
ハイパーネット創業社長の板倉雄一郎さんのお得生活指南書。
板倉さんといえば、1991年にダイヤルQ2を使ったサービスでハイパーネットを創業。つづいて世界で初めて広告を見ることでインターネット接続料を無料とする広告モデルを開発し、ビルゲイツも注目した。
一時は飛ぶ鳥を落とす勢いがあったが、1998年クリスマスからのネット業界の急成長が起こる前の1997年12月にハイパーネットは倒産、板倉さん自身も自己破産した。
その時の体験が『社長失格』である。

筆者は2000年にインターネット業界に移ったが、ちょうどその当時読んだ本がこの『社長失格』とクレイフィッシュの松島庸社長の『追われ者』だ。両方失敗談であることが、インターネットバブル後の時代を象徴している。

フェラーリを買い、恋人と都心の一等地に住んでいた板倉さんは、会社倒産とともに、自己破産し、一敗地にまみれたが、その時の経験を淡々と書く『社長失格』は面白い読み物だった。
ハイパーネットの副社長が現在ドコモの執行役員でiモード仕掛け人の夏野剛さんだ。
その後板倉さんは自らの失敗談を題材にコンサルタントとして復活し、バリバリ活動しており、この本は板倉さんの新境地ともいうべきものだ。
それにしても幻冬舎は売れる本をつくるのがうまい。
内容もわかりやすく、イラストも多く入れて軽いタッチの本に仕上げている。
『学校では教えてくれなかった目からウロコのお金講座』というキャッチが裏表紙にあるが、板倉さんは儲かるしくみはすべて頭のいい人がつくっている。だまされるなと警鐘をならす。
次が板倉さんのメッセージだ。
「僕は37億円の負債を抱え、自己破産しました。そんなぼくだからこそわかることがあります。それは、世のなかお金の仕組みは、経済的教養の高い一部の人々によってつくられ、経済的教養の低い人たちのお金が搾取されているということです。
そこで、ぼくがこの本を通じてお伝えしたいのは、お金のしくみ、そしてインチキを見破るための知識です」
軽いノリで読む本なので、堅苦しく考えることはない。
たとえば家電量販店のポイントを貯めることは店にお金を預けることだから、ポイントは使えとか、ゼロ金利ローンは結局儲けに織り込まれているとか、テレビ通販は本当に安いのかとかいったテーマが紹介されている。
ただポイントなどは日々進化している。楽天は頻繁に楽天が野球で勝つとポイント2倍セールをやっているし、ポイント残高がある人には期間限定ポイントなどを出している。
またヤマダデンキは手持ちのポイントを3割アップで使えるセールとかをやっている。
常に現金割り引きで買うことがポイントを貯めるよりメリットあるとは、必ずしも言い切れないほどポイントをめぐる動きは早いのだ。
持ち家より賃貸とか、保険は掛け捨てでとかいったテーマの後で、株式投資は美人投票という説が述べられている。
たしかに板倉さんの言うように株式に限らず、多くの人が投資する金融商品は美人(人気)投票といった面もある。
しかし筆者は商品のファンダメンタルズと商品そのものの需要と供給の差という基本的な面もあると思っている。
たとえば新規公開(IPO)市場だ。そもそもIPO株の売り出し総数が、購入希望者数より絶対的に少ないから、需要と供給の関係で、初値から高値がつくという面もあると思う。
また配当=株価上昇は間違いであると。ウォレン・バフェットのバークシャーハザウェイは過去1回しか配当したことがないが、株価上昇率は1,000倍以上で、配当せずに内部留保を拡大投資に当てることで、株式価値は最大化できるのだと板倉さんは説く。
投資商品は、専門家がうまみをエンジョイした後に一般投資家に売り出されるので、必ずしもおいしい投資にはならないと。
このように世の中のお金の仕組みは賢い人たちがつくっているので、だまされるなと板倉さんは呼びかける。
しかしそうはいっても、投資に踏み切らないとフルーツも得られないので、賢い人たちがつくった投資商品だからやめるということにはならないだろう。
板倉さんお久しぶりという感じで、あまり深く考えず、そんな面もあるな程度で読むべき本だと思う。
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