
この本は15,540円もするので、なかなか自分で買うわけにはいかない。図書館で借りるに適した本だ。
最初に偉大さの定義から始まる。偉大なワインの特長とは次の点である。
1.舌と知性の両方を楽しませる能力
2.飲む人の関心を引きつけて離さない能力
3.重たくなってしまうことなく、強烈なアロマと風味をもたらす能力
4.一口ごとにおいしくなっていく能力
5.年月とともに良くなっていく能力
6,唯一無二の個性を見せる能力
7.産地を反映する能力
「モンドヴィーノ」に対する反撃
筆者も見た映画「モンドヴィーノ」では、ロバート・パーカーの100点満点評価と、空飛ぶワインメーカーと呼ばれ、世界じゅうで同じタイプのワインをつくるワインコンサルタントミッシェル・ロランが暗に批判されている。
そんなこともあり、テロワール(ワインの個性を決めるものは土壌であるという考え方)は確かに見事なワインを生産するための重要な要素だと確信しているが、テロワールの影響力の最も説得力ある例はブルゴーニュではなく、アルザスやドイツの白ワイン種だと。
ブルゴーニュで最も有名なグラン・クリュであるシャンベルタンで、13ヘクタールの畑に23の所有者がいる。しかしそのうちルロワ、ポンソ、ルソーなど数人を除き、他の20弱はやせたまずいワインである。しかもロルワ、ポンソ、ルソーはそれぞれスタイルが全く異なる。どのワインがシャンベルタンの土壌を表現しているのか?と。
結論としては、ワイン愛好家は、テロワールを塩や胡椒、ニンニクと同じように考えるべきで、料理で欠かせない役割を果たし、すばらしいアロマや風味をもたらすが、それだけでは飲み込むのすら苦痛であるものだと。
テロワールの議論が多すぎて、最も重要な点が忘れられている ー 飲んで、楽しむ価値のあるワインをつくる生産者を識別し、発見することだ!と反論している。
また、最大の顧客層を引きつけるために、国際企業が限られた数の品種から可もなく不可もない個性のない標準的なワインを、世界じゅうで生産しているというグローバリズム批判に対しては、この10−20年間で世界じゅうのワイン生産は多種多様化しており、全くあてはまらないと一蹴している。
畑における変化、ワイン醸造技術における進歩、傷んだブドウや果梗の手選別、温度制御機能付きのステンレスのワイン発酵槽、逆浸透膜技術により不作の年の水っぽいワインの品質向上などの話も参考になる。
この本で紹介されているワイン
国別では次の通りだ:
アルゼンチン 1
オーストラリア 8
オーストリア 5
アルザス 3
ボルドー 29(うち3が甘口白ワイン)
ブルゴーニュ 13
シャンパーニュ 7
ロワール 3
ローヌ 25
ドイツ 8
イタリア 22
ポルトガル 3
スペイン 6
カリフォルニア 22
ワシントン 1
それぞれのワイナリーの歴史や、所有者家族の写真、シャトーや畑の写真などが紹介されている。
ボルドーは有名シャトー中心、カリフォルニアはいわゆるカルトワインと呼ばれる小規模ブティックワイナリーが多く紹介されている。
すべて熟読する必要はないと思うが、自分が飲んだことがあるワイナリーの記事は特に興味深く読める。
パーカーの評点について、筆者はほとんど気にしていないが、パーカー流の100点満点法で、ボルドーの5大シャトーなど超一流シャトーが2000年などの当たり年は100点が乱発されているというのがやや興ざめではある。
それに対してDRC(ドメーヌ・ロマネ・コンティ、世界で一番有名なワイン)では、ロマネコンティは100点満点はなく、ラターシュに100点満点がある。
ロマネコンティの98点とラターシュの100点と、どこがどう違うのか?全く理解できない評点方法である。
写真も多く、ブドウの木の高さは低く、産地によっては石がごろごろしている畑でも、一流ワインが生産されていることにあらためて驚きを覚える。
写真や一流シャトーのカバーストーリーなど、ワインに関するちょっとした知識を持つには適当な本である。
1万5千円もする高い本なので、図書館でリクエストして読まれることをおすすめする。
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