
著者:門脇 孝
販売元:PHP研究所
発売日:2008-07-25
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東大の糖尿病・代謝内科 門脇孝教授の本。門脇さんは日本糖尿病学会の理事長も務める糖尿病研究の第一人者だ。
表紙の超肥満のサルの写真が目を惹く。大阪堺区大浜公園のアカゲザルだという。
日本人はメタボになりやすい体質
「日本人の肥満は欧米人の肥満に比べたらたいしたことがない」と思っていると、大間違いだと門脇さんは指摘する。
たしかに欧米人の肥満者は多く、異常に太っている人もいるが、日本人は穀類と魚中心の食生活を長年していたので、少し太っただけでも体の様々な機能が低下しやすいのだと。
専門的になるが、遺伝子の一つのβ3アドレナリン受容体の64番目のアミノ酸が、トリプトファン型か、アルギニン型かで、太りやすい体質かどうかが決まるという。人種別のトリプトファン型とアルギニン型の割合を調べた興味深い資料が掲載されている。
出典:本書26ページ
日本人は長年粗食に堪え、飢餓の時代を生きてきたので、「倹約遺伝子」と呼ばれる遺伝子を96%の人が持っている。日本人は世界でも太りやすい人種の一つなのだ。
門脇教授のグループは、アディポネクチンというホルモンを研究し、「肥満や脂肪の摂りすぎ、運動不足によってアディポネクチンが低下することが、メタボ・糖尿病の大きな原因である」ことを突き止めた。
日本人はインスリンの分泌量も少ない。これは肉を食べ、バターを使い、牛乳を飲む欧米人に比べて脂肪の少ない食事を長年摂ってきたからだ。だから欧米型の食生活をすると、肥満が増え、糖尿病患者が増えるのだ。
出典:本書112ページ
世界のメタボ判定基準
IDF(国際糖尿病連盟)が出した基準を元に、各国が自国のメタボ基準を発表している。
このメタボ基準というのは、筆者にはなんとも納得いかないものだ。
1.腹部肥満
日本基準は男性85センチ、女性90センチ以上となっている。
他の国を見ると、いずれも男性の腹位のほうが女性の腹位を上回っている。
米国は男性102センチ、女性94センチ以上。
ヨーロッパ人は男性94センチ、女性80センチ以上。
アジア人は男性90センチ、女性80センチ以上。
日本の基準は男性に厳しすぎておかしいと思っていたが、やはり他国に比べて男女の腹位が逆転している。現在この腹位の数字は内科学会を中心に八学会で見直し中だという。あたり前だろう。
2.高血圧
日本基準は130/85mm Hg以上。
3.中性脂肪が高い
日本基準は150mg/dl以上。
4.HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い
日本基準は40mg/dl未満
5.血糖値が高い
日本基準は空腹時血糖値が110mg/dl以上
これらのうち、3つ以上があてはまるとメタボだと認定される。
メタボと糖尿病、そして心筋梗塞
メタボになると、糖尿病になる確率が5倍になる。そして心筋梗塞や脳卒中になるリスクが約2倍高くなる。九州の久山町で14年間にわたりデータを比較した「久山町研究」というものが発表されている。
出典:本書
気になったので自分の人間ドックの結果を見ると、今年1年でどのデータも悪化していることがわかった。まだボーダーラインは越えてはいないが、徐々に上がっている。体重が徐々に増えていることが原因だと思う。
いわば黄色信号だ。筆者も体重コントロールにさらに気を付けないといけない。
メタボにならないための食生活
門脇教授はアディポネクチンというホルモンの作用を発見して、世界的に注目されたが、そのアディポネクチンと似たオスモチンと呼ばれる成分は、野菜に多く含まれているという。
野菜を食べることで、人体にオスモチンが吸収されるのかまだ確認はされていないが、科学技術振興機構と大塚食品が共同でいろいろな野菜の抽出液をつくり、研究中とのことだ。
メタボにならないためには、日本人は伝統的な和食に戻ることが重要だと語る。
牛や豚の体温は人間より高く、39度で、この温度で液体になっている飽和脂肪酸が脂肪の大部分を占めるが、人間の体温のほうが低いので、血管中に蓄積されてしまう。
しかし魚は冷たい水の中を泳いでいるので、魚の脂は融点が低く、人間の体内に入っても固まらず、むしろ血管についている飽和脂肪酸を溶かす働きがあるという。
おすすめのダイエット
門脇さんは、次のようなダイエットの注意事項を説明している。
★一番良くないのが、朝食を抜いて、昼食はあっさり、夕食でドカ食いというパターンだという。特に寝る前に食べると脂肪になりやすい。
★食事はゆっくりと摂る。早食いの人ほど太りやすい。インスリンが分泌されるまえに食べ終わってしまうからだ。
★食物繊維が多いものを食べる。
★汁物を必ず添える
★食べる順番も重要。食物繊維が多い物を食べて、それからご飯を食べるのがコツ。
★食事はよくかんで食べる。
★糖分と脂肪分の両方を含んでいる洋菓子などが、最も脂肪を蓄積しやすい食べ物である。
やはり王道は運動で基礎代謝アップ
「皮下脂肪は定期預金で、内臓脂肪は普通預金です」と門脇さんは説明するそうだ。健康的な生活を送り、食事を減らし、運動をすると、まずは内臓脂肪が燃える。
運動しながらダイエットすると、筋肉が鍛えられるので脂肪を燃やしやすくなり、基礎代謝量も増える。
よく歩き、階段を使うなどでエネルギーを消費する動き方をすることも、日々の心構えとして重要だ。
まさに東大の石井教授が「一生太らない体のつくりかた」や、「太らない教室」で力説していたのと同じことだ。
体重が1キロ減ると、ウェストも大体1センチ減る。3キロで3センチウェストが減るのだと。1キロ減ると、ウェストも1センチ減るというのは、実感としてわかる。もっとも筆者の場合は、1キロ増えて、ウェストも1センチ増えることが多いが…。
ベルトの穴一つ減ると大体2.5センチなので、男性はベルトの穴一つ分を目標とするのがよいと語る。
現在日本肥満学会では、「サンサン運動」を提唱しているという。これは「体重を3キロ、ウェストは3センチ減らそう」というスローガンだ。
筆者もこの本を読んで、ウォーキングと、すき間時間でのトレーニングを心がけている。
日本糖尿病学会の理事長という日本を代表する重鎮ながら、まるで素人が書いたようなわかりやすく腑に落ちる説明だ。
簡単に読めるので、是非書店で手にとって、パラパラとめくって欲しい。
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