2020年06月27日

実録 アルコール白書 吾妻ひでおと西原理恵子のアル中談義

2020年6月27日再掲:

漫画家の吾妻ひでおが、2019年10月に亡くなっていた。次に掲載する瀧本哲史さんの著書のあらすじを書くために、出版社の星海社のホームページを見ていたら、吾妻さんの逝去の報告を見つけた。

以下のあらすじでも書いたように、吾妻ひでおは筆者の好きな漫画家なので残念だ。

このブログでも吾妻ひでおの本を何冊か紹介している。都心に向かう電車と逆方向の電車に、衝動的に乗って、人気漫画家という仕事から逃避した自分のことを書いた「失踪日記」や「逃亡日記」とかで、メルヘンチックな画風と違って、現実の生活はきびしいものがあったのだろう。

失踪日記【電子限定特典付き】
吾妻ひでお
イースト・プレス
2019-09-05


筆者が好きだったのは「ふたりと5人」というマンガだ。高校の体育祭では、自分で吾妻ひでおの漫画のキャラクターを背中に書いたTシャツを着ていた。もう50年近く前になるが…。




ご冥福をお祈りして、あらすじを再掲する。


2013年6月29日初掲:

実録! あるこーる白書実録! あるこーる白書 [単行本(ソフトカバー)]
著者:西原理恵子
出版:徳間書店
(2013-03-15)

人気絶頂の時にアルコール依存症のため仕事場へ向かう電車と反対方向の電車に乗って、失踪したロリコンマンガ家とアルコール依存症の戦場カメラマンの夫を持った女性マンガ家の対談。

もう一人アルコール依存症を克服した月乃光司さんという編集者が対談に参加している。

吾妻ひでおは筆者の好きなマンガ家なので、このブログでは失踪から復活第一弾の「失踪日記」「逃亡日記」のあらすじを紹介している。

失踪日記失踪日記 [コミック]
著者:吾妻 ひでお
出版:イースト・プレス
(2005-03-01)

逃亡日記逃亡日記 [単行本]
著者:吾妻 ひでお
出版:日本文芸社
(2007-01)

ちょっと長いが、YouTubeに「実録! あるこーる白書」の出版記念イベントで、西原(さいばら)理恵子さんと吾妻ひでお、月乃光司さんのトークショウが収録されている。



筆者は高校生の時に吾妻ひでおのマンガを初めて読んだが、吾妻ひでおの姿を見たのは、このYouTubeがはじめてだ。赤塚不二夫などと違って、あまりコミカルな感じがしない風貌で、ちょっとイメージが違う。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、目次を紹介しておく。

第1章 依存前日譚 あなたにとってお酒とは

第2章 依存症体験録 やめられない とまらない

第3章 依存症風運記 なんと体は正直な!

第4章 依存体験見聞 優しいだけでは破滅する

第5章 病棟事情拾遺 認める決意がありますか

第6章 集団的治療圏 酔えない日々の過ごしかた

第7章 恒久依存対処法 すべらない話をしよう

第8章 依存談話結論 明日のために啓蒙を!

マンガ家二人の本なので、マンガもまじえた本だと思って読んでみたが、目次を見てもわかる通り、内容はアルコール依存症の体験談とアルコール依存症の夫(鴨志田穣=戦場カメラマン)に苦しめられた妻のシリアスな話だ。

筆者は今年2月から本格的ウェイトトレーニングを再開したが、それからウチで酒を飲む機会はめっきり減った。

もっぱらプロティンドリンク(筆者の場合には、紀文の調整豆乳にゴールズジムのホエィプロテイン・プレーンをシェイクして混ぜる)を一日2−3杯飲んでいる。

紀文 調整豆乳 1000ml  12本セット(6本×2) 常温保存可能紀文 調整豆乳 1000ml  12本セット(6本×2) 常温保存可能 [その他]
商標:紀文







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商標:GOLD'S GYM(ゴールドジム)







プロテインを飲んでいると、酒を飲もうという気にならない。

会社や仲間との飲み会では普通に飲んでいるが、ウチでは酒を飲もうという気にならない。

以前だと、夕食の際には、昔は赤ワイン、東日本大震災後は、東北支援の意味もあって日本酒を飲んでいたが、今は酒の代わりにプロテインドリンクを飲んでいる。

今までは、休肝日が週に1日か2日という生活だったが、今は酒を飲む日が週に1日か2日となっている。

嗜好というものは、生活習慣で変わるものだ。

アルコール依存症の人に、「酒を辞めるには、ウェイトトレーニングとプロテインドリンクがいいですよ」といっても、効果があるかどうかわからないが、シリアスなウェイトトレーニングをすれば、たぶん体質が変わって、効果は出ると思う。

閑話休題。

この本の話題はアルコール依存症からいかに脱却するかというものなので、アルコール依存症の専門病院の長谷川病院や、久里浜医療センターなどが紹介されている。

アルコール依存症の場合、禁断症状が出て苦しがっている本人を、家族が助けて飲ませてしまうと、家族が「イネーブラー」となって、問題が解決しない。だから「キーパーソン」となって、絶対に飲ませないようにして問題解決に当たって欲しいという。

西原理恵子は、夫の戦場カメラマンの鴨志田穣に、さんざんひどいことをされた思いでを書いている。鴨志田穣と離婚した後、鴨志田がガンとなって事実婚として復縁。

鴨志田が42歳で死ぬと、葬式では喪主となったが、鴨志田の墓を柄杓(ひしゃく)で殴りつけたり、子供たちも墓にパンチを食らわせたりしたという。聞くに堪えないような話を明かしている。


女性の感情はポイントカード

西原さんは、女性の感情はポイントカードなのだという。

日常の細かいことをポイントカードにハンコで押して、ポイントを貯めているので、ある一言で50ポイントに達して、ポイント還元キャンペーンが始まって、急に怒り出すのだと。

アルコール依存症の夫を持った奥さんたちは、ポイントカードがとっくに2,000ポイントくらい貯まっているので、些細なことでキャッシュバックキャンペーンが始まるのだと。

ちょっとやそっとじゃ消化しきれない。もうパンパンなのだと。

なるほどと思う。


自助グループのAA

アメリカには1930年代に誕生したAA(アルコホリック・アノニマス)という団体があり、日本でも「無名のアルコール依存者たち」という会がある。

あくまで「無名のアルコール飲酒者」の団体で、代表もいない。会員制もないので、誰にも本名を知らせずに匿名のまま参加できる。

現在日本のメンバーは数千人規模だという。

AAで特筆すべきは、スポンサーという制度で、メンバーひとりひとりが先輩メンバーをスポンサーに選び、その人から個人的な問題についてアドバイスをもらえるシステムを取っている。

吾妻ひでおは断酒して10年以上経っているという。今はほそぼそと時々作品を発表するくらいだが、もともと独特のユーモアのある作風のマンガ家なので、是非また活躍してほしいものだ。


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Posted by yaori at 01:30Comments(0)

2007年06月11日

逃亡日記 漫画家吾妻ひでおの素顔

逃亡日記
逃亡日記


ロリ漫画元祖ともいえる吾妻ひでおの失踪日記うつうつひでお日記に次ぐ日記。

失踪日記で紹介された、ホームレス生活をしていた入間市駅付近や石神井公園で根城にしていたのオレの木、田無の陸橋下などの写真が、メイド系アイドルのゴールデン小雪とのツーショットで紹介されている。

ゴールデン小雪とは初めて聞く名前だが、アキバ系アイドルらしい。吾妻ひでおもゴールデンダンスを見せられたと書いている。

吾妻ひでお作風はこんな感じだ:

ななこSOS (3) (ハヤカワ文庫 JA)
ななこSOS (3) (ハヤカワ文庫 JA)


失踪日記の便乗本だと作者自身も言っているが、吾妻氏の生い立ち(父親は4回結婚し、兄弟が何人か吾妻氏もはっきりわからないと)、漫画家を目指したアシスタント時代のことなども紹介している。

失踪日記で紹介されたホームレス生活、アル中療養、うつ病と戦いながらの執筆が淡々と語られている。

それにしても吾妻氏と対談している編集者の知識がスゴイ。全作品が頭に入っている様だ。

吾妻ひでお氏の写真を初めて見た。当たり前ではあるが、ファンタジー漫画との落差にちょっと複雑な気持ちだ。

対談がほとんどで、漫画が少ないが、吾妻ひでおファンには知識として参考になる本だ。


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Posted by yaori at 00:15Comments(0)TrackBack(0)

2006年08月13日

うつうつひでお日記 吾妻ひでおのマンガ日記

うつうつひでお日記


吾妻ひでおのマンガ日記。

ほとんどのページに、吾妻ひでおのホームページにも載っている独特の『萌え』キャラがワンポイントとして載っており、結構シリアスな日記を楽しく読める様に書かれている。


吾妻ひでおHP







吾妻ひでおの失踪日記については以前紹介したが、高校時代好きだったマンガ家が30年以上経って復活したので、昔の作品が復刻されるのを楽しみにしていた。



失踪日記

失踪日記








この『うつうつひでお日記』は、『失踪日記』(原題は『街を歩く』、『夜を歩く』、『アル中病病棟』の3部作)を執筆したが、出版してくれる会社が見つからず、自費出版と2ちゃんねるぷらすなどの雑誌への連載を細々と続けていた2004年7月から、『失踪日記』出版直前の2005年2月までの日記。

吾妻ひでおは売れっ子マンガ家だったが、中学生の頃からうつ病の自覚症状があり、30歳ころに、はっきりうつ病と意識し、そのためアルコールに依存するようになる。

ついには仕事から逃避して、ある日ふと事務所に行くのと反対方面の電車に乗りホームレスになる。

ホームレスから土木作業員となり、体が丈夫になって仕事に戻り、またホームレスになるという生活を数回繰り返した後、アルコール依存症を治すために、アルコール中毒者病棟に入院した経験を持つ。

このあたりは前作の『失踪日記』に詳しい。

最近7年間は断酒し、地域(西武池袋線沿線に住んでいる)の断酒会の会合にも出席するかたわら、月一回は精神科に通院し、うつ病の治療を続けている。

うつ病のため仕事もなかなかはかどらず、安定剤や睡眠薬を飲んでは寝て、三度の食事はちゃんとして、ちょっと仕事して、外出しては本屋、レンタルビデオ店、図書館にほぼ毎日通うという日々だ。

「何もしてません。事件なし、波乱なし、仕事なし」と本の帯に書いてあるが、まさに病と戦いながら、細々と、しかし懸命に仕事を続けている毎日をつづった日記だ。

ほとんど毎日図書館に行っているので、このブログの『図書館に行こう!』カテゴリーにも入れている。

マンガから小説、ミステリー、ハイデッガーまで様々な種類の本をほとんど毎日読んでいることには驚かされる。

それにしても昔好きだったマニアックなマンガ家、たとえば『どおくまん』などは、どうしたのだろうと思う。

作風は『ナニワ金融道』に引き継がれている様に思えるが、どおくまん自身は最近は作品を出していない様だ。

マンガ業界も結構浮き沈みが激しいことがわかる

嗚呼 花の応援団 1 (1)


この『うつうつひでお日記』は、うつ病の症状が現れるとどんな具合に妄想・幻覚が現れてくるのか、睡眠薬を飲んでも夜眠れない苦しみなどが描かれている。

マンガなのでコミカルに書かれてはいるが、夜眠れないのは大変な苦しみなのだろうと思う。

不眠症になった友人がいるが、彼の苦しみがわかるような気がした。

うつ病の症状が出て、不眠症に苦しみ、安定剤のドグマーチル、痛み止めのバッファリン、ロキソニン、ノリトレインとか睡眠薬のベンザリンといろいろな名前の薬を毎日飲んでいる話が続いている。

シリアスな内容にちょっとたじろいだが、そのまま読んでいくと、これといった出来事がないながらも日記に引き込まれ、キャラの愛くるしさもあり、一気に読めてしまう。

「昔の俺の絵の方が、今の時代に合っているかも」と日記の中でも語っているが、吾妻ひでおの『萌え』キャラなら、絶対ウケると思う。

これを書いている今、アマゾンで『うつうつひでお日記』が282位、『失踪日記』が1,800位ということで、どうやら吾妻ひでおは復活出来たようだ。

青春時代の好きだったマンガ家の病気に苦しみながらの復活、心から祝福したい。『ふたりと5人』の復刻も待っています!


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Posted by yaori at 01:02Comments(0)TrackBack(0)

2005年07月16日

吾妻ひでお 失踪日記 会社と逆方向の電車に乗りたい時ってありますよね? 


失踪日記
マンガ家吾妻ひでおが、みずからの失踪、ホームレス生活、配管工としての別人生、幻覚、アルコール中毒による強制入院まで実体験をマンガにした。

吾妻ひでおのファンのことをアズマニアというそうだが、実は筆者も高校時代は吾妻ひでおのファンだった。少年チャンピオンだと思うが、『エイトビート』(スパイものだったかな?)とか『ふたりと5人』(学生ものだったと思う)とかの連載ものが好きだった。(アズマニアが著作リストを公開している。すごい!)


マンガはファンタジックなタッチで、とくに吾妻ひでおの書く女の子はロリっぽくて好きだった。『エイトビート』のめがねをかけた女の子のマンガをまねしてTシャツに書き、高校の体育祭の時に着ていたほどだ。

しかしもう30年以上も前のことで、マンガ週刊誌を読まなくなって25年以上はたつし(漫画アクションがどおくまんの『嗚呼、花の応援団』の連載をやめたのがきっかけ)、吾妻ひでおの消息も全く知らなかったので、今回の『失踪日記』はなつかしく読んだ。



嗚呼 花の応援団 3 (3)
吾妻ひでおのファンタジックなタッチは全く変わらない。次のマンガの表紙を見て頂きたいが、ファンタジックでグラマーなロリというのが吾妻ひでおのタッチだ。



やけくそ天使 (1)
今アマゾンで吾妻ひでおと検索してみると、筆者の好きだった『エイトビート』とか『ふたりと5人』はどうやら出版されておらず、ロリコンに傾いた『やけくそ天使』とか『アズマニア』とかしか販売されていないのが残念。


アズマニア (1)

マンガの帯でも元祖カルト漫画家とか言われているので、ロリがおたくに受けて人気が出たのだろう。

吾妻ひでおは2回失踪しているが、最初は西武線で山に向かったそうだ。誰しもあると思うが、通勤途上で反対方面のがらがらの電車につい乗りたいという気になる。それを実際にやったのが吾妻ひでおである。

山に向かった心境を「要するに人のいないところで、『象の墓場』みたいなところに行きたいと思ったから」と語っている。

山の傾斜を利用して眠りながら窒息しようとするが、失敗し、ホームレス生活に入る。コンビニの賞味期限切れ弁当とか、飲食店のゴミとかあさっていたということは、山といってもそんな人里離れたところではない。たぶん秩父あたりかと想像する。

町をうろついて職務質問され交番につれていかれ、捜索願が出ていたので、身元が分かる。ファンのロリコン刑事が来て、色紙にサインする。

2度目の失踪ではホームレスとなった後、配管工で働く。肉体労働ですっかりたくましくなったと。

その後マンガに復帰するが、アル中がひどくなり手がふるえ仕事にならず、妄想に悩まされ、ついに強制入院させられる。

最後はアル中矯正病棟で出会った人々を書いているが、安部穣二の『塀の中の懲りない面々』を思わせる。



塀の中の懲りない面々

希有(けう)なタッチとムードを持ったマンガ家であり、たんにロリコンマンガだけでは惜しい。昔からのファンとしてもこの実話路線で、是非新たな境地を開いてほしいものである。

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Posted by yaori at 09:07Comments(0)TrackBack(1)