
著者:佐藤 可士和
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2007-09-15
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カリスマアートディレクターの佐藤可士和氏の初めての著書。
佐藤さんは1965年生まれ。博報堂を経て2000年にサムライを設立して独立した。
佐藤さんのサイトがすごい。佐藤さんの作品のほとんどを収録してフラッシュで見られるようにしている。
整理の効用
この本では、私生活でも仕事でも「整理」することによって、環境が快適になり、効率もあがると力説する。
佐藤さんはアート・ディレクターだが、まるで医者の様にクライアントの問診が重要だと語る。クライアントと綿密にコミュニケーションすることによって答えが見つかる。それを的確に表現するのだと。
アート・ディレクションは自分の作品を作るのではなく、相手の問題を解決するソリューションビジネスなのだと。
だから相手の思いを整理することが大切だ。それにより本質がつかめる。
佐藤さんの出発点は広告は思いのほか注目されないものだと気がついたことだ。
それゆえ商品の本質を捉えて効果的に表現してこそ人の心に残るものができる。大切なのはクリエイターの自己表現ではなく、どう人々に伝えるかだと。
メッセージを人に伝えるのが難しいのは、伝えたいことを整理するのが大変だからだという。なぜアート・ディレクターが整理術を語るのか。整理は価値観を変えるほどの力を秘めているのだと。
整理手順
佐藤さんの整理手順は次の通りだ。
1.状況把握 対象(クライアント)を問診して、現状に関する情報を得る。
2.視点導入 情報に、ある視点を持ち込んで並び替え、問題の本質を突き止める。
3.課題設定 問題解決のために、クリアすべき課題を設定する。
佐藤さんのアート・ディレクション作品が紹介されている。
一つがキリン極ナマだ。
このすっきりしたデザインには斬新感があり、生ビールの新鮮さを連想させる。
整理術には次の3つのレベルがあるという。
1.空間の整理術
プライオリティをつける。佐藤さんのオフィスはシンプルで、ほとんどモノがないので、訪問者に驚かれるという。
たしかに広告代理店の人のデスクというと、雑然といろいろなものが散らばり、そこらじゅうの壁にはポスターだらけというイメージがあるが、佐藤さんのオフィスは白木を基調にして、デスクもチェアーも非常にシンプルだ。
かばんの中身でも、デスクの机の引き出しでも、取り出して並べてみてプライオリティをつけ、いらないものは捨てるのだと。
整理の敵は「とりあえず取っておこう」だという。「とりあえず」取っておいたものは、実はほとんんど二度と見ないものばかりだ。
基本は捨てる。作品なら最終版だけ取っておき、どうしても捨てられないもの用に2−3日から1週間程度置いておく箱を用意しているのだという。
そして取っておいたものでも、見直し(アップデート)が重要だという、
2.情報の整理術
情報、アイデアを整理するには、まず視点を決め、次にあるべき姿=ビジョンを決める。
明治学院大学のロゴを作ったときに、「以前からこのマークだったような気がします」と言われた時はうれしかったという。
六本木にある国立新美術館のロゴデザインも手がけた。斬新で現代的なロゴである。
3.思考の整理術
一番難しいのは思考の整理だという。仮説をぶつけて、フロイトの精神分析の様に、「無意識の意識化」を達成するのだと。
例としてドコモのN702が取り上げられている。「潔い」ケータイをつくりたかったのだと。
ユニクロの柳井さんとも親しく、ユニクロの仕事も佐藤さんが多く手がけている。特に印象深いのは、ユニクロのTシャツ専門店、原宿のUTだ。
「Tシャツをペットボトルに入れて販売する」がコンセプトの店だ。実に斬新である。
答えは必ず目の前にあるので、あるべき姿を見つけるひとつの方法が整理なのだと。
さすがベストセラーになるだけのことはある。シンプルな考えだが、実用的だ。簡単に読めるので、是非手にとって見て欲しい本だ。
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