販売元:Amazon.co.jp


ミトコンドリアDNAが選ばれた理由

ヒトの起源を研究するために、ヒトの細胞のミトコンドリアDNAが研究対象に選ばれた。

ミトコンドリアは細胞内に共生し、細胞がエネルギーを作り出す手助けをする。筋肉や脳、神経などの活発な細胞には、1,000ものミトコンドリアが含まれている。ミトコンドリアDNAが選ばれた理由は次の通りだ。

1.細胞核に含まれるDNAより、ミトコンドリアDNAの方が多く含まれている。
2.細胞のDNAが30億塩基もの膨大な規模なのに、ミトコンドリアDNAは1万6千5百塩基しか含まれておらず、しかもそのうち500塩基のDループと呼ばれる部分に突然変異が集中している。
3.細胞核のDNAの突然変異が10億年に1度という頻度に対し、ミトコンドリアDNAの突然変異はより高い頻度で起こるので、分子時計として役立つ。


ミトコンドリアは常に母系遺伝

ミトコンドリアは卵子には25万個も含まれているが、精子にはしっぽの部分に卵子をめざして泳いでいくときに必要なエネルギー分の、ごくわずかのミトコンドリアしか含まれていない。

受精するときには、精子のしっぽは切り捨てられ、受精卵のミトコンドリアはすべて母親と同じものになる。だから、ミトコンドリアDNAは母系遺伝しかないのだ。


ミトコンドリア・イヴ

1987年にUCバークレーのレベッカ・キャンとアラン・ウィルソンのグループが世界147民族のミトコンドリアDNAを調査した結果、アフリカ人の系列とアフリカ人から分岐した系列に分かれることがわかった。これが人類アフリカ単一起源説を裏付ける有力な証拠となった。

そして、現人類の最も近い共通母系祖先は16万年+/ー4万年にアフリカに住んでいた女性だということがわかった。これをマスコミが「ミトコンドリア・イヴ」と名付けた。

この本では、「彼女は60億人一人ひとりの母系祖先の根本に位置する。われわれはみな、彼女の直接的な母系子孫なのだ。」と表現している。


ミトコンドリア・イヴの誤解

これが非常に誤解を招く部分だ。全人類の共通の祖先は15万年前にアフリカに住んでいた一人の女性、つまり「ミトコンドリア・イヴ」だというように、しばしば誤解されているが、そういう意味ではない。

ミトコンドリアDNAは母系のみしかたどれないので、たまたま生まれた子が男ばかりだったりすると、そこでミトコンドリアDNAの系図は途切れてしまい、それ以上はたどれない。しかし、だからといって、系図が切れてしまうわけではない。

我々の父母は2人だが、祖父母は4人、祖々父母は8人、祖々々父母は16人と、年代をさかのぼるほど祖先の数は増えていく。20世代さかのぼれば、祖先の数は100万人を超す。しかしミトコンドリアDNAの祖先は、母親、の母親、の母親、の母親…という具合に世代に一人だけだ。

人類の祖先のうち、ミトコンドリアDNAがつながったのは一系統だけで、ルートをたどれば、ミトコンドリア・イヴまでたどりつくという意味である。誤解を避けるために、今では「ラッキー・マザー」と呼ぼうという動きがあるようだ。

「ミトコンドリア・イヴ」と同じ時代の他の女性も、われわれの祖先である可能性がある。しかし、ミトコンドリアDNA系図は途切れているので、わからないということなのだ。


現代人類のミトコンドリアDNAグループ

現代人類のミトコンドリアDNAのパターンは、次の35グループに仕分けられている。名前はそのグループの共通の祖先となった女性のニックネームだ。

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出典:本書325ページ

現在のヨーロッパに住んでいる6億5千万人の90%は次の7つのグループに属するという。それが「イヴの7人の娘」と呼ばれる祖先たちで、この本の主題だ。

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出典:本書322ページ

「イヴの7人の娘たち」というと、あたかもイヴに7人娘がいたように聞こえるが、上記の表を見てもわかるとおり、4万5千年前のアースラから、1万年前のジャスミンまで年代もバラバラ、生きた環境もバラバラのバーチャル祖先像だ。

7グループのうち、ジャスミンのみが肥沃な三角地帯で生まれ、農耕をヨーロッパにもたらしたグループの祖先だ。他の祖先は、すべて狩猟民族である。


バスク人は特別

現代のバスク人は、もともと農耕が伝わる前のヨーロッパに暮らしていた狩猟民族の末裔であり、血液型もRH−が世界一多いという特徴がある。

筆者のアルゼンチン時代のベルリッツ・スクールのスペイン語の先生の一人がバスク人の女性だった。白人にしては背が低く、すんぐりした体型の人で、南欧系のエキゾチックな顔をしていた。

どうでもいい話だが、インフレ率が年200%を超える当時のアルゼンチンで、彼女はダイナースのクレジットカードを持っていた。クレジットカード払いなら、支払いは1カ月ほど先になるので、月間10%ほどのインフレ分は割引になる。

結構いいファミリーの出身だったのだろうが、日本人の駐在員でもクレジットカードを持っておらず、札束を持って歩いていた時代なので、うらやましかったものだ。

ちなみにアルゼンチン人の10%はバスク系だという。エヴァ・ペロンとか、チェ・ゲバラもバスク系ということだ。


日本人の祖先は9グループ

日本人の95%は、次の表のように9つのグループのいずれかを祖先に持っているという。

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出典:本書357ページ

この本では日本人に関しては、アイヌや琉球人はもともと日本列島に住んでいた縄文人で、韓国からやってきた弥生人のために、北と南へ追いやられてしまったという学説を紹介している。日本人の大半のDNAは現代韓国人と共通しているので、母系祖先は弥生人以降の移民にたどることができるという。

ミトコンドリアDNAによって現代人の祖先を探る研究の成果のみ紹介したが、この本の半分はミトコンドリアDNA分析による次のようなテーマの調査であり、興味深い内容だ。

★アルプスで発見された5,000年以上前のアイスマンのDNA分析

アイスマン―5000年前からきた男 (ノンフィクション 知られざる世界)アイスマン―5000年前からきた男 (ノンフィクション 知られざる世界) [単行本]
著者:デイビッド ゲッツ
出版:金の星社
(1998-01)


★ロシア革命の時に虐殺されたロシア皇帝ニコライ2世一家の遺体のDNA鑑定

ニコライ二世とアレクサンドラ皇后―ロシア最後の皇帝一家の悲劇ニコライ二世とアレクサンドラ皇后―ロシア最後の皇帝一家の悲劇 [単行本]
著者:ロバート・K. マッシー
出版:時事通信社
(1996-12)


★ポリネシア人のルーツの判定

ヘイエルダールがコンチキ号でポリネシア人の南アメリカ起源説が可能であることを実験で示したが、ミトコンドリアDNAの分析では、アジア起源説が立証された。

コン・ティキ号探検記 (河出文庫)コン・ティキ号探検記 (河出文庫) [文庫]
著者:トール・ヘイエルダール
出版:河出書房新社
(2013-05-08)


★ネアンデルタール人はヨーロッパ人の祖先なのか

アナザー人類興亡史 −人間になれずに消滅した”傍系人類”の系譜− (知りたい!サイエンス)アナザー人類興亡史 −人間になれずに消滅した”傍系人類”の系譜− (知りたい!サイエンス) [単行本(ソフトカバー)]
著者:金子 隆一
出版:技術評論社
(2011-04-21)


タイトルがキャッチーすぎて、「ミトコンドリア・イヴ」が全人類共通の唯一の祖先と誤解したままであらすじを紹介している人もいる。さもありなんと思う。

この本がきっかけで、いろいろ調べていくうちに「ミトコンドリア・イヴ」の誤解も解けた。参考になる本だった。


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2013年07月20日

インデックス倒産 インデックス落合会長の「当てるコンテンツ外すコンテンツ」再々掲

2013年7月20日再掲:

インデックスが倒産した。正確には民事再生法を申請し、行き詰った。松永真理さんや、夏野剛さんが率いてiモードで世界の最先端を行っていたドコモの携帯電話に、「恋愛の神様」などのゲームコンテンツを供給していたのがインデックスだ。

最近のドコモの凋落とソフトバンクの躍進は、まさに時代の変化を象徴している。インデックスの倒産も、ケータイゲームやスマートフォンの流れについていけなかった会社の末路というところだろう。

いわばインデックスのはなむけのために、東京IT新聞の記事を紹介しておく。東京IT新聞とは、宅配で配達されるIT業界やケータイ業界のコンテンツが詰まった密度の濃い新聞だ。

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出典:東京IT新聞

法人名で無料購読できるので、興味のある人は申し込むことをおすすめする。バックナンバーはPDFにしてネットで公開されている。最後のページにある、花くまゆうさくの「iTの汁」マンガも面白い。

ITの汁 第1・2・3巻合冊版  〜ITが分かった気になる脱力4コマ (impress QuickBooks)ITの汁 第1・2・3巻合冊版  〜ITが分かった気になる脱力4コマ (impress QuickBooks)
著者:花くまゆうさく
インプレスコミュニケーションズ/東京IT新聞(2012-05-18)
販売元:Amazon.co.jp


2013年6月12日再掲:

インデックスが粉飾決算の疑いで、証券等取引監視委員会の強制捜査を受けた

一時はIT業界の紳士として、テレビ局や商社などと積極的に業務提携し、勢いがあったインデックスだが、やはり時代の荒波を乗り越えるのは大変だったようだ。

循環取引による売上高水増しという嫌疑がかけられているが、もし粉飾決算が本当だとすると、前回あらすじを紹介した池井戸潤さんの「ロスジェネの逆襲」と同じストーリーになる。

ロスジェネの逆襲ロスジェネの逆襲 [単行本(ソフトカバー)]
著者:池井戸 潤
出版:ダイヤモンド社
(2012-06-29)

昔、ビジネスの関係があったインデックスの人は、現在までにほとんど退社していると思うが、落合さん、小川さんのご夫婦は経営者として残っている。

落合さんは、次のあらすじでもわかる通り、これまで大変な苦労をしている経営者だ。なんとか今回も立ち直ってほしいものだ。

そんな思いを込めて落合さんの「当てるコンテンツ外すコンテンツ」のあらすじを再掲する。


2005年10月1日初掲:

当てるコンテンツ外すコンテンツ―iモード「恋愛の神様」大ヒットの裏側当てるコンテンツ外すコンテンツ―iモード「恋愛の神様」大ヒットの裏側
著者:落合 正美
東洋経済新報社(2001-04)
販売元:Amazon.co.jp


今回のあらすじは長いです。

急成長して話題のケータイコンテンツ会社インデックスの落合正美会長が書いた唯一の本。渡辺専務との共著で2001年5月発刊だ。小川社長は執筆者に名前は連ねていないが、全編にわたり助けていると。

インデックスの株主構成は次の通りだ。現在の時価総額は3,000億円。落合さん、小川さん、渡辺さんは個人でも大株主で、凄い資産家である。

落合正美 101,840株(24.73%)
三菱商事株式会社 30,188株(7.33%)
小川善美 26,762株(6.49%)
日本トラスティ・サービス信託銀行株式会社(信託口) 25,912株(6.29%)
三菱信託銀行株式会社(信託口) 15,301株(3.71%)
株式会社フジテレビジョン 8,160株(1.98%)
渡辺和俊 7,912株(1.92%)
株式会社テレビ朝日 6,480株(1.57%)

インデックスは落合さんが入社した1997年が実質的な創業年だが、この本を出版したのはジャスダックに上場した直後の2001年5月で、2000年8月期の売上高は12億円、経常利益は4億円、社員70名だった。

それが現在は2005年8月期予想で売上820億円、経常利益85億円の規模にまで拡大している。すごい成長だ。

そんな話題の企業インデックスの原点を知るために4年前のこの本を読んでみた。

驚くことばかりだ。

このブログではホリエモンや三木谷さん藤田さん野尻さん、など、様々なベンチャー企業の社長の本を取り上げてきたが、これまで紹介したベンチャー企業の社長の誰とも異なる。

むしろこちらの方が日本の中小企業の苦闘の代表例なのかもしれない。

サラリーマンの筆者にとっては、落合さんの経歴の方が、身近な気がして、元気が出た。かといって、近い存在という意味ではない。やはりサラリーマンと本当のベンチャーとは天と地くらい異なる。落合さんは両方を経験し、修羅場をくぐった経営者である。


落合正美氏の経歴 日商岩井時代まで

落合正美氏は1959年生まれ。1983年に慶応大学を卒業して、日商岩井に入社。

落合さんは慶応ボーイだが、いわゆるお坊ちゃんでは全然ない。埼玉県の川口市のブルーカラーの貧しい家庭に生まれ、高校時代は新聞配達をし、大学は奨学金で進学した。家族旅行もできなかったし、子供時代を振り返るとみじめな想い出ばかりだと。

しかし「その体験があったからこそ落合さんは苦境を乗り切れたのではないか」とある人に言われ、つらい時代が原体験として生きていることを感じたと。

なるほどと思う。

日商岩井では外国為替や営業を経て、経営企画部に配属となり、1992年に日商岩井の社内報トレードピアを制作していたハウスエージェンシーに出向した。

営業時代は金属チタンを売っていたと。筆者もチタン原料を取り扱っていたので、なにか親しみを感じた。

社名を日商岩井色をなくすためPOV(ポイント・オブ・ビュー)に変更し、イベント企画やNIFTYのオンラインショッピング企画などで、2期連続赤字会社を1年で黒字化して頭角を現す。小川さんも渡辺さんもPOV時代の同僚だ。

赤字会社を1年で黒字化した商社マン、社内ベンチャーの成功例としてマスコミにも取り上げられたが、日商岩井の社長交代を期に経営陣と対立し、追いつめられたあげく1997年3月に37歳で日商岩井を退職した。その時の退職金は200万円だったと。


インデックスの誕生

知り合いを頼って、旅行代理店の子会社のノザークBNSの社長となるが、この会社は1億円の負債を抱え、将来に不安を抱いた社員は次々と辞めていった。社長就任後5ヶ月で社名をインデックスに変更。インデックスの健康保険組合は旅行業の組合と聞いているが、それはこんな背景があったのだ。

インデックスという社名は、フレッド・ホープというディズニーランドのテーマパークとかサンリオピューロランドをデザインしたアメリカ人の友人につけて貰った由。

当初は会社をつぶさないためにすぐに入金される足の早い仕事を取って、外国ミュージシャンのイベントプロデュースとかできることは何でもやった。

資金繰りの為に個人的に消費者金融から金を借りて食いつなぐこともしばしばで、車も抵当に入れたこともあった。


コンテンツ事業に進出

なにか仕事が欲しいと日商岩井時代の知人である当時NIFTYの山川常務に会いに行ったところ、「落合くん、これからはコンテンツだよ」とアドバイスされた。

そんなときにPOVで一緒だった渡辺氏が入社、映画館の空席情報をアルバイトを集めて電話で聞き、ニフティに提供する事業を始めるが、赤字だったので3ヶ月で終了。

しかしながらコンテンツがお金になることを知った

さらに1998年1月に同じくPOVで一緒だった小川さんが入社、3人でコンテンツをやることを決意。渡辺氏がポケベル向けコミュニケーションコンテンツ「四次婆」(よじばばあ)を発案、小川さんが企画書にまとめ、ビジネスにおとし、当時のポケベルの最大手東京テレメッセージに売り込み、コンテンツビジネスをスタートさせた。

四次婆は四次元の住人で、どこからともなく現れ、時にメッセージを送ってくるという中高生に大ヒットしたキャラクターだ。PHSのDDIポケットにも採用されるが、DDIポケットの専用端末が必要なこともあり、当初は儲かる商売ではなかった。

このころは落合さんはコンテンツ事業は「儲からないからやめてしまえ」と言っていたと。


ピンチはチャンス

1998年2月に親会社の旅行代理店が倒産、1億円の負債を抱えるが、破産管財人と借金の8割引きで合意する。しかし公私ともに資金が底をつき、落合氏自身が自己破産に追い込まれそうな危機を迎えた時期もあった。

危機を乗り越えられたのは当時の第一勧業銀行四谷支店の融資だ。超軽量ビデオテープを開発した米社とライセンス契約し、売掛債権を担保に合計2〜3億円を調達し、なんとか切り抜けた。

これによって親会社から株を取得することができたし、銀行との交渉術も身につけた。バックボーンのないベンチャー企業経営がいかに厳しいかをスタート時に学ぶことができた。ピンチはチャンスとはよく言ったものだと落合氏は語る。

辛酸をなめた落合氏はベンチャーこそ黒字経営をと説く。ベンチャーキャピタルが鵜の目鷹の目で投資案件を物色し、将来大きく黒字にすれば良いとちやほやしても、それには乗らず、黒字経営は必須であると。社員にコスト意識を植え付け、コンテンツの広告費や、買い取り、運営費などの様々な赤字にしないための知恵を出して資金繰りをつけたのだ。


メディア事業での成功

メディア事業を成功させるには、2つの要件があると落合氏は語る。

一つはトップに闘う姿勢があること、
もう一つは既存のものより個性的なコンテンツ。

そういう意味でこれはベンチャーに向いている事業なのだと。

iモード事件 (角川文庫)iモード事件 (角川文庫) [文庫]
著者:松永 真理
出版:角川書店
(2001-07)

コンテンツの営業では小川さんが先頭にたち、飛び込みで営業した。当時のドコモの窓口はiモードの仕掛け人となったゲートウェイビジネス部企画室長の松永真理さんだった。

ケータイでインターネットに接続できるiモードはユーザーにとっても、制作側にとってもオープンなネットワークで、必ずヒットすると確信していたと。

しかし1998年10月に、占いの『恋愛の神様』をドコモで開始したが、サービス開始から1ヶ月後でもユーザーは1日20名程度で、ドコモからの最初の月の入金は4,000円のみだった。

強気の小川さんも、さすがに心配になり、松永さんのところに行くと、「大丈夫よ」と勇気づけられたという逸話がある。

1999年2月にiモードがスタートして、5ヶ月でiモードユーザーが100万人を突破。後はサクセスストーリーだ。『恋愛の神様』はiモードの占いコンテンツでトップとなり、2001年3月で登録者は35万人を突破した。

『恋愛の神様』ではテーマを占いの中でも恋愛占いに絞り、タロットや四柱推命、ホロスコープなど様々な方法を選べる様にして飽きない様にした。結果として恋愛なしでは生きられない若い女性にターゲットをあわせたことが大成功の秘訣だ。


売れるコンテンツと売れるしくみ

モバイルコンテンツでヒットするのは占い、ゲーム、メール、着メロの四種類で、プリミティブでシンプルなものと渡辺氏は語る。面白いコンテンツは面白い人間がつくると。「仕事、仕事でやってきたクリエーターは信用しない」と。「純文学を読め、人間を知れ」と。

インデックスの成長のもう一つの鍵が、コンテンツ料金が通話料に上乗せで請求できるiモードの課金システムである。ドコモの手数料は9%。ユーザー一人あたり月せいぜい数百円の少額コンテンツプロバイダーには回収リスクがなく、願ってもないビジネスモデルだ。

コンテンツを自前で制作していることもインデックスの強みだ。地道な努力、小さな努力の積み重ねで現在のインデックスはあると。


インデックスの躍進の基盤

2000年3月にはインデックス、現ライブドア、オープンループ等で、モバイルベンチャークラブを設立、2000年5月にはオープンループとインデックス、ドワンゴで、JAVAをつかったケータイコンテンツ開発でコネクトという合弁会社を設立した。JAVAを使うことでiアプリの幅が広がり、動画などもストレスなくケータイで表示できるようになった。

2000年春頃からアジア企業からのアプローチが相次ぎ、小川さんが一人で出張し講演すると、数百人の聴衆が集まり、アジア諸国のコンテンツに対する関心の高さがわかった。

LGテレコムとの提携、台湾インデックス設立などを小川さんが中心にまとめ上げる。社名は台湾インデックスだが、インデックスはマイナー出資で、現地資本がマジョリティ。決して無理をしていない。

海外展開やコンテンツ確保の為、2000年8月に三菱商事、フジテレビ、PCCW(香港)、タカラ、全国朝日放送など13社に第三者割り当て増資で11億円を調達し、将来の基盤をつくった。

渡辺氏は「エンターテインメント系で最も完成されたコンテンツがテレビである」と語る。インデックスは2000年からフジテレビ、全国朝日放送を株主にまねき、テレビとケータイのつながりビジネスを研究してきた第一人者だ。

渡辺氏はじめインデックスのスタッフたちは寝食忘れてコンテンツづくりに夢中になることがある。その楽しさ、奥深さは一度体験したらやめられなくなると。


インデックスの成功の理由

落合氏は最後に語る。きびしいけれど、一度やったらやめられないのが、ベンチャービジネスなのだと。

インデックスは売上高820億円ながら、従業員数は180名のみ。新規事業会社には片道キップで転籍し、背水の陣で臨むのである

ベンチャーの基本、コンテンツビジネスの基本。それをきっちり押さえた身の丈経営。それがインデックスの凄さだ。


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2013年07月16日

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話

僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話僕が電通を辞める日に絶対伝えたかった79の仕事の話
著者:本田 亮
大和書房(2013-04-20)
販売元:Amazon.co.jp

元電通のエクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターの本田亮さんの本。

本田さんが、「望月衛介の音楽と広告」というラジオ番組に出演した時の話も公開されているので、こちらも参照願いたい。

アマゾンの表紙写真は、本田さんの手書きメモを紹介したものだが、本屋に並んでいる本には、次のようなカバーがついている。

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エクゼクティブ・クリエーティブ・ディレクターというのがどういう役職なのかわからないが、電通のクエイエイティブ職のトップクラスなのだろう。本田さん自身の作品としては、「ピッカピカの小学生」や「こだまでしょうか?(AC)」などがある。





この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見ていただきたい。

肩ひじ張らない内容で、仕事の上での「気づき」を与えてくれると思う。


日本のクリエイターを代表する知人

筆者は以前、博報堂とのIT関係の合弁会社に居た関係で、博報堂のクリエイティブの人は何人か知っている。そのなかでも特に有名なのが、宮崎晋(顧問)チーフクリエイティブオフィサーだ。

きさくな人で、たまたま筆者のいた会社の博報堂側の担当役員だった関係で、社員向けに講演していただいた。

「入社以来定期券は持ったことない」とか、「通勤に使っている山手線は、その時の気分で内回りに乗ったり、外回りに乗ったりする」とかいった話が記憶に残っている。

毎日新しいことを探して町をほっつき歩いているから、定期券は持たない。また山手線の内回り・外回りにこだわらないのも、一つの見方に執着せず、常に違う見方がないか探すという心構えなのだ。

宮崎さんの作品はいくつもカンヌの国際広告賞を受賞している。たとえばカップヌードルの「ハングリー?」というシリーズだ。





そのほか、宮沢りえの「Santa Fe」という写真集の表紙で使ったドアを持ってきて撮影した豊島園のCMもある。

Santa Fe 宮沢りえSanta Fe 宮沢りえ [大型本]
著者:篠山 紀信
出版:朝日出版社
(1991-11)


雑誌の「ナンバー」も宮崎さんの作品だ。「ナンバー??」と毎号タイトルが変わるので、雑誌を認可している文部省(?)が難色を示したという話をされていた。ちなみに「ナンバー4」の表紙は、パンチを受けて腫れ上がった試合翌日の具志堅用高の写真だったのを覚えている。

具志堅用高










出典:ウェブ画像検索

Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌]Sports Graphic Number (スポーツ・グラフィック ナンバー) 2013年 7/11号 [雑誌] [雑誌]
出版:文藝春秋
(2013-06-27)


宮崎さんは、博報堂の役員を務めながらクリエイティブの現場にも復帰された。復帰作が黄桜の有名な江川と小林が出演するCMと、全日空のロマンあふれるCMだ。






話が博報堂にそれたが、この本で参考になった点をいくつか紹介しておこう。

02 プレゼンはかっこよくなくていい

電通に入って一番意外だったことは、「おもしろい企画」を出せば誰もが「おもしろい!」と言ってくれるのだと思ったら、そうではなかったことだ。「おもしろい企画」を出すことは仕事の半分だけで、残りは「おもしろい企画だと相手にわかってもらうこと」だとわかったという。

「みっともないくらいでもいいから、全身全霊で説明すること。それ以上のものでも、それ以下のものでもない」

10 人間臭さを前面にさらけ出す

クライアントに広告企画のプレゼンが終わった。女性プランナーは淡いブルーのスーツに身を包み、スマートにプレゼンして、大したものだと思っていると、クライアントの宣伝部長から突っ込みが入った。

「そんなことを言ってもね、そんなに簡単に番組が取り上げてくれるわけはないよ。われわれは、いつもそこで苦労しているんだ。」

「大丈夫です。私たちには秘策があります!」

(「大丈夫か!?、うちにそんな秘策あるのかよ?」)

「土下座です!」「最後はこの手しかありません。私が土下座してお願いしてきます!」

この思わぬ超アナログ兵器に会場中が大爆笑となり、仕事も勝ち取ったという。

18 企画は必ず、冷蔵庫に入れる

アイデアは考えるときは頭がホットなほうがいいけど、チェックするときは頭がクールなほうがよい。自分の手を離れたアイデアは、時間とともに他人のアイデアになっていく。

自分の企画に冷たく接することができるようになったときに、初めていい企画を作れるようになるのだと。

なお、どうでもよいことながら、28などで出てくる「決済」は「決裁」だ。やや誤字が多いのが気になる。

38 人生はジグザグに歩いたほうが長い
「直線の人生よりジグザグ人生のほうがはるかに長い線になる」。

39 努力できる才能を持つ宮里藍さん

宮里藍は非常に忙しいので、CM撮影のための時間は、1年のうちでもほんの数時間しかもらえないという。この時もオーストラリアのゴルフ場で、なんとか3時間もらって2本のCMを撮影した。

「午後はどんな予定が入っているんですか?」

「練習です」。 毎日毎日が練習ばかりなのだ。

藍ちゃんの凄いところは、「努力できる心」を持っていることなのだと。

このブログで紹介した「不動心」で、松井が言っている「努力できることが才能だ」という、言葉そのものだ。

不動心 (新潮新書)不動心 (新潮新書) [新書]
著者:松井 秀喜
出版:新潮社
(2007-02-16)


43 どんなときも、他人は見ている

仕事の評価は上司やクライアントの間だけで成り立っているとは思ってはいけない。まったく関係ない人に対してどう接しているかということが、意外とその人の仕事の評価にもつながっている。

44 マイク・ベルナルドに見た礼儀正しさ

あるときK1格闘家のマイク・ベルナルドをキャラクターに起用して、ニュージーランドでロケを行った。マイクのカットは順調に撮影が終わったが、商品カットに時間がかかりすぎてレストランに着いたのは10時近くだった。

マイクは先にホテルに帰るので、夕食の時に声をかけてくれと言っていた。コーディネーターが迎えに行くと、5時間も前にホテルに帰っていたマイクは食事をせずにじっと待っていた。

「みなさんの仕事が終わらないのに、食べることなんてできません」。

「えっ……本当に!?」その一言でスタッフ全員がマイクのファンになってしまった。

有名だったり地位が高かったり立場の強い人が謙虚に行動すると、すごく大きなインパクトを与える。マイクの礼儀正しさと優しさに「謙虚でいること」「頭を下げること」ってカッコいいことだと教えられたという。



49 一目置かれる営業マン

仕事で同じ能力のある2人の人間がいたとしたら、おもしろそうな人と仕事がしたいと思うのは当たり前のことだと思う。遊びも自分のセールスポイントにしたほうがいい。


50 自分が聞かれたことは、自分の口で返す

本田さんは、今や社長や専務になってしまった人の平社員だったころを知っている。

ひと言で言うと「矢面」だと。クライアントからも社内からも集中攻撃されて、全身に矢が刺さっているというイメージだ。

仕事の最前線にいると、ストレスも大きいけど、「矢面」に立つ姿が、クライアントからも社内からも信頼される存在になる。サラリーマンの仕事のだいご味が味わえるのだと。

本田さんは、自分にかかってきた電話や質問は、他人に振らないで自分の口で返すようにしている。情報が集中してくると、その人が仕事のハブとなり、その人なしでは仕事は進まなくなってくる。

55 遠距離通勤オフィス

本田さんは会社の仕事がものすごく忙しく、いくつかの雑誌に連載を抱えていたため、毎日が地獄のように忙しかったという。そんな本田さんの時間の作り方は、「電車企画室」だ。

通勤時間の1時間半を使って企画する。電車は意外と企画に向いている空間なのだ。雑誌の見出しを見れば、世の中の動きがわかる。中吊り広告には表現のヒントがある。乗客は企画の登場人物に見立て、窓の風景はシチュエーションのヒントになる。情報がたくさんあるのに、誰も干渉してこないところは、図書館にも似ている。

今でも本田さんは、企画に詰まると、「ちょっと電車に乗ってくる」といって、山手線一周して帰ると、仕事の5つや6つは片付いているのだと。

上記で紹介した博報堂の宮崎さんと似た発想だ。毎日通勤時間を「電車読書室」にしている筆者も、わが意を得たりという気がする。

長くなりすぎるので、この程度にしておく。気軽に読めて、仕事の「気づき」を与えてくれる、参考になる本である。


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2013年07月13日

この金融政策が日本経済を救う 高橋洋一さんの金融政策入門書

この金融政策が日本経済を救う (光文社新書)この金融政策が日本経済を救う (光文社新書) [新書]
著者:高橋洋一
出版:光文社
(2008-12-16)

リーマンショック直後の2008年末に出版された嘉悦大学教授・元財務官僚の高橋洋一さんの「世界一簡単な金融政策の入門書」。これが現在のアベノミクスのベースとなっている。

このブログでは高橋洋一さんの最近著の2013年3月に出版された「アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる」と2012年末に出版された「日本経済の真相」のあらすじを紹介している。

アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる (現代ビジネスブック)アベノミクスで日本経済大躍進がやってくる (現代ビジネスブック) [単行本(ソフトカバー)]
著者:高橋 洋一
出版:講談社
(2013-03-28)

日本経済の真相日本経済の真相 [単行本(ソフトカバー)]
著者:高橋 洋一
出版:中経出版
(2012-02-15)

イェール大学の浜田宏一名誉教授も、「アメリカは日本経済の復活を知っている」で、この本を推薦書として挙げている。

アメリカは日本経済の復活を知っているアメリカは日本経済の復活を知っている [単行本]
著者:浜田 宏一
出版:講談社
(2012-12-19)


高橋教授の論点を整理すると次の通りだ。

日本の景気は2007年中ごろから後退しているが、これはサブプライムローンの影響ではない。日銀が2006年から2007年にかけて金融引き締め策を打ち出したからだ。

市場に資金供給を減らしたから、日本は景気後退に陥り、日本株は暴落した、。サブプライムローンから最も縁遠い日本が、最も激しい景気後退に襲われたのだ。

日銀が金融政策を誤り、市場に資金供給を減らしたからだ。

日銀のホームページの「にちぎん☆キッズ」という子供向けのコーナーには次のように書いてある。

「デフレのとき、日本銀行は、銀行などの手持ちのお金をふやすそうさをします。
インフレのときや、インフレになりそうなとき、日本銀行は、銀行などの手持ちのお金をへらすそうさをします」。

昔は、公定歩合の上げ下げが金融政策の基本だったが、現在は「公定歩合」という呼び名すらなくなっている。現在の金融政策の中心ツールは、公開市場操作だ。

つまり、日銀が銀行から国債やREITなどを買い上げて、銀行に資金を振り込む。その資金を銀行は融資に回すのだ。


名目金利と実質金利

日銀や世界の中央銀行は、長い間ゼロ金利政策を続けてきた。これ以上は金利では打つ手がないように思えるが、そうではない。名目金利はゼロ以下には下げられないが、実質金利はいくらでも下げられるので、実質金利を下げればよいのだ。

国民の物価上昇率予想に働きかけ、予想がプラス2%のインフレ予想であれば、ゼロ金利なら実質マイナス2%の金利となる。企業は積極的に設備投資を行って、不況から脱出できるのだ。

逆にデフレで、毎年1%づつ物価が下落していれば、ゼロ金利だとプラス1%の金利がついているのと同じになる。つまり1%の金利で資金を借りると、それは実質2%の金利がかかることになる。だから企業の設備投資が盛り上がらないのだ。

このインフレ予想に働きかけるのが量的緩和策だ。


量的緩和

日銀は紙幣を印刷して、民間銀行が持っている国債などを買い取り、民間銀行の当座預金残高を増やす。民間銀行はそのお金を企業の設備投資資金等に貸し出す。紙幣の発行益は、シニョレッジと呼ばれ、国庫納付金として財政収入となる。

早い話が、紙幣をたくさん刷れば、インフレになるというのと同じだ。

日本では財政政策でなく、公共投資で景気回復するという論陣を張るエコノミストが多いが、高橋さんは、ノーベル経済学賞受賞者の「マンデル・フレミング理論」を紹介し、変動為替相場制のもとでは、公共投資の効果が輸出減、輸入増で海外に流出してしまうので、理論的には財政政策の効果はないと説く。


大恐慌からの脱出は金融政策がカギだった

大恐慌からの脱出は、ニューディール政策による公共投資でなく、金融政策がカギであったと最近の大恐慌研究では明らかになっている。

「オズの魔法使い」は19世紀末のアメリカの金融政策からヒントを得ているという。OZは金の単位のオンスの略号で、ドロシーは伝統的なアメリカ人の価値観、カカシは農民、ブリキのきこりは産業資本、ライオンは民主党のブライアン候補だという。

高橋さんは大蔵省の新人研修で、「男子の本懐」を読んで感想文を書けという問題に対して、高橋さんはなぜ世界大恐慌のなかで、浜口雄幸と井上準之助が金解禁を行ったのか理解できなくて感想文を書けなかったという。

男子の本懐 (新潮文庫)男子の本懐 (新潮文庫) [文庫]
著者:城山 三郎
出版:新潮社
(1983-11)

世界のどの国でも金本位制は放棄され、現在に至っている。本来愚策の金解禁のはずが、「男子の本懐」では美談に仕立てられている。

この疑問が解消したのは、留学先のプリンストン大学でバーナンキの「大恐慌論文集」を読んでからだという。

世界恐慌は金本位制によって発生して伝播した。大恐慌から脱出するためには、金本位制を捨て、金融緩和をすることが必要だった。金本位制を維持した国は十分な金融緩和ができず、デフレから抜け出せなかった。金本位制を放棄した国は自由に金融緩和ができて、すぐに抜け出せた。

大恐慌論大恐慌論
著者:ベン・S・バーナンキ
日本経済新聞出版社(2013-03-26)
販売元:Amazon.co.jp


大恐慌研究の世界的権威のバーナンキは、政府が国債を大量に発行し、日銀が国債を購入するという高橋是清の政策を高く評価していたという。これが大恐慌脱出の決定版といえる究極の政策で、ミルトン・フリードマンのいう「ヘリコプター・マネー」、バーナンキのいう「マネー・ファイナンシング」なのだと。


デフレなら円高は続く

為替相場も重要だ。一般に物価上昇率に差がある二国の通貨は、物価が低い方の国の通貨は長期的に通貨高になる。デフレを止められなかった日本は、当然の結末として円高になっていたのだ。


日銀の独立性は手段の独立性

高橋さんは、メディアも含めて多くの人が「日銀の独立性」を誤解しているという。「中央銀行は手段の独立性は確保されているが、目標は政府と協調して決めるのが世界の標準」なのだと。

目標は政府が決めるが、その目標のもとで、どのような手段をどのようなタイミングでやるかは中央銀行が責任を持つ。つまり日銀には手段の独立性が認められているかわりに、本来であればPDCAサイクルを導入し、日銀が選んだ手段の有効性を検証して、失敗であればペナルティを課すというのが世界の常識であると。

こういった考え方を持っていたのに、民主党の反対により日銀副総裁就任を拒否されたのが、東京大学の伊藤隆敏教授だ。伊藤教授の「インフレ目標政策」はこのブログでも紹介している。

インフレ目標政策インフレ目標政策
著者:伊藤 隆敏
日本経済新聞出版社(2013-02-26)
販売元:Amazon.co.jp


日本の景気悪化は金融引き締めが原因

この本は2008年12月に発刊された。つまりリーマンショック(2008年9月)の直後だ。当時、筆者も含めた誰もが日本の景気悪化はサブプライムローン問題によるリーマンショックにより、輸出が減少したためだと思っていたと思う。

日本のGDPに占める輸出の割合はせいぜい15%程度なのに、あれだけ景気が急速に悪くなったので、筆者は間接輸出(見かけは国内取引だが、最終製品は輸出される)が、かなりあるためだと思っていた。

全く的外れだったわけだ。

高橋さんは、この本で日本の景気悪化は2006年から2007年にかけての金融引き締めが原因だと断言する。つまり日銀の政策ミスが原因だと。2008年第2四半期のGDP成長率は、サブプライム問題まっただ中の米国がプラス2.8%で、サブプライム問題の影響がないはずの日本がマイナス3%だった。


外為特会を機動的に運用

高橋さんは、「霞が関埋蔵金」で有名だが、埋蔵金のなかでも大きいのが外国為替資金特別会計(外為特会)の超過積立金だ。この本の当時で20兆円あると言われていた。

霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」 (文春新書)
著者:高橋 洋一
文藝春秋(2008-05)
販売元:Amazon.co.jp


高橋さんは、渡辺喜美金融担当大臣時代に、金融庁の金融市場戦略チームの一員となって、超過積立金を米国の政府系金融機関の救済に機動的に運用する戦略を打ち出しているが、実現しなかったという。既に外為特会を使って、ファニーメイ債などに8兆円投資していたので、株式とスワップすることを考えていたのだと。


25兆円の量的緩和と25兆円の政府通貨発行

この本の最後で、高橋さんは非常時(当時はリーマンショックのまっただ中だった)の対策として、25兆円の量的緩和と、25兆円の政府通貨発行を提言している。25兆円の政府通貨発行を財源として、2年くらい社会保険料を免除するのだと。

通常時であればインフレを引き起こすが、100年に一度の大恐慌であれば、インフレは有効な治療薬となるだろうと。実際の黒田日銀の政策は50兆円より規模は大きい。高橋さんの提言は、まさに株高、円安の流れを作ったアベノミクスそのものだ。


高橋さんが、「世界一簡単な金融政策の入門書」というだけあって、数式は一切出てこず、わかりやすい。

筆者が読んでから買った本の一つである。今なら、アマゾンの中古品なら12円(+送料250円)で買える。高橋さんのようなリフレ派は長らく経済学の主流とはなれなかったが、アベノミクス登場で、流れは変わった。例の予備校講師のコマーシャルではないが、12円なら、買うのは「今でしょ」。


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2013年07月08日

オレたちバブル入行組 池井戸潤さんのドラマ「半沢直樹」シリーズ原作 

オレたちバブル入行組 (文春文庫)オレたちバブル入行組 (文春文庫)
著者:池井戸 潤
文藝春秋(2007-12-06)
販売元:Amazon.co.jp

池井戸潤さんの半沢直樹シリーズ第一弾。

原作は2004年12月に発刊されている。

今日からテレビドラマの「半沢直樹」が始まった。

半沢直樹











ちょうどテレビを見終えたところだ。

最初の回と2回目が「オレたちバブル入行組」のドラマ化だ。ちょうどいいところで、「次はまた次回」となってしまうが、小説のエッセンスは出ていると思う。

一部脚色はあるが、原作にかなり忠実なストーリーとなっている。

支店長の圧力で、半沢が5億円の融資を決めた西日本スティールは、融資実行直後に倒産した。粉飾決算だったのだ。社長の東田は雲隠れ、会社は清算、社員はちりじりになった。

社内の査問委員会にかけられる半沢。その席で必ず5億円を取り戻すと宣言するが…。

いつも通り、小説のあらすじは詳しく紹介しない。原作はどんでん返しの連続で、いかにもドラマ原作としてふさわしいストーリーだ。池井戸さんの作品はマンガみたいなありえない展開が多いが、この作品はありそうな展開で、安心して?見ていられる。

池井戸潤さんは、元銀行員なので、ところどころに銀行の裏を知ったインサイダーじゃないと絶対に書けない部分もあり、楽しめる。

完結篇の第2話が楽しみだ。

どうでもいいことだが、小説の中では、延々と続く大阪北港のコークス置き場を行ったところに、西日本スチール倒産の影響で、連鎖倒産した竹下金属(赤井秀和が竹下社長役になっている)があることになっている。

しかし、ドラマでは工場街にある設定となっている。どうやら昔、北港にあった大阪ガス?向けのコークスヤードは、今はないのか、あるいはすべて倉庫屋内に置かれているようだ。

筆者は鶴瓶は、竹下金属の社長役で出てくると予想していたが、半沢直樹(堺正人)の父親役だった。



全然似ていないだろ!

金融庁検査官が国税庁に出向しているという設定で、オネエの国税検査官(片岡愛之助)が、はやくも第1話から登場している。

このブログで紹介した「オレたち花のバブル組」や、「ロスジェネの逆襲」もいずれ登場するのだと思う。

オレたち花のバブル組 (文春文庫)オレたち花のバブル組 (文春文庫)
著者:池井戸 潤
文藝春秋(2010-12-03)
販売元:Amazon.co.jp

ロスジェネの逆襲ロスジェネの逆襲
著者:池井戸 潤
ダイヤモンド社(2012-06-29)
販売元:Amazon.co.jp

ドラマの展開が楽しみだ。


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2013年07月02日

資産防衛マニュアル 橘玲さんの最新作

日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル [単行本(ソフトカバー)]
著者:橘 玲
出版:ダイヤモンド社
(2013-03-15)

このブログでも「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」や、「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」を紹介しているユニークな投資術を説く橘玲さんの最新作。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門 [単行本(ソフトカバー)]
著者:橘 玲
出版:幻冬舎
(2002-11-26)


黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 (講談社プラスアルファ文庫)黄金の扉を開ける賢者の海外投資術 (講談社プラスアルファ文庫) [文庫]
著者:橘 玲
出版:講談社
(2011-10-21)

アベノミクス開始後の2013年3月に出版された本だが、「日本の国家破産に備える」という副題が示す通り、「異次元の金融緩和」により、株高・円安のため景気が回復基調にある現在では、ややピントがずれた内容となっている。

橘さんは「橘玲の海外投資の歩き方」という「ザイ」と共同のサイトでも執筆している。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見て頂きたい。

目次にもある通り、アベノミクスの破滅シナリオで「高金利、円安、高インフレ」のアナザーワールドとなった場合の資産防衛手段としては、次の3つの金融商品で十分対応可能だと。

1.国債ベアファンド

2.外貨預金

3.物価連動国債ファンド

この本のあとがきに本書のメッセージを繰り返している。

1.日本の財政がたとえ破綻に向かっているとしても、当分は金融資産は普通預金で持っていればいい。

2.日本の財政が破たんしたとしても、手近にある金融商品だけで資産のかなりの部分を守ることができる。

3.たとえ「海外投資」をする必要があるとしても、ネット銀行の外貨預金でじゅうぶんだ。

そして資産運用に成功する黄金律は、「金融機関が熱心に勧誘するウマそうな話はすべて無視する」ことだと。


このブログで何冊も紹介している橘玲さんのいつもの情報力があまり見られないような気がするが、最後の忠告はたしかに「黄金律」だと思う。



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