
著者:石井 直方
販売元:ベースボールマガジン社
発売日:2009-09
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筋肉博士、東大石井教授のトレーニング教本。本の帯には「筋肉の取扱説明書」と書いてある。
モデルは最近テレビのクイズ番組に東大卒のタレントとして登場しているタックこと、佐々木卓君だ。
最近知ったが、佐々木卓君は三年生・四年生でボディビルの学生チャンピオンを連覇している。
石井教授の全日本学生ボディビル選手権優勝、学生パワーリフティング大会6連勝という偉業には比べようもないが、石井教授でさえ達成できなかった全日本学生ボディビル選手権を連覇しているわけだ。
佐々木卓君の筋肉のバルクとディフィニション(キレ)はさすがだ。
石井教授が2年生の時、学生チャンピオンになったのは、慶應大学の吉見正美さんで、現在はロスアンジェルスでカイロプラクティックの医院を経営されている。
医院のホームページに懐かしい写真が載っている。
この「月間ボディビルティング」の表紙写真が、吉見さんが全日本学生チャンピオンになった当時の写真だ。
吉見さんは筆者の1年先輩で、慶應大学を卒業して警視庁に入ったはずだが、やめてカイロプラクティックのドクターになられたようだ。
当時人気があった12チャンネルの「勝ち抜き腕相撲」で、70人抜きのチャンピオン、南波勝男さんに勝ったのが吉見さんだ。
12チャンネルの正月番組で、「六大学対抗腕相撲大会」というのがあり、石井教授を擁する筆者のクラブも出場したが、残念ながら優勝はできなかった。団体ではたしか法政大学のレスリング部、そして個人では吉見さんが優勝した。
1975年に筆者の友人が出場した時の「勝ち抜き腕相撲」のスタジオ写真があるので、紹介しておく。


そう、セコンドはあの俳優のチャック・ウィルソンである。まだ芸能人としては無名の時代で、クラーク・ハッチトレーニングセンターのトレーナーだった。
座っている選手は、筆者の友人が対戦した元ボディビルダーの水上さんだ。
ちょうど筆者達が友人を応援しに行った収録の日に、友人の数人前の挑戦者が、水上さんと対戦して、上腕を変な風にねじって、骨を折るという事故が発生した。
「バキッ」という音がして、急に上腕の筋肉がたわんだので、びっくりした。たしか調理師の人で、1−2ヶ月は休業を余儀なくされただろう。テレビ局から、休業補償はするという説明があった。
一回の収録はたしか10人(?記憶ふたしか)で、2週間分を撮り貯めるのだ。
チャンピオンになると、休む間もなく次々に挑戦者と対戦しなければならず、あの形式で勝ち続けるのはよほど強くないと無理だ。水上さんは結局30人くらい勝ち抜いたと思う。
閑話休題。
筆者はトレーニング歴37年だが、筆者が学生の時は、早稲田大学の窪田登先生の「ウェイトトレーニング」とか、「ボディビル入門」とかの本が教本だった。
ウェイトトレーニング (1979年) (講談社スポーツシリーズ)
著者:窪田 登
販売元:講談社
発売日:1979-05
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ボディビルディング (1964年) (スポーツ新書)
著者:窪田 登
販売元:ベースボール・マガジン社
発売日:1964
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昔は今のようにトレーニング器具がなかったので、バーベル、ダンベル中心のトレーニングだった。
関東学生パワーリフティング大会での筆者のスクワットの試技。バーベルの重さは200Kg。バーベルが重さでしなっている。

関東学生パワーリフティング大会で、石井教授と1・2フィニッシュ。黒板(裏側はミラー)に書いてある215Kgというのは、筆者の最後の試技の重量だ。

この本ではゴールドジムさいたまスーパーアリーナの、様々なトレーニング器具を使って撮影している。その器具のバリエーションは驚くほどだ。
この本では次の部位について、解剖学的説明、筋肉の特性にあわせた鍛え方の基本、写真入りでの具体的トレーニング法の解説、「プラスαの筋肉知識」がコンパクトにまとまっている。
1.胸
2.腹
3.肩
4.背中
5.脚
6.脚(ハムストリングス)・尻
7.上腕
8.前腕・下腿
筋肉の特性にあわせた鍛え方というのは、たとえば標準の80%1RM(1 Repetition Maximum=1回挙げられる最高重量の80%の重量で10回程度繰り返す)とか、前腕の筋肉ならダンベルリストカールを30回繰り返す、ゴムボールを握って握力を鍛えるトレーニングなら100回握る、とかいった具合だ。
この本のあとがきに「トレーニングをすでに実践されている方には、『基本を見直す』という視点で読んで頂ければ幸いです」と石井教授は書いているが、まさに筆者など経験者にも楽しく読めるトレーニング教本である。
ウェイトトレーニングで一番気を付けなければいけない点は、正しい姿勢でトレーニングすることだ。
間違った姿勢で重い物を持ち上げると腰を痛めるおそれがある。この本ではどうやったら腰を痛める(椎間板ヘルニア)になるのかも説明している。
具体的には背中が丸まったままで重い物を持ち上げると、たとえ50キロのバーベルでも、椎間板に局所的に700Kgの力が掛かるという。700Kgは脊椎骨の力学的強度に近いストレスで、きわめて危険な状態なのだ。
雑学的にも面白い。たとえば、黒人の脚は、ふくらはぎのところにあまり肉がついていなくて、アキレス腱が長く、膝に近いところに短い「ヒラメ筋」がついている。
すばやく脚を振るには、根元が細く、先が細い方が理にかなっている。アキレス腱が長い方が、引っ張られて伸びる幅も長くなるので、より大きな力を溜め込むことができ、強いバネがあるのだ。
日本人はふくらはぎの筋肉が美しいと言われているが、逆にスプリントとかジャンプではプラスの要因にならないという。
なるほどと思う。
簡単に読めて参考になる。
トレーニングをやっている人に是非おすすめしたい最新の運動生物学情報満載のトレーニングの教科書である。
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